85話 組合長ガルディ
開拓者組合レクステッド支部の食堂で、名物のデザートを食べようとしていたら、謎のおっさん、ガルディに話し掛けられ、話の流れで場所を移動することになった3人。
「改めて自己紹介しよう、俺はこの組合の長、ガルディだ、探るような真似をしてしまい、申し訳なかった」
やはり組合長だったか、ここなら人もいないし、氷王の事、色々聞けそうだな。
「いいよ、組合を守る為だろ、仕事熱心で何よりだ、なかなかの演技だったぞ、見た目は荒くれ者だが、実は優しくて面倒見のいい奴、みたいな雰囲気が出てたよ」
「中央の組合長よりしっかりしてるよね〜」
「確かにな、あいつはいつもヘラヘラしていて、少し気持ち悪かったんだ」
「他の開拓者には高圧的だったしな、本当にどうしようもない奴だよ…」
「ははは…辛辣だな、荒くれ者は余計だ、これは演技でもなんでもねぇ、でもそうだな…俺はそう言われないように気を付けるとしよう」
「大丈夫だ、性格が全然違うからな、あんたはそうならんよ」
「ありがとう、では本題なんだが、氷王様に会いたいんだったな?」
「そうだ、だから氷王の情報を仕入れに、ここへ来たって所だな」
「なるほどなぁ、ただ会いたいだけじゃ、謁見はまず無理だが、列王様の依頼だったらいけるかもな、書状みたいのは預かっているのか?」
「あ、無いわ…しまったな、一筆書いてもらえばよかったか、ここからサリーに手紙出せるかな?」
「サリーって…本当に何者なんだよ、列王様の愛称だろそれ」
「おお、よく知ってるな」
「当たり前だ、あの方も組合長なんだ、どこぞの組合長じゃあ知らんが、王様で組合長だろ?知らないわけがないだろう」
「そういえばそうだった、性格があんなだから忘れてたよ」
「はぁ、またえらいのが来たもんだ、手紙なら俺から出しておこう、列王様の都合によるが、最短で2日、最長でも3日待てば返事が来るだろう」
「いくら払えばいい?」
「俺が個人的に出すから金はいらん」
「分かった、世話になるよ」
この国は鼻くその手が回ってないな、まだ変な奴に合ってないし、まぁこれが普通なんだろうけど。
「氷王はどんな奴なんだ?」
「俺も詳しくは知らないんだ、突然この国にやってきたらしい、その頃は俺も若かったから、少しうろ覚えだな」
「20年前にか?」
「そうだ、王位につく1年前だから、細かく言えば21年前かな?」
「21年前か、まさかな…かき氷を考えたとか、魔道具とか、いろいろと気になるな、これで可能性が高くなった」
「可能性?」
「ああいや、知り合いって訳じゃないんだが、俺の知ってる奴の可能性が出てきたなと思ったんだ」
「親の知り合いとかか?」
「いや、ちょっとそのあたりは話せば長くなるんだが、別に隠してはいないしな、聞くか?」
「いや、今はやめておこう」
「なんだよ、そんな遠慮しなくてもいいのに」
「やめろ、その顔は人を驚かせようとする時の顔だ、聞くのが怖いからまた今度にするよ」
「なかなか鋭いな、それも技能か?まぁいい、詮索はやめよう、とにかく…間違いなく想像以上の驚きになるから、話を聞く時は心の準備をしておいてくれ」
「わ、分かったよ…」
ちっ、なんか俺やっちゃいましたか?が、発動できなかった、まぁ俺達も忙しいし、今度でいいか。
「組合長、氷王は女…だよな?」
「ああ、そうだと聞いている」
「あまり人と会わなそうだな」
「なんでも、魔道具作りが趣味で、部屋に引きこもって、ずっと物作りしているらしいんだ」
「魔道具ねぇ…2日も時間あるし、魔核のお土産でも取りに行くか」
「レンちゃん、僕達の修行パート?」
「それはいいな!腕が鳴る!」
「そうだな、修行といこう、西の深層は何の魔物がいるんだ?」
「深層!?」
「当たり前だろ、王様に献上するのに中層の魔物ごときじゃ失礼だろうが」
「…」
ガララ、ガサゴソ…ゴトッ
組合長が執務机から何かを取り出した。
あれは…石版だな、ふふふふ…ホラーな顔にしてやるぜ。
「すまんがここに手を…」
「分かった」
レンは食い気味に返事をして、サッと手を乗せた。
「…………」
………
「大丈夫か?」
「あの…本当に何者ですか?」
「敬語はやめろ、俺たちは渡り人だよ」
「セイト…セイント?あとカリン…どこかで聞いたことのある名前だと思ったんだ、勇者様じゃないか…只者じゃないとは思ったが、ここまでとは」
「はははっ、心の準備が間に合わなかったようだな」
「組合長、やめてくれ、もう勇者はやめたんだ、今はただの開拓者だ」
「そうそう、僕達は弱いからね〜、勇者の資格は無いんだよ〜」
「その元勇者様達を鍛えるとか…レン、お前は本当に何者なんだよ、はぁ…納得だ、深層の魔物だったな?」
「ああ、出現する魔物の名前を知りたい、そうすれば効率よく狩れるから」
「第1区はコールドスライム、アイシーキャット、アイシーボア、グレーピグミー、4種の討伐記録がある、特にピグミーの被害が多いな」
「ピグミーって、小人か?」
「そうだな、小人だ、買い取った個体を見たことがあるが、人型で身長が1mもなく全身灰色、小さい割には手足が太くて筋肉質、顔は丸く口と鼻が無くて、目が異様にデカい、昆虫みたいな目をしている、単体でも中層の魔物より強いくせに、群れるらしいぞ」
まんま空想上の宇宙人じゃんか、筋肉質だけは違うけど、それが群れてるって…気持ちわりぃな。
「門番はいないのか?」
「デビル・コールドリザードだ、その昔、中央のS級開拓者が目撃して名付けたらしい、体調15mを超える大きな蜥蜴だとか、無尽蔵に冷気のブレスを放ってくる、らしい…西は人気が無いからな、S級開拓者が育たなくて目撃情報はその1件だけだ、噂を聞いて討伐に出た者は…全員帰ってきていない…」
そのS級…鼻くそだろうな、計画通りって訳か…
「組合長はルードに会ったことないのか?」
「S級の賢者だろ?そういえば氷王様に聞きたいことがあるとか言っていたよな、会った事はない、俺がここの長になってから一度も来ていないはずだ」
「なるほど…」
組合長の技能の事、知っているのかもしれないな、奴にとっては致命傷だろう。
「分かった、2区の魔物は情報あるか?」
「2区は情報が無いんだ、なんせそこまでの開拓者がいないからな」
「そうか、ありがとう、情報感謝する、見返りに2区の魔物情報をお届けしてやるよ」
「凄い自信だな、楽しみにしておこう」
「よし、いい情報も聞けたし、宿に戻るか」
「は〜い」
「うむ、帰ってきて夕飯にしよう」
3人は開拓者組合を後にして、宿に帰って行った。
「お帰りなさいませ〜♪良い観光できましたか〜?」
「ああ、まだ全部は回りきれてないが、そこそこ満足出来たよ」
「それは良かったです〜、お夕飯の時間になっておりますので、食堂でお召し上がり下さいね」
「分かった、あ、そうそう、あと2泊延長する事になったからよろしく頼む」
「かしこまりました、お一人様30万クリになりま〜す」
今回はそれぞれが料金を支払い、食堂に向かって行った。
なるほど、バイキング形式なのか、これなら気軽に好きなだけ食べられるな、ビュッフェじゃないよな?食事は別料金とは聞いてないし。
「ここにも甘氷…あるんだな」
「僕、もう一回食べよ〜っと」
「腹壊すなよ?」
「大丈夫だよ、僕は地球にいた頃からこういうのには強いんだ〜」
「そんな訳ないだろ、いつも腹壊していたくせに、ただ食いたい欲望に負けてるだけだ」
「うぅ〜、でも食べる!」
「好きにしろ」
わいわいと食事をして、各々部屋に戻っていく、セイトは2人にバレないよう、こっそりお腹さすっていた…
さすがは高級宿だな、かなり美味しかった、フローラと五分だな、この場合フローラが凄いんだろうな、あれでテラーの足元にも及ばないって、テラー…やはり化け物だったか。
少しトレーニングして、風呂入って寝るか〜。
さすがはゴールド、トレーニング部屋と風呂付きだった。
―――
ガチャ…
は?
「あれ?レンちゃ〜ん♪」
「なんでお前が?なんだこの風呂のデカさは…ここは屋上か?」
「他のお客さんもいるよ?」
「まさか…カリンとかもいるんじゃないだろうな」
「いないよ〜、ね!カリン姉〜!」
「うるさいぞセイト!こんなところで声を掛けるな!」
仕切りのようなものがあり、その先からカリンの声が聞こえて来た。
「どうやって男女を判別してるんだよ」
「このブレスレットじゃない?」
「セイトのくせに鋭いじゃないか、セイトのくせに…」
「あ!2回言ったな!」
「1回なら良かったか?」
「1回なら…まぁいいよ、レンちゃんだから」
いいのかよ…なんだよレンちゃんだからって、意味分からん奴だ、この宿に関しては…もういい、考えるのやめた、さっさと温まって寝よ。
宿の屋上露天風呂で、レクステッドの景色を楽しみ、自室に帰っていくお客さん達、レンは、どうせ同じ扉でも、それぞれの部屋に帰れるんだろうと、考えを放棄してぼ〜っと景色を楽しんだ。
―――
さて寝よう、明日は2人をどうやって鍛錬させるかなぁ、1回ステータスを見せてもらって考えよう。




