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神の庭園〜箱庭管理人〜 テンプレ破壊の復讐神、異世界へ降臨す。  作者: coz
第三章【北国】〜ダスト村の攻防〜
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49話 開拓者組合

カリオールの部下たちに丁重に扱われ、少し困惑気味のサンドラを見送り、さてどうするかと考える。



「最初の予定通り組合でも見学してくるか」

「レン様は開拓者になられるのですか?」

「最終的には開拓者になろうと思ってるよ、ここでは…分からんな、登録は簡単なのか?」

「はい、登録は紙に自身の情報を記入するのですが、名前と魔法適性のみの記入で登録出来たはずです、職業と才能、あと魔法以外の技能を記入する欄はありますが任意ですね、レベルや基礎能力は言いたければ口頭で、アピールしてもランク上昇に変わりは有りませんので、するだけ損ですね」

「実力主義の世界らしいな、ランクは、AとかBとかか?」

「その通りです」



内容はテンプレよろしく、G〜Aその上にSの8段階、F・Gが駆け出し、D・Eが中堅、B・Cがベテラン、Aが大ベテラン、Sは伝説級で英雄や勇者などがそう、深層狩りはAやSの役割だと言われている。



俺は少なくとも英雄クラスではあるって事だな、シン達も勇者様達と言われている、やはり油断は禁物だ、ここに来たのはまずかったか?



来てしまったものはしょうがないと、考えるのをやめて、先程サンドラに聞いたとおりに、都市内を歩いて行く。



「あれか、分かりやすいな」



他の建物よりも頭2つ分高い、4階建ての大きな建物、壁は真っ白で、まるで教会のような建物だった、正直開拓者組合という名には、ちょっと相応しくはない、しかし弱肉強食の世界なだけあって、強者が集まる開拓者組合はとても潤っているらしい。



聖堂じゃないよな?中央以外の同じ街に2つあるなんて聞いてないし、とにかく入ってみよう、登録料もかからないと言っていたしな、登録出来たらしてみるか。



建物の中心にある、大きな両開きの扉、その左右にガタイのいい男が一人ずつ立っている、レンは少し嫌な予感がしたが、真ん中に鉄の輪が掛けられているので、それを握ってゆっくり引いた。



他の人達が無言で入っていったから、レンも特に声を掛ける事もなく入ろうとしてみたが。



お?特に何も言ってこないな、街での俺に対する反応の感じから、何かしら言ってくると予想してたんだが。



中に入ると、正面が受付、長いカウンターに綺麗な女性が5人立っていて、それぞれ開拓者の対応をしている。



やはりここはテンプレなんだな、綺麗な女性ばっかりだ。



右に視線を向けると、丸テーブルが何卓も置いてあり、開拓者達が食事やお酒を楽しんでいる、カウンター席もあり、一人で静かに酒を飲んでいる人もいた。



左は個室コーナーだ、作戦会議などの聞かれたくない話や、組合側からの難しい依頼、説明が長くなるような依頼の時は、そこで対応するようになっている。



なんか、思ってたのと違う、全然荒れてない、きちんと説明の看板もあって、元日本人としては非常に馴染みやすいんだが…つまんねぇなぁ、なんかやる気なくなってきた、帰ろうかな…



そうこうしている内に受付が空いたので、とりあえずはそこに向かってみたが…



「うわぁ…」



俺の姿を確認した受付嬢から、明らかに嫌そうな呟きが聞こえた。



そんなにおかしな恰好なのかなぁ、確かに布の質はお世辞にもいいとは言えないけど、一生懸命テラーが縫ってくれたのに…


ステータスが上がって耳もやたらといいから丸聞こえなんだよ、なんか少し、目に敵愾心みたいなものが見えるな、ふふふふ、少しやる気が出てきたぞ。



「すまん、いいか?」

「はい、開拓者組合オーソロン北支部へようこそ、受付のヨミと申します、今回が初めてですか?」

「ああ、そうだ」

「どのようなご要件でしょうか」



ここは1つぶっこんでみるか…



「ああ、実はダスト村から来たんだが、開拓者登録したいんだ」

「え、ダスト…村から?」

「ああ、ダスト村だ」



周りに聞こえるように少し大きめの声で言う。



「登録なさるのですか?」

「ああ、頼みたい、駄目なのか?」

「い、いえ、そのような決まりは無いのですが…」

「おい兄ちゃん」



来やがったな、受付嬢も少しホッとしてるな、その顔恐怖で凍りつかせてやるよ。



先程、扉の横に立っていたうちの一人だった、扉から受付までそんなに距離はない、レンの声が微かに聞こえたのだろう。



「ん?なんだ?」

「ヨミちゃんが困ってんだろ、消えろ」

「困ってるのか?」



受付嬢の方を見て聞いてみる。



「え?いや、え〜っと、まぁ、はぁ」

「だから困らせんじゃねぇって言ってんだろ!」

「話しかけるだけで困るのか?」

「当たり前だろ!てめぇみてぇな最弱の奴らなんかお呼びじゃねぇんだよ!」



なんでわかるんだ?服装だけで分かるものなのか?普通にこの女とのやり取りを聞いてただけか、それにしても、やはり強い者こそが正義の世界なんだな、なら。



レンは再度、受付嬢の方を見る。



「なあ、こいつはなんなの?組合の人?」

「あ、いえ、Bランク開拓者のザンゲ様です」

「そうなのか、一般人が絡まれてるんだが、いいのか?」

「おいこら!こっち見ろ!」

「なぁ、これはいい事なのか?答えてくれ」

「いえ、え〜っと…致し方ないかと…」

「そうか、分かった…」

「分かったようだな?大人しくここから消えろ、そうすれば手は出さねぇから」

「なんで?消えないけど?」

「あぁ?」



しつこく受付嬢の方を見て質問を続ける。



「俺がこのまま、このゴブリンみたいなやつにボコボコにされても一切介入はしてくれないのか?」

「はい…」

「こいつも罪には問われないのか?」

「は、はい…」

「じゃあ女、お前絶対これから起こることに口出しするなよ?お前が言ったんだからな?介入しないと、俺がこいつをボコっても同じ事だよな?結果が違うだけだ、まさか素直に殴られろなんて、意味の分からないこと言わないよな?もし止めにでも入ったらお前…殺すからな?」

「え…」



涙目だ、だが俺は容赦しない、どれだけ見た目が良くっても、中身が醜悪なのには変わりないんだからな、俺はそのことを、この身を持ってよ〜く知ったんだ、それにこの女、なんか臭う、くさいって意味じゃないよ?なんか嘘泣きっぽいんだよなぁ。



「ごちゃごちゃとうるせぇんだよ!このザンゲ様が大人しくしてる内に早く消えろって言ってんだ!」

「…」



無言で、無表情で、ザンゲの顔を見続ける。



「なんだお前!調子に乗るなよ!」



とうとう手を出してきたザンゲ、大ぶりの右フックだ。



はぁ、Bランクってこんなもんなのか…



レンはピカッと光り、一瞬にしてザンゲの前から姿を消した。


ミリーの光魔法を参考に、瞬光を習得していたレン、ミリーはずるいと騒いでいた、それを使ってザンゲの背後に移動したのだ。



ザンゲの肩口から声が聞こえる…



「ほら、消えてやったぞ?これで満足か?」



ゾクッとなんとも言えない恐怖に、冷や汗をかくザンゲ。


肘鉄をくらわせようと、グルっと振り返るが…



またも消えるレン、振り返った後ろからまた声が聞こえる。



「お前、本当にBランクか?遅すぎるだろ」



そんな事はなかった、BランクでもAに近いと言われているザンゲ、普通の開拓者なら最初の右フックで再起不能である。



ザンゲはまたも振り向き、右ストレート。



ザンゲから見て左に、今度は普通に躱して、また消える、左に躱したはずのレンの声が…



「お前、俺を殺してもいいと思ってんな?」



今度は右耳から聞こえる。



恐怖に震えるサンゲ、もはや何がどうなっているのか分からなくなっている。


レンはザンゲの後頭部を掴むと…



バキィッ!



そのまま床に叩きつけた。



バンッ、バンッ、バキィッ、バンッ、バキッ



何度も何度も叩きつけ、血だらけになるザンゲ、しかし途中で回復を使って傷を治し、尚も痛みを加え続けるレン。



「お、お客様!それ以上は!」



こいつ、止めてきやがったな?



「ああ?お前、口出すなって言ったよな?」



レンは右手で掴んでいるものをぶん投げる、ザンゲは組合の壁をぶち破り、外に放り出された。


全身から威圧の魔力を放出しながら、ゆっくりと受付嬢の方に向かう、一歩踏み出すたびに建物が軋みを上げ、他の者達は皆下を向いて全力で他人のフリだ。



「お前、俺は殺されてもいいのに、ザンゲは殺しちゃ駄目ってどういう了見だ?」

「あ…え…」



ぷるぷると震え、何も喋れなくなる受付嬢。



「おい!なんの騒ぎだこれは!」



お?組合長のお出ましかな?またこの女ホッとしてるよ、対応によっては組合長もボコしちゃる。



「なんだ急にお前は、開拓者のトラブルには介入しないんだろ?」

「原因はお前か!」

「いや原因じゃないが?俺は開拓者登録するために初めてここに訪れた一般人だからな」

「は?そうなのか?」

「そうなんだよ、ザンゲとかいうネームドの、黄色肌のゴブリンが急に襲いかかってきたから撃退しただけだ」

「ザンゲ?…一般人が、ザンゲに敵うわけないだろ!」

「なんでそう決めつける、開拓者に登録してない強者(つわもの)だっているかもしれんじゃないか」

「うるさい!とにかくお前が原因なのは間違いないだろ!」

「だから聞いてた?襲われたって言っただろうが」

「なんの理由もなく襲われるわけないだろ!」



なんだコイツは、セイスかよ…



「詳細はこの女に聞けよ、こいつが原因を作った張本人だからな」

「え…そんな、組合長!違うんです!この人が突然一方的に…」



…そうか、別に裏切られたわけじゃないが、この女はこういうやつなんだな、よ〜く分かった。



「女、その対応でいいんだな?後悔してももう遅いぞ?」

「…」

「こらぁ!うちの職員を脅すんじゃねぇ!」



はぁ、低レベルだ…そうか、ここはそういう世界だった…強ければ偉くなれる世界なんだ、少しは話が通じるかもと期待するだけ俺が馬鹿だったよ。



「はぁ」



色々考えたが、ため息しか出ないレンであった、そして。



「俺が悪かったよ、どうすればいい?」

「やっと分かってくれたか、最初からそう素直にしておけばいいんだ、取り敢えず壊した床と壁の弁償だな」

「俺は金持ってないぞ?なんせ貧しい村から来たからな」

「なぁに、開拓者登録に来たんだろ?数ヶ月タダ働きで許してやる」



ニヤニヤしやがって、このままだと悔しいから、目にもの見せてくれる。



「はぁ、いや、開拓者の登録はもういい、なんか呆れたよ、その代わり壊した部分は直してやる、ザンゲも回復させるよ」

「は?お前は何を…なっ!?」



そう言うと、外からザンゲが宙に浮いて戻ってきて、レンの目の前で止まった、尚も浮いたままである。



「回復」



淡い光に包まれて、ザンゲの傷がみるみる回復していく、治療が終わったら優しく床に横たわらせる。


次に壊れた床と壁に手をかざすレン、パキパキと音を立てながら、まるで逆再生するかのように修復してしまった。



「これでいいな?じゃあな、迷惑かけた」



スタスタと歩き、扉から出て行くレン、組合内はしばらくシーンと静まり返っていた。



―――――



「な、なんだあいつは、何者なんだ?」

「組合長…すみませんでした」

「さっきのは?登録はしていただけなかったって事か?」

「はい、すみません、貴重な人材を逃してしまいました」

「どうしてこうなった?」



ヨミは、お前にも原因あるだろと思ったが、顔には出さずに…



「私は登録しようと思っていたのですが、ザンゲ様が間に入ってきまして」

「え?お前、一方的にとかなんとか言ってなかったか?」

「…」



しまった、そう思った受付は誤魔化す事にした。



「あ、あれ?そうでしたか?恐怖で混乱していたかもしれません、記憶が少し曖昧です」

「そうか、怖い思いさせて悪い、俺の管理が甘かった、とにかくこいつだ、ザンゲ!いつまで寝てる!起きろ!」



脇腹を蹴りつける組合長。



「うごふっ!」

「早く起きろ!」

「な、なんだ?ここは?」

「何を寝ぼけてる?」

「ああ!組合長、生意気なやつがいまして!」

「お前、罪のない他人に手を出したな?」

「え…」

「お前が手を出したのは罪のない一般人だ!開拓者とかは関係ない!力あるものはその使い所を見誤るな!」

「は、はい!すみませんでした!」



組合長は自分のことを棚に上げてザンゲを怒鳴りつけた。



「ザンゲ、お前は組合のために色々とやってくれている、だから今回は罪に問わない、今後は気をつけてくれ」

「組合長…わかりました、気持ちを入れ替えて頑張ります!」



受付嬢はそんな2人の茶番劇を冷めた目で見つめていた。



取り敢えずマリル様に報告ね、とんでもないやつがダストからやってきたと、もしかしたらあいつがセイスなのかも、フキノ副隊長は失敗したのかしら…


しかし怖かった…本当に殺されるかと思ったわ…最後の威圧は特にヤバかったわね…あの化け物はなんなの?もう二度と会いたくないわ。

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