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彼らに会いたくて……私はアントワープを目指す 4

午後11時に私と専務は職場からほど近い大手都市銀行の本店に来ている。

現銀行頭取と専務が大学の同級生という事で、海外市況等の最新情報を月に一度程度ビジネスランチを込みで打ち合わせをしている。

お二人だけの時はかなり砕けた内容で話がアップテンポに進んでいく。その代わりに秘書以外の第三者が参加するといきなり硬化なものに変わってしまう。

今日は海外リテール部門の肩がいらして下さったので、いつもよりも堅苦しい打ち合わせが続いている。

「真山君、暫く打ち合わせが続くから、席を外しても大丈夫ですよ」

「そうだ、君が真山さんをご案内して、役員エレベータを使っていいから」

頭取秘書の高頭さんが真山さん行きましょうと誘っていただいて、私達は社長室を後にした。高頭さんは第一秘書で、社長室にはもう一人の方がいらっしゃるとか。

「すみません、高頭さんにお手間を取らせてしまいまして」

「いいんですよ。たまには店頭で視察するのも私の仕事です」

「そうなんですか?」

「ええ。行員によっては私が社長秘書であることを知らない人が多いんです。それに店頭に立つ時はサービスチェックも兼ねるので社員証は見せないんですよ」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。今日の外為カウンターには私の同期が座っておりますので、スムースに進むと思いますよ。どちらにお出かけですか?」

「新婚旅行でベルギーとオランダです」

「今の時期だといいですね。真山さんがご結婚しているなんて知りませんでした」

「そうですよね。仕事は旧姓使用ですし。主人も社内に勤務はしていますが直接的に私の業務に関わることはないんですよ」

「そうなのですね。幸せそうですね。あやかったら私もいい男性ができるのかしら?」

「高頭さんなら男性がほっておかないのでは?」

「社内の男性とは……考えてはおりませんけど、仕事が多忙なのでそこを理解して貰わないと困りますね」

私も夫とは結婚できたが、秘書室にいるよりも一般総合職の方が結婚しやすいと思う。

私達は仕事は全く関係ない話をしながら、両替が終わるまでを過ごしていた。


「で、今日は午後いなかったよね?」

「頭取たちとビジネスランチの日よ。今日はイタリアンで安いのに凄く美味しかったの」

「ってか、それ会社の経費だよな?」

「全額じゃないわよ。さすがに。これ以上は内部的な話だから」

私達の仕事は会食をしながらの打ち合わせが多いから、最近では全額を経費計上していない。そこは専務に決めて貰って後で社内で生産しているのだ。

「ふうん。何かいい話があったか?」

「それなりに?まあ、そのうちにあなたに相談するわ」

彼の部署は企画開発室。新しい企画を生み出す部署だ。それは社内機構でも社外向けでも何でも構わない。他者とのビジネスランチで得たヒントを夫に話して、夫がプレゼンをするということも今まででも何度かそう言う事はあった。

「お前の目線は凄く新鮮だから俺は凄く助かっているよ。それよりも明日は?」

「うーん、午後のフライトで行くの。休暇は月曜日から次の週の日曜日までだから更に追加している事にはなるんだけど」

「でもかなりゆったりな日程だよな?ベルギーとオランダだけなんて」

「だってそれで十分でしょう?ゆっくりと情緒を感じながら過ごしましょうよ」

私はそう言うと、夕食で開けたワインの残りをグラスに注ぐ。白ワインの香りがダイニングを包み込む。

「そうだな。明日があるんだから程々にしてくれよ」

「ええ。今回はワインを買ってこれたらいいわね」

「そうだな」

のんびりと日本での最後の夕食を楽しんだ後は旅の最終準備をするのだった。


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