56話 深層区再び
現在ティルと2人で、危険区域の深層第1区の上空、高い木の上ギリギリを、岩板に乗って飛行している。
「わぁー!たかーい!はやーい♪」
「ティル、はしゃいで落ちるなよ?」
最初に中層第3区に行き、リスクリワードを使用してみたレン、スライムもゴブリンもあまり大きな数字がヒットせず、深層にやってきたのだ。
やっぱりカオスは深層だったか…
改めて転移門を潜り、深層に来て、スライム川、ゴブリン集落、うさぎトンネルを調べた結果、それぞれある程度大きな数字がヒットした、今はゴブリン集落に向かっているところだ、因みにティルを連れてきていることは家族に内緒である。
集落は一つじゃなさそうなんだよなぁ。
しばらくして…
あったな…遠くに一画だけ森が拓けている場所がある、あそこが集落だろう、まずは様子見だ…
ん?近くに背の高い叢が無いぞ、前回見た集落とは違う所だな、さてどうするか…
「ティル、少しここで待っていてくれ」
「おそらでまってればいいの?」
「ああ、下には強い魔物がいっぱいいるからな」
レンはそう言うと、岩板を空中に固定するよう念じ、集落の端に向かって瞬光を使い移動する。
いっちょ前に柵なんか立てやがって、ゴブリンのくせに。
集落を取り囲むように、お世辞でも立派とは言えない木の柵が立てられており、入口と思わしき所にゴブリンが2匹立っている。
称号の補正極大とやらを試させてもらおうか、リスクリワード。
【0.9】
以前は0.8だったよな、やはり能力が上がれば数字が上がって、リスクが少なくなるんだろうけど、思ったより上がってないな、称号の補正極大は反映してなさそうだ、あと、魔法の知識とかを考えれば、もっと数字が上がってもいいと思うが、知能とかも反映されてなさそうだから、ただの知識では反映されないのかもな。
レンは土魔法で片手剣を作り、カオスゴブリンに向かってゆっくり歩いていく。
「グォ!?」
「グァウ!!」
ゴブリンがレンに気づいた。
ダダダッ!
スパッスパッ!
「「ガァァ…」」
気づかれた瞬間全力で近寄り、2匹を一刀両断。
こんなもんか、極大の効果はわからんな、ステータス。
貯蓄 150 +150
1匹75か、前回よりは少し減ったが…これは稼げるぞ。
レンはそのまま集落の中に突入、一匹一匹に時間はかけられないので、対集団戦の訓練の為、派手な魔法は使わず倒すことを決めた。
ダッ!
スパッ、スパッ、スパッ!
ドカッ、バキッ!
ドカァン!シュッ!
グァァァァ!
グギィ!
…
―――――十数分後
剣術、体術、軽めの魔法を駆使してゴブリンを殲滅したレン。
さすがは極大だ、ゴブリンの攻撃なんか、全く俺に効かなかったな、なんなら爪折れてたし、しかも服の上で、どうなってんだこれ。
本当はもう少し時間をかけて戦いたかったが、ティルが待ってるしな。
「ステータス」
貯蓄 9600 +9450
ふふふふ…これはヤバい、脳汁があふれるぜ。
「グァ、グァァウ…」
レンの目の前には、まだ瀕死のゴブリンが5匹ほど倒れている。
スゥ〜
ティルを隣に下ろしてあげた。
「もうおわったの?」
「ああ、残りはこの5匹だけだな、ティア、めをトドメを刺せるか?」
「いいの?」
「ああいいぞ」
「うん!やってみる!」
やはりこの世界の人間は強いな、地球人の、それも8歳の女の子なんて、ゴブリンの姿を見ただけで号泣するぞ。
「はぁ!いけー!」
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
えぇ…5匹が一気に吹き飛んだんだが、マルチロックですか、そうですか…
あ、でも死んでないな、さすがは深層の魔物だ。
「ティル〜、まだ生きてるぞ〜」
「むぅぅぅ…ちねー!」
ちねーって…可愛いかよ。
その後5回ほど爆撃して、ようやくゴブリンは息絶えた、だが…
ドサッ
「…」
「ティル!どうした!?」
素早くティルを抱き上げる。
「お兄…さん、おむねが…あついの…」
「まさか…」
レンは岩板を出し、ティルを抱えて乗り込み、安全な上空へ移動する。
しばらくして…
「はぁ〜、はぁ〜」
「ティル…大丈夫か?」
「う、ん、ティル…どうなったの?」
「多分だが、強い魔物を倒して急激にレベルアップしたのかもしれないな」
「ティルつよくなった?」
「あぁ恐らくな、ステータス見せてくれるか?」
「わかっ、た…ステータス」
名前 ティル8歳 Lv23
風使い Lv5
体力4890/10000
筋力1234
俊敏1452
精神882
魔力2974
魔体6571[+3000]
知能832
技術1847
才能
空気
技能
空気操作5
なんだ!?体力が半分減ってるぞ!
あと魔力と魔体…ヤバない?アンバランス過ぎる、もともとレベル1で魔力68だったよな?…まだ貸与してから15日しか経ってないのに…とにかく貸与後の潜在能力の上がり幅が凄まじいということは分かった…
出来るだけバランス良く貸与して、鍛錬を積んでからレベルアップさせるべきだな、今日はこれ以上はやめて見学していてもらおう。
「今日はとりあえず見てるだけにしていてもらえるか?」
「うん、わかった…」
「いい子だ」
その後、三つの集落を殲滅した。
もう集落は無いか…ボーナスタイム終了だな、ステータス
貯蓄 39225 +29625
グヘヘヘへェ…
「お兄さん、おかお、きもちわるいよ?」
「うぐっ…」
「どうしたの?」
「俺もちょっとゴブリン倒しすぎて、少し気分が悪くなっただけだ」
「ティルとおなじ?だいじょうぶ?」
「大丈夫だ、心配してくれてありがとな」
「うん」
「ティルも落ち着いたか?」
「うん、もう大丈夫」
いつもの元気がないな、まだ少し調子悪そうだ、体力半分くらい減ってたからな、レベルアップで体力使うなんて聞いてないぞ、もっと倒してたらと思うと血の気が引くな。
「さて…まだお昼くらいか、スライム川でも行ってから帰るか」
実はオーソロンで懐中時計を見つけていたレン、レイが村に視察にくるとき、大量に買わせていた、おかげでレンも手に入れたし、村にも大量に供給された。
「スライム?」
「見たことないか、ちっちゃくて丸くて可愛い魔物だよ、俺はスライムだけは倒さないって決めてるんだ」
「ティルもみたい!」
お?少し元気が出たな。
「じゃあ行くか」
―――――
以前来たと思われるスライム川に到着した。
「お兄さん、なにもいないよ?」
「う〜ん、前はここに最初3匹いて、そのあとここで10日間いたときは、ちょこちょこ遊びに来てたから、少し川で遊んでようか」
「うん!わぁ〜!」
タッタッタッタッ
ティルは両手をあげて、川へ向かって走っていった。
すっかり元気になって、えがったよぉ〜…でもあのステータス、どうやって説明しようかな、あれ、セイスより強いぞ…
トンッ、トンッ…
ん?なんだ?背中に何か当たった?
地面に胡座をかいていたレン、上体を捻り、後ろを振り向く、そこには…ぷるぷると揺れながら、触手でレンをつついているスライムがいた。
「ふぉぉぉ♪久しぶりだなぁ!もしかしてあのときのスライムちゃんか?」
ぷるん♪ぷるん♪
少し嬉しそうに飛び跳ねるスライム。
ガシッ、ナデナデナデナデ…
「相変わらず可愛いなぁ」
抱きかかえてスリスリするレン。
「ああー!なにそれぇ!」
「ティル、紹介するよ、こいつは俺と友達になったスライムちゃんだ、スライムちゃん、この子はティル、食べちゃだめだからね、俺の友達だから」
ぷるるん♪
分かったとでも言うかのように、胡座をかいたレンの足の中でぷるぷると可愛く揺れると…
にゅるる〜
触手をティルのほうへ伸ばした。
「ティルはティル!よろしくね、スライムちゃん♪」
触手をぎゅっと握って握手?をするティル。
お互い適応能力高いな、これなら安心だ。
「ティルも触りたい!」
「いいぞ、スライムちゃん…え〜っとなんか名前つけようか」
「ティルかんがえる!」
「おおそうか、よろしく頼む、俺はこういうの苦手なんだよ、こいつの魔物名はカオススライムだ、たぶん」
「カオススライム……スイムちゃん!」
くっ、なんてネーミングセンスだ…スライムから“ラ”を抜いただけなのに。
「よし、ティルから名前の贈与だ、お前は今日からスイム!ほれ、ティルに触らせてあげてくれ」
ぴょ〜ん!
「きゃあ♪うわぁ〜、すべすべできもちいい〜♪」
う〜ん眼福だ、美少女がスライムを愛でるのは絵になるわぁ、紫色じゃなければな…なんか毒々しいんだよなぁ、紫に黒のマーブリングが入ってるんだよ、前はもう少しキレイな紫色だったのに。
「うん、うんうん、そう!ティルはお兄さんとゴブリン倒してきたの!」
「え?」
「うん、これから帰るところだよ♪」
「え、ちょ、ちょっとティルさん?誰とお話を?」
「スイムとおはなしだよ?」
「!?」
そ、そんなバカな…名前か?名前つけたからなのか?
「スイム、一緒に行きたいって〜♪」
「はははは…はぁ、俺も別のスライムちゃんに名前つけようかな…」
「ねぇ、だめ?」
「ん?いいんじゃないか?他人に迷惑をかけなければな」
まぁ、いいだろう、ここまで来なくても村に戻れば会えるようになるんだ、うん、これはいい事、うんうん、いい事だ、うんうんうんうん…
なにか無理やり自分を納得させるレンであった。
「だいじょうぶ!ティルにしたがうっていってるから!」
「ティル、才能と技能のステータスを見せてくれるか?」
「いいよ〜♪ステータス!」
才能
空気 テイマー
技能
空気操作5 テイム10
テイム中
[ダークネス・カオススライム]
ダークネス付いちゃってるよ…君ぃ、只者じゃないねぇ?絶対闇魔法極めちゃってるよね?リルが羨ましがりそうだ、テイムもいきなり10とか、ティル…お前はどこの主人公なんだ?
「よっしゃ、んじゃ帰りますかぁ」
「は〜い♪」
ぷるぷる♪
ダークネス・カオススライムが仲間になった。
これ、ラスボス前に仲間になるやつじゃね?
聖堂に戻ってきたレン達、ここでレンがあることを思い出す。
あ、鹿…
「ティル、先に村に戻っててくれるか?」
「どうしたの?」
「少し倒しておきたい魔物がいるんだよ、そんなに時間はかからない、見つけられるかどうかもわからないし」
「まもの、つよいの?」
「ああ強いぞ、さすがにティルを守りながら戦えるか分からないんだよ」
「うん、分かった!じゃあここでスイムとまってる!だからはやくかえってきて!」
「はいはい、分かったよ、すぐ帰る」
そう言うとレンは、右壁扉の奥から2番目、深層第2区の転移門に入って行った。




