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最果てのホライズン  作者: 椎名乃奈
第三章 かくれんぼ
30/60

【030】


「もう、大丈夫です……。ありがとうございます……」


 抱きしめられていたスゥは、一歩だけ下がった。


「スゥは、この街は傷付いた人達が集まる街だと聞いてどう感じた?」


 クロードは、スゥが落ち着いたのを確認し、聞いた。


「元気の無い暗い街なのかと思いました」


「じゃあ、この街に来てからはどう思った?」


「とても元気で明るい街でした」


「この街はね、一人が困っていたら、皆が一緒に助けてくれる。一人が悩んでいたら、一緒に悩んでくれる。スゥも身に覚えがあるだろ?」


 スゥは、コクリと頷いた。


「助けたからと言って、何かお礼を強請まれたりしたかい?」


 スゥは首を横に振った。


「一人はみんなの為に、みんなは一人の為に――ここは、そういう街なのさ。だから、僕は前に言っただろ? ホライズンと言う大きな家で暮らしている家族なんだって」


 すると。


「スゥちゃーん」


 クロードの背後からスゥを呼ぶ声が聞こえた。


 それも。


 一つではなく、いくつも重なってスゥの名前を呼ぶ声が聞こえて来る。近くづくにつれ、その声は大きくなり、心の中へどんどん響いて行った。そして、大勢の人がスゥを囲んでいた。


 街の人は、大丈夫、良かった――そう口々にスゥの安否を確認した。


「言っただろ? 皆、スゥのことを探してくれているって」


 スゥは、見回した。


 自分を探す為だけに、これだけの人が集まってくれたのだ。スゥは、それが嬉しかった。嬉しかったと言う言葉だけでは収まらないくらいに、嬉しかった。


 クロードは、再びスゥへ手を差し伸べた。


「さあ、帰ろう。スゥ」


「はいッ!」


 スゥは、クロードの差し出した手を取り、笑顔でそう返事した。


 そして。


 クロードの手の温かさを感じながら、もう迷わない――そう心に誓った。自分の信じることを、信じる人を信じようと。それは、スゥとクロードの間により一層強い絆が結ばれた瞬間だったに違いない。


 家に戻り、スゥが落ち着くのを図ってから、スゥが紛れ込んでしまった、ホライズン下側について、ホライズンの構造について、クロードは話した。


「あそこはね、この街の闇の部分なのさ」


「闇……ですか?」


 スゥは、少し困惑しながら聞く。


「僕は、ここへ来る列車の中でここがどう言う街だって言ったか、覚えているかい?」


 スゥは、少しばかり列車内でのことを思い返してみた。


「あっ……」


 思い出したスゥは、小さく声を上げた。


「光と闇が相反する、境界線より遥か彼方にある最果ての都。僕は、そう言ったね。光と言うのは、ホライズンの上側のことを指しているんだ。そして、闇と言うのはその反対の下側。どうして、ホライズンが光と闇の上下に別れているのか分かるかい?」


 スゥは首を横に振った。


「それはね、楽しいことや嬉しいことは当然あるだろう。けれど、その反対に悲しいことや辛いこともあるだろう。この街は、それが具現体系化された形そのものなのさ。良い感情が上側を肥大化させ、悪い感情が下側を肥大化させる。光と闇、その相反する感情が絶妙でいて、微妙なバランスを保っているのさ」


 スゥは、何となく程度には理解出来た。


「闇は、必要でしょうか……?」


 スゥは、小さな声で聞いた。


「もし、光だけならずっと楽しいことや嬉しいことしかないんですよね? それならいっそ、光しかない方が良いんじゃないですか?」


「スゥは、闇が無いと言うことが、どう言うことか分かるかい?」


「悪いことが無い、と言うことじゃないんですか?」


「確かに違いないんだが、それとは少し違う。闇を知らない人は、人の痛みを分かってあげることの出来ない人になってしまう。それは、人として成長が出来ないと言うことだ。僕は、スゥにはそん人になって欲しくない」


 クロードは、スゥの頭を撫でた。


「だから、人の優しい光も、人の痛い闇も理解出来る――そんな人になってくれ」


 スゥは、撫でられるのが妙に照れ臭かった。


「私なんかが、なれるでしょうか?」


 スゥは、不安気に聞いた。


「なれるさ。スゥならきっと――」


 ――誰が付けたのかも分からない。


 ――誰が呼び始めたのかも分からない。


 ――どんな意味があるのかさえ分からない。


 ――光と闇が相反する、境界線より遥か彼方にある最果ての都、ホライズン。


 そこには――


 光と闇を境界線で隔てる――未知な世界があった。


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