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神の庭園〜箱庭管理人〜 テンプレ破壊の復讐神、異世界へ降臨す。  作者: coz
第五章【南国】〜紫水姉弟強化の旅〜
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97話 陰キャのレイス

カリンとセイト、2人の力でドラゴンを倒し、新たな道が開かれた。



「あれ?水晶が出てこないよ〜?」

「本当だ、どうなっている?」

「もしかして…攻略したんじゃないか?」

「え!じゃあお宝ゲット!?」

「おい、なんでそうなる、目的が違うだろ」

「弟よ…少しはマシになったと思っていたのに…」

「い、いやぁ、テンション上がっちゃって〜、えへへへ…」



とりあえず進まないと分からないかと、3人は扉を開けて進んでみた…



「ここは…」

「また扉だな」

「お城に戻った感じだね〜」



目の前には20mほどの幅広い1本の通路、床、壁、天井全てが真っ白に凍りつき、冷気が充満している、その先には大きな両開きの扉があった。



ゴゴゴゴ…



ガチャ…



「レン様方!攻略おめでとうございます!」

「んん?ザルドか」



通路の脇に扉が出現してザルドが出てきた。



あれは何処にでも扉を繋げられるのか?執事権限ってやつかもな、そういう魔道具を持たされているんだろう。



「はい!先刻は失礼な対応をすみませんでした、まさか本当に攻略なさるとは!」

「いや、最後のドラゴンはなかなか強かったぞ、深層第1区の魔物より強かったと思う」

「なんと!深層で狩りの経験が!?」

「ああ、メインの狩り場が深層だからな、まぁ、狩りと言うよりサリーの鍛錬に使うんだけどな」

「それは素晴らしい実力をお持ちですね!」



まぁ、開拓者じゃない体は続けたほうが良いだろう、騙して悪いなザルドよ。



「それで、あの扉が?」

「はい、氷王レイス様の自室になります」

「へぇ、謁見の間じゃなくて、自室なんだな」

「この城には謁見の間はございません、レイス様とお会いする時は、お客様とレイス様だけで会う決まりとなっております、ただ…」



突然歯切れが悪くなるザルド。



「どうした?」

「手紙は渡したのですが、いい返事ではなかったのです、しかし!迷宮を攻略したなら話は別です、きっとお会いになってくださるでしょう、それではご武運を…」



タッタッタッ…ガチャ、バタン…



えっ?これどうすんの?



「レンちゃん、執事さん帰っちゃったよ?」

「どうするんだ?」

「う〜ん、とりあえず扉の前まで行ってみようぜ」

「そうだね〜」

「では行こう」



―――



「大きな扉だ…」

「何も反応ないね〜」

「いちおう両開きっぽくなってるから扉だとは思うんだけど…開くのか?無理矢理はやめておきたいし」



『は、入ってくだされ…』



「「「え?」」」



パキ…ゴリゴリゴリ…



突然通路中に声が響いて扉が勝手に開き始め、その先には…さらに普通の木の扉があった。



「とりあえず進もう」

「「了解」」



ガチャ…



え…なんか、中は地球でよく見る、平凡なアパートの部屋って感じなんだが?



「ここは…異世界だよな?」

「うむ、そのはずだ…」

「なんかほっこりするね〜」



部屋に入ると見慣れた造りの玄関、その先の床は1段高くなっており、ご丁寧にスリッパが3人分用意されていた、自然とレン達は靴を脱ぎ、用意されていたスリッパに履き替える。



ここはキッチンだな…普通の部屋なのに違和感しかねぇ…



キッチンからは扉が2つあり、どちらに入るか悩んでいると。



『む、向かって左の扉に入ってくだされ、拙者の部屋でござる…』



「「…」」

「ねぇレンちゃん…僕と同じ匂いがするのは気のせいかなぁ?」

「俺もそんな感じがする…」

「うむ、中学になったばかりのセイトと同じ口調だな、あの時は将来忍者になるとはしゃいでいてな」

「セイト…」

「姉ちゃん!バラさないでっ!」

「とにかく入ってみよう」



ガラララ…



扉は引き戸になっていて、中は6畳ほどのこじんまりとした部屋、水色の絨毯の上には、こたつと座布団、それ以外は何も無く、こたつの上には食べかけのフルーツと思われる何か、あとは機械の部品のようなものがちらほらと置いてある、そしてその前に仁王立ちをしてこちらを見つめている人物、目をギンギンに見開き、まさに必死といった表情である。



「は、はじめまして!拙者の作った迷宮を攻略せし者よ、よ、ようこそ我が城へ!せせ、拙者、ひょ、氷王レイス、と、申す者で、ござるぅ!!」



白の太いラインの入った緑色のジャージ、毛玉だらけで安っぽさが滲み出ている、上は大きめの黒Tシャツ、シャツの真ん中には白文字でデカデカと[不法入国者]と、縦に漢字で書いてある…





陰キャの匂いが…あ、氷王が泣きそう…髪は綺麗な黒髪ストレートで、顔はめっちゃ可愛いのに、オタク系女子なのか…ぐるぐる瓶底メガネでも掛けてたら最高だったが、残念ながら普通のメガネだ。



氷王レイスは左手を腰に置き、胸をそらし、右手を胸の上に置き、大声で自己紹介したのにも関わらず、3人から何も反応がないので目がうるうるしてきていた。



「…はじめまして、俺はレン」

「あたしはカリン」

「僕はセイトだよ〜」

「ほぅほぅ〜、3人とも黒髪とは…渡り人ですかな?」



レイス復活。



「そうだ、お前もだろ?勇者レイカ」

「「「!?」」」



え?なんでカリンとセイトまで驚いてんの?あれ…確かレイカの存在は知らなかったか、言い忘れてたな。



「な、なぜ…拙者の前世の名を…」

「お前、洗脳されてるんじゃなかったのかよ、されて無いだろ」

「拙者、元勇者故、その程度はなんて事ないのでござる」

「いや、でも初期の頃は洗脳されてて、変な魔道具作らされてただろ、俺達はこの世界に連れてこられたあと、その魔道具を使って色々されたんだが?」

「な、なんと!?そ、それは誠に申し訳ない事をしたでござる〜!」



流れるような素早い土下座だな、慣れてやがる…



「まぁいいよ、レイとマリーが心配…ていうか泣いてたぞ、お前は死んだと思ってるから」

「拙者も会いに行きたいのでござるが…」

「なんか動けない理由でもあるのか?もしかして、ルードか?」

「い、いえ、外に出たくないでござる…」

「おい、ニートかお前は…はぁ、でも普通で安心したよ、いや普通かどうかは分からんが、とにかく元気そうではあるな」



友達の心配より自分優先かよって思うけど、ニートってのはそんなもんだからな、あまり怒っちゃだめなんだ、それに俺も仕事を辞めていた期間はニートみたいな生活してたから、気持ちは分からないでもない。



「ははは〜、拙者、オープンニートでござるからな」

「なんだよオープンニートって、ニートなのかそうじゃないのか、どっちなんだよ…はぁ、それで?お前は引きこもって何をやってるんだ?」

「隣の部屋で物作りをしてますな」

「へぇ、まぁ予想通りっちゃ予想通りだな」

「見ていかれますかな?」

「そうだな、見学させてもらおうか」

「了承したでござる、ではついてきて下され」



ガラララ…



キッチンからの扉以外にあと2つの扉があり、その片方へと入ると…



「広っ!」

「なんだこれは…」

「レイカちゃん凄いねぇ、これは空間拡張の技術なの?」



およそ50㎡はありそうな大きな部屋、高い天井、床も壁も天井も全て金属で出来ていてとても近代的な作りだ、作業台のようなものがいくつも置いてあり、それぞれ作りかけの何かが置いてある。



「うむ!そうでござる!この部屋で毎日物作りに没頭して、打倒ルードを目指しているでござる」



なに?打倒だと?やはり気付いていたか、そりゃそうか、殺されそうになったんだもんな…



「レイカ…お前は同志だ!俺も打倒ルードにこの異世界人生を賭けている!」

「おお同志とな!?初めて会ったでござる!」

「出来れば仲良くして欲しい、今日は土産も持ってきた…これだ」



ズシーン



部屋がかなり広く、それなりにスペースがあったので、首なしデビル・コールドリザードを出す。



「ふぉぉぉ!こんなの見たの初めてでござる〜!凄いでござる〜!凄いでござる〜!」

「良かったらやるよ、お返しもいらない、ルードに有効な物でも作ってくれ、まだ欲しかったら、なんでも狩ってきてやるぞ?」

「レン殿!…拙者の本当の名は、造麗華(つくりれいか)!仲良くして欲しいでござる〜♪」

「もちろんだ、この2人もルードに恨みを持つ、元勇者の2人だ、仲良くしてしてやってくれ」

「よろしくね〜」

「よろしく頼む」

「うっ…陽キャの気配が…」

「おい、それは俺からは陰キャの気配がするって事か?」

「そうなりますな!」

「そう…か、じゃあしょうがないね!心当たりしか無いからねっ!」

「レイカ、改めてあたしは紫水花梨だ、よろしく♪大丈夫、こいつは弟の紫水聖斗、見た目は陽キャだが、中身はレイカに負けないほどの陰キャ野郎だからなっ!」

「いや姉ちゃん言い方!家族を紹介する時の言葉じゃないよ!間違ってないけどねっ!」

「う、うぅ…」



突然、両手で顔を覆い泣き出すレイカ…



「おい!どうしたんだ!?」

「た、楽しいでござる…こんなに楽しいのは久しぶりで…レイとマリを思い出してしまったでござるよ」

「いや、外出ろよ…まぁ無理か、そのうち連れてきてやるよ」

「ほ、本当でござるか!?」

「ああ、楽しみにしていろ」

「よろしく頼むでござる〜♪では皆様にはこれを…」



レイカが手の平を上に向けると、そこにシュッと腕輪、指輪、ネックレスが出現する。



「おお、収納か?凄いなレイカは」

「ふふんでござる〜」

「まぁ、俺も使えるけどな」

「なんと!?さすがは陰キャ仲間!」



いや、さっき蜥蜴を出したの見ただろうが…



「おい、陰キャは関係ないだろ、それでこれは?」

「この3つのうち、好きなデザインを選ぶでござる〜、これは城の入り口から、この部屋に直接来るための通行手形みたいな物でござるよ」

「相変わらず凄い技術だな、俺は腕輪をもらおうか」

「あたしは指輪で」

「じゃあ僕はネックレスで〜」

「あとはレイとマリーも腕輪でいいかな…俺とおそろいだと喜びそうだから」

「了解でござる〜」

「よし、顔合わせも済んだし、そろそろ行くか?」

「もう行くのでござるか?泊まっていってもいいのでござるよ?」

「確かに宿もチェックアウトしちゃったし、こいつらのレベル上げの拠点も欲しかったから、都合はいいんだけど、本当にいいのか?」

「全然いいでござるよ〜、では皆の分の寝室をちょちょっと作ってしまいますぞ」

「呆れるほどの力を持っているな、俺でも真似できなさそうだ、そりゃ鼻くそにも目をつけられるわな」

「鼻くそ?」

「ああ、ルードのコードネームだ、鼻くそルードな」

「鼻くそルード、最高でござるな」

「神も認めるコードネームだ、世界に認識されるほど広めてやろうぜ」

「それは傑作ですなっ!はははは♪」



その後はレイカの部屋のこたつに入り、この世界にきた経緯や、レンと鼻くそとファーニックの関係なんかを話した、レイカだけでなく、カリンとセイトも驚いていたが。



「今日はもう寝るか、あ、能力は返還しておいてな」

「レンちゃんはなんで能力の利息をもらわないの?」

「能力の数値が端数になるのが嫌だからだ」

「そうか〜、気持ちは分かる」

「皆にこれを差し上げるでござる、これで夜もぐっすりでござる〜」

「こ、これはっ!」

「いいの!?やったぁ!」

「なんか、懐かしいな、これが普通だったんだがな…」



いつの間に用意したのか、ジャージを手渡された、レンは黒一色、セイトのは黒に白の龍の絵が描いてある、カリンは薄紫色だ。



この短時間で人の好みがよく分かるな、人を良く観察している証拠だ、陰キャ特有かもな、仲良くなれそうで良かったよ。



皆それぞれ、新しく作られた寝室へ向かい、貰ったジャージを着て、その着心地に驚きつつ眠りにつくのであった。

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