開戦前1
「積み荷作業が終わった者から列車に速やかに搭乗せよ。この列車は国境付近の町行きである」
アナウンスが響いた。
そんな中俺は積み荷作業をさっさと終わらせ、列車に乗った。
まだあまり席は埋まってなかった。
俺は入ってすぐの座席に座った。
外では新兵達が慣れない積み荷に追われていた。
懐かしいなぁ…俺もあの頃はあんな感じだったなぁ…
タバコを取り出し一服しながら俺は思った。
段々と席が埋まりつつある中
「すいません。隣いいですか?」
と、一人の若造が尋ねてきた。
俺は特に何も言わずにそいつを座らせた。
とりあえずこいつに所属と階級を言わせた。
「自分は第15師団 第2連隊 第3大隊 第5中隊 第3小隊隊長のアレックス少尉であります!」
「ほぉ奇遇だな。俺は第15師団 第2連隊 第3大隊 第5中隊隊長のジークムント中尉だ。
一つ尋ねるがお前士官学校出身だな?」
「はい!自分は先月士官学校を卒業しました!」
「そうか…分かった…兎に角まぁよろしく」
士官学校ねぇ…最近じゃあ戦争狂信者を作り出してるっていう話だが…
俺には関係ないか。
こんな青二才と話をしているよりも早く昼飯を食わなくては。
「中尉殿!貴方は戦争についてどう思われますか?中尉殿はご容貌からすると先の戦争に参加されたように思われますが」
ったくめんどくせぇなぁ…
「あぁ…参加したよ。泥水啜って不味い飯食って、体もロクに洗えずヘドが出そうだったよ。戦争なんてお偉いさん同士がやれって話だよ」
「何てこと言うんだ貴様ァ!戦争は憎き者を断罪し、皇帝陛下に対し尽くす為にある物だ!
皇帝陛下の為に尽くす事も知らんのか老いぼれがァ!」
あぁ…話は本当だったんだなぁ。
取り合えずこの皇帝信者兼戦争狂信者を鎮めなくては。
「貴様ァ上官に対し 貴様 という言葉はないだろ!! ぶん殴るぞ!」
「もっ…申し訳ありませんでした! お恥ずかしい失態をしてしまいました! どうぞ好きなだけぶん殴ってください!」
殴る気は全くなかったのでこいつを座らせ、俺は黙々と昼食を食べ始めた。
どうやらどんな奴でもやはり上官には弱いようだ。
俺は黙々と昼食を食べ始めた。
すると列車は国境の町へと動き始めた…