48 武器の意思、か
魔法の本か、さっき魔法について聞いたから選んだのかな。そうだね、本でまず知識を得る事もいいかもしれない。この本にしようかな。
「じゃ、これを読んでみようかな。」
魔法について書かれている薄い本を抜き取って、胸に抱えてリビングに戻る。ソファの上にクッションを配置して読書に完璧な環境を整えた上で、うつ伏せになって本を開いた。俺の後から出てきたネロをちらっと見ると、今日は書類仕事はせずにまったりと過ごすみたいだった。
椅子に座ってこっちをぼんやり眺めているネロの様子をちらちらと見ながら、本にも目を落としてみる。でも、ネロが仕事をしないなら、と読書を止める事にした。テーブルに寄ってきた俺を眺めていたネロがお茶を淹れ直してくれる。
「今日はお仕事いいの?」
「急ぎではない。後に回す。」
「そなんだ。あ、鍛錬場で短刀が斧に挟まれてたけど大丈夫だったの?見てて心配になった。」
俺の言葉でネロが腰から短刀を取り出して鞘から抜き出してくれた。金色の紋様は、相変わらず淡く光って凄く綺麗だ。俺にも見せてくれるらしく、俺の隣まで移動してきたネロがしゃがみ込んで、刀身を俺の目線と水平になるように持ち上げてくれる。
ネロが持ち上げてくれた短刀の柄の部分から真っ直ぐに見てみたけど、刀身には歪みが一切ない。横からも刀身を見てみたけど、斧でできたキズらしきものも刃毀れも歪みも何もない。
「結構な勢いと力で挟み込まれてた上に、ネロの体重が全部乗っかったように見えたけど。なんの歪みもないね。強度が凄いのかな。それとも、この紋様の効果なのかな?」
「分からない。琥珀の見立て通りにいい刀である事は確か。」
「今まで使ってた短刀は思い入れがあるんじゃないの?鍛錬場で使ってたもう1本って、いつもネロが装備してた子だよね。あの子も黒い糸と銀色の糸が綺麗だよね。」
「思い入れがある訳ではない。使い易い短刀というだけ。ただ、あの短刀で今日のように斧を受けてたら破壊されていた、多分。」
そう言って大事そうに短刀を鞘に戻したネロは短刀を腰に装備してしまった。ネロの行動を見てると、武器の扱いが異常に丁寧に見える。
「ネロって、武器マニアなの?」
「『まにあ』、とは?」
「ん~、使わない武器も収集とかしてるの?武器の保管庫の中に色々な武器が沢山あったから。」
俺の説明を聞いて理解してくれたのか、ネロが成る程、と頷いてくれる。
「使わない、という武器は置いてはいない。短刀が馴染んでいる、だけ。」
「じゃあ、薙刀とか太刀とか使えるの?見てみたい。」
テンションが上がってきらきらと目を輝かせてしまった、と思われる俺と目を合わせていたネロが小さく息を漏らすのが分かった。表情は相変わらず淡々としてるけど、呆れた溜息かな。でもね、だって、さっきちらっと薙刀とか太刀とか見えたし。なんか見覚えのある武器って見たくなるよね。
「明日も鍛錬場に行くか?屋根が吹き飛んだから、使用できるか分らないが。」
「うん。見てみたい。ってか、薙刀とか、太刀とか、ネロの使ってる短刀とかね、俺の故郷の武器とよく似てて懐かしいんだよね。さっき、ネロの武器の保管庫で見てテンションがヤバかった。薙刀があるって、太刀もあるじゃんってなった。まぁ、俺は使えないんだけどね。」
「あの武器達は、ほぼ東の大陸から持ち帰った。手にしっくりとくる握り具合と強度、鋭さを兼ね備えたいい武器達。」
「東の大陸、オウリュウ?」
軽く頷いてくれたネロに、おおっとなってしまった。オウリュウって米が主食って言ってたよな。地球でいうと東洋的なトコなのかな。確かに大陸の名前の音の響きもそれっぽい。めっちゃ行ってみたい。某江戸村みたいな街並みだったりするかもしれないね。楽しみだな。
「ってか、ネロは東の大陸って行った事があるの?」
「若い頃に。」
「今も十分若いでしょ?じゃあ、北の大陸は?」
「行った。寒かった。」
ネロが少し眉を寄せてしまったその表情が面白くてふふっと笑ってしまう。俺が笑ったのを見ていたネロが眉をもとに戻して頬を緩めてくれた。いつもの無表情とは違う、少しだけ優しい顔になったね。
「寒いのは苦手?」
「少し。」
「暑いのは?」
「平気。」
うちの雪丸は寒いのはとっても苦手だったけど、暑いのも苦手だったな。寒いと俺の膝の上でぷるぷると震えて、よく毛布を掛けてあげたのを覚えている。暑い時はスライムの如く廊下に伸びていて液体かよって突っ込んだこともあったっけ。懐かしいな。元気かな。
「琥珀?」
ネロに呼ばれて、視線をネロに向けてみた。心配そうで少し怪訝な表情のネロに、何でもないって首を振ってみる。
「ごめ、少し昔の事を思い出してた。いつか東の大陸に行ってみたいな。話を聞いた限りでは、何か、俺の故郷と似てる環境な気がする。あっ、そうだ。武器見せて。で、明日見せてくれるのを選んで。」
「分かった。」
俺の横にしゃがみこんだままだったネロが立ち上がって武器の保管庫へ向かった。俺も後から続いて、開けた保管庫の中をを覗き込んでみる。さっきちらっと見ただけでも沢山の武器があったけど、改めてじっくり見てもやっぱり多い。きっちりとガラスのケースに収納されているモノと普通に置かれているモノとある。
「この子はなんでケースに入ってるの?」
ガラスのケースに入っている薙刀の1本を指差してみた。艶のある深い紅い色に金色の細工が施された柄部と白銀色の刀身が美しい薙刀だ。
「これは。少し切れ味が良すぎる。普通に保管すると保管場所が破壊される。」
「またまた、ご冗談を。」
「本当だ。」
そう言ってガラスケースの中の薙刀を取り出したネロは、武器の保管庫に少し隙間を作って薙刀を立てかけた。柄部を支える突起に立て掛けているから、上部に位置する刃は保管庫に触れていない。筈なのに、スッと刃の背後に切れ込みが入った。
そもそもの話、峰側がその切れ込みが入った壁なのに何で切れるんだよと思ってしまう。切れ込みは少しずつ大きくなって裂け目になっていく。ホラーですかね。呪いの薙刀って事なんでしょうか。怯えた目でネロを見ると、苦笑したネロが薙刀をガラスのケースに収めてしまった。
さっきまで薙刀の刀身が置かれた部分には、鉈で抉ったような切れ込みがくっきりと残っている。現象は怖かったけど、ガラスのケースに収まっている武器自体は全然怖く感じない。怖くないどころか、綺麗で見入っちゃう。装飾も目を瞠る程だけど、雰囲気が凄く綺麗な武器だね。
「そのガラスに入れといたら大丈夫なの?」
「〈封印〉が施されたケース。これに入れておけば効果が外には及ばない。」
「〈封印〉って事は、その子の何かの紋様の効果を封印してるって事なのかな。」
「多分。ただ、刀身には紋様が見られない。柄部も目視できる場所にはない。可能性としては、柄部に食い込んでいる刀身の根元か柄部の内側に強力な紋様が存在している可能性がある、という事だ。もしくは、未知の呪い。」
「こわ。この世界には呪いのアイテムなんて存在してるの?」
「存在している。」
「ネロが持ってる武器の中にも呪いのアイテムなんてあったりするの?」
「ある。」
「まじでか。」
怖さに震えてしまうと、ネロがまた苦笑して俺の頭を撫でてくれた。その後で真剣に武器を選び始めたネロは楽しそうに見える。まぁ、無表情で淡々としてるんだけどね。でも、雰囲気はめっちゃ楽しそう。
「呪いの武器は使わないでね。」
「薙刀と太刀でいいのか?」
呪いの武器は嫌だよって念を押してみる。ネロは頷いてくれた。頷いた後で保管庫の中を眺めたネロが俺に視線を向けて聞いてくれる。
「ここにある全種類の武器を使ってる所を見てみたくなる。これだけ武器があると壮観だよね。でも、取り敢えず薙刀は絶対見たい。あと太刀も。」
「太刀にも普通の太刀と大太刀とある。どちらがいい。」
「種類があるのを知らなかった。」
「小太刀も存在はしている。が、俺は持っていない。使用感でいうと小太刀なら短刀の方が使い勝手がいい。俺には合わなかった。」
「太刀と大太刀だったら、どっちが扱い易いの?」
「どちらも同じようなもの。」
「じゃあ、おススメでお願いします。」
「薙刀と太刀にするか。」
「太刀の方がいいの?」
「薙刀は大振り、太刀はそれに比べて小振り。対比がある方が見ていて楽しめる、筈。」
「成る程、そう言われればそうだね。それだったら太刀と大太刀の違いも見たくなってくるね。」
「分かった。久しぶりに振るう事ができる。武器も喜ぶ。」
「ネロはあの薙刀も使ってあげたい?」
頬を緩めてくれるネロに質問しながら、さっきガラスのケースに入れられてしまった紅い柄の薙刀を指差してみた。仕舞う時にネロの表情が一瞬、凄く懐かしそうになって薙刀を見たんだよね。気のせいだったかな?
それに、さっきはいきなり触れてもいない所に切れ込みが入るのを見て、一瞬ぞっとしたのは事実だよ。でもね、危ない武器という割にはなんの怖さも感じない。寧ろ美しさが際立っている。心が惹かれる美しい武器だと思う。
「あれは駄目だ。」
「そっか。」
俺の質問で少し眉を寄せて表情を引き締めてしまったネロに頷く。ネロは武器を吟味し出しちゃったから、暇になってしまった。薙刀の抉ったトコロでも確認してみようかなっと、指を伸ばして抉られた部分を撫でてみる。
その間にも、ネロは武器の保管庫の奥の方から沢山の武器を引っ張り出して、床の上に広げていた。ちらっと、床の上を見て驚いてしまう。ってか、見える位置に並んでたのだけじゃないのかよ。そんなに仕舞われてたとか驚きだよ。
「ネロって武器マニア?」
思わずまた同じ質問をしてしまった。いや、否定しても確実にそうでしょ。手斧とか、大きな斧とか、大剣もあるし、大鎌というかサイズみたいなのもある。片手剣や短剣も勿論ある。片手武器も両手武器も、遠隔武器も全種類あるんじゃないかってラインナップだ。
槍も何故か種類が豊富に用意されている。普通に細い棒の先に金属の刃がついている物、刃の部分が十字になっていたり鎌みたいになっている物、ランスのように金属の円錐上で刃のついていない物まで多種多様に揃えてある。
「これは全部、使った事がある子達で正しいの?」
俺の質問に頷きながら武器を眺めているネロに、これも?とランスを指差してみた。う、っと言葉に詰まったネロの姿を見て理解する。ですよね。明らかにネロっぽくない。いや、分かんないけどね。めっちゃ万能型にも見えない事もないけど、ネロはこういうのは使わなそう。スピード重視型というか、そんな感じに見える。
「薙刀と太刀と大太刀、あとランス。」
ちょっと意地悪の虫が顔を出して、見せて貰う武器種にランスを追加してみた。武器から目を離したネロが俺を見る。目が合って、一瞬動きを止めた後で目を少し細めたネロが頷いてくれた。ほぅ、いい根性だ。使わない武器も使ってくれるのか。楽しみである。俺も同じように目を細めてネロに頷き返しておく。
俺が指差した、白塗りで重厚感があって所々綺麗な金色の紋様が入っているランスをネロがテーブルの上に運んでいった。残りの武器は、一応全部を確認しながら仕舞っていくらしい。やっぱり、ネロは武器の扱い方が凄く丁寧だ。結構な時間をかけて、床に取り出した武器達を片付け終わった。
それで終わりではなく、次にネロは太刀と大太刀を床に並べ始める。総勢十数本の刀の数々、長さは様々だけど、どれも綺麗な柄と鞘で、鍔も凝った装飾のモノが多い。でも、ガラスのケースに収められていた大きな太刀は選択肢外らしい。
ちらっと見えたけど、柄に紅い糸が綺麗に装飾模様で巻かれている綺麗な太刀だった。刀の柄巻とは少し雰囲気は違うけど、それでも和風な雰囲気が満載で凄く綺麗だった。鞘も光沢のある深紅で所々、金色の金属で装飾されている綺麗な刀だった。どことなく、さっきの薙刀に雰囲気が似てる感じがした。
「あの赤い綺麗な太刀は?」
ガラスケースに入った太刀を指差してみると、ネロが首を横に振ってしまった。一番目を引いたのはそのケースの中の紅い太刀だったけど、ネロが選ばないんじゃしょうがないよね。でも、一度じっくり見させて欲しいと思ってしまう綺麗な子だった。
床に置かれた太刀の群れを眺める。床に並べられている太刀の中で、大人しい感じの一振が目に止まった。白木の鞘に白木の柄で鍔のないシンプルな刀だ。色々な色の柄巻や金属で装飾された他の華美な太刀と違って、何か物静かな感じがして目が惹かれる。
「この刀は?」
思わずネロが選んでいる横から口を出してしまった。白木の一振に手を伸ばして鞘を掴んだネロが正座をしたままで、反対の手で柄を持ち水平に刃を引き出していく。刀身が露わになるに従って、空気が凍り付くような緊張感が包み込んだ。
黒銀色の刃は少し反り返っていて、美しい波模様の刃紋が浮き出ている。他の太刀のように、鍔はついていないとてもシンプルな美しさがあった。美術館とかのガラスのケースの中で、照明を当てられて飾られてそうな感じの綺麗で凛とした刀だ。
「いい太刀。でも、実用品ではない。動きを見るくらいなら問題無い、かな。琥珀が気に入ったのなら、鞘と柄、鍔も用意するか。」
太刀の刃を水平にしたり立てたりして確認しながらネロがその刀で納得してくれたらしい。
「鞘と柄ってこの刀にもあるじゃん。これじゃ駄目なの?」
「白木で拵えてあるのは保管する為。実用となると、少し使い勝手が悪い。」
「へー、そうなんだ。別にその子じゃなくてもいいよ。ネロがよく使ってたのとかないの?」
「これで問題無い。」
「それは、太刀なのかな、それとも大太刀になるの?ごめん、良く分ってなかった。」
「これは太刀。」
「じゃあ、あのガラスに入ってる赤い子は大太刀?」
俺の指差した先を見て頷いてくれたネロだったけど、何故か顔が少し引き締まって眼光が鋭くなったように見える。あ、やっぱダメなんだね。こっそり、さり気なさを装ってもう一回聞いてみたけど駄目か。
「あれは、少し問題がある。使いたくない。」
「そっか、じゃあ。大太刀と薙刀はまた今度でいい。なんか、あの赤い子コンビが凄く気になるんだよね。でも呪いの武器だったらしかたないか。それより、ネロのランスが超楽しみ。」
「赤い子か。」
小さく呟いて溜息を吐くネロの少し引き締まっていた表情が和らいで、普通に無表情に戻った。白木の太刀はテーブルの上のランスの隣に置かれた。ネロは引き出した刀を一振ずつ鞘から出して確認をしていく。確認の終わった刀は丁寧に仕舞われていく。
数が数なだけに、ネロが片付けていく作業は凄く時間がかかっていた。でも、武器を扱うネロの手元を見ているだけでも楽しかった。最後の一振も丁寧に仕舞ったネロが武器の保管庫を閉じた。
「ホント、色々な武器があるんだね。俺も何か扱えたらいいのに。」
少し拗ねたような口調で呟きながらテーブルに戻って椅子に腰を下ろす。テーブルの上のランスと太刀を武器の保管庫の横の隙間に移動させて立て掛けたネロが流しに移動していった。呟く声が聞こえたのか、お茶を淹れ直してくれるネロがくすっと笑ってくれた。
戻ってきたネロがお茶と一緒にタルトのお皿も俺の前に置いてくれた。お礼の言葉を伝えて、お茶で口を潤す。いい香りのお茶でほっこりした後は、メインのスイーツタイムですよ。
タルトの黄色い果実と下のしっとりとした生地を合わせてフォークで少し切り取って口に運ぶ。甘酸っぱい果実の風味と甘い生地が口の中で混ざり合って、笑顔になるくらい美味しい。
ちらっとネロを見ると首を横に振られてしまった。いりません、って強い意志を感じる。お茶を飲みながら俺の食べる様子を見守ってくれるネロに、ニコっとしてゆっくりと堪能させて貰う事にした。
「ご馳走様でした。」
手を合わせると、足を組んでお茶を飲みながら見守ってくれていたネロがスッと立ち上がった。俺のお皿を回収して〈浄化〉をして、流しの傍に置いておくらしい。ネロは凄く綺麗好きっぽい。
食べ終わったら直ぐに片付けてくれるし、部屋の中も全く散らかっていない。そもそも部屋の中には物がほぼないし、俺が置きっぱなしにしていた本とか服もいつの間にか片付けられている。
完全なる美貌と、無敵の強さ、優しくてマメな性格、全く隙のない人って存在してるんだね。ネロさんはマジで凄いですね。片付け終わって向かいに戻ってきたネロを、頬杖をついたまま眺めてしまった。ネロも俺を見ている。見つめた先のネロの目が優し気に輝いて少し細められた。
「結局のところ、ネロの得意武器は短刀なの?」
じっと眺める俺の視線を、正面から受けて見つめ返してくるネロは何も言わない。見つめ合っているのが少し恥ずかしくなって話し掛けてみた。
「得意な武器か。」
一言呟いたネロが少し考え込んでしまった。少しじゃなくて、長かった。
「得意な物はない。何でも使う。武器は無くても左程問題は無い。あるから使う、感じ。」
長い沈黙の後でネロが口を開いた。何でも使うってのは分かるけど、あるから使うって凄いな。まぁ、大人数相手の鍛錬を見た後だと、その発言も説得力がある、気がする。
「まじでか。確かに体術が凄かったもんね。じゃあ、好きな武器はどれなの?」
「好みの武器か。」
ふっと小さく息を吐き出したネロが視線を向けた先に武器の保管庫があった。
「あの中に入ってるんだ。」
俺もネロの視線を追って武器の保管庫に目を向けてみた。
「使いこなせない武器は少し気になる、だけ。好みの武器も特にない。」
「ほう。ネロにも扱えない武器があるんだ。武器にも意思があるとして、ネロを拒むって中々のモノですな。」
「武器の意思、か。」
「仮にの話だよ。俺の故郷には付喪神って考え方があるんだ。長く大事に道具を使うと、道具も魂を持つんだって。いい話だよね。まぁ、大事にしなくても酷い扱いをすると化けて出るって事もあるらしいけどね。大事にしてくれた人は助けてくれるし、反対の人にはそれ相応の色々が降りかかってくるらしいよ。」
「琥珀の故郷はいい国だな。モノを大切にするという事か。」
「現代の人達はあんまり信じてないかもしれない。モノを大事にしない人も沢山いるからね。あとね、動物の恩返し的な話もあるんだよ。俺もいつかネロに恩返ししなきゃね。アルさんにもね。」
「そうか。待っている。」
「うん。」
目を細めて微かに笑顔を浮かべてくれたネロに、俺も笑顔で頷く。本当に、いつか恩返しできたらいいね。
「そろそろ寝る時間か?明日に響くだろう?」
「そだね。寝ようかな。」
〈浄化〉と〈乾燥〉を俺にしてくれるネロにお礼を言って、寝室に入る。タンスの中から楽な服を取り出してささっと着替えてベッドに潜り込んだ。ネロはまだ寝ないらしい。眠りに落ちながら、武器の保管庫を開ける音が微かに聞こえたような気がした。




