37話 貸与実験
ここは異世界ツェファレン、そこにあるダスト村の北側、焼けた大地が広がる危険区域、そこで走り回る人物が1人…
ダダダダダダッ!
「ひゃっほ〜う♪」
「…」
レンが、実験として俊敏の能力を、セイスに20%ほど貸与してみたのである。
その結果…
ダダッダダッ、ダダダダダダッ!
「速ぇ速ぇ!すげぇ!ははははは!」
「…」
レンは呆れながら考えていた、俊敏だけで本当に速くなるのかと…
筋力貸してないんだよ?なんでそんなに速くなるの?体の使い方か?そんなんで速くなるのか?まぁ俺からしたら本当に速くなってるのか判断つかないんだけど。
っていうか、そろそろはしゃぐのやめてくんない?おっさんがはしゃぐ姿なんてなんの需要もないから。
レンは考えるのをやめた。
「おい!そろそろ大人しくしろ!」
ザザーッ
「すまんすまん、自分の体じゃ無くなったみたいで楽しくってな」
「まずは説明させてくれ」
「分かった」
「さっきも言ったけど、その力は借り物だ、過信し過ぎないように」
「そうだな、残念だ」
「そして俺から能力を借りている間は、潜在能力の上がる速さ、上がり幅も増えている状態だ」
「そうなのかっ!?」
「さっき説明しただろ!子供かよ!」
ヤバいな、おバカキャラはサンドで十分だぞ。
「お前は俊敏の潜在能力が元から高いな、違和感無いんだろ?」
「ああ、違和感はないな」
「俺の予測だが、お前は俊敏よりも筋力の数値が高いな?」
「分かるのか!?」
「ああ、俊敏だけ上がっても違和感があるはずなんだよ、それだけ潜在能力を秘めてるって事だ、そして上がった俊敏を制御する筋力がそこそこ高い、と見た」
「すごいな…レン、俺のステータス見てくれないか?」
「いいのか?」
「ああ、こんなに協力してもらっているんだ、俺も村のために出来るだけの事はしたい」
「わかった、では見せてくれ」
「よし…な、なんか恥ずかしいな」
「早くしろ、そして顔を赤らめるな、女子じゃあるまい、需要ないんだよ」
「ははっ、ひどい言われようだな、ステータス!」
名前 セイスラード 30歳 Lv13
職業 開拓者 Lv5
体力 9157/10000
筋力 1232
俊敏 686[+2200]
精神 257
魔力 612
魔体 149
知能 285
技術 890
才能
戦闘 辛抱 魔法
技能
筋力強化3 忍耐5
ファイアー
こいつ、辛抱とか忍耐とか…なんで俺に噛みついたんだよ、物理的なほうの意味なのか?
知能の低さが…納得だな、本能で生きてるようなやつだ。
それにしても魔体…これが普通か…
これがこの世界での、浅層第2区で狩りをする者の実力なんだな、良く分かった、見せてくれたセイスに感謝だ。
さて、どう強化するか…近接でずっと戦ってきて、魔法はサポート程度で使っていた、という話だから、筋力、俊敏、技術辺りは潜在能力が育っているんだろうな、なら魔法1択だな。
魔力…魔体…よし決めた。
「お、おいレン、そろそろ恥ずかしいんだが」
「なんで恥ずかしいんだよ、この世界の人間は変わってんなぁ」
「しょうがないだろ、他人に見せるっていうのは、そういうものなんだよ」
「そうなのか、お前も俺のステータス見るか?」
「いいのか!?…いや、本当に?嘘じゃない?」
「だから、顔を赤らめるな!はぁ、まぁいいや、村長の家族で見せてないのはお前だけだからな」
「そうなのか、ではよろしく頼む」
「ああ、土下座とかはやめろよ?絶対だからな?もし頭下げたら引っ叩くからな、全力で」
「顔がどこかへ飛んでいきそうだな」
「ああ間違いなく飛んでいくぞ、だからやめろ、じゃあ見せるぞ?ステータス」
名前 神園蓮21歳
職業 ギャンブラー Lv3
貯蓄 186
体力 10000
筋力 12000
俊敏 8800[−2200]貸与中
精神 100000
魔力 10000
魔体 30000
知能 5000
技術 8000
才能
投資 努力 回避 武術 魔法
技能
貸与1 リスクリワード3 潜行3
想像魔法 リスクリターン
称号
討伐者
[カオスゴブリン]
「…」
セイスの足がガクガクして、額に汗がダラダラと流れ始める。
「なんとか耐えているな、辛抱の発揮しどころだ、頑張れ」
「あ、ああ、俺は…こんなのに喧嘩売ったのか…神の息がかかっているとは、過言ではなかったのだな」
「そうだ、間違いなく息がかかってるからな、そんな事よりお前の強化だ、実験を続けるぞ」
「御心のままに」
「キモい言い方やめろ」
「わかった、少し冗談言わないと耐えられそうも無くてな、あとレン殿、俺と同い年って言ってなかったか?」
「それが分かんないんだよ、確かに前の世界では30歳だったはずなんだが…」
「わかった、まぁ神様に年齢なんて関係ないって事なんだろう、それでどう強化してもらえるんだ?」
「近接はある程度潜在能力も上がってて、Lv次第だと思うから、魔法の知識と潜在能力を上げよう」
「そうだな、俺も自分でもそのほうが良いと思う」
「なら話が早いな、じゃあ残念かもしれんが俊敏を返してもらう、因みに拒否するとお前は…」
「え?どうなる?」
「死ぬ」
「ええ!?怖いよ!先に言って…くれたから良かったよ!」
「俺がお前の能力、技能、その全てを徴収して、死ぬ」
「神様っ!お返しします!」
ざっくりとしか説明しないレンであった。
「よし、返ってきたな、次に魔体を貸与するぞ」
「魔力じゃないのか?」
「一時的に使える魔力が増えるだけだろ、戦闘継続力が肝心だ」
「確かにレンは魔力より魔体のほうが高いものな」
「そういう事だ、はっきり言って俺の強さは、この魔体によるところが大きい、一回見せたほうが早いな」
そう言うとレンは火球を作り、放つ
「セイス、ステータスを見ろ」
ステータスはずっと出したままにしてある。
魔力 9995/10000
↓
魔力 9996/10000
「え…秒で回復したぞ!?」
「秒って言葉あるのかよっ!?」
「そっち!?」
「ああ、すまん、こっちの世界には時間の概念が無いのかと」
「何を言ってるんだ?あるぞ」
そう言うとセイスはポケットから懐中時計のようなものを取り出す、それは…
「まんま懐中時計やないかい!村長めぇ!1日は明るくなって暗くなるまでだ、なんて言うから、思えばおかしいよな、じゃあ暗い時間帯は1日のどこなんだよって話だ」
「これは俺が昔、親から貰ったんだよ、この村でも何人か持っていたはずだ」
「改めてセイスに聞こう、1日は時間で言うとどのくらいなんだ?」
「30時間だな」
「1分は?」
「60秒」
「1時間は?」
「60分」
「地球とほぼ同じだった!1日の長さは違うけど、絶対この世界、過去に地球からの渡り人来てるよ!確定だよ!ご都合主義、ありがとうございます!」
「まぁ、レンが来た世界と同じで良かったな、それで?魔体を貸与してもらったら何をするんだ?」
「ああ、すまん、驚きすぎて思考停止してたよ、魔体を貸与して、俺とお前で魔法の知識のすり合わせといこうじゃないか、その後は魔物狩りだな」
「それは楽しみだ」
よし、思い切って50%貸与だ!
「これでいいだろう、セイス、俺がさっきやったように、適当に火球を作って放て」
「わかった」
ボウッ、シュッ、バンッ
セイスの作った火球が地面にぶつかって弾けた。
「魔力を見てみろ」
「ああ…凄い!レンほどじゃないがもう魔力が回復し始めてる、いつもだったら1回復するのに10分はかかるのに」
「それじゃあ1日で180しか回復しないじゃないか」
「寝ている間は10倍の速さになると言われてるんだ、寝てるから確認できないがな」
「いや、時計持ってるんだから確認できるだろ」
「???」
「いや、俺が悪かった、まぁ今はどうでもいい、もう回復しきってるだろ?これなら魔力、魔体、さらに思考する時間が増えて知識、実践と実戦の回数が増えて技術、この辺りの潜在能力爆上り間違いなしだろ」
「惜しむらくは時間が無いことか…」
「そうだな、できる限り詰め込んでいくぞ?」
「よっしゃ、気合い入ってきたぞ」
貸与の実験に満足したレンは、次にセイスとの魔法のすり合わせに入る。




