4話 転移
レン達6人は、何やら怪しい光につつまれ、気づけば何もない草原に立っていた。
どうする!?
いや、落ち着け俺、状況を整理して、現状を把握しろ、限りなく正解に近い回答を導き出せ…
ラノベ展開なら神様的な奴が登場したり、周りに騎士とローブを着た魔法使い、あとお姫様なんかがいたりするんだが。
は!そうか、夢だ!
とかならんわな、体感で夢じゃないことなんて、一瞬で分かるよ。
ドッキリの類でもない、そもそも俺達にこんな手の込んだドッキリを仕掛ける価値もないだろ、もう最初の地震と、石が光ったあたりから、現代の科学技術では説明が付かなそうだ。
だって、山の木もぐわんぐわん揺れてたし。
レンは、現実的にありえないと考える、となると次に考える事は…
転移か?本当にこんなことあるのか?
「転移か…絶対地球じゃねぇだろここ…」
…
レンの呟きを聞いていたのか全員が絶句していた。
やっぱりみんな頭がいい、最初は騒いでいたが、すぐに落ち着いて無駄に騒がないもんな、それにしたって静か過ぎない?普通はもっと騒がないか?俺の次の言葉を待ってるのか?
「戻れるタイプの転移なのか、戻れないタイプの転移なのかはわからんが、とりあえず待機だな」
「分かった」
シンが同意する。
「さて、どうしようかねぇ」
「あたしは今日何かが起こるような気はしていたのだ」
カリンがそんな事を言い出した。
確かにそうだ…エリー以外みんなそれぞれ地元を離れて仕事してるのに、たまたま平日の何もない日に、学生時代につるんでいた5人が、偶然にも全員集まるなんて絶対におかしい、はっ…!
下を向いて考えていたが、目を見開いて顔を上げる。
「レンレンどうしたのぉ〜?」
「いやぁなんていうか、カノン、ごめん!」
「ひえっ!どうしたんでふか?」
噛んだっ、かわ…今は冗談言ってる場合じゃないな。
「カノン、たぶんお前は俺達5人の転移に巻き込まれた、んだと思う」
「えっ?」
「だから、ごめん!帰れるかどうかもわからないのに、俺に会いにきたばっかりに、必ず帰る方法を探すから!絶対死ぬまで諦めないから!だから…今は謝罪を受け取って欲しい!それしか今の俺に出来ることがないから」
レンは、カノンに頭を深く下げて謝った、他の4人も無言で頭を下げる。
レンは気付いていなかった…偶然5人が集まった日に、たまたまカノンが尋ねて来た、という違和感に。
「あわわわっ!あのあの!はい!僕は大丈夫ですから、頭を上げて下さい!」
カノンも良くわからず頭を下げた。
「ありがとう、でも謝罪は受け取って欲しい、本当に巻き込んだのだと思うから」
「はい!大丈夫です!受けとりました!なんだか僕、不謹慎かもですがワクワクしているのです!」
「実は俺もだ!」
と、シン。
「実はわたしもぉ〜♪」
エリー
「あたしも!」
「僕も!」
カリン、セイト
「全員か、俺もだよ」
学生の頃から、4人は無駄に優秀だったから勉強に時間取られないし、面白い事を探して時間を潰していた、まぁ、セイトはそんなに優秀じゃなかったけど…とにかくそんなやつらがワクワクしない訳がないよな。
「よし!んじゃ全員この世界を楽しむってことでオーケー?」
おお、シンがいつになくテンション上がってるな、ホントにワクワクしてるんだなぁ、こっちまで嬉しくなってくる、とはいえ現状は結構ヤバめなんだよなぁこれが。
「まず、食料がねぇ!」
「「「「「ですよね〜」」」」」
というのも、ホントに草原しかないんだよなぁ、砂漠、というほどボコボコではないんだが、あんな感じで見晴らしが良くて、全面が草原になったと思えば分かるかな?どの方向にも本当に何もないんだよ、こりゃあ詰んだか?
「どうするよリーダー?」
「おい、まだその設定続いてたのかよ」
「当たり前だろ、それにこういうのに一番詳しいのは、レン、お前だろ?」
そう、かもしれんな、俺は優秀じゃなかったが、勉強もろくにせず、休みの日はあまり出掛けもせず、ゲームをしてるか、ネット小説で自分好みのファンタジー物を探しまくって読んでいた、就職してからも変わらず暇さえあれば読んでたし、なんなら仕事の10分休憩も読んでいた。
「でもいいのか?俺は普通の異世界物は大っ嫌いだから、ギリギリを攻めるぞ?」
読みすぎて通常のテンプレ展開が嫌いになってしまったのだ、好きなテンプレもあるが。
「かまわねぇよ、レンが考える異世界攻略ならおもしれぇにきまってる」
「そうそう〜、学生時代もぉ〜、レンレンが考えた遊びや、気になる場所へ行っての冒険ごっことかホントに楽しかったからねぇ〜」
「うむ、確かに楽しかったな、人生で一番楽しかった時期だったかも知れない、レン坊がいたからだぞ」
「でもレンちゃん、これからの攻略が人生で一番楽しくなるように張り切っちゃうんでしょ?協力するよ〜ニンニン!」
「僕も!れ、レン、さんと一緒にチーム組んで仕事しているときが一番楽しかったです!この世界でもまた、よろしくお願いします!」
み、みんな…うぅ、ヤバい、あ、溢れる、カノン汁が溢れてしまう…カノンまでそんなふうに俺のことを思っていてくれてたなんて、しかもレンさんって名前呼びしてくれた…俺はなんて自己評価の低い男だったんだ…
「ん、んん、み、みんなありがとう、まぁまずは現状、を把握しないことには、考え、もまとまらないから、な」
「あれあれぇ〜?もしかしてレンレン泣いてるぅ?」
「う、うるせぇ、泣いてるよ!嬉しすぎて泣くに決まってんだろう、このバッキャロウがぁ!」
「ほう、正直者だなレン坊!慰めて欲しくなったら言えよ?手とりナニ…」
「それはもういいから!普通に慰めてくれ!」
「うむ!普通に慰めてやろう、あたしはレン坊が大好きだからなっ!」
もう、俺は正直に生きることにした!まぁ、こいつらといる時は言いたいことは言ってたし、いつも通りなんだがな。
って…え?カリン今なんて言った??大好き?聞き間違えか?
「そうか、カリン姐、そん時はお手柔らかに頼む」
「うむ、ふふふふふふ」
ナデナデ…
カリンに頭をナデナデされた、でも、出来れば不敵な笑いはやめて欲しいです、っていうか周りの反応うすくない?
レンは不思議そうに他の4人を見渡す。
「ん、なんだ?」
シンが気付いてそうに言ってきた。
「いや、カリン姐が結構重要な事言ったような気がしたんだが?」
「あぁ、レンちゃん、姉ちゃんがレンちゃんの事好きなのは、カノンちゃん以外は知ってるよ?学生の時からね」
「え!?」
そ…そんなバカな…