文化祭で彼女が出来るって都市伝説じゃないのか?
新学期が始まってから1か月ぐらいが過ぎた。
「玲央、そろそろ文化祭だな」
「あー、そうだな。彼女とイチャイチャしてればいいさ!」
「おいおい、急にどうしたんだよ。別に文化祭だからって彼女とイチャイチャする訳じゃないし!」
「いいや!田中、お前は彼女がいるからそうやって余裕かましてるんだ!にくいわ!キーーッ!!」
「男がヒス起こすなよ。それよりさ、俺達の文化祭の出しもの、あれどう思うよ」
そういえば、文化祭の出しものってのもあったな。
他のクラスは、メイド喫茶やら、お化け屋敷やら、良く分からん展示会やら色々工夫されているが、俺達のクラスは違う。
あれはそう、昨日の文化祭何するか決める作戦会議の時間の話だ。
「ちょっと男子~~!真面目にやってよ~!」
「あー出た出た『ちょっと男子~~♪』す~ぐ俺達男子のせいにする」
「だって、ずっとふざけてばっかりじゃん!!」
とか何とか言い合ってる陽キャどもがいた。
いや、もちろん俺も陽キャだ!!
陰キャも出来る陽キャ、つまり、中性リトマス試験紙キャ!
それよりも、だ!!
「そうだよっ!!何で男の俺達が女装してメイド喫茶やらんと行けないのかっ!!」
「だよな~、んで女子は執事役だろ?大体メイド服とかどうするんだよって話よ」
「…田中、お前はいいよな、彼女からメイド服借りて、パンツもブラも借りれるから」
「借りねぇよ!!パンツまでは借りない!」
「ってことはブラは借りるのか?」
「…借りないよ?」
うわっ!!凄く怪しい!!こいつ、彼女のブラを借りるつもりか!?
俺も負けてはいられん!!やるからには本格的に、そして徹底的に女装してやる!!
姉や妹がいる人は、その人から借りる、いない場合は、仕方なく嫌々クラスの女子が、もう着ない予定のスカートを貸すらしい。
「ということで妹よ。スカートとブラを借りるぞ」
「えー!!止めてよーーー!!ちょっと、おかーーーさーーーん!!お兄ちゃんが私のブラとパンツを盗もうとしてる~!変態お兄ちゃんを止めてよ~~!」
「お、おい、止めろよ!!盗むとか言ってないじゃん!借りるだって!それとパンツは借りないからなっ!!」
ドタバタしながら、何とか顔面偏差値75の妹からスカートとブラを借りる事ができた。
さて、試しにスカートを履いてみるか。
…どうやって履くんだ?
「妹よ、スカートの履き方を教えてくれ」
「横にチャックがあるから、履いたらそれを上げて、ボタンもこうやって。分かった?」
「分かった。じゃあ次はブラだ。これも教えてくれ」
「うわぁ~、お兄ちゃんが私のブラ着けるの、凄く嫌!」
「これも文化祭のためだ、諦めてくれ」
今回は初めてということもあり、妹がブラを着けてくれた。
――だが、
「痛ぇぇ~~!!!ワイヤーが!!ワイヤーが肋骨に食い込んで痛ぇぇ!!」
「我慢して!」
「無理!お前のブラ小さすぎ!!」
ブラを諦め、胸元はバスタオルを巻く事にした。
そして文化祭当日。
「田中、お前ブラ着けて来た?」
「いや、サイズが合わないから諦めた」
「…俺もだ、それにしても俺達のメイド姿って似合わないよな」
「そうか?玲央の猫耳カチューシャは似合ってると思うぞ」
「似合ってても嬉しくねぇ~!ちなみにスカートの中、どうしてる?」
「…ひ・み・つ・♪」
うぜぇー!!
っていうか、野郎のスカートの中なんぞ全くこれっぽっちも興味も関心もないが、田中が彼女のパンツを履いているのかどうかだけ気になる!凄く気になる!!読者のみんなだって気になっているはず!!
時間が過ぎ、交代となった。
つまり今は自由時間!
他のクラスの出しものに行けるぜ!メイド姿でなっ!!
「おい、見ろよ」
「4組の出しもののメイドってやつだ」
「お~い、4組~。お前等本格的だな」
見ず知らずの奴等が俺達に声を掛けてきた。
これがナンパってやつか。
俺、15歳になって人生で初めてナンパを受ける。
「あの、すみません、私ちょっと急いでいるので…」
「へへ、いいじゃねぇかよ、ちょっとだけだからさぁ~、ちょっとそこの喫茶店で、なあいいだろ?」
「あの、本当に私急いでるので」
「…お前等何やってるの?」
喫茶店で客引きをしている人と俺が、せっかくノリノリで遊んでいたら、田中が水を差してきやがった!
何ってやつだ!!
そんな楽しい文化祭も終わった。
メイド服や執事服のまま帰る奴等もいたが、俺はちゃんと着替えてから帰っている!!
常識人だからなっ!!
「あーーー!!スカート破けてるーーー!!」
どうやら妹から借りたスカートがどっかに引っかかったのか、破けていたらしい。
弁償しろしろうるさいから、以前海に行った時に拾った貝殻を渡してやった。
「これは、人魚が持っていたと言われる、伝説の貝殻だ」
「いいのー?そんな凄いものくれるの??」
妹は大変喜んでおられるようだ。
ちょろいな。ちょろすぎて将来が心配だよ。
翌日学校へ行くと、彼氏彼女が出来たという報告がちらほら聞こえてきた。
文化祭を通じて彼氏や彼女が出来るなんて、都市伝説だと思っていたのに、まさか本当にあったなんて…信じられんっ!!
「田中~、お前彼女いるだろ」
「いるよ?」
「俺にも誰かいい女紹介しろよ~」
「えぇ~…」
「えぇ~じゃなく、お前の彼女に『彼氏欲しいぃ~』っていう女がいるかどうか聞くだけでいいからさ~、何なら『伊庭屋君が好きっ!』っていう女がいないかも聞いてくれ」
「まあ、一応聞いておく」
俺はやればできる子!!
来月16歳の誕生日を迎える前に彼女を作る!!
そのためにあらゆる人脈を駆使して、彼女をゲットする!!
「玲央、聞いてきたけど、お前の事好きって女はいないってさ」
「ば、馬鹿な!!ああ、あれだな!!恥ずかしいから言えないっていうやつだな!」
「そのポジティブ思考、嫌いじゃないぜ!ついでに、今彼氏欲しいっていう女は結構いるらしいが、A子曰く『伊庭屋君は無理』らしい」
「なんでだよおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺の嘆きが学校中に響いた。
その夜、俺は枕を濡らしながら寝た。