蝶ともぐら
蝶はこの木が好きだった
花は白く美しく、葉は緑で輝いている
そしてなにより、大地から力強く立ち上がる幹が、蝶は大好きだった
もぐらは雲に憧れていた
土の中は暗く、じっとりしている
もちろんその空間が一番落ち着くのだが、たまに外に出た時に見上げる、白くて軽そうな雲にもぐらは憧れていた
蝶はもぐらになりたかった
この立派な幹は土の中でどうなっているのか、実際に見てみたかった
しかしそれはかなわなかった
突然の豪雨になすすべのない蝶は地面に叩きつけられる
そして命を失った
もぐらは蝶になりたかった
あの白い雲と一緒に羽ばたいてみたかった
しかしそれはかなわなかった
雲に見とれていて忍び寄るヘビに気がつけなかった
そして命を失った
蝶の体は朽ち果て土に還っていく
もぐらの魂は天へと昇っていく