ディストピア
ディストピア
ここは管理社会。
私達は統制されることを望む。
全ての人間が等しく豊かになる為には、 全てを管理された方が都合が良かった。
優しい優しいあの子はもういない。
あの子は優しいからこそ、
全ての人間を救いたいと言った。
今、その瞳にあの頃の希望などない。
ここは管理社会。
全ての人間の脳にマイクロチップが埋め込まれている。
瞳孔の動きも、指先の感覚も、途切れそうな拍動も、
この卑しい恋慕でさえ、全てが等しくマザーコンピューターに送られる。
このコンピューターにはとてもいい名前が付けられている。
いつまでも忘れられない、その名だ。
ここは管理社会。
犯罪など起こりえない。
若い悪の芽は種のうちから腐らせ、
悪事を働く暇さえも与えない。
そうなって気がついた事だけど、僕は。いや、みんなは。いつか大きな悪がこの社会を壊して、内心ほっとしたいんだ。
そうして、一つため息をしてこう言うんだ
短い嫌な夢だったな、なんて。