できることを
俺は、親父の胸ぐらを掴んだ
「親父!!どうしても俺は貴明さんと戦わせない気か!!」
「純…今は辛抱するんだ いや、お前にもできることがあるかもしれない」
「えっ!?」
親父は司令官室のモニターを開いた
「貴明が戦いに出なきゃいけないと知り、滝くんは激しく動揺している なんとかお前が力になってやれ」
「そんな… あいつには、担任の先生がいるだろ!友達とか! 」
俺が言うと、親父は横に首を振った
「いや あいつの友達はまだ能力者であることを分かっていないんだ 分かっているのはあの滝くんだけだ 」
「で?俺にどうしろって」
「なぜ父親が戦い、死ななきゃならないのか 説明をしてやって欲しいんだ」
俺はその言葉を聞いて唖然とした
「いきなり、そんなことを知られてあいつなら、死にたくなる気持ちになるだろうよ」
「しかし」
「もし父親のことが好きなら、誰だってそんなこと聞いたら悲しむぞ!!」
親父は、俺が否定すると優しく微笑んだ
「……お前は、これから行く宛があるのかい」
「さあね」
「なら、君は私の医師を継いで医者にならないか」
「はっ!!?」
思わず大袈裟に驚いたものだから、親父は笑ってしまった
「っははは! 確かに暗がりの世界をずっと生きてきたお前には、訳が分からないよな」
「俺に医者が務まるかよ!」
「今の言葉だ」
「え?」
親父は腰に手を当てて堂々と言い放つ
「お前、さっき、私が死ぬ宣告をしてきて欲しいと伝えたら、そんなこと言ったら、息子が悲しむぞと言ったな 私たち能力者はついそんな気持ちをないがしろにしてしまう 」
「親父…」
「お前は確かにヤンキーだけど、優しい気持ちが確かにある 私は医師に向いていると思うがな」
俺は言葉を聞きたくなくて、つい体を後ろに向けてしまった
「それに、近頃のお前は学年トップの成績だそうだな?」
「なっ!!?」
「っふ、ふふ… 担任の先生から聞いたよ」
俺は一気に顔が赤くなった
「そんな呑気に、貴明さんが危ないってのに、俺を褒めてる場合かよっ!!」
「滝くんは恐らく、精神的に今、かなり苦しいだろう 自分の親が死ぬんだからな 誰かがいなければ …」
俺は仕方なく決意をした
「分かったよ、あいつの傍にいりゃいんだろ? だけど、いきなり知らないやつが傍に行って大丈夫か?」
「……そんなことも、言ってられなくなってきた」
「なんだって!?」
上空に飛ばされた貴明さんは、カルテー二から逃げ惑っていた
「くっ、なんでこんなにあいつが強いんだ!?」
「っははは!! お前の力が弱いんじゃないのか?」
「逃げている間に、力を使い切ってしまったか!?」
空を見ると、薄暗く怪しい雲が広がり、カルテー二の力はどんどん増していく
貴明さんは力がなくなり、もう最後の力は自爆する力しか残っていない
「っ――!!」
「下に降りるか?貴明」
「航介!!」
「お前を1人で死なせない」
テレポートで急降下して下へ降りた
「はあ、はあはあ…なんで、いきなり、力が減るんだ…!!?」
「カルテー二がなにか仕掛けたのか?」
2人はテレポートで一旦能力者施設へ避難した
「貴明さん!?」
貴明さんはかなりやつれた様子だった
「シルヴァ…俺は、もう…」
司令官の顔を見ると、貴明さんは泣きそうになっていた
「……悲しいが、死が近い…貴明の体はカルテー二の技に散々やられて、立っていられるのが不思議なくらいだ」
「そんな!!」
俺は、親父の言われたことを思い出し、出かける支度をした
「純、どこに行くんだ」
「俺に、できることがあるんだろ?親父 」
「……頼む 滝くんを、支えてくれ」
「ああ」
そうして、あの悲劇が始まろうとしていた