奏曲の女神 Ⅱ
今回は出会い辺です。いつまでたっても語彙力が上がらない
身体中を蝕む鈍い痛覚とともに、酷く暗い空の中に「それ」は浮いていた。もしかしたら存在していたかもしれないいくつもの可能性の中に「それ」は浮いていた。ただ今までの過程がこの可能性という名の結果に結びついてしまっただけなのに、何故あなたはそこまで笑っていられるの?「それ」は純粋に、そう悟った者達への激励の言葉として、そう口にした。ただ、嬉しいから、ただ楽しいから、それだけではない事を察して「それ」はそう口にしたのだ。
「だって、あなたは────」
「2」
いつもの時間より少し遅い目覚めをしてから約40分、朝の会議に遅れてしまうと思い、急いで歩を進めていた私は、いつもどうり、見慣れているはずの黒いグランドピアノに目を奪われてしまっていた。しかし、いつまでも眺めているわけにはいかないので再び歩を進めようとすると、その時私はその視線に気づいた。彼の着ている制服はうちの学校のものである。しかしそのどこかあどけない顔は見たことが無い。これはもしかしたら..
「3」
どれくらいその美しい姿を眺めていただろうか、
あまりにも長すぎたのだろう、故に僕はとうとう彼女の方から声をかけられてしまった。
「こんにちわ。私に何か用事でも?」
「こ、こんにちわ..えっとその..綺麗だなって」
と、テンパったが故に本音を口にしてしまう。
「え、えーとその..それって..」
いきなりこんな事を言われてしまっては戸惑うのも当然だろう。ここである程度何かしらフォローしなければ変な噂を広められ新しい学校生活が台無しになってしまう。
「はい。すごく綺麗ですよね..あのグランドピアノ」
「ああ、そっちですか..」
彼女は安堵感と共に頬を緩めた。その様子をみるに、上手く弁解できたようで何よりである。
すると再び彼女の方から、
「あの、見慣れない顔ですけど、今日からご入学なさる方ですか?」
「えっとそうですね、今日から転入予定の」
と言ったところで、彼女の表情は明るくなり、
「やっぱり!!転入生の五月雨 東さんですよね!?」
と彼女はこっちに詰め寄ってきて笑顔でそう言った。
その流れからか、何かと分からない事も多いだろうと言うことで、自然と彼女と一緒に学校へ歩く事になった。
彼女の名前は聖堂 愛花、この学園の生徒会長である。というとこまでは彼女の会話でわかったのだがしかし、僕は気がかりなことがひとつある。それは、
「はい、この学園には私以外に生徒会長が二人いるんです。そのためにはこの学校の仕組みから説明させていただきますね。」そう、まるで見透かしたように僕の疑問を口にした。
「まずは、この学校には三つの勢力があるんです。現代音楽を支持する奏世会、古典的音楽を支持する響守会、二つに審判を下す生徒会、もともと高貴な方々のための文化系学園なのに、普通の方々が入って来られてこの様に勢力が別れてしまったと言われています。私はその中で、響守会の会長を務めているんですよ。」
なるほど、どうりで生徒会長が3人も..と今までの疑問に納得する。
「年に数回、総会議で意見がわかれた場合にのみ、二つの勢力がそれぞれ演奏をして、投票選挙で勝った方の意見に学校側が動くという仕組みになっています。」
なるほど、だから楽器を弾けることが前提の学校なのか。
「ご理解いただけましたか?」
「うん、だいたいは..」
そう手短に応えると、
「では私は会議がありますので、今度響守会の部屋に遊びに来てくださいね!」
彼女はそう言うと、柔らかい笑顔を浮かべて手を振りながら行ってしまった。
でも僕は、そんな彼女の姿が────
上手く三つの勢力の仕組みが伝わったかな?
伝わってるといいな..読んでる人いないけど..