4 マジで有能すぎる
「そうと決まれば早速進みますか。」
階段を下り、暗闇の1歩手前で一回短く深呼吸をして、段差を突破して壁に右手を当てて慎重に進むことにした。暗闇の奥に何かの息遣いを感じる。確実に『何か』はいる!そう警戒しながら一歩また一歩と慎重に歩みを進めた俺の右手に鋭い痛みが。あー、やっちまった。
(死んでしまうとは情けない。)
そんな声と共に眼を開けると、其処は石壁の朽ちかけた神殿のような建物の中だった。俺の目前には石壁と同じく朽ちかけた躯が一つ。
「・・・ですよねー。今回は何をくれるのかな?」
(デスボーナスの獲得:魔法〈照明〉獲得しますか?)
「説明をお願いします。」
(魔法〈照明〉:光属性の魔法。サポート魔法の一種。攻撃力なし。光を操り自分の周囲を明るく照らす。消費MPは1。効果持続時間の最中にもう一度念じる事で解除が可能。又、重ね掛けする事で時間の延長が可能。単純なMP消費型魔法のため魔法使用によるマイナス補正はなし。ランクアップで明るく照らせる範囲が広がり光量の調節が可能になる、効果時間も延長される。ランクアップにはデスボーナスが必要である。尚、デスボーナスでのランクアップはランダムであるため再度獲得できるかは死亡後にしか判明しない。)
ちゃんと慎重に最後まで聞いたぞっと。そして確実に使える魔法だよね、獲得以外の選択肢はないよね?間違ってない筈。いや、間違っててもマイナスにはならない筈。絶対大丈夫、だよね?マジ、不安になってくるんだけど。俺、こんな優柔不断だったっけ、ヤバいな。俺のペースが乱されてる、気がする。迷うな、琥珀。
「説明ありがとうございます。獲得で。」
(了解しました。)
淡い桜色の光に包まれて、何となく魔法が使えるように感じた。多分さっきの魔法と同じで集中して思い浮かべればいいんだよな?スツィに聞くまでもなく頭の上に小さい太陽をイメージしてみると、頭上1メートルくらいの所に小さな光の玉が出現してふよふよと浮かんでいるのが確認できる。
神殿上部の窓から差し込む光で十分明るく感じていたのだが、この頭上の光の玉の届く範囲、恐らく自分を中心にして5メートル位の範囲は床に積もっている埃の一つ一つの細部が見える程に明るくなった。おお、魔法だ、魔法を初めて使ったよ。超ファンタジーじゃん。テンション上がるわ。
「やっぱ、有能魔法くれるとは流石スツィさんだね。えらい。マジで有能すぎる!!」
見ようによっては只の独り言を呟いて階段下に向かい、ふと気になって自分のステータスを確認してみた。
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一神 琥珀
HP:1/1 MP:0/1 DC:4/∞
力:1 体力:1 素早さ:1 知力:1
器用:1 精神力:10 魅力:10
オートスキル:翻訳R.1
スキル:ステータス可視化R.1
魔法:水属性〈浄化〉R.1
光属性〈照明〉R.1
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4回死んでて、スキル魔法がそれぞれ2種類ずつ。MPは上限1で〈照明〉使ったから今は0っと。
「スツィさん、このMPの回復手段ってありますのかぃ?」
(MPの回復手段:自然に回復する値としては時間経過で一定量ずつ回復していく。一定量とはMP上限の1割。装備品の中には自然回復の効果を底上げする物が存在する。装備品事態に回復効果が付与されている物も存在している。アイテム使用で大きく回復する手段もある。アイテムの品質や種類によって回復量は異なる。死亡後、復活時には上限まで回復する。)
「ついでに、〈照明〉の効果時間は?」
(魔法〈照明〉の効果時間:現在の琥珀様の魔法〈照明〉のランク及びこの環境下では、およそ1時間程効果が持続し、その後緩やかに効果が減少していくと思われます。一般的に魔法〈照明〉の効果時間は周りの環境にも左右されるため揺れ幅が比較的大きいのが特徴です。)
成る程、固定値で効果時間があるのではないのか。まぁ、光の玉が暗くなってきたら帰ってくればいいか。では、いざ出陣!暗闇も照らしてしまえば、魔物にさえ注意すれば脱出なんて、簡単簡単、楽勝じゃん!・・・そう思っていた時もありました。