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神の庭園〜箱庭管理人〜 テンプレ破壊の復讐神、異世界へ降臨す。  作者: coz
第三章【北国】〜ダスト村の攻防〜
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60話 北国平定!レンの旅立ち

デビルをキメて脳を溶かした次の日、約束通りサンドラの家に来ていた。



「よしっと、こんなもんか?」

「ええ十分よ、あとは私が加工して使うわね」

「そういう技能でも持ってるのか?」

「手芸の才能があってね、加工っていう技能を持っているの」



へぇ、やっぱりこの村に勧誘して良かったな。



サンドラ宅の裏庭、北側城壁との間が30mほど空いていて、空き地となっていた為、そこに大きな素材倉庫を作り、手当たり次第に粘土、木、鉄、銅、銀、その他の鉱石など、手当たり次第に敷き詰めていったのだ。



「また素材が足りなくなったらお願いするわね」

「了解だ、なんなら倉庫も大きく出来るから、減り具合をみて増築するか決めようか」



小さな村だが、村人は400人弱しか住んでいない、そのため土地はかなり余っているのだ。



「分かったわ、よろしくね、最初に冷蔵庫と冷凍庫を試しに作ってみて、そのあとに門の扉、橋の順でやっていくわ、私なりにやってみるけど、行き詰まったら相談しに行くわね」

「分かった、あとはよろしく、この村にいる間は毎日顔出すからな」



解体部屋の他に、工房用の部屋も増築して、レンは村長宅に戻っていった。



さて、あとは今日も含めて9日間、ゆっくりするかぁ、ティルのことも構ってやんなきゃだし。



―――――5日後



「ありがとねぇ、いっぱい手伝ってもらっちゃって」

「いいんだよ、俺の仕事でもあるんだから、サンド〜、そのあたりでいいぞ〜!」

「りょーかーい!」



現在、北門の橋の所に来ている、サンドラとレンが作り上げた、跳ね上げ橋の試運転だ。


動力源はサンドラ、橋の本体とワイヤーなどはレンが、お互いに知識を出し合って作り上げた。



この世界にワイヤーなんていう、細い鉄を編み込むような知識はなかったからな。



チェーンだとどうしても動きが固くなったり、途中で引っかかったりと、あまり上手くいってなくて、どうしたものかとサンドラが悩んでいた為、こんなのはどうかと地球の知識を教えたのだ。


動力源は鉄の箱、地面の上に一部出ているが、本体自体はかなり大きく、地面深くに埋め込まれている、橋の重さに耐えられるようにだ。


箱の中には、オルゴールのように鉄の円柱横向きに付いていて、そこにワイヤーが取り付けられている、ワイヤーのもう一端は箱から真っすぐ上へ、鉄柱が動力箱の横に立てられていて、その頂点を支点に、橋を引っ張り上げられるようになっている、あとは動力源の円柱を回転させれば巻き取ったり伸ばしたりできる、単純な仕組みだ。


鉄箱の上には、ゴブリンの魔核が2つ埋め込まれていて、それに微量の魔力を込めれば回転する、2つの魔核はそれぞれ回転方向が違い、それで上げたり下げたりするのだ、しかし、橋が上がりきれば勝手に止まる、というような仕組みにはなっていない為、任意に人が停止させる必要がある、そのための門番だ。


先程からサンドが魔核に触って、上げ下げを楽しんでいる、何故かドヤ顔で…



サンド、なんでお前が得意顔なんだよ。



扉はかっこよくするため、真四角ではなく、上の部分をアーチ状にした、もちろん城壁入り口の形状もそのように修正した。



両開きの大きな鉄の門で、趣向を凝らして、女神ヘスティアの姿を浮かび上がらせてみた、もちろんちゃんと色も付けて完璧に再現、ピンクがかった金色の髪、人とは思えないほど整った顔、袖の長い赤と白を基調とした薄いひらひらの和風の着物、半透明の羽衣を纏った神々しい姿だ。


こちらも門の中心付近に魔核が付いており、ティアがそれを両手の手の平に乗せているような格好になっている。


そこに触れて魔力を込めれば扉が開く、これは一定量の魔力しか込められない仕組みとなっており、1回魔力を込めれば、開き切ってから止まる、もう一回魔力を込めれば閉まるようになっている、ただし、逆に橋と違って途中で止められない為、挟まれ事故には注意が必要だ。



サンドラ曰く、魔核に接続されている、魔粘土の導線の量がどうたら言っていたが、難しくてさっぱり分からなかった。



俺には魔道具作りは無理だな、今後は全部サンドラに任せよう。



「さて、こんなもんだろうな、サンド、あとは任せたぞ」

「ああ、俺に全て任せろ!」



ふっふっふっ…サンドよ、とうとう北門を任された理由、その事実を知る時がきたようだな、せいぜい虚しさを噛みしめるがいい、遊びすぎて魔力枯渇、そのまま堀に落ちて、水魔法師らしく水に還る、というような事態にならない事だな、いやマジで。



「あとは依頼されている分の冷蔵庫と冷凍庫を作らなきゃ、大忙しね」

「すまんな、俺がそんなネタを教えてしまったばかりに」

「いいのよ、これでも毎日充実しているの、オーソロンにいた頃とは全然違うわ」

「それならここに呼んで良かったよ」

「この村は凄いわよね、本当にお金のやり取りがないのよ、なのに食べるのには困らない、毎日誰かしらが肉や野菜をくれるのよ、いつもありがとねって言って、それは私のセリフだわ、うちの冷蔵庫はもう食材でいっぱいなのよ」

「一回捨てられた村なだけあって、互いの協力や助け合いの考え方が軽く引くレベルだよな、むしろ今、この村でお金での取り引きなんかを始めたら、人間関係が崩壊するんじゃないかと思うほどだよ」



ここで突然、サンドラが真剣な顔をする、どうやら真面目な話をするようだ。



「レンさん…」

「ん?どうしたんだ急に?」

「いや、レン…私はあなたを2人目の息子のように思ってるわ、本当にありがとう…私を救ってくれて…もう死ぬ事しか出来なかったはずのこんな私を…う、うぅ…本当に…本当に…」



レンは、涙を流すサンドラを優しく抱きしめる。



「サンドラ…感謝は受け取ったよ、門の絵は見たよな?あれば実在する女神様なんだ、俺はあの神様に救ってもらった、この世界に捨てられ、絶望の淵に立たされ、死ぬ運命しかなかった俺を救ってくれたんだ、その彼女が言った、死ぬ運命っていうのは決まってるんだってさ、死ぬ事しか出来なかった?それは違う、サンドラはそこで死ぬような運命じゃなかったんだよ、俺がサンドラを見つけ、そして助ける事も全部運命なんだ、悲しむことなんかない、堂々と生きれば良いんだ」

「レン、ありがとう…ありがとう…」

「息子って言ってくれて嬉しかった、俺は元の世界に母さんをおいてきてしまったんだ、こちらこそありがとう」

「そうだったのね、いつ頃旅立つのかしら?」

「あと4日だ」

「寂しくなるわ、体は大事にするのよ?たまには顔を見せに来てね?私はお母さんなんだから」

「ああ分かったよ、母さん、じぁあそろそろティルが拗ねる頃だから帰るよ、また明日」

「ええ、また明日ね」



母さん、か…



―――――4日後



とうとう旅立つ日がやって来た。



はぁ、気が重い…1週間後に旅立つって、自分で言っておいてこれかよ、精神は仕事しないなぁ。



この1週間は自主的には鍛錬をしていない、ティルを連れてサンドラの所へ行き、魔道具談義に花を咲かせた、リルと一緒に村の見回りをしたり、たまに鍛錬にも付き合った、セイスの狩りに付き添ったり、サンドをからかって遊んでいた、フローラにティアのスイムを紹介して怒られたり、南門へ行き、ミリーとランドルの話し相手もしていた、広場の公園で子供達と一緒に遊んだり、レン様像の下でじじい達と楽しく喋ったりもした、本当に平和で、なんの不安も不満もなく、楽しく過ごした1週間だった。



レンはごちゃごちゃと考えながら、重い腰を上げ、着替えて部屋を出る。



なんか皆に顔合わせづらいなぁ、なんて喋ったらいいんだよ…



様子を伺いながらそっとリビングに顔を出す、しかし、そこには誰もいなかった。



あれ?まだみんな寝てるのか?そんなに起きるの早かったか?



コンッコンッ…



ん?



「レン様おはようございます」



カリオールの声だよな?



ガチャ…



「レン様、お迎えに参りました、さぁこちらへ」



なにがなんだか訳も分からず、言われるがまま外に出るレン。



「え…なにこれ…」

「兄ちゃん!久しぶり!」

「兄様、会いたかったぞ」



なんでレイとマリーがここに?この立派な馬車はなんだ?また俺は何かに嵌められるのか?



過去の恐怖が蘇り、少し疑心暗鬼になっていく。



「さあ乗って♪」

「兄様、私の隣にどうぞ」

「あ、ずるい!僕の隣だよー!」

「なんだと?」

「なんだよ!」

「「ぐぬぬぬ…」」



そんなやり取りをしている2人を見て、レンはなんだか気が抜けた。



「ふふ、ふふふ、はははは」

「ああ〜、兄ちゃん笑ったなぁ?」

「見苦しいところを見せた」

「いいよいいよ、それで?馬車に乗ればいいのか?」

「うん!」

「はい!」



とりあえずレイの隣に座った、前回の事もあり、少しマリーが怖かったのだ、次は私の番だな…とか小声でブツブツ言っていたが。



―――――



レンは黙って馬車に揺られている。


なんとなく、この後どうなるのか予想が出来たからだ、レイとマリーもニコニコしているが何も喋らない。



そんなに気を使わなくたっていいのにな…



ぼーっと外を眺める、馬車は真っすぐ広場の方へ向かっていた、村人達が頑張って敷いた石畳のおかげで振動も少ない、等間隔に植えられた木の間から見える、これまた等間隔に建てられた家々もキレイで見応え抜群だ、色々な思い出が頭の中で走馬灯のように巡る―――



馬車が広場に入り停止した、カリオールが馬車の扉を開く。



「さあ、皆様がお待ちです」

「ああ、分かった…」



レン様!!ありがとう!!



村人全員が集まっていて、一斉にお礼を言ってきた、テーブルや食事なんかも用意してあり、広場全体がパーティー会場のようになっている、噴水の両サイドに柱が立てられており、【レン様ありがとう】と書かれた巨大な横断幕が掛けられている。



うぅ…馬鹿共が、余計に旅立ちづらくなるだろうが、本当に感謝だ、こんな見ず知らずの俺なんかを受け入れてくれて、本当に優しい村だったなぁ。



「みんな!俺の方こそありがとう!こんな…こんな見ず知らずの俺なんかを受け入れてくれて、本当に感謝してる!たまに帰ってくるから、こんな自分勝手な俺だけど、また受け入れてくれるか?故郷と言ってもいいのか?」

「いいに決まってんだろ!このバカ野郎が!」



フローラだ、怒りながら涙を流している、毎日美味しい料理をありがとう、口は悪いがいつも心配してくれているのは分かっていた。



「儂らは家族、いつでも待ってるのじゃ」

「ええそうねぇ、家族なんだもの当たり前よねぇ」



村長は最初から最後まで俺のことを疑いもせず、ずっと親身になって色々考えてくれていた。


テラーには服をもらったな、少し怖くて謎な人…でもいつも一歩後ろに下がって、旦那を立てていた、とても奥ゆかしい人だ。



「レン殿、いつでも待ってるからな、また一緒に狩りに行こう」



セイスがレンの肩に手を置いて言ってきた。


出会いは最悪だったが、今では落ち着いて物分かりのいい男になった、頭はちょっとアレだが…まぁそこには触れるまい。



「レン様ぁ、この村は任せろぉ!私が命をかけて守ってやる…この一影のリル様がなぁ!」



リルも立派に育った、こいつも出会いは最悪だった…そんなリルだが、今や大声で一影なんて叫んで、立派な厨二病に育ったな、涙で顔がぐちゃぐちゃじゃないか、せっかくの可愛い顔が台無しだぞ。



「レン様、私たちも頑張ってこの村を守ります!守れなかったら死にます!」

「帰ってきたら、また鍛錬お願いします!」



光の夫婦、ミリーとランドルだ、最近結婚し、晴れて本当の夫婦になったらしい、末永く仲良くしてほしい、だから死ぬな、そういうときは逃げろ、ミリーはもう少し落ち着こうな。



「お兄さん…」



ティル…



「ティルは、もうなかないっていったけど…でも…でも!わかれたくないよ〜!まだいっしょにいたいよ〜!わぁ〜ん」



一番仲良くしてくれた女の子、こんなに懐いてくれた子を泣かせるなんて、俺は最低だ…必ずまた来るから、許してくれ。



ティルはフローラに抱きついて号泣している、フローラも泣きながら慰めている。



「レン…」

「母さん…」

「気を付けてね」

「うん…うん…母さんも、次帰ってきた時も元気でいて…下さい、うぅ…」



とうとうレンも耐えきれなくなり、サンドラの両手を握り締め、手に額をつけて、お辞儀するような姿勢で、堪らず泣き始めてしまう。



「あらあらぁ、いつの間に親子になったの?これならレンさんもこの村から逃げられないわねぇ、良くやったわサンドラ」

「相変わらずテラーは怖いことを言う、俺はテラーも…母さんみたいな存在だと思ってるんだ、この村から逃げるわけないだろう」

「あらあらぁ、うふふふ…」



ありがとうテラー母さん、この場を暗くしないように、あえて冗談を言ってくれたのは分かってる…少し素直じゃないところはあるが、優しい人だ。


テラーだけじゃない、本当にこの村は優しい人ばかりだ、よし決めた。



「村長…俺からこの村に名前を送ろうと思う、この村の名は今日からカインド、俺の第2の故郷、優しさの村カインドだ」

「うぅ、レン様…儂ら夫婦にとって、それは最大級の贈り物なのじゃ…うぅ…」

「あなた…よかったわねぇ、これまでの事が報われたわ、ありがとうね、レンさん…」



ついに村長とテラーも堪えきれず泣き始めた、名前が無いというのは想像以上にくるものがあったらしい。



2人とも20年間、この村の長として、その妻として頑張っていたんだ、村の名を捨てろなんて、その努力を踏みにじる行為に等しいよな、あいつら、お遊び半分で…絶対に許さねぇぞ。



「レイ、いいよな?」

「うんうん、カインド、いいねぇ♪たしかに優しい村だよ、ぴったりだねっ!」

「北王からも許可が出たな…みんな!これからこの村はカインド!優しさの村カインドだ!」



わぁぁぁぁ!!



皆で泣いて、笑って、最後の時間は楽しく過ぎてゆく…



―――――



「ふふ、はいこれ」

「これは?」



最後に皆から色々な贈り物を貰った、最後はテラーだ、レンは必死に涙を堪えながら受け取る。



何やら袋に入っている、器用なテラーだ、また何か作ってくれたんだろう、後で確認させてもらおう。



「本当に転移門から行かないのじゃな」

「ああ、歩いてこの世界を見てみたいんだ、転移門では味気ないよ」

「うぅ〜…」

「ティル、レンはもう行くんだから、離してやれ」

「うぅ…やだよぉ〜」

「分かったよティル、そうだな…まずは一年だ、必ず一年以内に一回は帰ってくるから、また仲良くしてくれるか?だから笑顔で見送ってくれ、な?」

「ほんと?わかった!

またいっぱいおしゃべりする!ティルまってる!」

「スイム、いるか?」



ぴょ〜ん!



「おおっと」



ティルの影からレンの腕の中に飛び込んできた。



「必ずティルとこの村を守ってくれ、頼む」



ぷるんぷるん♪



「いい子だ」

「ね、ねぇ兄ちゃん、それって…深層の…」

「そうだぞ、カオススライム、それも進化個体だ、ダークネス・カオススライムだな」

「兄様、たぶん戦ったら私たちといい勝負だぞ」

「お前、やっぱり凄いヤツだったんだなぁ、それなら尚更安心だな」



ぷるるん♪



「さて、そろそろ行くよ、みんな!またな!」



これ以上湿っぽくなるのは嫌なので、笑顔でさっぱりとそう言って、ティルがまた泣き出す前にと南の方を振り向き、颯爽と走っていった。


とにかくカインドが見えなくなるまで振り返らずに走り、見えなくなった頃、後ろを振り返る。



「みんな、本当にありがとう…」



感謝の言葉を口にして、深く深く頭を下げた…

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