たとえ敵でも
「まさか、こんな事態になるなんて」
仲間が誰もいない状態で、俺一人であの風穴を封じられるのか
あの巨大な穴で、敵も行き来ができるタイムワープのような次元を
こうなりゃ、仲間の1人や2人、いや、それ以上の力が欲しかった
「あんな巨大な異次元へのワープを封じるなんて、俺にはまだまだ力が足りないよ…」
すると、俺の携帯から一本の着信が入った
「はい」
『純さん、司令官から仲間になって欲しいと呼ばれ、今次元の近くまで向かって来ました、佐々本陽仁です!! 』
「陽仁…? なんで俺のヤンキーの敵側が」
俺は能力者施設の自室で仮眠を取っていたがおもむろに体を起こし、 頭をなんとか呼び起こす
『俺も能力者になったんですよ!純さんとは目的は違いますが、同じ能力者です!』
「……っ!!」
『純さん、あなたと協力したい、という女性が来ますから、司令官に聞いてみてください』
女性、と聞いて俺はなぜか体に力が入った
「今から行ってみるわ、じゃ、準備が整ったら俺も行くんで」
どちらかといえば、能力者はまだ男性のほうが多い、女性で能力者はまだまだ少ない
俺は今だぼーっとした頭で司令官室へ向かった
「司令官」
「ああ 陽仁から話は聞いたかい?」
「はい、まさか俺のヤンキー時代の敵チームから呼び出すとは思わなかったですよ」
俺は苦笑いをした
「はは…彼も、能力者になったのでね」
「俺や陽仁は、ヤンキー時代のリーダーに、世話になってるんです そのリーダーが、知らない誰かの能力者にやられて…っ!!」
思わず強く拳を握りしめる
「それについては、現在調査中だ そして、君の新しい仲間だ」
「……女…!!」
その女性はにっこり笑って俺を見つめる
「はじめまして、情報支部の"藤山ゆうみ"です」
全身、淡いピンク色の服が特徴的だった
髪はロングヘアの茶髪
「ああ、俺は荒井純」
「もう1人紹介するよ」
「はじめまして、君が荒井純かい?」
「あ?ああ」
そいつは終始、不敵な笑みを浮かべていた
「なにを考えている…」
「いや? 深い意味はないよ はじめまして、私は"黒瀬健悟" 司令官、私はこの純の敵対しているリーダーです」
「なんだと…!?」
司令官は、街を歩きながら能力者であると判断したら誰でも構わずスカウトしているらしい
人手不足だからって、なにも俺の敵を仲間にするなんて
「司令官!!ちょっとはそいつが何者か聞いてからスカウトしてください!!」
「あの巨大な次元を封じるのは、たった3人では無理なんだよ、あの貴明の力を持ってしてもな 貴明の体が、引きちぎれるぞ」
健悟は俺の顔を見ながら、司令官に訴える
「司令官 私は純とは反りが合わないんですよ、どう協力させようが分かり合えません 」
俺は更に怒りが増す
「今はそんなこと言ってる場合じゃねえだろ!!俺たちのヤンキーの人事の事より、今はあの巨大な次元を封じるのが大事だ!!」
俺の様子を見て、健悟はたじろぐ
「純…お前…変わったな…」
「あの次元は、俺たちの争いなんかあっという間に飲み込んじまうんだぞ!!もし広がったら、この街なんかひとたまりもない!!」
健悟は立て続けに言う俺を見て感心すらしていた
「……っふふ、ははは、君は本当に変わったね 仕方がない、今回は冷戦状態で行こうじゃないか」
「健悟…」
「そう、争いは何も生まないのだ 悲しみしか生まれない」
ずっと俺たちのやりとりを司令官は黙って見ていた
「司令官…」
「ゆうみ、君はみづきのサポートをお願いする 今夜我々はあの巨大次元を封印してくるよ まあ、一回で成功するとは、到底思えない」
司令官は不安そうな様子だった
「ああ、もちろん、別チームとして貴明たちも一緒に次元を封じるからよろしく頼む」
「了解!!」
一回で成功しない、それがどんなに怖いか
貴明さんを持ってしてもあの巨大な異次元を封印出来ないなんて
既に俺たちが来る前に貴明さんはまた一人で封じていたが、やはり無理らしい
「くそっ、やはり私の力では…!!」
司令官は違うことで恐れていた
「何度も貴明が失敗している、次元が壊れたら、この街に敵が来やすくなる…!!」
「シルヴァ!!今まで黙ってて悪かった!!でも、今だけは!!助けてくれ!!」
流石に貴明さんも焦りはじめていた
テレポートで空に向かい、問題の巨大次元の近くへ向かう
「これはあの時よりかなり大きいな… これはまずい」
「この街は飲み込まれるんですか!?」
「……いちかばちか、私たちの力を与えるしかない」
俺たちは心を合わせ、それぞれ集中する
「いくぞ…皆…!!」
司令官は白く大きいオーラを身にまとい、攻撃態勢に入った
「了解!!」