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51 意地悪ではない

 瞬く二つの紅い光に集中しようと思ったら、大きな手で視界が遮られてしまった。あ、あの子達が見えなくなっちゃった。俺の目を塞いでいるネロの手を両手で掴んで剥がして、もう一度武器の保管庫を見たけどもう光は見えなくなってしまった。


「おかえり。ネロも声が聞こえるって言ってた?」


 ネロに視線を移して質問をしてみると、ネロが心配そうな顔で頷いてくれる。


「光も見える?紅い光。」


「見えない。」


「声はなんて言ってるの?」


「知らない言語。理解できない。」


「そっか。だから煩いっていったのか。」


 質問を続ける俺の前でしゃがみ込んで答えてくれていたネロが頷いてくれた。知らない言語って、外国語なのかな。それとも、武器独自の言葉的なモノがあるのかな。


「あの子達を出してあげて欲しい。」


「駄目だ。」


「可哀想だよ。俺と同じだもん。」


「琥珀と同じ?」


 ネロが不思議そうに聞き返してきたのに対して、頷いて目を閉じてしまう。思い出すのは、いきなりこの世界に放り出されて、神殿から出れなかった数日間。実際には何日間だったのかは正確には分からない。


 でも、外に出られなくて抜け出る手段も分らなくて、途方に暮れていたあの数日間は今でも鮮明に思い出せる。スツィがいたとはいえ、一人で閉じ込められてたのはきつかったな。


 俺は外に出る事ができて、ネロ達と出会えて今この村で受け入れて貰えてる。この子達はずっとケースの中にいて、呼び掛けても応えて貰えない。きっと一人は淋しいし怖い筈。ネロは言葉が分からないから応えられないけど、俺は言葉が分かるんだよ。だから話してみたい。


「俺も神殿の中から何日も出られなかった。怖かった。」


「アレと琥珀は違う。アレは人を傷つける。モノを壊す。出さない方がいい。」


「そんな事はしないと思う。いい子達だよ。ネロもあの子達の事が好きでしょ?分かってるから。」


「取り敢えずは、琥珀が治るまでは駄目だ。その後はその後で考える。」


「じゃあ、ケースに入れたままでいいから、あの子達をもう一度見せて。」


 今の状態でも、〈封印〉の施されたガラスのケースに入った状態でも、俺に語り掛けてくる事ができるあの子達なら、ケースの中にいても話ができる気がする。


 ちゃんと対面して話がしてみたかった。きっと、会話のできる相手が見つかって凄く嬉しいんだと思う。ずっと淋しかったんだと思う。ネロに何かを訴えかけても理解して貰えなかったんだろうね。


「駄目だ。」


「なんで、見るだけだよ?」


「治ってから考える。」


「意地悪。」


「意地悪ではない。」


「じゃあ、もういい。」


「・・・琥珀。本当に、見るだけだ。手を出すなよ?」


 絶対に折れる気配のないネロにそっぽを向いて、拗ねた風を装ってみたらネロが折れてくれた。渋々ながらも歩み寄ってくれた事が嬉しい。ありがと、と溜息を吐き出しているネロに抱き着いてしまう。


 困った顔で俺の頭を撫でてくれたネロが、武器の保管庫に向かっていった。扉を開けて、2つのガラスのケースを慎重に取り出しているネロを、ソファに座ったままで見守る。ネロがガラスのケースを2つ、俺の前の床に並べて置いてくれた。


 ネロの身長くらいある長い薙刀と、俺の背より少し短い大太刀。二振共、細工も造りも、そもそも武器の種類も違うのに雰囲気はそっくりだ。確かに、二振とも美しく艶めく深紅を基調にして、金色の装飾に彩られて、色がそっくりなのは間違いない。でも、二振の醸し出す雰囲気がそっくりなんだよね。


 薙刀の柄部は光沢のある深い紅色で所々に金色の装飾が施され、白銀色の刃が少し反りかえっていて浮かぶ刃紋が綺麗だ。太刀の柄には赤い糸が複雑に組み込まれた細工がしてあって、ゆったりと反った鞘は薙刀と同じ光沢のある深紅で金の装飾が所々巻き付いている。二振共、とても華やかで美しい姿で目が惹き付けられる。


「君達は悪い事なんてしないよね?」


 ガラスの中で横たわる二振の武器に問い掛けてみた。武器のそれぞれの中心で紅い光が返事をするように煌めくのが見える。そんな事しないよって返事をしてくれてる感じがする。


「やっぱり悪い事なんてしないって言ってるよ?出して上げてもいいと思う。」


 武器達の答えを伝えて訴えかけてみても、ネロは首を横に振ってガラスのケースの傍から動かない。じっと見つめる俺を真正面に捉えたままで、ネロも俺を見つめ返してくる。俺に折れて対面はさせてくれたけど、そこまでで、ケースから出すまではしてくれなさそう。残念。


『この無愛想な猫、嫌い。』『この無表情な猫、嫌い。』


『僕たちを乱暴に使うもん。』『私たちを適当に扱うもん。』


『閉じ込めてないで出せ~。』『出せ~。』


『『琥珀は大好き。』』


 いくら目で訴えてみても、ネロが動いてくれない事にがっかりして、視線を武器に移してみた。武器達を眺め始めたら、賑やかにネロを貶し始める元気な声が聞こえてくる。


 前はただ、俺の名前を悲しそうに呼ぶだけだった武器達の勢いに、ちょっと驚いて、でも可愛く貶す言葉に少しだけ笑ってしまった。


「えっと、出してって言ってるよ?」


 ネロにこの子達の意思を伝えてみた。でも、俺の言葉を黙殺したネロは、ケースを再び保管庫に運び込んでしまう。ネロには意味のある言葉に聞こえないから、あの子達の声は煩いだけにしか聞こえないのかもしれない。


『『琥珀、助けて。』』


「ごめん。少しの間だけ待っててね。ネロは分ってくれるから。もうちょっとだけ待って。」


『『分かった。待ってるね。』』


「また、あとでね。」


 バイバイ、と手を振ると、光が分かったって感じで煌めいて消え去った。丁寧にガラスのケースを仕舞ったネロは保管庫の扉を閉めてしまう。溜息を吐きながら戻ってきたネロが、俺の隣にどかっと座り込んだ。背もたれに寄り掛かって天井を見上げてしまったのネロの顔には疲れが見える。


「ネロはあの子達を乱暴に使ったの?適当に扱った?」


「いや、丁寧に使っていた。いい武器ではあった。ただ、力の加減が難しかった。」


「やっぱり、いい子達だよ?」


「琥珀はあの武器の威力を見てないから、そう言える。」


 上を向いたままでネロが片手で眼を覆って呟いた。君達、一体何をしたの。可愛くて綺麗なのに、暴れたらダメでしょ。疲れの見えるネロの様子と言葉から、思わず心の中であの子達を叱ってしまった。


 ネロの様子から伝わってくるのは、相当やんちゃな武器達だったって事だ。でも、凄くいい子達な感じがするんだけどな。なんでそんなに暴れん坊だったんだろ。何か不満があったのか。まぁ、意思の疎通ができなくてネロに思いが届かなかったからかな。


 少し考え込んでしまったからか、まだ体調が戻ってないからか、ふらっとしてネロの肩に凭れ掛かってしまった。寝るか?とネロが聞いてくれる。力なく頷いてみると、ネロがまた抱っこでベッドまで運んでくれた。めっちゃ楽ちんである。


 ベッドの上に寝かせて貰って、ネロが丁寧にブランケット掛けてくれた。しかも、たっぷり4枚も掛けられてしまった。ぐるぐるにはされてない分だけまだいいけど、非常に重い。ネロが凄く心配してくれるのは分かるんだけど、ちょっとやり過ぎ感が凄い。


「重いから2枚でいいよ。暑いし。寝苦しい。」


「暖かくしろとの事だったが。大丈夫か?」


「2枚でも十分暖かいです。あと、明日起きたら〈浄化〉をお願いしてもいいかな。汗が凄かったから相当汗臭くなってそうな気しかしないんだよ。」


「臭くはない。いい匂い。」


 いい匂いな訳はないよね、めっちゃ汗臭くなってそうだからね。それなのに、言葉を選んでくれるネロは優しいね。凄く短い言葉なんだけど、気持ちが伝わってくる。


「気を使ってくれてありがとう。」


「一人で寝られるか?」


「大丈夫。寂しくなったら呼ぶよ。来てくれるの?」


 俺を覗き込んで心配そうな顔をしているネロに、頷いて質問を返してみた。微かに笑みを浮かべたネロが俺の頭を撫でて頷いてくれる。


「ありがと。お休み。」


 部屋を出て〈照明〉を消してくれたネロを見送って目を閉じる。あんなに長く寝たのに、また眠くなってきた。ウトウトと、微睡んでいると、やっぱり武器の保管庫を開ける音が微かに聞こえた気がした。




夢を見た。ベッドで目を覚ます。今住んでるネロの家の寝室の中。ネロはいない。起き上がってリビングに出るけどいない。

外かなと、入り口から出ようとする。でも、入り口の外に広がっているのはリビングの中だ。後ろを振り返ると寝室がある。

足を踏み出してリビングに入り、もう一度入り口から外に出る。でもやっぱり、出た先はリビングで後ろには寝室がある。


『『琥珀。』』可愛い声に呼ばれて目を向けてみる。リビングの中にいるのは袴を履いた銀髪の少女と赤い着物を着た銀髪の少女。

こちらに向ける深紅の瞳が輝いてとても可愛らしい。袴の西洋人形と着物の日本人形のような全く見た目の違う二人だけど、雰囲気は一緒だ。

なんか何回も会っている感じがするんだけど、気のせいかな。感情の全く浮かばない人形のような美しい少女達に視線が絡めとられる。


ぼんやりと見惚れていると、『『琥珀。』』二人が再度呼びかけてくる。少し不安そうにも見える人形のような二人を安心させたくて、ニッコリ笑いかけてみた。

先程までは無表情だった人形のような二人も俺に応えてぱっと笑顔になってくれた。笑うと少し幼く見える二人に近づく。やっぱり、前にも会ってるような気がする。


『昨日も』『一昨日も』『僕たち』『私たち』『『琥珀に会いにきたよ。』』『琥珀を待ってた。』『琥珀を呼んでた。』

ばらばらに二人が一つの意思を持って語り掛けてくる。「昨日と一昨日?ごめん、覚えてないかも。」   

『『琥珀。』』『私たちを』『僕たちを』『『呼んで。琥珀の中に。』』「呼ぶ?」『『うん、呼んで名前を。』』

「ごめん。君達の名前、分からない。」

『『琥珀が名付けて。』』『僕の』『私の』『『名前。』』「俺が付けるの?でも君達の名前はちゃんとあるでしょ?」

『『うん。大切な名前。』』『でも、琥珀に結んで欲しい。僕たちの名前。』『琥珀に留めて欲しい。私たちの名前。』


話し掛けてくるまで無表情に手を繋いで立っていただけだった二人だ。

それなのに、話し始めたら表情豊かに俺の周りをうろちょろしながら、上目遣いで大きな目を俺に向けて懇願してくる美少女達の願いを断れるだろうか。嫌、できない。


「そっか。俺が付けていいんだよね。変な名前でも怒らない?」『『琥珀がくれる名前、大切にする。』』

「じゃあ、君は胡蝶こちょう。」ふわふわの西洋人形ちゃんの頭を撫でる。『僕は胡蝶。兎霞とがすみ・胡蝶。』

「で、君は白雪しらゆき。」綺麗な真っ直ぐの髪の日本人形ちゃんを撫でる。『私は白雪。烏隠うがくし・白雪。』


二人共、気に入ってくれたのか満面の笑みだ。俺も嬉しくなってくる。「変な名前じゃない?気に入らなかったら、」『『この名前が好き。ありがとう。琥珀。』』

俺の言葉を遮って、嬉しさを全身で表現した二人が俺に勢いよく抱き着いてきた。でも、二人を支える力は俺にはない。後ろに倒れる。




「琥珀。」


 目を開けると心配そうなネロの瞳が俺を覗き込んでいた。のろのろと体を起こしてみる。凄く怠くて、起き上がるのが辛い。心配そうな顔のままでネロが俺の背中を支えて起き上がるのを手伝ってくれた。


「やはり、あの二振は処分する。」


「えっ、ダメだよ。」


 ぽつりと呟いたネロの顔を見つめてしまう。ベッドの脇にしゃがみ込んでいたネロの瞳を見て、本気で言っているのが分かった。慌ててネロの決定を拒否してしまった。


「あれは琥珀が衰弱している要因。排除する。」


「ネロ、お願いだから。あの子達を排除するなんて、絶対ダメ。」


 無表情に戻ってしまったネロが立ち上がって静かに宣言してきた。腕を組んで俺を見下ろしてくるネロの威圧感が凄い。厳しい表情のネロを見上げて懇願してしまう。ネロが向こうに行っちゃったら、ホントにあの子達が処分されそうで、必死にネロのズボンを掴んでいた。


「琥珀。憑りつかれている、のか。族長の言葉を信じるのではなかった。」


 苦しそうに呟きながらも、俺を威圧するように見下ろしてくるネロに手を伸ばしてしまう。ネロの言ってる事は誤解だって伝えたくて一生懸命首を横に振ってみる。


「夢の中にあの子達が出てきた。昨日と一昨日も会いに来てくれたんだって。でも、俺は忘れてて。今日は覚えてる。あの子達はいい子だよ。悪い子じゃない。今俺が体調が悪いのはホントにタイミングのせいなの。気が抜けたタイミングってヤツ。ネロのおかげで安心できる環境になったから。ほっとしてるだけなの。」


 手を伸ばしている俺を、無言で見下ろしながら俺の話を聞いてくれたネロが、屈んで目線を合わせてくれた。俺の話した事を理解してくれたらしい。俺を抱き上げてくれたネロがリビングに移動してソファにそっと座らせてくれた。


「夢の中で会話した。可愛い子達だったよ。胡蝶と白雪。」


 俺が名前を口に出した瞬間に、武器の保管庫が俺の言葉に反応するように震えた。ネロが臨戦態勢を取る。俺を庇うように、前に飛び出たネロの背中で視界が塞がれてしまった。


 平気だからって意味でネロの背中をぽんぽんとしてみたけど、ネロは警戒を緩めてくれない。ピリピリとした空気が部屋の中に充満して、息が苦しくなる。


「ネロ、苦しい。」


 小さく弱々しく呟いてみたら、ネロがばっと振り向いてくれた。心配をしてくれるネロに、ニヤリと笑ってみせる。


「あの子達が喜んだだけだよ。傷つける気はないと思う。」


 ふーっと長く息を吐き出したネロは納得してくれたのか頷いてくれた。もう一度、武器の保管庫を睨んだネロがお茶の用意を始めてくれる。流しで優雅にお茶を淹れてくれるネロをぼんやりと眺めてしまう。


 お茶と薬を手渡されて、取り敢えず飲む。めっちゃ苦い。顔を顰めてしまうと、ネロの表情が少し緩んでくれた。そんなに緊張感溢れる状況でもなかった気がするんだよ。まぁ、ネロも納得してくれて良かった。


「今は何時なの?またお昼くらいかな。」


「そうだな。丁度昼時。」


「お腹、少し空いた。ネロは食べたの?」


「食べていない。」


「じゃあ、お願いしていい?俺はまだ、外なんて出歩けそうもないから。」


「分かった。絶対に、あそこには近付くな。絶対だ。」


 何度も念押しをしながら渋々と外に出て行くネロをニッコリ笑顔で見送ってみる。ネロがいなくなってから、ゆっくりと武器の保管庫に近付いてみた。俺は返事してないもんね。了承してないし、ネロが戻る前にはソファに戻るし、だからちょっとだけ会うくらいはいいよね。


 ばれなければ全く問題ない筈だよね。ちょっと後ろめたさもあったけど、あの子達に会いたくて扉を開けてみた。立て掛けられたケースの中に収められた美しい薙刀と、横に置かれたケースの中で横たわる美しい大太刀。交互に見てから、そっと、両手を伸ばして2つのケースに触れてみる。


「胡蝶、白雪。もう直ぐ出してあげるから待っててね。ネロはちょっと強情なんだよな。困ったね。」


『あの無表情猫むかつく。僕嫌い。』『あの無愛想猫ヤな感じ。私嫌い。』


 溜息交じりに話し掛けたら、同じ意味合いの可愛らしい罵りの言葉を、同時に伝えてくるこの子達にふふっと笑ってしまった。同時にサラウンドで聞こえてくるのに、二人の意思が同時にちゃんと伝わってくるから不思議な感じになる。それぞれで意思を持ってるのに二人で一人な感じにも思える。


「でも、ネロは君達の事を大切に思ってるよ。そんな事は言わないであげて。」


『『琥珀が言うなら努力する。』』


「ありがと。またね。」


『『また、会いに行っていい?つらい?』』


「大丈夫だよ。また会いにきて、俺も会いたい。」


『『ありがとう。琥珀、大好き。』』


「またね、怖い猫さんが怒るから。」


『『ホント、あの猫嫌い。』』


 扉を閉めて、やっぱりいい子達じゃん。と安堵の息を漏らしてしまった。ソファに戻って横にならないながらも、ぐでっと背もたれに寄り掛かって天井を見上げる。ぼんやりしていたら風が動いて、ネロの帰宅を告げてきた。


「悪さをされなかったか?」


「だから、悪い子達じゃないって。大丈夫だよ。」


 帰宅早々、心配の言葉を漏らすネロに苦笑してしまった。ネロは忌々しいモノを見る目付きで武器の保管庫を睨んでいる。ネロ、と呼んでソファの隣をぽんぽんと叩いてみた。睨んでいた視線が俺に移って、無表情に戻ったネロが大人しく俺の隣に移動してきてくれた。


 座ってくれたネロの肩に寄り掛かって、そのまま体を倒して太腿に頭を乗せてみる。視線は自然と俺を覗き込んでいるネロに向かっている。俺の髪をネロが優しく撫でてくれる。ネロの瞳をじっと見ながら聞いてみた。


「ネロはあの子達を嫌いじゃないでしょ?前に仕舞う時に大切なモノを見る眼差しで見てたし。好きな武器を聞いた時もあの子達を見てたような気がした。そんな顔しないで。可哀想だよ。」


「人を、琥珀を傷つけるモノは駄目だ。いい武器でも駄目だ。」


「もう傷つけないって約束してくれたらいいの?」


 俺の質問には答えずに黙り込んでしまったネロを見つめる。俺の髪を撫でながらぼんやりと俺を見下ろしているネロの瞳からは何も読み取れない。ポーカーフェイスが凄いというか、感情を表に出さないのが凄いというか、ホント、ネロは言葉で答えてくれないと何も分からないから困る。


「ネロ?」


 黙り込んだままのネロに、答えを促すように名前を呼んでみた。でも、ネロはゆっくりと俺の髪を撫でるだけだ。

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