92話 雷魔法習得!
ステータスを貸与中のレンは、無理に深層で魔物狩りなどをせず、オーソロンの組合で魔物を売り、レイの所へ顔を出してきた。
今はカインドへ戻ってきて、自分の吸収するべき事は無いかと考えながら、ぼ〜っと皆の鍛錬を眺めている。
雷とか使いたいよなぁ、セイトも喜びそうだし、さすがに雷の発生メカニズムなんて知らんからなぁ、とにかく高温だってことは知っているんだが、確か…電気の通り道が、3万度くらいまで一気に上昇するから光るんだったかな?それで一気に温度上昇した空気が膨張して、周りの空気を振動させて音を鳴らすんだったよな。
うむ…やってみようか、擬似的に雷を再現だ。
レンは無言で空に手をかざす。
むむむぅ…
突如空が曇りだし辺りが薄暗くなる。
「え!?なになに?雨でも降るの?」
「な、なんだあれは…」
カリンが空に突如発生した巨大な積乱雲を見て絶句していた。
「おい!レン様!何をする気だ!」
空に向かって手をかざしているレンに気付いて大声で叫ぶリル、レンは集中モードに入っており周りの声が聞こえていない…フリをしていた。
レンは目を瞑り、とにかく雲の中に水魔法で氷の粒を大量に発生させ、風魔法でぐるぐるとかき回すイメージをする。
ゴロゴロゴロゴロ…
きたっ!今雲の中で発生した雷を制御しろ、頑張れ俺!
ゴロゴロ〜
ピシャ〜
ゴゴゴゴ…
雲の周りに光が走り出し、その本数が徐々に増えていく。
あの光…電気だ、電気を魔力で作り出せ…出来る、俺なら出来るっ、踏ん張れ想像魔法!
次第に音がやみ、雲の周りの光は無くなる、その代わり雲の中がピカピカと断続的に光っていた、自然発生した雷から、レンが独自で発生させた雷に移行したのだ。
「こ、これは…ヤバい!みんな逃げろ!とにかくレンの後ろ側に逃げるんだっ!!」
ふふふふ、落ちろ…
「落雷」
バシャーンッ!
ゴロロロロ…
うわぁぁあぁ!
間一髪レンの背中側へ逃げ切ったレン以外の者達は、突然鳴り響いた轟音とまばゆい光、爆発する地面を見て、恐怖に耳を塞ぎ、地面にうずくまった。
「う〜ん、発動までの時間がネックだな、だが!雷はものにしたっ、電気魔法だなっ!」
右手の親指と人差し指の間に電気が発生し、バチバチと音が鳴る。
ベシッ!
「ん?どうしたカリン」
カリンに頭を叩かれた。
「どうしたもこうしたもあるか!変な魔法を使うなら先に言ってくれ!危ないだろうが!」
「え?あぁ、すまんな、集中してたよ」
なんてな、反応を楽しんではいたよ、怒られるから言わないけど…
「はぁ、もう勘弁してくれ、皆と心中するところだったぞ」
「ははははっ、そんな大げさ…な、あれ?」
なんだあの穴は、普通の雷じゃあそこまでは空かないぞ…あ、ここは普通が通じる世界じゃなかったわ。
範囲は狭いが、地面に深い穴が空いていた、実際カリンが先導して逃げなかったら、誰か怪我をしていたかもしれないと思ったレンであった。
「いや、その…ごめん、次からは気をつけます…」
「お兄さんすご〜い!おそらからおっきいひかりがおちてきたよ〜!」
ティルがどこからともなくフワッと現れ、はしゃいでいた。
ティル…お前はどこぞの神様か?やっぱり空気と混ざってんだろ、ただでさえ神様と名前が似てるんだから、それ以上神格化すると、あとが大変だぞ?
「ティルは雷を見た事無いのか?」
「かみなり〜?う〜ん…」
「無いのか、この世界は雨が降っても雷は降らないのかもな」
「わかんない!」
「そうか、分かんない事は分かったよ」
「ティルにもできる〜?」
「いやぁちょっと難しいかもだけど、無理矢理真似しなくても、ティルなりに色々と頑張ってごらん」
「は〜い♪」
出来ないって言うと想像力を阻害するからな、ティルは天才だから、そのうち何かしらのインスピレーションは湧くだろ。
「うむむむぅ…」
ズドォンッ!
「おぉ!」
「わぁ!」
「むっ?」
「今度はなに〜?」
リルが地面に手をかざして、規模は小さいが、レンの雷を黒霧で真似していた。
「リル、すごいぞ、さすがは村の守護者、一影だな」
「私には光は無理だからな、黒霧で再現してみたんだ、魔力的に今のが限界だけど、レベルを上げればもう少し威力を上げられそうだ」
そうだった、ここにはあと一人ティルに並ぶ天才がいたんだったな、まぁ別に雷は光魔法じゃないけどな。
「ははは…渡り人のあたしが自身無くしそうだよ」
「僕もだよ姉ちゃん、もう少し頭を柔らかくしよう…」
セイトも少しは考えが成長したな、良い事だ。
「そろそろ遅いから今回はここまでとしよう」
『了解!』
サンドが可哀想なので、今日は橋が下がるのを待ってあげた、帰り道にサンドラ宅へ行き、サンドラとニールに挨拶をして、村長宅へ帰っていく。
―――――
「おいレン、さっき北のほうで大きな光と轟音が鳴ったが、お前か?」
「さすがに分かったか?」
「そりゃあ気付くだろ、神様でも降りてきたんじゃないかと村中大騒ぎだったぞ」
「それは悪い事をしてしまったな、明日帰る時に、また魔物を何体か置いていくから謝っておいてくれ」
「それは大丈夫だ、どうせレンの仕業だと説明しておいたからな、だが魔物は置いていけ」
「ははっ、はいよ、また皆に美味しい料理でも出してやってくれ」
「ああ、任せろ」
残りの時間を皆と楽しく過ごして、ティルが騒いだので、レンはティルと一緒に寝た、カリンとセイトが少し呆れた目でレンを見ていたが、レンは毛ほども動揺しなかった。
―――――
「村長、皆、また世話になったな、次は4ヶ月後に来るよ」
「待ってますのじゃ、気を付けての」
「レン、また美味い魔物を持って来い」
「レン殿またな、次は一緒に狩りにいこう」
「ティルもも〜っとつよくなってるから!まってる!」
ぷるっぷるるっ♪
スイムの触手を握りながらティルの頭を撫でていると…
「その子達もお願いねぇ」
「おう、任せろテラー」
「レンさん、よろしくお願いします!」
「「「よろしくお願いします!」」」
相変わらず息ぴったりだなこいつらは。
ギリー達もある程度強くなったので、この村を卒業し、セルマータへ戻る事になった、話の流れでレン達が同行する事になったのだ。
「また違う開拓者が来るかもしれないから、その時は宜しくな」
「ええ、任せておいてちょうだい、若い人を育成するって良いわよねぇ、私も色々得られるものもあるしね、たまにレンさんが様子を見に来て、魔物素材も貰えるし、また色々作れるから、最近は本当に毎日が楽しいわぁ」
渡した魔物の肉以外の素材はサンドラの倉庫行きになっている、テラーは毎日のように出掛けては、サンドラと色々物作りをしているらしい。
なんかそのうち、とんでもない物を作り出しそうな予感がする…まぁ悪い物じゃなきゃいいか。
「じゃあまたな」
「世話になった、また宜しく頼む」
「みんなありがとね〜、またね〜」
「「「「長い間、お世話になりました!」」」」
レン達7人は、わいわいとこの村での感想を話しながら、セルマータへ向かっていった。
―――――
「セ、セーラ組合長!ギリーさん達が帰ってきましたぁ!」
「お帰りぃ、少しは強くなれたぁ?」
「ただいまメルちゃん、ええ、強くなったと思うわよ、レンさん曰く中層でも問題ないって」
「すごぉい、この組合も大きくなるねぇ」
「メルちゃんも受付頑張ってね、忙しくなるわよ?」
「えぇ〜、それは嫌だなぁ」
「ふふふ、メルちゃんらしいわね」
リーニャが走っていってしまったので、残りの受付嬢、メルがレン達の対応をしていた、おかっぱ頭で天然っぽい人だ、キャスリィと仲良さそうに喋っている。
「ところでぇ、お仲間さん、増えたの?」
「あ、この人…レンさんよ」
「久しぶりだな、姿は違うが、レンだ」
「へぇ〜、雰囲気変わりましたねぇ」
「そうか?まぁそれはいいとして、この2人だが…」
「あたしはカリンだ、宜しくな」
「僕はセイトだよ〜、メルちゃんよろしくね〜♪」
「2人は俺と同じ渡り人、勇者だ、元だがな」
「えぇ〜?…え!?勇者様ぁ!?セ、セーラさぁ〜ん!」
タッタッタッ…
…
おい、受付が2人してどっか行ったら駄目だろ…
「ここは相変わらずね」
―――
「ごめんなさいね、うちの受付さん達が迷惑を」
「いいよ、別に急いでもいないしな」
「ありがとうございます」
「組合長!ただいま戻りました!」
「はい、ギリーさん、お帰りなさい、他の皆も元気そうね、また宜しくね」
「「「「はい!」」」」
「まぁこいつらも頑張っていたよ、中層の2区くらいまでなら危険は無いだろう」
「そうですか、それは楽しみですね♪それで、貴方達は?勇者様達だとか?」
「俺はレンだよ、久しぶりだなセーラ、勇者はこの2人だ」
「まぁ、ちょっと見ない間に逞しくなって、まるで別人ね」
「そうだな、見た目を別人に変えていたからな」
「あたしはカリンだ」
「僕はセイト、元勇者だよ〜」
「元、なのですね…事情は聞きません、レン様、ギリーさん達がお世話になりました」
「なに、世話をしたのは村の皆だよ、俺はなにもしていない、村長に他が来ても宜しくと伝えてあるからバンバン開拓者を送ってやれ」
「それは助かります、もう候補者は決まっていますので、すぐに行かせますね」
「じゃあ俺たちは行くよ、またな」
「はい、またのお越しをお待ちしております」
さて、レクステッドへ戻ろう、手紙も到着している頃だろう、宿も一回チェックアウトしなきゃだしな。
セイトが、用事が済んだら次はレベル上げだと騒ぎながら、3人は南国レクステッドへ戻っていった。




