自分を見極めに行ってくる 悠里 2
無事にルーマニアに着きました。
バラン一族は、ブカレストの郊外にひっそりとあると思っていただければありがたいです。
「ふう。なんどかルーマニアに来たのはいいんだけど……誰が迎えに来るんだっけ?」
無事にブカレストに着いた私は、出国ゲートの前で迎えに来るって聞いていたいとこを待っている。ここでいとこが平仮名なのは、私より皆が年下で、男女揃っているからだ。
「ユーリ!久しぶり」
「アンジー、コルネ。ごめんね。忙しいのに」
「大丈夫さ。俺達も悠里を見習ってバカンスを取ることにしたんだ」
私を迎えに来てくれたのは、今はアメリカで暮らしているアンジェリカとドイツで暮らしているコルネリウの二人。今回いとこ達は私を含めて7人が揃うって事は祖母から聞いている。いとこ達とは英語で会話ができるから本当に楽でいい。けれども祖母世代の親族になると英語が通じる人が少なくなるから、私も最低限であるけれどもルーマニア語は話せる。
「ふうん、私の様に休みを取ったのって誰?」
「後は、ダリヤとエレナとアウレルとクリストスだよ」
「他の皆は?」
「悠里には会いたいって言っていたから、バカンスの時に東京に行くと言いだすのがいるわ」
「いいんじゃない?おじさんの病院があるから安心よ。餌の確保しなくたって」
「っていうか、悠里まだ餌すら狩りしてないじゃん。まだバージンみたいだし」
コルネは私に向かって鼻をクンクンとしている。
「でも、女性らしくなったから恋はしているんでしょ?」
「うん。それで……」
「要は。私達がかつて悩んだ事を……今悩んでいると言う事ね」
「うん。そうなの」
「そこのところは、ぶっちゃけた話になるからさ。ここではやめとけよ。アンジー」
「そうね。とりあえず皆が待っているお屋敷に行きましょう」
コルネが私のスーツケースを転がしながら、私達は駐車場まで歩いて行った。
「ユーリ、何処か寄りたい所ある?」
「うーん。どこでもいいから、ビスケットでも買って会社に送っておきたいんだけど」
「分かった。途中のマーケットで買って行こう。今夜は飲み会だろうから必要なものを買って行ってしまおうぜ」
「そうだね、アンジーは飲めるようになったの?」
「少しはね。じゃないと仕事で困るでしょう?ユーリは?」
「エレナとダリヤの中間位?去年の年末に二人が内に来たのよ」
「ああ。それは知っている。初詣ってヤツをしたいってやつだろ?」
「そうよ。あの二人と言ったら、獲物見つけたってお持ち帰りしようとしたんだもの。呆れたわ」
私が去年の年末を思い出してぼやくと二人は苦笑いする。
「確かに獲物他国は積極的だからな。あの二人。そろそろ先進国はクリアするんじゃないか?」
「お願い、その話は私に振らないでよ」
「分かっているよ。悠里が一族の事をちゃんと考えているから今でもバージンなんだろ?」
「私も分かっているわ。私も今のパートナーと一生一緒にいるつもりだから」
アンジーは一族の両親の元で生まれたから、ヴァンプとしての血も濃い。
「そっか。やっぱり女はしっとりとした人の方がいいよな」
「コルネはどうなのよ?」
「俺?普通。でも餌には困っていないけど」
コルネは、少量ずつを頂いて楽しむタイプなので日本ではチャラ男ってところか。
「コルネは結婚するの?」
「どうかな……決めてないわ。そこまでって女にあえてないのかもな」
私達皆にいえる事だけども、寿命がとにかく長いから、ある年齢になったらひっそりとルーマニアに戻ってくるのだ。
その代わりにルーマニアに戻ったら、かつての国の名前を消す。ルーマニアの人としてひっそりと暮らしていくのだ。戸籍とかどうするのか?そう言う仕事をしている一族がいるからそこは抜かりない。
今の一族はブカレストの郊外の村に暮らしている。ちょっと大きな家に日本で言う本家筋の人がいて、周囲に親族が暮らしている。祖母は一人暮らしだか、隣の祖母の叔母が定期に的に来てくれている。
平家の落人集落みたいなものをイメージして貰えたら有難い。
若い人たちは都市部でそれぞれの仕事をしている。年を取るとこの集落でひっそりと暮らしている。
コルネが運転する車はやがて本家の屋敷の駐車場に入っていく。
今夜はここで一晩滞在して残りは祖母の家で過ごすことにしている。
大きな門の前で私達は一度立ち止まった。
「久しぶりに屋敷に来たけど、緊張するよな」
「そうね。それは私もいえるわ」
「それを言ったら私はどうしたらいいのよ。4年ぶり何だから、逃げ出したいよ」
「あはは……とりあえず行こうぜ」
呼び鈴を鳴らすと、ゆっくりと扉が開いた。
扉を開けたのはこの屋敷の主のゲオルゲ・バランだ。
若く見えているけれども既に数百年生きている。
「久しぶりだね。悠里。仕事はどうだい?」
「比較的に安定しますよ」
「僕は日本のニコルからはそうは聞いていないよ」
「おじ様。ニコラフおじ様には本当に良くして貰っています。ここにいる間にゆっくりと自分を見つめ直したいなあって思って」
「一族として生きて行くと言う事?」
「はい、パートナーを持つって事はそう言う事だと思っていたから」
「やっぱり、日本人は真面目だね。でもそれが悠里らしいよ。明日はアンナの家か。淋しいな」
「おじ様がいらっしゃるのなら、お邪魔してもいいですか?いろいろ聞きたいから」
私がそう答えるとアンジーもコルネもああって顔をしている。
私達は一族に関することは、ゲオルゲおじ様からレクチャーを受けるのだ。
「いいよ。悠里の休みに合わせて僕はいるから、一族の血が更に濃くなっているみたいだね。ニコルの処方の仕業かな」
「おじ様は何を?」
「ちょっとだけニコルの血を混ぜたってことかな。元からの能力が更に上がっているはずだよ」
私は少しだけ頭を抱えた。ここ数日の衝動はニコルおじ様の仕業だったわけだ。
気持ちはありがたいんだけどね……方向性が少し間違っているというか、なんというか。
「悠里、何処か行きたい所はあるかい?」
「仕事を休んでいるので、とりあえず有名どころの写真を取っておく程度でいいです。こっちにいる時位、のんびりとした時間を過ごしたいです」
「分かった。コルネ達と相談して、ブカレスト中心に行っておいで。わざわざブラン城に行きたいかい?」
「モデルなだけで、本当は私達一族には関係ないですよ」
「でもさ、帰ったらカミングアウトするんだろう?だからさ」
「そんなの絵葉書一枚でいいんですよ」
「相変わらず悠里はマイペースだね。ゆかりさんもそんな女性だったと聞いた記憶があるよ」
ゆかりさん……祖母の母だ。ゲオルゲおじさんの弟さんが祖母の父にあたる。
「あの戦争がなければ、弟もまだ元気いたと思うとね」
「仕方ないです。あの頃は、本国にいても戦時中でしたよ」
「そうだね。悠里は優しい子だね。やっぱりゆかりさんと弟の血を感じるよ」
そう言うとゲオルゲおじさんはゆっくりと私の頭を撫でた。
「さあ、荷物を置いてゲストルームにおいで。皆悠里が来るのを待っているよ」
「はあい、分かりました。アンジー達は先に行っていて?ちょっと着替えるから」
「どうして?」
「ルーマニアの方が東京より暑いのよ。少しだけ薄着になりたい」
「そうね。それは納得だわ。向こうを出た時に夜だったの?」
「うん、トランジットで来たから、最終便が遅くできた分彼と一緒にいたの」
「ふうん、どことなく匂う男の匂いはそいつか」
「いつまでも待たせる訳にはいかないものね。私たちなりに相談に乗るわよ」
「ありがとう。それじゃあね」
私は、今夜泊まる部屋に移動するのだった。
ベッドとドレッサーとクローゼットがある広めなワンルームと言った感じか?
ちょっと広めのバスタブにお湯を沸かしながら、着替えを用意する。
「悠里?いい?」
アンジーがドアを開けて入ってくる。
「はい、バスタオル。シャワー浴びるでしょう?」
「ありがとう。それじゃあなるべく早く行くから」
「お風呂で寝たりしないでよ」
「分かっているわ」
私は受け取ったバスタオルを持って、バスルームに移動したのだ。
ここからは完全妄想の世界になります。
もし、今の世の中にヴァンプがいたら共存していると思うのですよ。
ちょっと待てよって、無茶な設定もしてますが、そこはご愛嬌で。




