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神の庭園〜箱庭管理人〜 テンプレ破壊の復讐神、異世界へ降臨す。  作者: coz
間章【レンの小さな旅】〜北国のその後〜
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66話 魔核献上

レンは、開拓者組合への挨拶を終えて、そのまま城へやって来た。



「お久しぶりです」

「おお、あの時のメイドか」

「はい、本日は私が北王のもとまでご案内致します」

「よろしくな」

「はい…」



少し目が充血してるな…



「お前、どこか調子でも悪いのか?目が真っ赤だぞ?」

「そう言えば申し遅れました、私はメイと申します、お気遣いありがとうございます、ですが大丈夫です、少し成分が入り過ぎただけですので…」

「そ、そうか、原因が分かってるならいいんだ、その成分とやら、摂りすぎないようにな」

「………はい」



なんだよ今の間は、なんか怖いから深入りはやめよう…



この時、面食いのメイは、レンと2人きりという状況に、少し興奮し過ぎたと反省していた。


ゆっくり歩くメイの後ろをついていくレン。



「この城内では、偽名を使用する必要はありませんので、気楽にして下さいね」

「おおそうか、つい口が滑りそうになるんだよなぁ、助かるよ、ありがとな、メイ」

「い、いえ、お構いなく!」



名前を呼ばれ、またも大興奮のメイ。



いや、お構いなくって、今使う言葉じゃなくね?本当に大丈夫か?歩くのも妙に遅いし…



鈍感系主人公が嫌いな割には、そういった女心の機微には疎いレンであった、もっともメイの抱く感情は、愛だの恋だのとは違い、推しメンに出会えたオタク女子、っていうような感情なのだが…



コンッコンッ



「は〜い」

「レイ様、レン様がお見えになりました」



ガシャン!ドタドタ、バキッ…



……



ガチャ…



「兄様!」



返事はレイの声だったのに、顔を出したのはマリーだった。



「おい、あれは大丈夫なのか?」



突進してきたマリーを抱きとめながら、床にうつ伏せに倒れているレイを指差して聞いた。



「大丈夫だ、あいつは修行が足らんのだよ、修行が」

「そうか、今まで怠けていたツケが回ってきたんだな」

「そういう事だ」

「お邪魔してもいいか?」

「うむ!さぁ入ってくれ、メイはお茶を」

「かしこまりました」



―――――



メイが入れてくれたお茶を飲み、マリーにこれまでの事を報告しながら、レイが目を覚ますのを待っていた。



「うぅ…技能を使うのはずるいよマリー」

「お、目を覚ましたな、レイ、おはよう」

「レン兄様の隣は早い者勝ちだ、お前が弱いのが悪い」



執務室のソファー、レンの隣にはマリーが座っており、正面にはレイが1人で座っている。



「僕だって頑張ってるのに〜!今に見てろ〜!」

「ふん、逆に差が開かなければいいがな」

「お前らも相変わらずだな、仲良さそうで何よりだ」

「レン兄ちゃん、どこをどう見たらそんな事が言えるのさ」

「馬鹿し合えるのも、心に余裕がある証拠なんだよ、喧嘩するほどって言うだろ?」

「はぁ〜、まぁいいよ、それで今日はどうしたの?遊びに来ただけ?」

「いや、ちょっと北王様に献上したい“ぶつ”があってな」



ニヤァっと口角を上げながら、そんな事を言い出すレン。



「に、兄様?少し怖いのだが…」

「うん、絶対に普通じゃない物が出てくるねこれ」

「ふふふふ…」

「「……」」



ゴトッ…



「これだ…」

「「!?」」



これまで見たこともないほど、目を見開き固まる2人



「メイ!いるか!?」



ガチャ!



「はっ、ここに」

「今すぐアシュリーとアッシュを呼んでこい!」

「直ちに呼んで参ります」



シュタタタタ!



しばらくして―――



「なんだよマリー様〜、寝てたのに〜、今日は非番じゃ〜ん」

「いかがなさいましたか?」



茶髪のおかっぱ頭で細目の男、サイズ大き目のスウェットのようなスボンにダルダルのTシャツ、まさに寝起きといった感じだ、身長は180くらいありそうだ。


あと1人はいかにもお嬢様といった雰囲気の女性、ここへ来て初の金髪縦ロールだ、赤いドレスを着こなしている、この人の方がよっぽど王様っぽい、身長は165くらい。



レンは初の縦ロールに感動していた。



うほぉ!縦ロールだよ縦ロール!どうなってんだよあれ、ビョンビョンしてんぞ。



猫じゃらしに夢中な猫のように、縦ロールに釘付けのレン。



「あなたがレン様かしら?ちょっと…そんなに見つめられると恥ずかしいですわ」

「ふむ、なるほど…私も縦ロールにするか」

「マリーやめろ、お前は今でも十分魅力的だ」

「兄様…お前が一番魅力的だなんて…」



一番なんて誰が言ったよ…これ系は修正をしようとすると、勘違いが上乗せされてくから黙っとこ。



体をクネクネさせてイヤイヤしてるマリーを放って、レンはジト目でレイの方を見る。



「ぼ、僕にはそこまで管理しきれないよ〜」

「はぁ…それで、この2人は?」

「この2人はねぇ、僕の指揮する魔法部隊の隊長アシュリーと、副隊長アッシュなんだ、特殊な能力を持った双子ちゃんで…」

「王様ぁ〜、この偉そうなやつは誰なの?」



男の方が、ダルそうに聞いてきた。



こいつは、さっき横でお嬢さんが俺の名前を言ったのも聞こえなかったのか?



「アッシュ?先ほどわたくしが、レン様と言ったのが聞こえなかったのかしら?」

「ん?そうなの?へぇ〜こいつが…なんか弱そうだね」



前屈みになり、顎を手でさすりながら、顔を近づけて言ってきた。



レンは一悶着あると思い、風魔法を展開して空気と同調、感覚を研ぎ澄ます。



「「「…」」」



レイ、マリー、アシュリーは何も言わない、レンが指向性の威圧を、個別に放って黙らせていた。



「弱そう?お前は人を見た目だけでしか判断することが出来ないんだな、そんなんじゃお前、死ぬぞ?」

「見た目だけ?僕は魔力が目で見えるんだ、見た目だけで判断してるわけじゃないよ?」

「へぇ、便利な能力を持ってるんだな、だから呼ばれたのか、そいつを確認してもらうために」

「ん〜?何それ、玉?」



この世界に住んでて魔核も分からないのかよ…本当に魔力見えてるのか?まぁ俺は普段、意識して魔力制御してるから見えなかったんだろうな、でもさっき風魔法使ったし、威圧も見えてないのか?



「こいつらを呼んだ意味あるのか?何この玉とか言ってんぞ?」



レンはレイだけの威圧を解いて質問した。



「ふぅ〜、アッシュは物や人の表面の魔力視、アシュリーは内面の魔力視を持ってるんだよ」

「なるほどなぁ、じゃあ見た目で判断してるのには変わらないじゃないか、なあ坊っちゃん?」

「…ねえ王様、本当にこいつ強いの?」

「強いなんてもんじゃないよ、たぶん中央の強者、ファーニックより強いんじゃない?」

「そうなのか?」

「へぇ〜、こいつが…」



レンも初耳の情報に疑問符だ、それよりも少し気になる事があったので、マリーの威圧も解いて聞いてみた。



「なぁ、前にカリオールが持ってた、そいつの真偽が分かるような魔道具あっただろう、それは無いのか?それがあれば、このやり取りはすぐ終わるだろ」

「真偽のキューブだね、あれはマリーが…」

「私が壊したんだ」

「なんで?便利そうな道具なのに」

「あれはルードから貰った物だからだ、洗脳が解けた今は怪しく感じてな、アシュリーとアッシュに見てもらったんだよ」



アシュリーの威圧も解いてあげた。



「やっと喋れますわ、あれはその場所の情報を探るような仕掛けが施されてましたの」

「それで僕が、キューブから1本の細長い魔力が出ているのを見たってわけ、惜しかったよ、あのキューブがあれば、あんたが嘘ついている事を、北王様とマリル様に教えて差し上げられたのに」



位置情報を探る魔法を仕掛けてたのか、GPSみたいなもんだな、同じものを見かけたら注意しよう、それにしてもこいつは大丈夫なのか?嘘ついてる本人が真偽のキューブを出せなんて言わないだろうが、そんな事にも気付かないなんてな…



「気を付けなよアッシュ、レン兄ちゃんはアッシュみたいなのが大好物……!」



再度3人に威圧をかけ直した。



「レイ黙ってろ、キューブが無いならしょうがない、体に分からせてやる、なに、本気は出さないさ、さすがにここで暴れたら城が吹き飛ぶからな」

「大げさだなぁ、そんな事出来るの?その魔力で?王様とマリル様もそうやって口で騙したんじゃないの?」



マリーのことをマリル様って呼んでるし、どうやら前から気に食わなかったようだな、いきなり兄ちゃんとか兄様とか、お前誰だよって感じかな?



「お前、レイとマリーの事、大好きなんだな、心配するなよ、別に2人をどこかに連れていったりはしないから」

「子供扱いしないでくれる?あと、バーレル様とマリル様だから」

「いや子供だろ、納得いってないのを隠しもしない、バーレルとマリルは偽名だろうが、せっかく本名を名乗り始めた2人に失礼だとは思わないのか?俺が名前を無理やり付けたとでも思ってるんじゃないだろうな?」

「…」

「図星かよ…だっせぇなぁ」



ヒュッ


バチンッ!



「ぐっ…」



突然アッシュが、目を狙った高速の2本貫手を繰り出してきたので、強めに引っぱたいて叩き落とした。



今ので、指の骨は折れたな。



「さあ、弱い口だけのやつに骨を折られた気分はどうだ?不意打ち野郎」



シュッ


バキッ!



「うぁっ!」



先ほどは右手だったが、次は左手で喉を狙った4本貫手だ、レンはサッと躱し、貫手以上の速さで手刀を繰り出し、左腕の肘関節を破壊した。



マリーの部下って感じだ、急所を狙った暗殺術に長けてるんだろうな、でも暗殺者が感情を荒げて、正面から戦っちゃ駄目だろう、なかなかの不意打ちだったけど。



「こんなもんか…」



レンは3人の威圧を解く。



「アッシュ…あなた馬鹿ねぇ、なんで1番初めにわたくしに聞かなかったのかしら?」

「アシュリー…駄目だったよ、強さも本物だね」

「分かってるわよ、この部屋に入った瞬間からね、だから表面だけで判断するなって、いつも言ってるでしょう」

「うん、ごめん」

「回復」

「「!?」」



レンは少し強めに魔力を込めて回復してあげた。



「今の魔力は…アシュリー、僕はまだまだだったよ、この人…レン様に対する評価が足りてなかったみたいだね…」

「お前、不器用すぎるだろ、自分の体を犠牲にし過ぎだ、本当にいつか死ぬぞ?」

「うん、身を持って理解したよ」



これにて一件落着!



「レイ、マリー、それを確認してもらうんだろ?」

「ああ、そうだったね」

「お前ら、これがなんだか分かるか?」

「マリー様、わたくしをアッシュと同じ扱いしないでいただけます?そんなものは魔核だと誰でも分かりますわ」

「魔核!?大き過ぎない?人の頭くらいあるんだけど」

「凄い内包魔力ですわね、火…あと氷ですか…」

「凄い、正解だ、そんな事まで分かるのか?」

「正解?…レン様はこの魔核の持ち主を、討伐なされたと言うことですか?」

「ああ倒したぞ、氷は使って来なかったけど、少し縛りプレイしてたからな、苦戦したよ…でもまぁそこそこ余裕を持って倒せたかな」

「兄ちゃん…現実でそれやっちゃうの?」

「そうでもしないと強くなれないんだよ、お前もまだまだだな」

「兄様…しばりプレイとは?いやらしい事ではないだろうな!」

「違うよ!誤解される言い方やめて!」

「ん、んんっ!それで、こちらはどのような魔物でしたの?」



アシュリーは場の制御が上手いな、マリーが暴走しそうだったから助かった。



「そいつを持ってたのは、デビル・ディアーという魔物らしいな」

「デビル・ディアー!?」

「これが噂の…」

「門番じゃないか…」

「それが本当でしたら、この魔核はとんでもないお宝ですわね、様々な事に利用できるでしょう、兵器としても優秀、ここ王都オーソロンくらいでしたら、全体を焼け野原にしたり、凍り付かせることも可能ですわね」

「凄いねぇ、あ…でもそれくらいならレン兄ちゃんにも可能でしょ?」

「ああ、簡単だな、火だったら魔力2000〜3000使えば焼け野原、4000〜5000使えばたぶん蒸発させられるな、光や闇ならもっと魔力使わなくてもいけるかも知れない、やらんけど」

「ここではやめてね?僕泣いちゃうから」

「話を聞いただけでも、デビル・ディアーを倒せる実力なのは明白ですわね、アッシュはこんな方によく喧嘩売りましたわね」

「うん…反省する、三日三晩反省する…」

「ねぇ兄ちゃん…」



レイが真剣な顔だ…



「どうした?」

「デビル・ディアー討伐の噂は知ってる?」

「その昔、英雄級開拓者たった1人の生き残りだけで、あとは全滅したっていうあれか?」

「うん、僕がこの世界に来て2年くらい経った頃かな、王になる前なんだけど、討伐隊に誘われたんだよ、めんどくさくて参加しなかったけど」

「なに?誰に誘われたんだ?」

「その頃はSランクの英雄級開拓者として名を馳せていた…賢者ルードだよ」

「あいつは…」



本当にちょくちょく登場するな…おかしいと思ったんだよ、爆散して鹿の死体を持ち帰れなかったとか、例えバラバラでも一部は持ち帰れるだろって、それに、爆散させられるほどの実力差があるなら全滅は無いだろって思ってたんだ、これは嘘っぽいぞ、デビル・ディアーは討伐されてない、鼻くそが他の開拓者と勇者を殺した、っていうのが濃厚だな、いや、そうに決まってる、鼻くそだし…



「その討伐が、ルード主導のもと計画されてたなら、本当に害悪でしかない男だな」

「討伐に勇者も参加したのは知ってる?」

「知ってるぞ、生き残ったのは勇者じゃなくて、英雄級の開拓者なのかと不思議に思ってたんだよ」

「その勇者の名はレイカ…私の高校時代の親友だ、少しお馬鹿さんだったが、正義感に溢れたいいヤツだった…」

「それは…」

「それなのに私は!今の今までその事実を忘れて、のうのうと生きていた!ねえ兄様…洗脳とはこんなにも凶悪なのか?」



これは…鼻くそがやったかもしれないとは、言わないほうがいいな、復讐に走りそうだし、もしかしたらそのレイカとやらは今も…



「その話はまたあとにしよう、マリーは何も悪くないよ、とりあえずその魔核はやるから、有効に使ってくれ」

「ありがとうレン兄ちゃん!」

「兄様、私からも、同じ個体ではないかもしれないが、レイカの仇を討ってくれてありがとう…」

「マリー…」



そうじゃないんだマリー…いずれ俺が中央へ行って確かめるしかないな。



「そう言えば、強者ファーニックだったか?お前達は会ったことあるのか?」

「ないよ、でも数百年は王として君臨してるらしい、この世界で一番有名で、一番謎が多い人物だよ、色々な噂もあって、その動きは速すぎて誰も目で追えないとか、剣一振りで数千体の魔物を斬り殺したとか、魔法一発で気に食わない街を滅ぼしたとか」

「…そうか、それなりに強そうだな」

「そう、それなりなんだよ、兄ちゃんの話を聞いたあとだと正直かすれるよね、だからファーニックよりもレン兄ちゃんのほうが強いと思ったんだよ」

「魔法一発で魔物の森、その数十平方kmを焼いて、しかもその炎を水魔法一撃で消したとか、光の速度で移動するとかな、あと収納とか」

「は、はは…それはまぁ、あれだ…」

「あれって何さ…とにかく僕たちも負けないように頑張るよ」

「私もだ!」

「なんだか話が大き過ぎて、ついていけませんわね」

「うん、僕ももう少し反省する日にちを延ばすよ」



あとは特に話しておくことは無いよな…



「じゃあ、俺はそろそろ行くよ、中央にまたやられないように、頑張ってこの北の国全体を強化しろよ、あ、そうそう、セルマータの開拓者組合に視察行ったときは、俺の説明を聞かれるだろうから、レイから説明しておいてくれ」

「そうやって…どうせ面倒くさかったんでしょ?分かったよ、僕がよ〜く説明しておくよ」

「すまんな、任せた」



そう言ってレンは、次の目的地へ向かっていった。

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