夏と言えばプールだ!
中間テストが終わった。
そしてテスト用紙も戻ってきた。
国語60点、数学43点、理科50点、社会12点、英語35点。
平均、っていうのはあまり当てにならないっていう話はネットで見た事がある。
例えば一部の人間がものすご~く高い点を取ったり、低い点を取る事で、平均が大きく変化するからだ。
つまり、このテストも同じで一番高い点と一番低い点を取り除き、中央値で考えると、まあ大体50点ぐらい。
100点満点で考えると、ほぼ真ん中!平均ぐらいと過言ではない!!
という理屈を並べてみたが、親に怒られた。
「お兄ちゃん!お菓子買ってきて」
「おう、妹よ。兄をパシリに使うとはいい度胸だ、その度胸だけは褒めてやろう。で、何買ってきて欲しいの?」
「コーンポタージュバナナ味!コーンポタージュバナナ味のポテチのが食べたい!買ってきて!」
妹は今、中学3年生で受験で忙しい。だから兄である優しい俺が買いに行く事になっている。
「ちっ、仕方ねぇな。俺の優しさに感謝しながら、金をよこすんだ」
こうして妹から金を受け取り、コンビニへ。
さて、コーンポタージュバナナ味、バナナ味っと。
…ないっ!無いぞ!!
馬鹿な…。あの天下のどこを探しても、バナナ味のポテチが見つからない!!
「もしもし俺~、妹よ、コンビニにコーンポタージュバナナ味が無かった」
現状をスマホで妹に伝えると、別の店で探してこいとの新しい命令を受けた。
2件目、3件目と回ったがやはりない。
――いや、冷静に考えるんだ俺!
そもそも、ポテチにバナナ味なんてあっただろうか?
スマホで検索するとやはり無かった。
だから、コーンポタージュとバナナをそれぞれ買っていったら、妹は喜んでくれた。
そんな妹の将来を、少し不安に思う妹想いな俺。
「妹よ、もし彼氏が出来なかったら、俺が彼氏になってやるからな」
「うん、わかった~」
顔だけはいい妹は、あっさり承諾してくれた。
1か月が過ぎ、期末テスト前日、
「田中~、夏休みどっか遊びに行こうぜ~」
「明日からテストなのに玲央は余裕だな。もしかして諦めか?」
「馬鹿言うな!俺はまだ諦めてねぇ!!一夜漬けでやってやるぜ!!」
こうして無事、期末テストも終わった。
もちろん中間テストの時よりも低い点数で。
しかもギリギリ、補習も受けずに済み、夏休みをフルで楽しめる事になった。
「田中、プール行こうぜ!女子も誘ってさ~」
「プールか~、でも女子来るかな~?」
「お前、この前の運動会でちやほやされてただろ、お前が声を掛ければ来る!」
「嫌だよ!お前が声掛けろよ!」
「俺だって嫌だよ!!お前が声掛けろよ!!」
で、結局お互い女子に声を掛ける事が出来ないシャイボーイだったため、互いの妹を連れて来る事にした。
妹は直ぐにOKしてくれた。
俺の妹と田中の妹はクラスは違うが同じ学年ということもあり、また、俺と田中が親友ということもあって交流はあったからだろう。
つまり、俺のお陰ってことだな!
「お~、プール!2年ぶり!」
「ところで妹よ、お前の事は何と呼べばいい?」
「今まで通り妹でいいよ」
「そうか、じゃあ田中妹よ、君は何と呼べばいい?」
「じゃあ卑弥呼で!」
田中妹は卑弥呼。何ってノリがいいのだろう。惚れちゃいそう!!
俺達4人で遊んでると、クラスの女子と遭遇してしまった!!
「あれ?田中と伊庭屋~。プール来てたんだ。声掛けてくれればよかったのに~」
声を掛けてきたのは、クラスの陽キャ女子たちだ。まだ顔と名前が一致していないから、Aさん、Bさんと名付けておこう。
俺の近くにいるシスターズに気付いたのか、Bさんは、
「あれ?もしかして二人とも彼女連れ?」
「そうだよ!俺の彼女の卑弥呼!」
「彼女じゃないし!!」
くっ!気の利かない奴め!見栄ぐらい張らせろ!!
――ならば!!
「というのは冗談で、こっちの顔面だけいい子が彼女だ」
「初めまして、顔面だけがいい妹です。いつも兄がお世話になってます。ぺこりんちょ」
「…伊庭屋~、妹って言ってるよ~?それにしても妹ちゃんはお兄ちゃんと違って、ちゃんと挨拶出来て偉いね~」
くっ!!
なぜ妹だけ褒められているのか納得が行かん!!
連れの女が彼女でないことに満足したのか、AさんとBさんは去って行った。
「妹よ、そして卑弥呼よ。今みたいな事があったときは、ちゃんと俺に合わせるのが常識なんだよ」
「そうなんだ」
「妹ちゃん騙されたらダメだよ、そんな常識ないからね」
「あ~~~!!卑弥呼そういう事言うんだ!じゃあこうしよう。今から卑弥呼は俺の彼女な!」
「嫌ですぅ~~!」
「なんだとぅ~!!?俺のどこが嫌なんだよっ!!」
「見栄っ張りなところと、嘘を吐くところと、頼りないところ」
くっ、悪いところばっか言いやがって!!いいところだってあるだろ!!
ならばっ!!
「妹よ、俺の良いところを言ってみろ!」
「う~ん、奢ってくれるところと、私の代わりに買い物行ってくれるところ!」
「玲央、お前妹にパシられてるのか?」
「……いや?別に?どっちかっていうと、俺がパシらせているっていうか、何っていうか、まあ仲の良い兄妹ってやつだ」
こうして楽しいプールの時間はあっという間に過ぎ去り、家へと帰って来た。
その後も、夏祭り、花火大会と夏を満喫し、夏休みが終わり、新学期になった。
「伊庭屋!宿題を提出してないのはお前だけだぞ!」
「違うんです先生!俺は宿題をやった!でも起きたら宿題が白紙になっていた!信じて貰えるか分からないけど、そう言う事なんですっ!!」
予め考えておいた言い訳も通用せず、俺は新学期早々、居残りさせられる羽目になった。
学校で居残りをしていると、プールで出会ったBさんが話しかけてきて、
「ねえ、伊庭屋。後でちょっと学校の裏に来てくれる?じゃ、ちゃんと伝えたからねっ!!」
こ、これは…告白ってやつか!?
ついに俺の時代きたーーーーーーーーーーー!!
宿題なんて後回しにし、早速学校裏へと足を運んだ。
そこにはAさんがいて、
「あ、あの伊庭屋君」
「は、はいっ!」
ドキドキ!好きです?それとも付き合ってください?どっちだ?
つい顔からにやにやが出てしまったが必死で抑える俺。頑張れ俺!!
「えっと、この手紙を…」
「あ、はいっ」
汗ばんだ手で手紙を受け取ると、
「田中君に渡してねっ!じゃっ!」
そっちかぁ~~~!ちくしょ~~~~!!
Aさんはもう走り去っていってしまった。
後日、田中に手紙を渡した。
「何って書いてある?」
俺がのぞき見しようとしたら、
「見るなよ!」
拒まれてしまった。
数日後、田中はAさんと付き合ってる事を知った。
親友だと思っていた田中に裏切られた気分だぜっ!!
その日の夜、俺は不貞寝した。