大勝負
「いくぞ…我々の力でどうなるか、検討もつかないけれど」
貴明さんは終始緊張していた
「みんな…私の力で、大戦争になるかもしれない、本当にごめん…」
隣にいた航介さんは最初から覚悟していたのか、焦ることもなかった
「なんのために我々がいるんだ シルヴァの国の住んでいる仲間も、今は同じく待機しているんだ どちらの国にも、被害が及ぶさ」
「しかし、これを封印しなければどちらにせよ、被害が拡大するだけだ」
「やるしかない 悪い方向にいこうが、良い方向にいこうが」
俺の親父も、覚悟していた
「いくぞ、みんな!!」
俺たちは改めて力を一点集中し、貴明さんと司令官に力を集めた
「"我々の力で…世界を守れ…この国に…平和を…!!」
貴明さんは一本の剣を次元に突き出した
「"平和よ、今こそ!!"ディマイズ・ソード"!!」
ありったけの力を込めて、俺たちは次元を封印した
しかし、まだ完全には塞がっていない
「くそ、ここまでか…」
俺は無理やり力を出したせいか、倒れそうになった
「純!!」
俺の仲間は体がふらつき、立っていられるのは司令官の仲間だった
貴明さんは再び封印を試みる
「くそっ、ロダ様の敵が、向こうで邪魔しているのか!?」
「ロダ様?」
「向こうの世界の国王だ 」
貴明さんが俺に答えてくれた
「力が…まだ足りないのか!?」
すると、急に次元が一気に大きくなった
「うわあああ!!!」
全身で抑えていないと、体が持っていかれそうになる
「みんな!!耐えろ!!くっこのままでは…!!」
司令官は巨大な次元の風圧でもかなり耐えられて立っていた
貴明さんも力が強いのか、ずっとふらついていない
「仕方がない 街に影響が及ぶ 私の息子たちにも迷惑がかかる ここは私1人でこの剣で、この次元を封じる」
「危険だ!!」
貴明さんは司令官に振り向き、優しく笑った
「ありがとう、司令官 今までこんな俺を、ずっと支えてくれて」
「貴明…!??」
「"ディマイズ・ソード"よ!!我が力で、この身を持って平和を与えよ!!」
「まさか、自滅!?」
俺の親父は咄嗟に貴明さんの体を抑えた
「やめろ!!貴明!!」
「俺はみんなの体のほうが大事だ!!俺の世界を滅ぼす力で、救ってみせる!!…行け――!!!」
貴明さんは自らの体で次元に飛び込み、次元を封印させようとした
「終わった…貴明…」
「いやだ、貴明、貴明!!」
「ん?なんか声が聞こえるぞ」
仲間たちは動揺しているが、司令官はまだ冷静だった
「まさか、失敗したのか!?」
貴明さんの声が、遠かったが段々こちらに聞こえてくる
「貴明の叫び声!?」
「こっちに来るぞ!?」
貴明さんは、なにかに追いかけられていた
「うわあああーー!!」
やはり、敵に捕まってしまった
「ロダ様の敵に捕まったのか!?」
「くっやはり、次元を封印せねば!!」
司令官は先程の剣で封印しようとするが、やはり出来ない
「なんだと!?」
「敵の仕業でしょうか」
「この国は、また我々の住んでいる国のように、こいつらに乗っ取られる!!」
敵の1人が、ニヤリと笑い司令官に近づいた
「君は確か、ロダ様の護衛か」
「うるさい…敵が話かけるな…」
司令官はすっかり疲れきっていた
「ふ、なら仲間を殺すぞ」
「やめろ!!」
「それか、国を滅ぼすが…」
俺の親父は立ち上がった
「おい、そこの敵 名前はなんていうんだ」
「親父!!」
「ああ、私はゲイド そいつの首を絞めているのはカルテー二だ 」
貴明さんは、敵に首をきつく絞められている
「くっ…」
「ふっははは… 仲間が惜しいなら自分の力を解放しろ 世界を滅ぼせ」
「なんてことを!!」
「タイムパトロールはまだか!!」
敵に言われ、貴明さんは抵抗しながら苦し紛れに答える
「いいだろう…俺の力…全て解放しよう…ついでに次元も封印する」
「貴明!!」
「やめろ!!」
「俺の力が解放しなかったら、この戦いは終わらないんだ!!ゲイドやカルテー二にまたずっと追われるだけだぞ!!」
俺は自分の無力に、ただ、悔しい思いをした
「我々も、覚悟する…」
「司令官!」
「ゲイド…カルテー二…お前らも滅ぶがいい!! 」
貴明さんがそういうと、力を解放して眩しい光を放った
町中地響きが鳴り、急に空も暗くなった
「これが…貴明さんの力!?」
「みんな、なるべく遠くに離れろ!!」
「司令官!?」
「我々は、受け継がなきゃいけないんだ この戦いを」
俺たちはテレポートで一時期避難した
「"能力解放"!!」
司令官と同じ技が、貴明さんにも使えた
次元はみるみる穴が小さくなっていき、周りの敵の数も少なくなっていった
しかし、まだカルテー二は残っていた
「はあ、はあはあ… くそっ、これまで、か…」
貴明さんは力尽きたのか、体がふらつき始めた
「世界は滅ばなかったな この次元があるからか その力を解放したのにまだ生きているのか 恐ろしい」
カルテー二は貴明さんの目の前に立った
「失敗したなら、仲間を殺すしかないな」
「やめろ… なら、俺を殺せ…」
その言葉に、カルテー二の目がギラっと大きく開いた
「その力、私がいただく!!!」