7話 じじい降臨!
少し短めになります。
セイトがぴくぴくしている。
物理法則どうなってんの?数メートルも吹き飛ぶ力を顔一点に受けたら、普通は生きていられないだろ、吹き飛ぶ前に顔が何回転かするぞ、さすがは異世界だな。
今の出来事で、本当に別の世界に来てしまったのだと、改めて確信する意外と冷静なレン、と思いきやあまりの衝撃にレンは、セイトが飛ぶ前にじじいが飛んで来ているのを忘れていた。
さっきじじいがビンタをするとき、チラッと手のひらに白いカードのような物が見えたが、あれがステータスカードか何かだろう、良かったぁ、本当に1番に言わなくて。
そういうところには小聡明く気付くレン、ある程度状況を把握したところで、おもむろに片膝を地面につき、頭をたれ、じじいに挨拶する。
「お初にお目にかかります、わたくしは神園蓮と申します、本日はお日柄も良く、真に良い飛行日和と相成りまして、上様におかれましてはご壮健でなによりと存じます、できましたらわたくしにもステータスの恩惠を承りたく存じますれば、どうかご一考の程宜しくお願い申し上げ奉り候」
「うむ、良い心がけだが、半分くらい何言ってるのか意味が分からんし、心のなかで呼んでいる名も褒められたものじゃないな」
くそっ、ここでもテンプレ発動か、上位存在っていうのはなんで読心能力を持ってんだよめんどくせぇなぁ、でもそうか、じゃあもう手遅れだな。
「バレちまったら仕方ねぇ、おいじじい、ここに俺達を転移させた理由を簡潔に話せ、まさか俺達を勝手に誘拐しておいてなんの見返りもないとかはないよな?」
こういうやつらは、決まって転移者には手が出せないもの、それに、口は悪いが心を読まれる以上取り繕ってもどうにもならんからな、こちらも別に怒ってるわけではなく、ワクワクしてるのもバレてるだろうし。
手が出せない設定という希望的観測を盾に、態度を180度一変させるレン。
「清々しいほど潔いな、そういうやつは嫌いではないぞ?よほどわかり易くて良い、そうだな、まずは理由から」
お?結構すんなり教えてくれるんだな、なんかめんどくさい使命とか無ければいいが。
「大丈夫、特に使命とかはありゃせんよ、というよりお願いのような感じだ」
そうかぁ、ある程度は自由に動けそうだな、楽しみになってきたぁ。
「まぁ、これはおぬしらの世界での、いわゆるテンプレといったところかもしれんが、とある世界の崩壊を救って欲しいという話だ」
ん?使命ではないけど話がデカすぎでは?これ、お願いとか言っておいて、世界を救わなかったら世界もろとも俺達も死ぬんじゃねぇ?
「ちょっと待って、少し質問させてほしい」
「わかった」
素直!大体こういう時は有無も言わさず放り出されるパターンが多いのに。
「そんなやつがいるのか?人の心がないのう」
「ちょっと、いちいち心の声に反応しないで、俺ひとりごと多いから、場合によっては考えてることがみんなにバレちゃうから、あとアンタが人かどうかは疑わしいから」
「まぁ、人間ではないかもしれんな」
ほっほっほっと笑いながら地面につきそうなほど長い白ひげをさすり、あやふやな事をのたまう
「まず、なんで俺達なんだ?」
「それは、適当だ、言い方を変えれば当選した、と言ったところだ」
なるほど、運がいいのか悪いのか、それはお願い次第だな。
「その世界を救うっていうの、できるのか?俺達に」
「まず間違いなくできる」
「ハード?」
「イージー」
胡散くせぇ、世界を救えとか、話はデカいがなんか雑なんだよなぁ、焦ってる様子でもないし、でもYES以外選択肢はないんだよなぁ、異世界も楽しみたいし。
「いや、選択肢はあるよ」
「え?」
「拒否すれば記憶を消して元の場所に戻るだけだよ」
「ちょっとみんなと相談させて」
「はいよー」
なんかだんだん口調が適当になってない?
「どうする?」
「決まってるだろう?」
シンがニヤリとしながら答える。
他の皆の顔を見る、無言で顔を縦に振る。
一人だけ地面でレン達のほうにケツを向けて、横になってぴくってるやつもいたが。
「カノン、いいのか?戻れるかもしれないんだぞ?」
「僕は、戻ってもどうせ一人だし、せっかくお兄ちゃんが出来たのに、失うのはやだ!」
そうか、なんか複雑な事情がありそうだが、関係ねぇ!
レンはカノンの頭を軽くなで、じじいの方に向き直った。
「その話、承った」
「そう急かないで、話は途中だよ」
「じゃあ聞かせてくれ」
そろそろ真面目にじじいの説明を聞くか。