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初依頼

 まず最初の依頼はEランクから。

 Eランクといえば素材集めだ。ちなみに魔物の討伐はDランクから。一応経験のために一度だけEランク依頼を受ける。Dランク依頼を受けた方がすぐに上のランクに上がれるからだ。

 今回の依頼はクルクルって呼ばれてる薬草を3つ集めること。本当にクルクルと葉が巻いている珍しい薬草で、サード領とフォース領にしか自生してないらしい。



 アルとミーナの二人はアワの街の東門に来ていた。


「クルクルはこの辺だと南のフォース領へ続く『フォード荒野』か、東の森に建つ『忘れ去られた神殿』に自生してるの。クルクルは元々聖なる気が満ちる所に生えるものだと言われているの。だから神殿の方が比較的簡単に見つかるわ。」

「東門に来たってことは神殿に行くんだな。」

「それに森には魔物が出てくるから、Dランク依頼の練習に丁度いいし、魔物から素材だって手に入る。一石二鳥ってとこね。」


 二人して森を進む。

 ギルドでも兎肉としてよく出されるツノウサギを見つけた。大きさはそんなに大きくない。膝下くらいか?俺が住んでた村でもそうだったが、魔物は基本的に人を見つけるとすぐ襲ってくる。


 キィッ!


 俺と目が合ったと思ったら角をこっちに向けて突進してきた。まともに喰らうと致命傷並のスピードだが、直線的だから避けやすい。避け際に切りつけて始末完了だ。ショートソードの切れ味も申し分ない。


「アルくん。結構やるじゃない!」

「ん?そうか?」


 そう言いながら、ミーナはツノウサギの角を切り取っている。


「ミーナ、ウサギの肉は持って帰らないのか?」

「え?あ、肉の方はね、すぐに痛んじゃうのよ。肉を保存するための氷魔法が付加された袋とかあればいいんだけど、今はそれが無いから持って帰るのは無理ね。」

「そーか…食べたかったな。」

「夜、ギルドマスターに頼めば焼いてくれるよ?それより素材の剥ぎ取り方を教えるの忘れてたわ!」


 魔物討伐依頼の場合、討伐したという証明のために証明部位を剥ぎ取る必要がある。証明部位は価値のある素材とは別になっている場合が多い。ツノウサギの場合証明部位は尻尾で素材は角と毛皮だ。

 その後もヘビやらイノシシやらいろんなのが出てきたが、俺がいた村の魔物に比べると大したこと無いものばかりだった。



 そんなこんなで神殿に到着した。


「ここが神殿よ。」

「おおお!」


 目の前には少し崩れた白い石造りのアーチがある。

 その向こうには少し荒れた庭があった。荒れたと言っても、所々隙間から草の映えた石畳の通路の脇には白い花が一面に咲いてるから、何の花なのかは知らないがとても綺麗だ。そしてそのまた向こうには白い神殿が建っている。蔦が絡まっているが神殿自体はあまり崩れていない。白と緑の散りばめられたその景色は圧巻としか言いようがなかった。


「…すげぇ…。」

「ね?来てよかったでしょ!」


 ミーナも何故か自慢気だ。そして先に入って何かを探し始める。多分、クルクルがここに生えるんだろう。しかし、勝手に入っていいのか?まあ、いつも勝手に入ってるようだからいいのかもしれないが…。


「アルくん!速く来なよ!採り頃のクルクルはキラキラした光を纏ってるからすぐ分かるわ!あ、あった!」

「おう。」


 パキン。

 アーチを潜るとき音が聞こえた。頭のなかで何かが割れるようなそんな音が。木の枝でも踏んだのかと足元を見るがそうでもない。

 辺りを見回す俺を見てミーナが不思議そうに尋ねてくる。


「…アルくん?どうかした?」

「なんか今聞こえなかったか?」

「え?特に何も…」


 ブロロロロロッ!!


「何っ!?」

「アルくん!下がって!」


 純白の石壁を突き破りながら奥からでかい猿みたいなのが出てきた。なんだか知らないがすごく怒ってる気がする。まだ猿とは距離があるが、襲ってくるのも時間の問題だ。


「こいつ、Bランクのアングリーゴリラね。見たところ亜種だからAランク相当、腕がなるわ。」

「俺はどうすれば?」


 答える前にミーナは走り出した。

 いつの間にか左手に杖を持っている。


「風よ。かの者に裁きを。風の刃!」(ウィンドスラッシュ)


 次の瞬間ゴリラが見えない何かで切りつけられた。だがあまり効いていない。元気よく腕を振り回している。が、ミーナも軽い身のこなしで全て避けている。


「やっぱり中級じゃ駄目ね…神殿を壊すなんて許せないわ。」

「ミーナ!俺も何か…」

「アルくん!私より前に出ないでね!風の精霊よ。汝の力で理を乱し、魂無き者に叡智の制裁を!風精霊の怒り!」(シルフィスハリケーン)


 ブロァロァロァッッ!!


 ミーナの大技でゴリラの身体中から血液が吹き出した。しかし、ゴリラはまだ動けるようだ。


「なんて固いの。この杖の魔石じゃ今のが限界だし、アルくんがいるからあれは使えない…仕方ない、。アルくん!引くわよ!」

「いや、俺がいく。」


 依頼はまだ途中。そしてゴリラは傷が深い。今が親父と訓練してきた成果を試すとき!

 ゴリラは俺に目を向けると叩き潰そうとしてきた。だが遅いっっ!


 ブロァロァッァッ!!


 ゴリラの眉間にショートソードを突き立てた。

 すかさず抜こうとしたが、根元からポッキリ折れてしまった。仕方なくそのまま距離をとる。


「速い…!」

「くそっ!折れた!」


 その後ショートソードの刀身が眉間に刺さったままズーンという音をたててゴリラは倒れた。


「はぁ…なんとかなった。もう!アルくんったら、あんなに出来るならそう言ってくれればよかったのに。」

「いいじゃないか無事だったんだし。」

「私の杖はさっきので粉々よ!それにもっと早く教えてくれたらDランクなんかから始めなくてもよかっ…!?」


 ォーーーーン!!


 その時、今度は神殿の方から魔物のような鳴き声が聞こえてきた。ミーナも一度振り返り、すぐに行動に出る。


「アルくん!ここに魔物が出るなんて今まで聞いたことすらなかったのに、また新手よ!討伐するべきだけど、私とアルくんだけじゃ今度こそ無謀!ここはやっぱり一旦退きましょう!」

「依頼は!?どうするんだよ!」

「本当は私の分にするつもりだったけどさっき結構とったから後であげるわ。クルクルが自生する場所までたどり着いたのだから問題無いはずよ。依頼としては後は帰るだけね!」


 そう言いながらミーナは走り出す。俺も入って来たアーチに向かって走り出した。神殿からまた遠吠えのような声が聞こえる。


 ォーーーン!

 そしてそれと同時に俺は聞いてしまった。頭に響く、何かの声を。


『……待…て…。』





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