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神の庭園〜箱庭管理人〜 テンプレ破壊の復讐神、異世界へ降臨す。  作者: coz
第五章【南国】〜紫水姉弟強化の旅〜
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93話 氷の迷宮①

南国レクステッドの高級宿、フリージングインのフロントで…



「すまんな、部屋を借りたのにずっと留守にしてしまって」

「別にいいのです〜、お金さえ貰えばお客様の自由ですから〜」

「ありがとう、いい宿だった、また利用させてもらうよ」

「はい!そのお言葉が何よりの喜びです!ご利用ありがとうございました!」



レン達は、組合へ行く前に一度チェックアウトしておこうと宿へ向かった、チェックアウトを無事済ませた後は、真っ直ぐ組合へ向かって歩いていく。



「はぁ、残念だったなぁ、もう少し泊まりたかった」

「頑張って自力で稼いで、余裕で泊まれるようになれよ」

「うん!僕頑張るよ!」

「あたしもだ」



―――



組合に入るやいなや、組合長に捕まり、執務室へ連行されるレン達。



「随分強引に連れてくるじゃないか、返事が届いたのか?」

「優秀な職員が多いからな、俺は暇なんだ、今日の朝早くに届いたぞ、ほらこれだ」

「管理者が暇なのは良いことだよ、サリーと北王にコツでも教えてやれ」



ここでレンはレイの所へ顔を出した時の事を思い出す。



そういえばレイ、あいつはなんで偽装を解いた俺に一発で気付いたんだ?まさかマリーもか?なんか聞くのが怖いな…



そう思いながら、机の上に出された書状を手に取る。



「さすがに中は見れないか」

「そうだな、さすがに封を破るわけにはいかんだろ」

「まぁ、紹介状って書いてあるし、サリーを信じよう」

「あとはそれを持って城に行けば、案内くらいはしてくれるだろ、知らんけど、謁見できるかも分からんがな」

「おいおい、本当に大丈夫なのかよ…はぁ、まぁ会える事を祈って行ってみるよ、最悪は強行突破だな」

「ほどほどにしてくれよな、俺も無事に会える事を祈っておく事にしよう」

「じゃあ行ってくる、あ、そういえばグレーピグミーだが、殲滅しておいたぞ、まだ2区には行ってないから、そのうち卸しにくるよ」

「群れるとは言われていたが、実際どのくらいだったんだ?」

「想像以上だった、542匹も群れてたよ、ギッチギチだったな」

「542!?」

「ああ、ほぼ全滅だ、はははっ」

「はぁ、まぁいい事なのだろうな、来年は大変な事になりそうだが」

「大変な事?」

「来たばかりの渡り人じゃ知らないか、数十年に一度、どこかしらの魔物が溢れる時がある」

「スタンピードみたいなものか…」

「そうだ、この世界ではオーバーフローと言われている」

「溢れる…ね、そのままだな」

「”溢れ”と言っている土地もあるな」

「そうか、その溢れの何が大変なんだ?まぁ大変なのは分かるが」

「溢れ自体はまぁ、犠牲者も出るが、なんとか撃退はできるらしい、溢れるのは大半が弱い魔物だと言われている、俺は経験がないからな、言い伝えだ」

「そうなのか、それで?」

「非常に強力な世界振動が起こった前の年は、異常に開拓者組合が潤っていたという記述がある、すなわち魔物をたくさん狩れば狩るほどオーバーフローは起こりやすいと想定されているんだよ」

「世界振動…地上が広がるっていうやつか?」

「そうだ、広がる範囲が広ければ広いほど、より強力な魔物か、もしくは弱い魔物が大量に出現すると言われている」



なるほどねぇ、考えてみればそうだよな、この世界の魔力濃度を上げる要因は、人間の消費する魔力…だという事が最たる原因なのかもしれないが、死んだ魔物の魔力だって魔脈に乗って流れて行くんだ、要因の一つであることには間違いないよな…今年は俺がバッチバチに魔物を狩ってるからな、しかも深層の魔物を、擬似的に溢れを起こして討伐したようなものだ…こりゃあやっちまったか?



「ははは…少し自重するとしよう」

「ああ、そうしてくれ、バランス良くな」

「分かった、忠告ありがとう」



まぁ、強力な魔物が生まれれば、鼻くそ共の計画が遠ざかるから、それはそれで結果オーライだなっ!あと、サリーも共犯だ、ふふふ…



無理矢理な理由を付けて、自分を納得させるレンであった、しかし、深層の魔物を討伐し、人間を強化して回るレン、実は本当に、地味に鼻くそどもへの嫌がらせになっていたのである。



「さて氷の城へ行ってみるか」

「楽しみだねぇ」

「早く近くで見てみたいな」



―――――



レンは組合で紹介状を受け取り、レクステッド城まで足早でやって来た。



「おお…」

「綺麗だな」

「凄いねぇ」



キラキラと輝く氷の城、遠くからでもその存在感は圧倒的だったが、近くで見るとまた違う姿を見せてくれる、なぜかお城の周りだけ雪のような何かが降っているのだ、それなのに周りには何も積もっていなかった。



「遠くからでも凄かったが、近くで見るとまた格別だな、これはなんだ?雪とはまた違う、氷の粒っぽいな、これも魔道具なんだろうか」

「この城の周りで降っていたこれが、城を輝かせていたんだな、演出にしては大掛かりだ」

「なんかここだけ世界が違うよね〜」

「さてと、行ってみますかぁ」

「正面から入るの?」

「当たり前だろ、なんでこそこそしなきゃならないんだよ」

「むっ…」

「…」

「2人ともどうしたの?」

「あの門番…」

「カリンも感じたか」

「あの門番がどうかしたの?」

「嫌な気配を出してるんだよ、こりゃあ氷王にはすんなり会えなそうだな…はぁ〜、めんどくせぇ」



厳つい顔をした、これまた厳つい白銀色のフルプレートの鎧を着た男が、城の入り口すぐ横に立っていて、こちらを睨めつけている、恐らく門番だろう。



3人はゆっくり門番の前へ…



「こんにちは」

「…」

「「「…」」」



無視か…



「なんだ、こいつは門番ではなかったみたいだ、大層な格好をしているからそうだと思ってしまったよ、ただの一般人みたいだな、まさか客相手にこんな失礼な態度の奴が門番な訳ないもんな、この城は門番がいないのか、とりあえず行くぞお前ら」

「うむ、そうだな」

「えっ…いいの?」

「おい!」

「いいに決まってるじゃないか、中に入れば案内の人か誰かがいるんだろ」

「おい聞いているのか!」

「まさか、列王の使いを無視して、無下に扱うような奴が門番だってなら、そんな門番はいないほうがマシだろ」

「え!?列…王?」

「なんかさっきからここは虫の鳴き声が耳障りだから、さっさと行こうぜ」

「そうだな、なんかビービー鳴いていてうるさいな」

「う、うん…そうだね〜」



まさか列王の使いが来るなんて思ってもいなかった門番は、どうせ観光客のひやかしだろうと無視を決め込んだ、実際にそういう客が多いので、いちいち相手にはしていられなかったのだ、そういう客を確認、選別するのが仕事だというのに。



「おい、ちょっと待ってもらおうか」



しかし、そこはプライドの高い門番、例え相手が王の使いだろうと、態度が遜ることは無かった、少し声は抑えめになったが、まだまだ客人に対する態度ではない。



「やっぱりここは騒がしいな、早く行こう」

「そうだな」

「待って〜」

「おい!待て!」



話を聞いていた門番は、レンがリーダーだと判断し、小走りで追ってきてレンの肩を掴み、強引に振り向かせようとしてきた、が…



「なっ…!」



微動だにしないレン、逆に門番のほうが体ごと引っ張られ、掴んでいた手が離れてしまい、レン達はそのまま城内まで歩いて行ってしまった。



―――



「さてと、どうするかなぁ」

「直接王の部屋に向かえばいいのではないか?」

「そうだな、門番があれなんだ、城内にろくな奴はいないと思っておいたほうがいいだろう」

「ここまで来たらなんでもありだね〜、僕はなんだが楽しくなってきたよ♪」

「その前に、リスクリワード」



鼻くそがこの城内にいないことを確認。



「鼻くそクリア、次は、リスクリワード」



氷王レイスの位置確認。



「あれ?」

「どうしたんだ?」

「どうしたの〜?」

「いや、居るには居るっぽいんだけど、数字が…小さいな…どういう事だ?」



う〜ん…あ、上か?



「上の階に居るかもな、リスクリワード」



【98】



「ヒット」

「見つけたのか?」

「ああ、やっぱり上にいたわ、飛んで行ってもいいけど、階段を探しながら行こうぜ」

「探検だねっ♪行こ〜!」



―――



「どうなってんだよここは、まるで迷宮だな」

「ダンジョンだ!レンちゃん!もしかしたらダンジョンかも!」



結果、階段は見つからなかった。



「階段で検索してもヒットしないしなぁ」

「宿と同じ仕組みなのではないか?」

「カリン…お前天才か?」

「や、やめろ、天才なんかじゃない…」

「姉ちゃん凄い!良く気付いたね」

「まだ確定じゃないけど、ダンジョンだと思って少し楽しもうか」

「探検再開!僕勇者ね〜」

「お前は忍者だろセイト、しかも忍邪な、完全に敵側だろうが」

「あ、言ったなレンちゃん!」



タッタッタッ…



セイトは走って曲がり角を曲がって姿を消した。



「何をやってるんだあの馬鹿は」

「テンションが上がってるんだよ、楽しませてもらおうぜ」



少し歩くと…目の前にセイトが4人飛び出してきて叫ぶ。



「忍邪が4体現れた!」



黒霧で分身を作り出し、皆同じポーズで黒い鎖みたいなのを両手で持ちながら、少し腰を落とし、軽く上下に揺れている。



「おお、まさにRPGのエンカウント演出だな、じゃあ…レンの攻撃!」



シュッ!



レンがその場から一歩だけ前に出て、軽くジャブをして元の位置に戻る。



「ぐあぁ!」



分身の1体が点滅して、黒い霧になって霧散した。



「お、おいお前達、いきなりなんだ?よく分からんぞ…」

「忍邪の攻撃!」



ビシッ!



セイトが1体前に出て、鎖を振り回し地面を打ち付けた。



ヒュッ



「レンは躱した!」

「あ、ずるい!」

「おい!何なんだよ!」

「カリンの攻撃…」

「え、ちょ…」

「カリンの攻撃!」

「…」

「カリンの…」



シュ!バコッ!



「痛ぇ!」



会心の一撃!



訳も分からず変な遊びに巻き込まれたカリン、混乱した挙げ句、本当にセイトを殴りつけ、強制的に戦闘を終わらせるカリンであった。

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