68話 東の深層
レンはラルファを騙して、武器を作る事を承諾させた、ラルファは重い足取りで自室に戻っていく。
「お客さん…」
「ララ、大丈夫だ、お金無いとまずいんだろ?」
「はい、でも母ちゃん大丈夫かなぁ」
「なんでだ?」
「本当に頑固者なんです、お客さんが騙したことに気付いたら…」
「作ってくれない…か」
「はい…」
「…分かったよ、じゃあ本当に強い事を証明する他無いなぁ」
なんか、俺強いんだぜ?って所を自分で見せるのは恥ずいんだよなぁ、武器の為だ、やってやるか!
ララの案内でラルファの部屋の前まで行き、声を掛ける。
「ラルファ、ちょっといいか?」
ガラララ…
「なんだ?」
「いや、その〜、俺がちゃんと強い所を見せようかと思ってな」
「大丈夫だよ、ちゃんと見た、分かってるんだ、オレは頑固者だから、ああでもしないと…家計がな」
なんだよ、ララの為じゃないか、素直じゃないなぁ、でも仕方なく作る、じゃなくて、進んで作ってもらったほうがいい物が出来るだろ。
「言いたいことは分かった、だが仕方なく作るより、自分から作らせてくれ、って言いたくはないか?」
「どういう事だ?」
「今から森に行くぞ、一緒にこい、ララも一緒だ」
「え、大丈夫なのか?」
「俺を、ただ速く移動できるだけのやつだと思われたくないんだよ」
「そこまで言うなら…分かった、お前の強さ、見せてくれ」
「任せろ、そう言えば、俺の名前はレインだ、よろしく」
「おうっ、よろしくレイン!よしっ、ララ!出掛ける準備だ!」
「うん!」
母が元気な声を出して、娘からも嬉しそうに返事が返ってきた。
この親子はこうじゃなきゃな。
―――――
現在、武器屋の親子と一緒に聖堂の中にいる、武器屋から一番近い、東方向の聖堂だ。
どの聖堂も造りは一緒なんだな。
「もう暗くなっちゃうからな、早めに済まそう」
そう言って、レンは深層の扉に向かって歩いていく…
「レ、レインさん!?」
「い、いや、ちょっと待ってほしい!」
「なんだ?」
「レイン、さすがに深層は…」
「ええ、ここまで来てビビるなよ〜、大丈夫だから、ほら行くぞ!」
「「…」」
黙ってレンのあとに続いて深層に入って行く2人、今日、もしかしたら旅立つかもしれないと、神様に、そっち行ったらよろしくお願いしますと、心の中でお祈りする2人であった。
「ここに来ると、なんか帰ってきたって感じがするな、北側の深層じゃないけど景色は一緒だな、よし早速…ふん!」
地面に手をかざし、いつもの岩板を作る。
「乗れ」
「「え?」」
「歩いたら日が暮れちゃうから、飛んでいくぞ」
落ちないように箱型にした岩板、深さのあるお風呂、といった形と大きさだ、2人は恐る恐る乗り込む、すると入口が塞がり、次に宙に浮き始め…
ヒュオォー!
「ニャーーー!」
「うわぁーーー!」
ララは猫みたいに鳴いていた。
さぁて、方角で生息する魔物は変わるのかな?リスクリワード[魔物]…【98】【99】【97 】【95】【92】…
やっぱりか、大体数字が高くなっちゃうんだよなぁ、直線上なら距離関係なく、この世界全体の魔物にヒットしちゃうんだろう、どうするか…
「なぁラルファ、深層第1区で有名な魔物ってなんだ?」
「有名ねぇ、カオスシリーズだな、カオススライム、カオスゴブリン、カオスウルフ、カオスタイガー、オークカオス、2区にもカオスオーガとかいるが、1区だったらオレが知ってるのはこんなもんだな」
「ここは東だが、方角で魔物って変わるのか?」
「ああ、東はウルフやタイガーとかの獣系かな」
「さすが中央に住んでるだけあって情報通だなぁ」
「オレが知っているのは東と北だけだ、オレの旦那も自分で素材を取りに、開拓者みたいな事をしていたが、西と南だけは行かなかった、そっちは人気がないと言うか、秘匿性が高いと言うか…とにかく詳しくは分からない」
「そうか分かった、カオスの他に、ダークネスはいないのか?」
「稀に進化する魔物がいて、進化するとダークネスという名のつく魔物が出てくる、というのは聞いたことあるぞ、でもあくまでも進化個体だ、住む場所が変わるわけじゃない」
「そうだよな…」
それにしても、ラルファは高いところに慣れるの早いな、ララは…
「うわ!なんですかあれ!煙が上がってますよ!人?魔物?…ん?おっほぉ〜♪あれは高い木ですね〜!え!?動いた!?」
すっかり観光気分だな、ここ深層ぞ?…って、え?今木が動いたって言ったか?
「ララ、どの木だ?」
「あれです!進行方向の右側!」
箱を停止させ、右側を注意して観察する、やけに高い木が1本生えている。
「「「…」」」
ザワッ!
「うわぁ、伸びたよ…でけぇ、世界樹の化け物かよ」
「さすがにオレもあれは知らんぞ」
「すごいです!なんですかあれ!」
他の木の倍は高くなったぞ、50mくらいあるんじゃないか?
「名前はトレントでいいだろ、もともとデカい木って意味の造語だしな、よし決めた」
「おい、まさか…」
「レインさん…」
「ああ、久々派手にぶちかましてやる、ふふふふ…ストレス発散だ!」
まずは、能力を割り振ってからの〜、ステータス!
名前 神園蓮21歳
職業 ギャンブラー Lv3
貯蓄 10990 −20450
体力 10000
筋力 20000
俊敏 20000
精神 100000
魔力 19997/20000 +5000
魔体 40000 +5450
知能 10000
技術 20000 +10000
所持金
F48,000,000(4千8百万ファニー)
貸与中[−B10,000,000]利息[+199,000]
才能
投資 努力 回避 武術 魔法
技能
貸与2 リスクリワード3 潜行3
想像魔法 リスクリターン 収納
剣術1 短剣術1
称号
討伐者
[カオスゴブリン]
魔力はほとんど減っていない、浮いてるだけなら回復の方が早いのか、3人乗せても魔力消費は変わらないんだな。
「おいレイン!何をしている!」
「…」
2人とも目を手で塞いで、レンのステータスを見ないようにしている。
「見せるために閲覧可能にしたんだよ、俺の強さを知りたいんだろ?見てみろよ、まぁこれを見せれば、ぶっちゃけここに来なくてもよかったかもな」
「いいのか!?見るぞ?本当に見ちゃうぞ?」
「うわぁ!すごいです!レインさんまじヤバイ!」
まじヤバイって…いや、これは翻訳ミスだ、本当に凄いと言ったに違いない。
「まじヤバイんだけどぉ!」
「お前もかラルファ!」
「レインは何者なんだ?」
「渡り人だよ」
「なんだって!?」
「私、会ったの2人目です!」
「オレもだ!」
「なんだと?」
気になる話が出てきたけど、なんかこのままだと落ち着かないから、あいつやっちゃうか…
「とりあえずあいつやっちゃうから、目が焼けないように気をつけろよ」
そう言うとレンは手のひらを上に向け、この世界で始めて使った、あの魔法を使うと決めた。
木には炎だろう。
「おい、なんか魔物から遠ざかってないか?」
「ああ、少し広範囲を燃やすからな」
行くぞっ!
あのときのように火球に燃料を注ぐ、注ぐ、注ぐ…
「怖い怖い!なんだその火の玉は!普通じゃないだろ!」
「ヤバいヤバいヤバいヤバい…」
ララは頭を抱えてしゃがみ込み、なにやらブツブツ言い出した。
フハハハ燃え尽きろ!あの時とは制御力が違うぞ!行け!
ドンッ!
ドォォォンッ!
あの時と同じく、音を置き去りにして発射された火球、その後、炎が爆発したとは思えないほどの、重低音が辺りに鳴り響く。
うん、腹に響くいい音だなっ!
しかしあの時とは結果が違った、範囲は極小(この魔法にしては)、トレントの立っていた範囲だけ火柱に包まれていた。
「ギシャァァァァ!」
木が鳴いた…
「あ、リスクリワードで力量測るの忘れてた…まぁいっか」
しばらく鳴いていたが、やがて聞こえなくなる。
ふん!
バシャーー!
そして、天から信じられないほどの、大量の水が落ちてきて、火を消し去った。
「こんなもんだな、よしっ、一応魔核でも探してみるか、リスクリワード…」
お?あるぞ!
箱をスイ〜っと動かして、トレントが立っていた場所に降ろしていく。
おおあった!あの熱でも燃えないんだな、茶色い魔核だ、普通に土属性って感じだな…っていうか、なんかでかくね?バスケットボールくらいあるんですけど?…ステータス。
貯蓄 19990 +9000
「デビル・ディアーほどじゃなかったか、強さと魔核の大きさは比例しないんだな、そう言えばデスバニーとカオスゴブリンは同じくらいの大きさだったな…」
「レイン、さっきから喋ってる内容が怖いんだが…」
「…」
「ああすまん、考え事をしちゃうのは癖なんだよ、なんとか直したいと思ってるんだけど、性格はなかなか直らなくてな」
「よほどの事がなければ変わらないだろ」
「俺、渡り人なんだけど…結構なレベルのよほどの事、起こってるんだよなぁ」
「…」
「ララは大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、そのうち復活するよ、レインの強さも分かった、帰るか?」
「そうだな、帰ろう」
それにしても今の木…1区の強さじゃなかったな、瞬殺だったけれども…鹿の時も門番とか言ってたし、この木も何か呼び名でもついていた魔物かもしれないな…




