254 熱い
レオさんが武器を動かす様子を眺めていて気が付いてしまった。俺の足側にはスゴク距離を取って武器を置いている。足で悪戯をするとでも思われているのだろうか。
「レオさんは〈鑑定眼〉があるの?」
「あるよ。」
「どこで覚えたの?」
武器をひょいひょいと移動させるレオさんを眺めながら、ふと気になった質問を投げかけてみる。レオさんがあっさりと肯定してきたから、更に質問を重ねてみた。
「族長の専属の護衛っていう職業上、凄い素材とか、凄い装備品見る機会が多くなる。特にこの村に住んでると、ニルを筆頭に凄い職人が多いから、必然的に超絶な装備や紋を見る機会も増える。」
武器の移動を終わらせて、レオさんが目を合わせてゆっくりと話し始めた。レオさんが一旦言葉を止めたのが分かって、コクっと頷く。
「それに、ガキの頃からユリアの親父のカイさんの工房によく遊びに行ってたんだよね。ユリアのお守りもあったし、俺の親が不在がちってのもあって、カイさんが親代わりだったから。だから、カイさんの作る武器もガキの頃からよく見てた。」
レオさんは愛おしそうに目を細めて頬にキスをしてくれて、続きを話してくれる。懐かしそうなレオさんの表情は見ていて温かい気持ちになる。穏やかな少し低い声は耳に心地いい。
思い出を懐かしんでいるレオさんの雰囲気は柔らかくて温かい。レオさんの過去に少しだけ触れる事ができて嬉しい。ユリアさんとレオさんは幼馴染。カイさんの工房で、幼いユリアさんとレオさんが戯れている光景。鮮明に幼い二人の情景が思い浮かんで微笑ましい。
「〈鑑定眼〉っていうのは、オートスキルなんだけど。いいモノとか凄いモノに触れる機会が多いと、いつの間にか身につく事もあるらしい。という事で、いつの間にか身についてたって訳ですよ。」
思い出話をしたトコロで、レオさんは〈鑑定眼〉の獲得に至った経緯を説明してくれる。スツィ曰くの、閃きパターンで習得したらしいって事は理解できた。そして、単純な疑問が湧いてきてしまう。
「身についたら覚えたって分かるの?」
「ん~。今この瞬間に獲得したってのは分からない。気が付いたら、集中するとモノの性能が大雑把に分かるようになってた。」
湧いてきた疑問をそのまま口に出してみると、レオさんが少し考えた風の顔になっちゃった。目を合わせたままで言葉を選んでいたっぽいけど、レオさんっぽい適当な返答が返ってきた。
でも、分かり易い言い回しだった。スキルを獲得する時には何のお知らせもない、と。スツィの説明だと、Rが上る時にも、表示も効果音も案内もないって事だった。要するに、〈ステータス可視化〉がない人は自分の所持スキルやRが分からないって事なんだと思う。
「なんでスキルの名前が〈鑑定眼〉って分かったの?」
「護衛になる時に見て貰ったから。見て貰う前は、知識の中で知っているスキルと照らし合わせて、多分これを持ってるくらいの適当な感じだったかな。」
更に質問を付け加えたら、レオさんが面白そうに目を細めちゃった。質問攻めにしている時のネロと同じ顔だ。子供のアレはナニ攻撃を楽しんでくれている感じ。俺の頭をぽふぽふっと撫でて、レオさんが答えてくれた。次に続くであろう質問を想定して、見て貰う前の事も教えてくれる感じがいい。
質問タイムは終わって、武器の見学の時間がやってきました。という事で、先手を取ってオネダリ攻撃をする事にした。レオさんの弱点を熟知している俺にとって、超甘えモードを発動すればレオさんを陥落させる事など容易い筈。
「ねぇ、レオさん。ちょっとだけお願いがあるんだけど、聞いてくれるかな。あのね、ちょっとだけ武器を触ってみたいけど、ダメかな。今ならレオさんもいるし、平気でしょ?ね、お願い。」
「そんな可愛い顔でオネダリとか、卑怯な真似を。こんなの教えたヤツは誰だよ。」
「何にも知らない俺をそういう道に引き摺り込んだのは、ネロとレオさんなんだよ。諦めようね。」
レオさんの首に腕を絡めながら、上目遣いで超甘えモードでお願いをしてみる。レオさんが動揺した感じで止まった後に、軽く文句を言ってきた。それを受け流して、ニッコリ笑顔で自業自得だよって教えてあげる。
「分かった。でも、お前はグリップを持つだけで一切動くな。俺もその上から握る。あとは鞘も触るな、俺が外す。絶対に動くな。約束できるか?」
「一切動かない、握って見るだけ。」
長い沈黙と熟考の後で、レオさんが制約を付けた上で許可をしてくれた。そこまで心配する事ないのに、って思ったけど、不承不承受け入れるしかない。不満な俺の態度が気になるのか、レオさんが真剣な顔でじーっと見つめてきたから、不満顔はやめてニッコリ笑顔で頷いてみる。
レオさんが座面から一本の短剣を選んで掴んだのが見えた。鍔と柄頭を見る限りは金色の短剣だ。グリップと鞘は白い革で、鞘には金色の金属と赤い宝石で装飾が施されている。ついでに柄頭にも赤い宝石が煌めいている。キラキラと光り輝くとても綺麗な短剣だ。
「じゃあ、はい。ここを握ってね。重くない?」
「重くない。レオさんが鞘と柄頭を支えてるんだから、重さを感じる訳ないでしょ。」
レオさんが指示を出しながら短剣を差し出してくれた。レオさんの指示通りにグリップを握った瞬間に心配そうな声が聞こえて、思わず突っ込んでしまう。レオさんは心配症が過ぎるらしい。グリップを握るだけで何故重さを感じる要素があるというのか。
「大人しくしなさい。危ないでしょ。」
「危なくない、口は動かすなって言われてないからイイんです。体は動かしてないから約束は破ってないもん。」
むぅっとなったら、レオさんがパパさん口調で注意をしてきた。でもね、全く危なくないから。今の状況はただ、レオさんが差し出す短剣のグリップを握っているだけ。つい言い返してしまったら、レオさんが小さく溜息を吐いちゃった。駄々っ子に手を焼いている困ったパパさんの図である。
「分かったから、静かにしなさい。じゃぁ、上から握るよ?」
「レオさんは熱いからゆっくり優しくしてね。強くしたらイヤだよ?」
どうやら、レオさんは駄々っ子の文句はサラッと流す事にしたらしい。レオさんが真面目な口調で話しながら、鞘を持っていた手をスライドして、俺の手に重ねてくる。レオさんの手は熱いから、一応、お願いをしてみると、レオさんが動きを止めちゃった。
「お前は相変わらず、言い回しがヤバい。」
視線を感じて短剣を見ていた目をレオさんに移すと、レオさんがボソッと呟いてきた。何がヤバいのって小首を傾げて疑問を届けてみたら、レオさんがじーっと見つめ返してくる。探るような視線のせいで居心地が悪い。
「これでいい?熱くない?」
「熱い。」
少しの間、目を合わせていたけど、レオさんがフイっと短剣に目を向けちゃった。そして、大きな手のひらが俺の手の上を完全に覆ったのが見える。問い掛けてくるレオさんに即行で答えてみたら、レオさんがこっちに目を向けた。今回はジト目気味だ。
「手を浮かせて鍔とグリップを触る程度で、お前の手にはほぼ触れてないんだけど。熱いの?」
低い声でゆっくりと、現状を説明してくれるレオさんからそっと目を逸らしてしまう。どうやら、引っ掛け問題だったらしい。熱い事を理由に、レオさんに手を離して貰って、一人で短剣を握ろう計画が失敗しちゃった。
無言で短剣を見つめていたら、レオさんが髪にキスをしてくれた。どうやら子供の我儘を許してくれる寛大なパパさんになってくれたらしい。多分だけど、レオさんはあの手この手で俺が一人で持ちたいって言い出すのを予測して、行動しているっぽい。
「鞘を抜くからな。絶対動くな。ピクリとも動くな。口も動かすな。」
「レオさんは卑猥ですね。イヤらしい。」
柄頭に添えていた手を鞘に持ち替えて抜き取る前に、レオさんが再度注意を言い渡してきた。顔を上げてレオさんをじーっと見つめてみる。レオさんが真剣な眼差しで見つめ返してくれたから、こそっと感想を言ってみた。
「全く卑猥な事は言ってないだろ、言って欲しいのか?あ゛?」
「柄が悪くなって超怖い。そんな怖い顔をしたらダメなんだよ?」
真剣でカッコ良かったのに、レオさんの眉が寄っちゃった。目力が凄い状態で、レオさんが凄んでくる。メッチャ怖い。ちょっとしたお茶目で場を和まそうと思っただけなのに、そんな反応で悲しい。すすっと目を逸らしながら、甘えた声で精一杯文句を言ってみた。
「なんで焦らすの、お願い、早くして。もう待ちきれないの。」
「その言い回しでその表情。ワザとなのか?」
「何の事?早くして。」
レオさんの強い視線を感じて、滑った感があるから恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。短剣に目を向けたままで、小さな声で早く鞘を抜いて見せてってお願いしてみた。即行でレオさんが突っ込んできたから、レオさんに顔を向けて疑問を返しちゃう。
レオさんは諦めた感じで、短剣に視線を移して鞘をそっと外してくれた。鞘に納まっていると金色と白の短剣だったけど、ブレードは白銀色。鞘ありでもなしでも、派手で綺麗な短剣、って感じだ。ただ、綺麗過ぎてレオさんには似合わなそう。
「レオさん。ちょっとでいいから手を離して。一人で持ってみたい。」
「駄目。口を開いたから終了。」
やっぱり一人で持ってみたい。そんな欲求から、甘えた声でお願いしてみる。即行でレオさんは却下した上に、鞘を被せて、短剣を俺の手からするっと抜き取っちゃった。反応できないくらいに驚く程の早業だった。ソファに短剣を置いた後で、こっちに目を向けたレオさんを睨んじゃう。
「酷い。一回目の違反は警告ってのが定石でしょ。一瞬で終わっちゃったとか、悲しい。」
「そうだね、次からはそうするね。可哀想な琥珀、ほら。ギュってしてあげるからおいで?」
大袈裟に悲しいフリをしてみたら、レオさんまで大袈裟に慰めるフリをしてくる。自分でやっておいてこの態度である。むっと眉を寄せかけて、思いついちゃった。
レオさんの広げた腕に自分から入り込んでぎゅっと抱き着いてみる。そうしたら、レオさんが戸惑った感じでふわっと抱き締め返してくれた。レオさんの胸元にすりすりして甘えた感じを表現した後で、ちょっと体を離す。
レオさんをじっと見つめて、目をウルウルさせてみた。レオさんが不審そうに片眉を上げたトコロで、ニッコリ可愛い笑顔を送ってみる。レオさんがぽふぽふって俺の頭を撫でながら、小さく溜息を吐いちゃった。
「成る程。理解できた。お前はホント弱点を的確に突くようになったな。誰に似てしまったのか。」
「次は短剣をちょっと動かしてみたい。レオさんが上から握ったままでいいから、お願い。」
「じゃあ、俺が握って動かすから、琥珀は両手で俺の手を掴んで動きを感じるってのはどう?」
お願いの前振り攻撃が無事届いたみたいで嬉しいです。嘆くレオさんの頬に軽くキスをした後で、要望を伝えてみる。レオさんはある程度予測していたらしく、直ぐに譲歩案を突き付けてきた。
「できれば自分で握って動かしてみたい。」
「琥珀の手を俺が両手で持っていい?包み込む形になるから、熱いかもだけど。」
「うん、いいよ。交渉成立?」
でも、レオさんの案を突っぱねて、あくまで自分で握りたいって主張を続けてみる。レオさんは真剣な表情で黙り込んじゃった。少しして、慎重に言葉を出してきたレオさんに抱き着いて、二つ返事で了承しちゃう。
「そうだな、交渉成立。って事で、この体勢ではお前の補助ができないから、体勢の変更。背中を俺に預けなさい。」
「それは、卑猥さを感じないんだけど深読み系の何かなの?」
レオさんはキュッと抱き締めてくれて、優しい声で指示を出してきた。体を離して、じーっとレオさんを見つめてみたら、レオさんが小首を傾げて疑問を伝えてくる。恐る恐る、何かの間違いではって思いを乗せて聞き返してみた。
「お前はいつも面白い事を言うね。卑猥さしかない言い方に変えてやろうか?」
「レオさんが卑猥じゃなかったから気になったの。ちょっとした冗談なのに、そんな怖い顔しちゃイヤ。じゃぁ、足を組んでるのを下ろして、動きにくい。」
レオさんがスッと目を細めたのが見える。そして、低くて迫力のある声で威圧してきた。冷めた眼差しと冷たい口調にゾクッとなって、慌てて責任転嫁をしつつ、レオさんの組んだ足にも文句を言ってみちゃう。
レオさんが片腕で抱き寄せてきた。そして、逃げられない体勢で俺の耳にキスをしながら、ゆっくりと組んだ足を下ろしてくれる。一瞬上った脚の角度のせいで俺の体が傾いて、耳へのキスの角度も変わったらしい。
ぞくっとするのと一緒に変な刺激に襲われて、ふっと息を漏らしてしまった。慌てて口を押さえつつ、耳も手でガードしちゃう。言わざる聞かざる状態になったら、レオさんが無言でひょいっと俺を持ち上げて、お膝抱っこの体勢を変えてくれた。
背中にレオさんがいる座椅子状態で、レオさんがまた足を組んじゃった。必然的に体が傾いてレオさん背中から寄り掛かっちゃう。らくちんな姿勢ではあるけど、密着度は高い。背中全体でレオさんの温度を感じる体勢。
レオさんが俺の首にキスをしながら、座面の武器に手を伸ばしたのが見える。選ばれたのは銀色の短剣。グリップが水色の透明なガラスみたいなのに覆われていて綺麗。銀色の金属の鞘には、青系の宝石が散りばめられていて豪華。
綺麗で豪華だけど、この短剣も芸術品みたいでレオさんには似合わないかもしれない。レオさんはあの黒い短剣が似合う気がする。というか、ネロっぽいあの短剣をレオさんの傍に置いて欲しい。そう思っちゃう。
「はい、気を付けて持ってね。」
ちょっとだけ考え事をしていたら、レオさんが声と一緒に短剣を俺の前に持ってきてくれた。コクっと頷いて、左手でグリップを握ってみる。つるっとした感触でヒンヤリして握り心地はいい。レオさんが左手を俺の手の上に重ねてきた。さっきと違って、熱い体温が手に伝わってくる密着した握り方だ。
レオさんが右手で鞘をゆっくりと抜き取ってくれた。ブレードは鈍銀色で青い紋様が刻まれている。鞘を脱いだら地味な子になった感がある。地味というか、派手さがなりを潜めて凛とした綺麗な子になった感じ。これくらいの大人しさなら、レオさんが使っていても違和感がないのかもしれない。
ブレードを覗き込んでいる間に、レオさんが右手も俺の手に重ねてきた。二重でロックされたおかげで、短剣を握っているけどピクリとも動かせない状況だ。
というか、背中からレオさんの両腕が俺の前に回されている事に気が付いてしまった。要するに、軽く抱き締められている状態ともいえる。がっちり抱き締められているの訳でもないのに、何故かドキドキしてしまうのはなんでなのか。武器を持っている高揚感なのかもしれない。きっとそう。
「まずは俺が動くから、動きを感じてね。」
耳元でレオさんが甘い声で囁いてきた。何故そんな声になった、と思いつつも、素直に頷く。その直後に、握った短剣が自動で動き出した。ゆっくりとした軌道で短剣が動くのを眺める。
「痛くない?最初だからゆっくり動いてるし、平気かな?」
「平気だけど熱い。」
短剣が自動で動く感覚を楽しんでいたら、レオさんが甘さを増量した声で囁いてくる。レオさんの口調と言い回しに若干の違和感を覚えながら、正直に答えてみた。
「ちょっとだけ我慢して、琥珀がしたかったんでしょ?直ぐに良くなると思うから。」
「なんでそんな話し方なの。」
「琥珀の我儘を聞く見返りに、俺もちょっとだけ楽しもうかな、と。」
耳元に息を吹きかける勢いで甘ったるい声で囁いてくるレオさんの頭をフリーになってる右手で抑えちゃう。静かに文句を言ってみたら、レオさんはケロッとして開き直っちゃった。
さっきまで真剣モードだったのに、いつの間にエロモードにチェンジしていたのか。背後にいるから表情で気が付けなかったのが悔やまれる。でも、声色と言い回しがさっきから変だったのは確かだった。情報は小出しでも出ていたのに。
「イヤらしい。変態ですか。」
「そう、イヤらしい変態なんだよ。もうちょっとだけプレイに付き合って。」
思いっきり低い声で罵ってみると、レオさんはテンションが上った感じで首にキスをしてきた。キスの合間に続行を宣言してくるレオさんの頭から手を離す。これは、交換条件を突き付ける絶好の機会なのでは。そんな考えが頭を過ってしまった。
「自分で短剣を動かしてもいいかな?許可してくれるなら、俺は普通にやるから、レオさんは思う存分プレイに熱中していいよ。」
名案を思い付いちゃってニマっとなりながら、声だけは抑えた低い声で静かに聞いてみる。レオさんが首筋に唇を滑らせてきて、ゾクッとなってしまった。ドキドキで返事を待っていたら、耳にキスをされてびくっとなっちゃう。
「いいよ。琥珀の感じるままに動いてごらん?琥珀がプレイを許可してくれた礼に、琥珀が満足するまで付き合ってあげる。」
甘い声が了承してくれたのが聞こえて、やったって思っちゃう。武器を握るだけで終わると思っていたから、多少、レオさんの言葉が卑猥なのを除けば超ラッキーな展開だ。でも、いざ、自分で短剣をってなったけど動かし方が分からない。
「武器が初心者の俺に手解きをお願いします。短剣はどう動かすの?」
「初めての琥珀に手解きとか、興奮する。じっくりねっとり教えてあげるから安心して。ちょっとだけ俺が動くよ?ちょっとだけ激しく動くけど、痛かったら言ってね。基本は突き上げる。こうやってゆっくり引いて、強く突く。」
という事で、短剣がメイン武器のレオさんに手解きをお願いしてみた。レオさんは甘い声と卑猥な言い回しで、行動に合わせて的確に教えてくれる。自動で動く短剣の軌道を眺めて、動きを頭に叩き込む。
「琥珀も自分で動きたい?」
少しの間自動で動いていた短剣が止まって、卑猥な感じで問い掛けられた。コクっと頷いて、レオさんが教えてくれた通りに、ゆっくりと手を引いて素早く突き上げてみる。
確かに、短剣は突きってイメージが強い気がする。最初に教えてくれた事からも、短剣の一番主流な攻撃手段なのかもしれない。少しだけ考えを巡らせながら、パターンを変えて突きを何回か繰り出してみた。
というか、いざ動かす状況になったら、レオさんの手は俺の動きを一切阻害してこないのが凄い。ただ、武器の重さを感じないし、武器の軌道がスムーズだから、補助してくれているのは伝わってくる。レオさんは変なトコロが尖っているって思っちゃう瞬間である。
「琥珀は飲み込みが早い、いい子だね。俺の教えた事もちゃんとできてたし、ちゃんと自分で動けてた。ちょっとぎこちない感じが堪らなく可愛かった。」
手を止めたら、首を伝う唇の感触の合間にレオさんの声が響いてきた。言葉だけを聞けば褒められているように聞こえて嬉しい。でも、声も口調も卑猥で甘ったるくて変な連想しかできないのが悲しい。
「後は、焦らす感じで小刻みに動くのもいいかもしれない。ゆっくり焦らしてから勢いよく突く、とか。かなりいい筈。」
悲しさを噛み締めている間にも、卑猥な説明と一緒に短剣が自動で左右に切る動きを始めた。そして、その合間に鋭い突きも繰り出される。
短剣はリーチが短くて攻撃力が低い分、致命傷を与える為には何回も切る必要があるって事なのかもしれない。突きなら急所に一撃、切るなら手数勝負。そんなイメージなのかな。
自動の動きが止まったら、教えられたとおりに自分で動かしてみる。手数で切る方は手首にスナップを効かす関係上滅茶苦茶キツい。地味な動きに見えるのに、筋肉にも手首にも負担が蓄積していく。
手首が限界を迎えそうでヤバい。短剣で戦うのはこんなに大変なのかと思ってしまった。重さを感じない状況でこのキツさとか、俺は武器を扱う事ができるのだろうか。いや、多分無理。だって、ゲーム脳的には短剣だと『力』や『器用』が求められそうだし。ステータス的にも確実に無理。
「琥珀は突く方が好きみたいだね。激しいのが好きな琥珀も可愛い。焦らされるのは嫌いかな?」
自問自答で悲しい答えが導かれたトコロで、甘くて卑猥な声が的確に俺の苦手な動作を当ててきた。驚きの変態度だけど、教え方はパーフェクトなのが凄い。ついでに、ちゃんと生徒の動きも把握しているのも凄い。
「切り裂く方は結構キツい動きなんだね。難しかった。」
一応、手首を動かす動作が苦手って伝えてみた。でも、レオさんは把握している感じがするから、敢えて言うまでもなかったかもしれない。
「何回もしてると慣れてくる。あとは、琥珀の動きで楽しませて貰うから、琥珀は好きなように動いてみて。」
「短剣と短刀は同じ動きでもいいのかな。」
レオさんの卑猥な声が好きに動いていいとの許可を出してくれた。遂にチュートリアルが終わって自由に動ける時がやってきたらしい。ネロが鍛錬場で短刀を使っていたのを思い出して、問い掛けてみた。
「道具を変えて同じ動きをすると、違う反応が見られるかもしれない。突いたり、焦らしたり、小刻みに動かしたり、大きく動いたり。相手の弱点は変わらないから、そこを重点的に攻めると楽しめる。」
卑猥なレオさんが変な連想ができそうな言い回しで、的確に答えてくれる。意味合いが通じるのが悔しくなってくるレベルである。多分だけど、武器種によって効果が多少変わるけど、動き自体は同じでいいって事かな。
「動いていい?」
「うん、琥珀がどんな風に動いてくれるか楽しみ。どんな琥珀でも合わせるから、好きに動いて。」
一応、断りを入れてみたら、OKが出たから思う存分動く事にする。レオさん、ヤミさん、大人数の大人達。ネロが短刀を使っていた鍛錬の光景を思い出してみる。そして、ネロの動きを思い出して頭の中でシミュレートしてみた。
先ずは鋭い突き。その後で素早く腕を引いて、もう一度突きをして切り上げる。横に素早く一文字に動かしてから斜め下に刃を向けて切り下げる。ネロの動きの数パーセントも動けてないけど、ネロの真似をして動くのは楽しい。
短剣使いのレオさんからすると、無闇矢鱈に武器を振り回して教えも何も生かされてないって怒られそう。でも、レオさんは言葉通りに俺の動きに合わせて補助してくれている。
緩急をつけた動きでも、奇をてらった動きでも、乱れる事なく完璧にサポートしてくれる。ヤバい程変態で、驚く程卑猥なのに、やっぱりレオさんは凄いんだなって思っちゃった。
思う存分武器を動かして大満足。武器の動きを止めて、レオさんにぽてっと寄り掛かってしまう。レオさんは俺の首にキスをしながら、サラッと鞘を被せちゃった。
「実に楽しいプレイだった。」
「実にイヤらしいレオさんだった。」
満足そうに呟いたレオさんの言葉を引用して、レオさんの評価もしてあげる。俺の手を包み込んでいたレオさんの手が外されて、レオさんが柄頭と鞘を持って短剣を支えてくれた。
もう離していいよって感じだけど、グリップを握り締めちゃう。レオさんが離しなさいって感じで耳に一瞬キスをしてきた。びくっとなったけど、グリップから手は離さない。
「レオさん、お願い。落とさないし動かさないから一人で持ってみたい。ちょっとだけでいいから、ダメかな。」
心を決めて、甘えた声で精一杯の願いをしてみる。前に一回だけ、レオさんの家で短剣を持たせて貰った。かなりずしっとした重さだった記憶はあるけど、記憶力補正かもしれない。だから、自分で武器を動かした直後に、武器の重さも確かめたくなっちゃった。
「ん~、一瞬だけでいい?」
「うん、一瞬でいい。」
凄く悩んだっぽいけど、レオさんは許可を匂わせてくれる。そのチャンスにすかさず飛びついたら、レオさんは俺の肩に顔を伏せて、ふーって息を吐き出しちゃった。肩から背中にかけてがもわぁって熱くなった。
レオさんは顔を上げると、鞘から手を離して頭を撫でてくれた。そして、恐る恐る、柄頭からも手を離してくれる。レオさんの手が離れた途端に、ずしっと重さが手に圧し掛かってきた。
こんな重いのかってちょっとびっくりする重量だった。ホントにレオさんが持っていたんだって理解できた。この重さでさっきの動きは無理だ。直ぐにレオさんが柄頭に手を添えて来たから、短剣の重さを感じたのは一瞬だけだった。でも理解した。確実に無理。
「琥珀は初心者って言ってたけど、なんとなく動けてた。ネロを手本にした?」
満足して大人しくグリップから手を離すと、レオさんが武器を片付けながら質問をしてきた。コクっと頷くとレオさんがきゅって抱き締めてくる。レオさんが俺の肩に頭を伏せたから、目の前に猫耳がニュッて飛び出してきた。めっちゃ可愛い。
「ネロを入れた体にえっちぃ手解きをして、興奮しちゃった?」
「お前の言葉のチョイスが堪らない。そうだね、ネロが入った琥珀にえっちぃ事をできて満足。」
レオさんの頭に顔を摺り寄せながら、ぽつりと呟いてみる。そうしたら、レオさんの腕がキュッとしまった。そして、レオさんが切なそうな声で卑猥な事を言い出した。俺の言い回しを微妙に引用して揶揄ってくるトコロに悪意を感じてしまう。




