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最果てのホライズン  作者: 椎名乃奈
第四章 やくそく
37/60

【037】


「何か良い顔になったな。準備は出来たみたいだね、スゥ?」


「はいッ!」


「これから、スゥを街へ直接転送させる。スゥが帰るまでに私がまだ魔法を使えるか分からない。だから、三十分経ったらこっちに転送されるよう、今のうちに魔法を掛ける。だから、三十分以内にこのメモにある生薬を買って来るんだ。良いね?」


「分かりました」


 先に戻っていたアンリエッタは、既に転送の準備は整えていたようで、カレンを転送させた時のような紋様が床に描かれていた。スゥは、その紋様の中心に立つと、アンリエッタの呪文により、忽ち光り輝き、目を晦ました。


 目を開けれるようになると、そこはスゥには全く馴染みの無い森の中だった。


 てっきり。


 街の中へ転送されると思っていたが、よく考えると街の中にいきなり人が現れたら確かに可笑しいか――そう自問自答することでその問題を解決した。


 少し歩くと、木々の間から開けた場所に出ることが出来た。


 そして。


 その開けた場所の先から街が見えた。


 メモに書いてある生薬を買うただのおつかいな訳で、クロードに頼まれて行ったレリウス商店へのおつかいに比べれば、なんてことは無い。自分にそう言い聞かせることで奮い立たせていた。


 街の入り口まで着いた。


 一度深呼吸をし、自分を落ち着かせ、ゆっくりとその一歩を踏み出した。一歩踏み出してしまえばなんてことは無かった。後は、メモに書かれた生薬を買って帰るだけそれだけだった。


 街を中程まで進むと、広場の様になっており、そこには不思議な銅像立っていた。


 それは。


 獣耳を生やした少女の銅像だった。どうやら、この街の作物豊穣の神としてその少女が祀られているようなのである。心無しかスゥにも見える銅像だが、見れば見る程微妙に違って見えてきた。


「ねえねえ、お母さん。あのお姉ちゃん耳生えてるよ」


 スゥの耳は、子供がそう言うのを聞いた。


 スゥは、手で頭を確認すると決定的なことを忘れていた。


 それは。


 自分の獣耳を隠す為の帽子なり、頭巾なりを被って来るのを忘れていたのだ。今ここで、逃げ隠れすることは簡単だ。けれど、生薬を手にせずホライズンへ戻ると言うことは、大勢の人達が苦しむことになる。


 だから


 前へ進む他無かった。


 しかし。


 一度、見つかってしまったスゥは、簡単に済むおつかいではなくなっていた。大人、子供が皆総出で、スゥを捉えようと躍起になっていた。ただ、スゥのことを厄介払いしたくて、皆追い駆けているようでは無かった。スゥの気の性なのかもしれないが、追い掛ける街人が生き生きとしているような気がしていたのだ。


「やっぱり、神様だ」


「神様よ」


 神様。


 確かに、スゥの耳にはそう聞こえた。


 どうやら。


 街の豊穣の神である少女と間違われているようであった。仮にそうであっても、神様を走って追い詰めると言うのは、罰当たりなことなのでは――スゥはそう思ったが、街の人が友好的であったのは、少なからずスゥにとって良いことだった。


 街の人々は、スゥに向かって祈りを始めた。


 豊穣を祈る者から、健康を祈る者、そして恋愛を祈る者と神様の効力が届くとは思えない願いごとまで始めていた。スゥは、時間が無いと言うのに、辺りを囲まれてしまった性で身動きが取れなくなっていた。


 辺りがざわつき始めた。


 そして。


 目の前を囲っていた人達は左右に掃け、一人分程の道が作られると、車椅子に乗った高齢の老人が現れた。街の人が口々に町長と呼ぶ様子から、この人がこの街の一番偉い人に違いなかった。


「久しぶりだね……スゥちゃん」


「えっ……?」


 スゥは、その人が誰なのかを知らなかった。


 しかし。


 その老人は、スゥに対して好意的に接してきていた。それは、以前に親し気にしていたと言うことなのだろうか。しかし、もしそれぐらいに親し気であるならば、忘れるはずも無い。


 だからこそ。


 スゥは、困った表情を見せた。


「そうだね。あれから、数十年も過ぎてしまったんだ。分からないのも、無理はないのかも知れないね。これを見れば思い出すんじゃないかな」


「え……嘘――」


 その老人の手に握られているモノは、見間違えるはずの無いモノだった。それは、何処からどう見ても、二人の再会を誓ったオルゴールに間違いなかった。つまり、目の前にいるこの老人は、あの日再会を誓ったカレンだったのだ。


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