第5話 異世界へようこそ、美少女男装勇者カノン様
俺が転生してから7年程、経った時だった。こちらの世界でのお母様、エリミアお母様に言われた一言。
「この娘の魔法の才能は、ウィスタリア家が始まって以来の才能です。ですから、1日でも早く魔法を習わせる為にも《ファイアス魔法学園》に入学させましょう」
お母様のその鶴の一声で齢七歳(心は20歳位)は強制的に魔法学園へと入学させられ、長い女子生徒寮を強いられる事になってしまったのだ。
〖ファイアス学園女子寮〗
「へー、それでこっちの世界では先輩、同級生、後輩達が少女から美少女へと成長していく過程を長年月間近で見ていたんだ。男の子の心で?……凌久って最低なんだね」
「今の説明のどこに俺が変態になるんだよ。俺は全能の神の勘違いのせいで、金髪少女に転生した俺が」
「んー? 全部? ていうか何で転生しても顔は前と同じなの? 漫画とかアニメだと普通別人に転生するものじゃないの?」
「そんなの俺が知りたいわ。何でイケメンじゃないだ? 何で女の子にTSして産まれ変わってだよ……もう、ナニも失くなっちまって女の子をそういう目で見れなくなってだよ。それに歳が離れ過ぎてお兄ちゃん目線だよ。この女子寮の少女達は皆、可愛い妹達みたいにしか見えないんだよ……」
俺は長年誰かに言いたかった事をブツブツ囁いていた。
「……何かゴメン。凌久も大変だっただね」
「だから、今は凌久じゃないですわ。今はセレスティナ……魔術師 セレスティナ・ウィスタリアですわ。そして、貴女はこの世界に召喚された…」
翌朝〖ファイアス学園 高等部〗
「勇者召喚でこの世界に召喚されました。カノンです。宜しくお願いします」
「キャー!」「あの方がカノン様?」「好きよ素敵だわ!」「イケメン! イケメンだわ」「勇者様!!」
「朝からうるさいぞ! 静かにしろ。バカ共、カノン編入生の席は……そうだな。セレスの隣が空いていたな。あそこに座れ。カノン編入生」
このクラスの担任、ミリナ先生がこちらを指差して、カノンに指示している。
「大人気ですね。カノンさんは」
「うん……人気」
「それでロイは何をしていますの?」
俺の席の左隣に座っている。賢者兼俺専属メイドのロイが、何故か教室で紅茶とお茶菓子の準備をしている。
「うん……御茶会の準備。これもメイドの勤め」
「お止めなさい。ここは教室ですよ。そんな事、あの鬼教師ミリナ先生に見つかった怒られますよ」
「うん……セレス。もう手遅れ」
「はい? 何ですって?」
俺はロイが指差した方に目をやると。
「ほう。朝から教室で御茶会の準備とは、相変わらずアホな事をしているな。セレス」
「わー、美味しそー! 高そうなお菓子だね? 凌……セレス」
カノンとミリナ先生が俺達の近くに来ていたみたいだ。
「……これは違いますの。ミリナ先生……そうこれは歓迎会……カノンさんの為の歓迎会様のお菓子を用意したんです。そして、こちらがミリナ先生様の高級お茶菓子です。ねえ? ロイさん。あれをミリナ先生に餌付けするんです」
「うん。ジャーン!……リリィ菓子店のマカロン!」
ロイはどこからともなく焼き菓子のマカロンを取り出した。
「ほう。あの名店のか 一限目は私の授業だったな。ちょうど良いか……お前達。一限目のじゅぎょは自習に変更する。今からカノン編入生の歓迎会をやるぞ。セレスティナが茶菓子を用意してくれた。ありがたく頂こう」
「「「「「キャー!! セレスティナ様。ありがとうございます。いつもいつも私達の為に」」」」」
「え、ええ、焼き菓子は……(ロイのアホ! 何でこんなに用意してんだよ。)…沢山ありますので、皆さんで頂きましょう」
クラスの女生徒達が俺にお礼を言う。
「モグモグ……凌、セレスは皆に慕われてるね。良かった。良かった。こっちの世界でも人気者なんだね。モグモグ……」
そして、勇者・カノンは俺の右の席に座り、いつの間にかお菓子を頬張っていた。コイツ、御茶会のマナーも知らんのか。放課後、徹底的に叩き込んでやるからな。
「うむ。リリィの店のマカロンはやはり旨いな」
「ミリナ先生。貴女もですか」
……俺のこちらの世界での生活はこんな感じだ。案外、皆、のほほんとしていて楽しい学園。そこにこれから勇者・カノンが加わる日々が始まる。色々な生活が……学園と冒険の日々が。




