部下の定時連絡がどうでもいいのに気になる
リハビリ短編3作目。お手柔らかにお願いします!
「隊長! 定時連絡です!」
部下の中本から、通信機に連絡が入る。宇宙からの未確認生命体が多数確認される今の時代、俺たちみたいな調査隊が重要な役割を担うからな。こういう定時連絡はかなり大事だ。
「おう、どうした?」
「現状今日は未確認生命体の目撃情報はありません!」
「そうか、それはいいことだ。今日は平和かもな」
「ただ、これは言いにくい報告ではあるのですが……。基地近くのラーメン屋が閉店するそうです」
「どうでもいいわ! なんだその庶民的な報告は!? 井戸端会議じゃねえんだぞ!」
「閉店理由としては、競合のタピオカ屋に客を取られ、商売が成り立たないからだそうです」
「競合してる!? 全然競合要素無い気がするけど!?」
「ラーメンとタピオカのカロリーは大体同じくらいだそうです」
「カロリー量で競合認定してんの!? だとしたら浅はかだろ! 内容が被ってねえし!」
「真似してラーメンの中にミルクティーを入れたら不評だったこともあるらしいですよ」
「真似するとこそこじゃねえだろ! せめてスープにタピオカ入れるとかしろよ! ……いやしちゃダメだろ!」
「あと横須賀基地周辺で新種のタコが発見されたそうです。そのタコは人語を話し、光弾が出る銃のようなものを持っていたと報告があります。博物館への寄贈を目指して、行方を追っているそうですよ」
「それ未確認生命体じゃねえの!?」
中本……。なんでこいつの報告はラーメン屋がメインなんだ!? 絶対に最後の方にあった報告のが重要だろ!?
でもあのラーメン屋潰れるのか……。最後に行っとこうかな。
中本の報告を受けた後、俺は隙を見て基地を抜け出し、ラーメンを食べに向かった。
「あー美味かった。あの味出せるのにタピオカ屋のせいで潰れるなんて、もったいねえなあ」
腹をさすりながら基地に戻る。やっぱあそこのラーメンは無くすべきじゃねえよ。俺大好きだもんあの味。いや流石にサービスとか言ってキャッサバ入れようとしてきたのはビビったけどさ。せめてタピオカだろそこは。なんで未加工なんだよ。
隊長室に入り、モニターの前の椅子に腰掛けると、またしても定時連絡だ。
「隊長! 定時連絡です!」
「おうまた中本か。てことはもう1時間経ったんだな。早いな」
「隊長、時間が過ぎるのを早く感じるのは加齢のサインらしいですよ」
「うるせえよほっとけ! 歳は取るわ! 仕方ねえだろ!」
「しかし加齢は放っておくと絶命の危険が」
「そういうもんだろ! それで死んだら寿命だよ! いいから定時連絡をしろよ!」
「近くのラーメン屋が閉店した後ですが、跡地にバナナジュース屋ができるそうです」
「知らねえって! その報告いる!? なんでそんな若い女しか持たねえ飲み物ばっか売るんだよ! この辺で需要ねえだろ!」
「実は自分もバナナジュースには目が無いんですよね。バナナの葉で肉や魚を蒸し焼きにしたものを、搾って飲むのが美味いんですよ」
「それバナナジュースじゃねえよ! どっかアジア圏の料理だろ! お前が飲んでるのは肉汁じゃねえの!?」
「隊長、料理名はペペスって言うんですよ。ちゃんと覚えてくださいね」
「知らねえって! 余計なこと覚えさせんな!」
「あと横須賀基地でタコライス型の珍しい生命体が発見されたそうです。博物館への寄贈を目指して行方を追っているそうですよ」
「だからそれ未確認生命体だろ! 横須賀基地はなんで博物館への寄贈を目指してんの!? 呑気か!」
「では調査に戻りますね」
「まともな調査しろよお前!」
中本との通信が切れ、また部屋に静寂が訪れる。しかしバナナジュースか……。飲んだことねえけど美味そうだな。もう店出来てたりするのかな? いや流石にまだラーメン屋か。さっき行ったもんな。いやでも、開店が近いならキャンペーンとかで配ってたりしねえか? ちょっと覗きに行くか。
「いやあ、まさかキッチンカーで先行開店してるとはな。フライングキャンペーンで半額だったしラッキーだった!」
Lサイズのバナナジュースを片手に持ち、意気揚々と隊長室に戻る。流石に先行開店だからか並んでて、1時間ぐらいかかっちまったが……。まあバナナジュースを楽しめるならいいだろ。
バナナジュースに口を付けようとした時、またしても通信機が起動する。
「隊長! 定時連絡です!」
「おう、また中本か。1時間おきに律儀に連絡しなくていいんだぞ。なんかあった時だけで」
「何かあったから隊長に連絡をするんですよ! 大変です!」
「どうしたんだ? 遂に未確認生命体をキャッチしたか?」
「いえ、近くの公園に公衆トイレあるじゃないですか。あそこリフォームして全部洋式トイレになるらしいですよ」
「めちゃくちゃどうでもいいわ! なんだその小学生の報告は!」
「でも、ちゃんとビデも付くんですよ」
「どっちかって言うと付けて欲しいのはウォシュレットだろ! なんでビデオンリーなんだよ!」
「ビデが付くのは男子トイレだけらしいですけどね。予算的に」
「なら女子トイレに付けろよ! 男子トイレでビデ使うのは特殊な性別のやつだけだわ! なんでその簡単な2択間違えんの!?」
「あと横須賀基地でタコス型の生命体が発見され」
「またかよ! どうせまた博物館への寄贈を目指してるんだろ!?」
「いえ、それが物凄いスピードで本部に向かっているらしく、あと少しで隊長のところへ到達するそうです」
「早く言えよ! 一大事じゃねえか! え、急に未確認生命体来んの!?」
「大丈夫ですよ隊長なら。未確認生命体ぐらいいつも通りリボンで捕まえてやればいいじゃないですか」
「俺武器としてリボン使ったことねえよ! 美少女戦士か!」
「では調査に戻りますね」
「おい待てって中本! お前もっと情報をだな……」
通信が切れた瞬間、後ろで轟音が響く。ゆっくりと振り向くと、巨大なタコスのようなものが、ウミウシのように動いてやがる。気持ち悪いな……。しかしこんなやつとどう戦えばいいんだ? 見たところ軟体系だから、打撃が効きにくい気がするが……。
……ん? よく見たらあの未確認生命体に何か括り付けてあるな。平たいテープのような……。
うんあれリボンだわ。新体操とかで使うやつだわ。あいつ本当にあれ用意したのかよ! バカなの!?
こちらに向かって来る未確認生命体。ひらりと躱して後ろを取った俺は、リボンを取って構える。俺とタコス型未確認生命体の、リボンとレタスが交わる死闘が幕を開けた。




