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彼らに会いたくて……私はアントワープを目指す 2

「喜べ。雅美。休暇の申請が通ったぞ。しかも、新婚旅行の申請も通ったから7日全部取れた」

ある日の夜。仕事から帰って来た夫は上機嫌で私に報告する。

「そりゃあそうでしょう?それとは別に夏休みも別に取れるから、そのまま繋げて取ってもいいんだけど……あなたは無理だろうから、シルバーウィークにぶつけて大型連休にしましょう」

「雅美……本気か?」

「大丈夫よ。専務にちゃんとお願いしたもの。身内だけの式とはいえ会社のない土曜日に挙げて新婚旅行なしでここまで来ちゃいましたって正直に言ってみたの」

言ってみたのって……奥さん、何気なくあなた専務にモノ申したのですか?

妻の大胆な行動に俺は恐怖でしかない。これは事業部の成績をちゃんと出さないと俺の社会人生命が危機かもしれないぞ。

「だって、事業部立ち上げのせいで休日なんてなしだったじゃない。それなのに、専務ってば子供はまだかい?ってぬけぬけと言ったのよ。だから泣きベソを書きながら社長室に駆け込んで訴えただけなのよ」

ってか、それで社長室に駆け込むっていいのかよ?秘書部長は確かに社長秘書をしているけど……秘書課の内部事情は分からないからなあ。

「で、社長が同情してくれて、新婚休暇の最大とシルバーウィークに夏休み分5日を取得していいよって。ウフフ……秋は国内の温泉でしっぽりと過ごしたいわね」

カレンダーにいそいそと書き込む妻を見て俺は眩暈しかしない。

「奥さん、その強引な交渉術はどこでマスターしたのですか?」

「専務?あの人もかなりやり手だもの。上司の真似をして部下は成長するものだと思うのね。私」

再び満面の笑みを浮かべる妻を見て、夫婦喧嘩だけは今後も絶対にしないと決意した。

妻の有無も言わさない休暇取得の技は秘書課に浸透したとかしないとか。

しかも上司も同時期に同様に取得したとかしないとか……。皆さん、何を考えていらっしゃるんでしょう。もう怖すぎていえません。


妻の強引な休暇取得が影響したのかどうかは不明だが、GWはカレンダー通りの休みに変更して、仕事を二人でこなした。妻の方は専務の接待ゴルフに帯同して泊まりになってしまった。なにせ、妻は高校も大学もゴルフ部に所属していて、おじ様方のいいマスコットになっているのだとか。そこで仕事の話が円滑に進むのなら休み位潰すわよって妻は言う。

今回もコンペの賞品を抱えて上機嫌で戻って来た。

「ただいま。東北はいいわよ。桜が咲いていて」

「お疲れ様。そうか、ゴルフ場で見る桜じゃなくて、公園とかでゆっくりみたいな」

「そうね……それは来年考えましょう。来年は北海道に桜を見に行こうか?」

「おっ、それはいいね。でもそんな計画を立てていいのか?」

「だって、そうじゃないと休めないって今回の新婚旅行で学習したから。だから来年の予定を一応決めておくの。年末は、国内で過ごす?海外で過ごす?」

「お前それは……早くないか?」

「早くない。箱根なら遅いわよ。沿道のホテルだったら特に」

「俺は箱根じゃなくてもいいぞ」

「そうね部屋付き露天ぶろで雪見酒したいから……四万温泉なんてどうかしら?」

「それはいいね。年もそこで越すか?」

「うん。折角だからスキーでもする?」

私達はどんどん予定を埋めながら、その為に仕事をがんばるぞ!!と勝ちどきを上げていた。

世間的にはGWだったが、俺達が二人で揃ったのは、5月4日からだったから、ディズニーリゾートで二日間過ごし、周辺のホテルで一泊することにした。

コレだって立派な旅行だと思うけどな。まあ、夕飯のディナーをちょっと奮発したのもあって結構ゴージャスな気分を味わったと思う。

「司。急遽手配したんでしょう?この旅行」

「そうだな。どこにも行かないのもどうかなって思って、久しぶりだろ?ここに来るのって」

「うん。最初のデート以来ね。また来ようね」

「そうだな。普段なら日帰りだっていいな」

最終日の夜、部内に配るお土産を分け合いながら、連休は楽しかったねって話しあっていた。


今回は目線が混ざっています。もしも分かりずら買ったらごめんなさい。

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