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73 反則だろ

 服を一枚ずつ畳んでは重ねていく。無心で畳んでいるけど女の子の服が結構ある事に気が付いた。男物の服と女物の服を分けて積んでいき、順調に黙々と片付けが進んでいく。


 次に手に持った布をどうやって畳むか悩んでしまった。この布、というか下着は際どい形をしてる、かな。こんなのもあるのか、へぇ。何ともなしに手の上の布を眺めてしまう。


 視線を感じて振り向いてみた。ベッドで横向きで寝転がっているレオさんが、肘枕で俺を見下ろしている。最初は目を合わせて、次に俺の持ってる下着を見て、そして俺に視線を戻してきたレオさんがニヤっと笑った。


 むっとして、目を逸らしてしまった。手に持っていた下着は半分に畳んで女物の山に置いてみる。変なシーンを見られてしまっていたっぽい。超恥ずかしい。でも、心配させちゃったのをちゃんと謝らないとだよね。


「また寝落ちしちゃった。ごめんなさい。体力もホントにないらしいです。」


「体が冷たかったからね。ひんやりしてて俺は気持ち良かったけど。」


「てか、なんで俺を抱き締めて寝てたの。起きた時にびっくりした。」


「あれ、覚えてないの?俺にくっついて抱き着いてきたのは琥珀だよ。」


「え。マジで?ごめん。覚えてなかった。寒かったからくっついちゃったのかな。ごめんなさい。」


 俺から抱き着いたと聞かされてしょぼんとなってしまった。寒かったから、寝惚けて温かいレオさんにくっついてしまったのかもしれない。ベッドの端っこを提供してくれるだけでもありがたいのに。


 倒れかけた俺を心配してくれた人を物理的に拘束してしまうとか、寝惚け過ぎだよな。音もなく俺の前に下り立ったレオさんが、しゃがみ込んできたのが分かった。申し訳なくて顔を上げる事ができない。俺の顎にそっと手を添えたレオさんに上を向かされてしまう。


「全然問題なかった。琥珀は寒かった。俺は暑かった。くっつけば琥珀は温かいし、俺はヒンヤリで気持ちいい。」


 目が合うとにっこり笑顔のレオさんがフォローしてくれた。レオさんはマジ優しくていい人だ。本を読んでた筈なのに、邪魔した俺に気を使ってくれてる。この人はいい人だね。確実にいい人だ。


 俺が変な行動しても、さらっと自分もそうしたかったからって言えちゃうくらい優しい。あと言えるのは、この人は大人だ。優しくて気遣いのできる、雑でワイルドでチャラいけど大人。そして、凄くいい人。レオさんが気にしてないって言ってくれるならそのまま受け取ろう。


「そっか、そういえばそうだよね。じゃあ、片付け再開。レオさんはリビングの素材をちゃんと片付けて下さい。纏めて箱に入れるとか、ちゃんとしてね。」


「え~。俺もこの部屋を手伝うよ。」


「ここは、俺一人で十分です。」


「そんな事を言って、琥珀はそのエロ下着を眺めたりとか俺の本を読んだりするんだろ。」


 レオさんに指示を出してみたら、レオさんが駄々を捏ねだした。さっきは大人って思ったのにちょっと違ったらしいい。しかも、キッパリ宣言した俺を揶揄ってくるレオさんは大人じゃなかった。レオさんの言葉で赤面してしまう。さっきまでの優しくて大人な態度はどこ行った。


「そんなことしません、ちゃんと片付けて下さい。」


 少し意地悪に笑うレオさんを軽く睨んで、少しきつめにキッパリと断言してみた。だって、ホントにしないし。さっき下着を持ってるのを見られたのは、偶々持ってただけですからね。


 本だって読むならレオさんから許可取って読むっての。俺を覗き込んでいたレオさんの瞳孔がぶわっと広がってまん丸になっている。ばっと立ち上がったレオさんが片手で顔を覆ってしまった。


「反則だろ。」


 小さく呟いたレオさんに首を傾げてしまう。何に対しての反則なんだ。あ、この部屋を一緒に片付けるって言いながら、実はサボろうとしたのを見破ったって思われたのか。


 それをアルさんに言いつけるって思われた訳だね。そんな事はしないし、そもそもサボるという考えにすら至ってなかった。でも、たった今、レオさんの反応で分かってしまった訳ですよ。


「反則?俺はなんにもしてないよ。反則してるのはレオさんです、ちゃんとアルさんの言いつけ通りに片付けましょうね。」


 指の隙間から俺をちらっと見たレオさんは頷いて、リビングに移動してくれた。さて、残りを片付けちゃいましょうね。ざっと見た感じ大体残り半分くらいってトコロかな。また放り出されている服を黙々と畳んでは積む作業の始まりですよ。


 なんか、寝室は女物の服が多い印象なんだけど、どうだろう。この服を残していった女の子達がレオさんの服を着て帰ったとするじゃん。そうしたら、レオさんの服がなくなっちゃいそうだけど、レオさんの服は沢山残ってる。


 これを見ると、ネロの服の少なさが良く分かる。でも、ネロはいい匂いだけど、レオさんは汗臭い。香りに関しては服の着回しじゃないって事だよね。ふんふんと納得しながら作業を進めてたら床の上が綺麗になっていた。ゴミも纏めて、っと。あ、ゴミ箱が必要だ。


「レオさん、ゴミ箱を。」


 ゴミ箱を求めてリビングに移動してみる。レオさんはソファに腰を下ろして、足を組んで本を読んでいた。あれ、この子は片付けをする為にこの部屋にきたんじゃなかったかな。読書の為じゃない、よね。


 部屋の中を見渡すと、まだ素材は落ちてるし武器も落ちてる。顔を上げたレオさんが、やべって顔をして本をソファに置いている姿が見えた。読書をしている事を咎めるように睨んでしまう。


「琥珀、違うんだ。片付けてたよ。でも、ちょっとこの本が気になって、どんな内容だったかなって確認をしただけだから。それで、ちょっと休憩を挟んだだけ。そういう事だから。」


 レオさんは慌てた様子で言い繕ってきた。分かった。みなまで言うな。そんな言い訳を早口で言わなくても分かってる、やっぱレオさんだったって分かってるよ、うん。


「ゴミ箱頂戴。」


「ゴミ箱か、ちょい待って。どこだっけ。えっと。」


「あ、畳んだ服を踏まないで。あ~、放り投げないで。また散らかっちゃうからそこにいて。俺が探すから、思う存分読書してていいよ。」


 小さく息を吐いて、短く要件を伝えてみた。俺の言葉に反応して、レオさんは直ぐにゴミ箱を探し始めてくれる。ただね、行動が雑なんですよ。床の上の畳んだ服とかを気にする事なく、ずかずかと探し回るレオさんを慌てて止めてしまった。


 折角片付いた部屋がまた散らかるのは嫌だ。ソファに近寄って、さっきゴミ箱を置いた所を見てみるけど見付からない。じゃあ、反対側か、と探してみたけどない。ウロウロと部屋の中を探し回る俺の後ろで、レオさんもくっついて移動してくる。


「レオさん。いいからそっちで本を堪能してて。こっち来ないで、汗臭い。」


「そんな事を言われたのは初めてだよ。この匂いが興奮するってみんな言うんだよ?」


 一緒に探しているらしいレオさんにちらっと視線を向けて、一人で探すからってきつく言ってしまった。レオさんはしょんぼりと呟きながら離れていってくれた。


 レオさんが離れた後は、ゴミ箱の捜索を再開する。ざっと見た感じでは床の上にはないっぽい。ふむ。消えるゴミ箱の謎か、ディテクティブ琥珀の目にかかれば、直ぐ見つける事も容易い筈。


 視線を巡らせて目に映った大きな木箱が超気になる。部屋の隅に置かれていて、素材を収納する用途に使ってるらしい木箱だ。まさかね、素材と一緒にゴミ箱を入れる訳ないよね。でも、まぁ、一応、確認だけはしときましょう。


 蓋を開けて中を覗き込んでみると、素材の上に鎮座するゴミ箱を見付けた。ふふふ、予想通りですよ。消えたゴミ箱の謎は無事解決。よし、これで寝室も片付く。良かった良かった。


 それに、素材もちゃんと箱の中に収納されてる。レオさんはずっとサボってた訳ではなさそうだね。部屋には、まだ少し素材が散らばってるけど、ちゃんと少しは片付けてたっぽい。レオさんはやればできる子だったのを忘れてた。


「レオさん、見付かったよ。ありがとね。」


 ゴミ箱が無事に見付かっら報告をしにレオさんの所に戻ってみた。ソファの上で脚を抱えたレオさんがしょんぼりとしている姿が目に映る。ん?どしたんだろ。


「レオさん。どした?」


「臭いって。」


 声を掛けながらレオさんに近付いて覗き込んでみる。しょぼんとしたままのレオさんが呟く声が聞こえた。今、なんて言ったんだ?


「ん?」


「汗臭いって言われた。悲しい。」


「えっ、そんな事言ってた?」


 首を傾げる俺を悲し気に見上げるレオさんの返事を聞いてびっくりしてしまった。マジか。心の声が漏れてしまっていたか。でも、汗臭いってそんないじける事かなのかな。レオさんはそんな些細な事をあんまり気にしてなさそうな感じがするんだよ。でも、どう見ても落ち込んじゃってる。


 そして、しょぼんとした行動が猫っぽくて可愛いんだけど。猫耳も寝かされてしょんぼり感が伝わってくるし、ヤバい。でも、俺のせいで落ち込ませちゃったみたいだし、何とか立ち直って貰わないとだね。


「レオさん。ごめんね。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな。」


 俺を見上げるレオさんに笑顔で可愛く言ってみる。レオさんが猫耳を寝かせたままで首を傾げてきた。やば、この猫っぽい行動も可愛く見えてくる。年上のムキムキなでかいお兄さんなのに可愛いとかヤバい。


 ってか、ネロも猫に変換したら可愛く見えたから、レオさんが可愛く見えてもおかしくないのかもしれない。もう、頭がバグってるのかも。猫耳の魔力だね、恐ろしいですね。


 ってか、そうじゃない。レオさんを立ち直らせる方法だった。魔法で火を見たらテンション上がる筈、主に俺が。でも、レオさんだって火を見たらテンション上がるよ。きっとそうだと思う。火は派手だからね、テンションが上がらない訳がない。


 これで立ち直らなかったら他の事を試してみよう。でもレオさんの事はあんまり知らないからな、困った。ネロなら武器でニッコリだけど、レオさんはどうだろう。あ、本を読んでて貰えば良さそうかな。ゴミを燃やして貰って、駄目だったら思う存分読書をしてて貰おう、そうしよう。


「寝室のゴミを纏めてくるから、また魔法を見せてくれると嬉しいな。レオさんの魔法は凄くカッコよかったから、また見たい。」


 ちょっとだけ甘えた感じを出しつつ、優しい口調で話し掛けてみた。レオさんが頷いてくれたから、ゴミ箱を持って寝室に移動してゴミを詰め込む。ぎゅうぎゅうに詰め込んでなんとか入り切った。


 山盛りになったゴミが崩れ落ちないように、慎重にリビングに運んでみた。レオさんの足元にゴミ箱を置いて、レオさんを見上げるとレオさんは俺の行動を見守っているっぽい。


 ちょっと待って、と声を掛けると、レオさんはコクっと頷いてくれた。ニコッとして、俺の歩いてきた通りに少しずつ落ちてたゴミを拾い集めていく。全てを回収して、ゴミを両手で抱えて戻ると、レオさんはまだ見守り中だった。


 一旦、床にゴミをおいて、山盛りのゴミ箱の上に慎重に積んでいって完成。ちょっとでも触れると崩れ落ちそうな絶妙なバランスでゴミが積み上がった。達成感から、レオさんを見上げてニッコリしてしまう。


「じゃあ、お願いします。」


「危ないから俺の隣に座って。こっちなら絶対に大丈夫だから。」


「おっけ~。」


 レオさんの隣に移動して、ソファの上で正座をしてみた。身を乗り出してゴミ箱を覗き込んでいると、困ったように苦笑したレオさんに上半身を押し戻されてしまった。背もたれに押し付けられた事で、ゴミ箱が見えにくくなってしまったではないか。


 ちょっとだけ不満で、ちらっとレオさんを見てみる。レオさんは困った感じで首を横に振ってきた。身を乗り出すのは駄目なんだね。分かったよ、じゃあお願いします。レオさんに頷いてみたら、レオさんは押し戻す腕を離してくれた。


 レオさんがゴミ箱に向かってて手をかざした。いよいよ魔法だ。内心テンションが上がりながら、息を飲んでレオさんの行動を見守ってみる。詠唱を始めたレオさんの旋律に乗せて、ぼっと火が立ち上った。


 山盛りなゴミだったからか、少し大きな火柱が上がってゴミが燃え尽きていく。少しだけ熱を感じる程度で、見た目の火の派手さ程の熱さはない。でも、やっぱり臭い。でも綺麗。火は派手でいいね。


 段々と炎の勢いがなくなってきて、最後はしゅっと消え去ってしまった。後には燃えカスも燃えた焦げ跡もない、臭いだけが少し残ってる程度だ。


 やっぱり凄い魔法だね、これぞ魔法ですって感じがヤバい。小さく感嘆の息を吐き出してレオさんを見つめてしまった。見せてくれてありがとって意味を込めて、ニコっと笑顔を贈ってみる。レオさんも笑顔になってくれた。


 ちょっとは立ち直ってくれたかな。そして、汗臭いって言葉に出してしまってごめんなさい。ホントに無意識だった。心の中で謝っておく事にする、折角笑顔になったのに、蒸し返したら駄目な気がするからね。


「ホント、魔法は凄いね。」


「琥珀の魔法も凄いだろ。〈根性〉なんて、世の中の武闘家や武術家、冒険者とかがみんな血眼になって探してるのに。人から伝授だからな、難しいよな。スクロールだったら楽なのに。俺も欲しい。」


「そうなんだ。」


「で、琥珀はどこでゲットしたんだよ。」


「秘密です。」


 スツィ、〈根性〉って凄い魔法だったんだね。


(はい。希少度合は比較的高い魔法の一つです。)


 へー、凄い。そんなレア魔法だったんだ。そんな魔法がゲットできるとか、ほんとにランダムなんだ。


(はい、ランダムです。)


 ステータス魅力ばっかりに偏った事もあって、少しだけ疑わしいと思ってた。ってか、信用してなかった。でも、DBデスボーナスは本当にランダムで、しかも、〈根性〉は希少魔法だったらしい。


 という事は、この魔法の事は秘密にしておいた方が良かったのかもしれない。でも、知られちゃったのはしょうがないよね。咄嗟の行動だったからね、仕方なかった。


「そういえば、俺が寝落ちる前にネロの話をしてた?」


「ん?してないよ。」


「じゃあ、夢だったのか。」


「どんな夢を見たんだ?」


 そっか夢だったんだ、良かった。ネロが死ぬとかないよね。夢だとしても怖くなる。知らない家にいる心細さと、ネロがいない不安感で変な夢を見ちゃったのかもしれない。


「ネロが死ぬって言われて、泣いた気がする。」


「は?死なねぇだろ。あんな超絶なのを倒せる奴がいたら見てみたいよ。」


「そっか。ネロは強いの?」


「うん、強いって言葉じゃ表せないくらい強い。」


「そっか。じゃあ安心だね。行く前に体調が悪いって言ってたからちょっと不安だったのかも。」


「ネロだし、大丈夫だろ。」


 不安な心が言葉に出てしまったのか、レオさんは優しく反論しながら憂いを取り去ってくれた。そして、俺の肩に腕を回して抱き寄せてくる。その手を頭に置いて、髪を撫でてくれるレオさんに少し寄りかかってみた。


 どうやら、慰めてくれているらしい。それだけ、俺の言葉に不安な心が出ちゃってたんだろうな。行動は突発的で突飛だけど、レオさんが優しい人なのは間違いない。


 一応ね、慰めてくれてるって分かってるから、ちょっとは耐えてみたんだよ。さっきは軽く暴言を吐いて、レオさんを落ち込ませちゃった原因を作っちゃったし。今はレオさんなりの気遣いに感謝するって意味合いもあるからね。ちょっとの間、レオさんに抱き寄せられるままで頑張ったの。


「レオさん。」


 体を離してレオさんを見つめて、小さな声で呼びかけてみた。俺と目を合わせたレオさんは、緊張した様子で俺が話し出すのを待っていてくれている、っぽい。


「言いたくないけど、寄りかかるとばっきばきの筋肉で硬くて痛い。だから、服を着て下さい。」


 あと、汗臭いって繋げそうだったけど、耐えた。またいじけちゃうかもだし。ってか、ずっと裸のままって凄いよな。レオさんが上半身裸な事をある意味、もう普通な事のように感じてたわ。


「俺の筋肉もいいってよく言われるのに。」


 悲しそうに呟きながら、レオさんはしょんぼりと肩を落として寝室に移動していった。服を掴んで戻ってきて、俺の隣にどかっと座り込み、シャツを羽織ってくれる。でもそこ止まりだ。


 ボタンを留めずにシャツの前を全開な状態で、レオさんは背もたれに寄り掛かって魂が抜けたように天井を見上げてしまった。そんなレオさんの様子を見て思う。この子は少し繊細なのかもしれないな、って。


 見た目のキツさと言動のワイルドさで誤解していたけど、繊細な子だったみたい。動かないレオさんを見守ってみたけど、放心したように動いてくれない。


 しょうがないから、魔法を見せてくれたお礼を兼ねて、ボタンを留めてあげる事にした。横からだと止めにくいから、ソファから下りてレオさんの前に移動する。


 レオさんの広げた脚の間に立って、少し屈んでボタンを留めていく。ボタンを留めている間に見えるレオさんの腹部の筋肉が凄い。そして結構細かい切り傷の痕が沢山あるのも見えた。太い蚯蚓腫れみたいな傷痕も少しある。


 屈んだ姿勢から膝立ちに変えて、手を伸ばしてレオさんのお腹を触ってみた。傷を指でなぞるように撫でた後で、お腹の筋肉を軽く押してみる。見た目は細いけど、やっぱり目で見える通り、しっかり筋肉がついてて触った感じもバキバキだ。そして体温が高くて凄く温かい、熱いくらいだ。


「レオさんは細く見えるのに、こんなに筋肉がついてるんだ。凄いね。それに結構傷だらけ。この傷はどうしたの?」


 見た目と違って、触った感じがかなりガッシリしてるのに驚いて、話し掛けながら見上げてみる。さっきまで上を向いて放心してたっぽいレオさんだけど、いつからか俺の行動を観察してたらしい。目が合って、レオさんが少し目を細めてきた。俺の行動を窺うように眺めてくるけど、特に止める気はなさそうだ。


「普通に戦う事もあるからな、その時の傷だろ。」


「てか、腕とかもそんなに細いのに俺を持ち上げて大丈夫なの?きつくなかった?」


「琥珀は軽いから問題ない。この村の大人なら、殆どが琥珀くらいなら持ち上げられるんじゃね。女含めてな。あ、技術系は別な。」


 えっ、女の人を含めてみんなって凄くないか?俺は小さいかもしれないけど、普通に体重はあるよ。それを軽いって言っちゃえるのは凄くない?気を使ってって言い方じゃないし、真実な気もするよね。冗談ではなさそうだよね。


「成る程、皆さん力持ちですね。女の人も力持ちなんですね。ウラヤマシイ。」


「琥珀も鍛えればいいじゃねぇか。あ、人族だから無理なのか。」


「エエ、ヒトゾクダカラムリナンデス。」


「じゃあしょうがないよね。まあ、種族による差って奴だよ。」


「エエ、ソウデスネ。」


 なんか、レオさんが優しい。非常に優しくて言葉を選んでくれて、気遣いができる人だ。とってもいい人だね。泣けてきちゃう。泣くな、琥珀。いつかは俺だって強くなれる可能性がある。そうだろ、スツィ。


(はい。『可能性』はあります。)


 なんで協調したし。


「琥珀、なんでそんな喋り方になってるんだ?また体調でも悪くなったか?寝るか?」


 心配そうに覗き込まれてはっとした。温かくてずっと触れていたレオさんのお腹から手を引き抜いて、ボタンを留めきってしまう。


「大丈夫。触り心地のいいお腹だったなと思って。そっちに集中してた。」


 ふー。なんとか誤魔化せた筈。完璧に誤魔化せた。俺のステータスがヤバ過ぎてショックを受けてるのなんて完璧に伝わってない筈。流石俺、誤魔化し切れた筈。


(ソウデスネ。)


 えっ、スツィさん。なんでそんな言い方?


(琥珀様を真似してみました。)

「そうか?気に入ったならもっと触ってもいいよ。まぁ、お前の指は冷たくてゾクゾクするけどな。」


 スツィの声に重なるようにレオさんが優しく話し掛けてくれた。レオさんの言葉で、なんて事をしてたんだって思ってしまう。


「あ、ごめん。冷たかったか。そうだよね、俺が温かく感じるってことはレオさんは冷たいんだよね。」


 それに、普通にお腹をペタペタ触ってた。知らない人に何て事をしてるんだ。しかも、冷たいって、お腹が冷えちゃったら大変だよね。悪い事をしてしまった。

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