36話 貸与考察
さて、次はセイスで実験だな。
強くしてやるなんて、強気で言ってしまったレンだったが、貸与がどのようなものなのかはまだ分かっていない、そのためにはセイスという犠牲が必要だった。
問題は何を貸与できるかだよなぁ、貯蓄だったらヤバいぞ、ギャンブラーで全部持っていかれたからな、鼻くそには奉仕で貯蓄を贈与せよって言われたから、貯蓄の可能性は高いよなぁ、転移門とやらで森に行って、少し魔物を狩るか?
そんな事を考えているうちに、村長宅についた。
「お母さんただいまー!楽しかった〜♪」
玄関先でフローラが出迎えてくれていた。
「おかえりティル、レンに迷惑はかけてなかったか?」
「かけてないもん!」
「ただいまフローラ、ティルがいてくれたから、退屈しないで済んだよ」
「そりゃあよかったよ、詳しい話は全て終わったあとに聞くとして、とにかく凄い事になってたな、わたしはまだレンを過小評価してたみたいだ」
「すまんな気を使わせて、セイスはいるか?」
「セイスなら自室で寝てるよ、村全体を包むような砂煙を見上げながら、白い目をして、嫌な予感がするってな、少しでも疲れを取りたいから寝るってさ」
「今日はもう遅い、ゆっくり寝かせてやるか、実験は明日からにするよ」
「助かる、あんなんでもわたしの旦那だ、少し心配してたんだ」
「はいはいごちそうさま、その調子で少しは優しくしてやれよ?」
「分かってるよ、まぁわたしはいつでも優しいがな」
「ああそうだな、優しくもないやつが、人のためにあんなに美味しい手料理なんか、作れるわけないからな」
「まったく、あんたはズバズバと、からかうんじゃないよ」
「ははははっ、俺も寝させて貰うよ」
「ああ、ゆっくりしてくれ」
「お兄さん、おやすみなさい!」
「ああ、おやすみティル」
―――――次の日。
レンとセイスは、北門を出たところの黒く焼けた大地で、向かい合って立っていた。
「さて、これから実験をやっていく、とある技能を使用するんだが、正直どんな能力なのか自分でも分からない」
「なんていう技能なんだ?」
「貸与だ」
「たいよ…聞いたこと無いな…」
「そうか、やはり特殊なんだろうな、まずは、リスクリワード!」
「???」
【85】
弱いな…猪が68だったから、単純計算だと、タイマンでは猪に勝てない、だけど数人がかりなら、この差でも覆せるのか。
俺も相手が知能を持った、複数人相手の時は気をつけよう。
「まずは、ステータス」
名前 神園蓮21歳
職業 ギャンブラー Lv3
貯蓄 186
体力 10000
筋力 12000
俊敏 11000
精神 100000
魔力 10000
魔体 30000
知能 5000
技術 8000
才能
投資 努力 回避 武術 魔法
技能
貸与1 リスクリワード3 潜行3
想像魔法 リスクリターン
称号
討伐者
[カオスゴブリン]
この中の何を貸与できるのかだよな、まずは何も考えないで、セイスに向かって使ってみるか。
「貸与」
するとステータスの横に、あと1つモニターが出てきた。
おお?
貸与者 神園蓮
被貸与者 セイスラード
現在1個まで貸与可能です。
何を貸与しますか?
基礎能力(1〜5%) ⇐
技能(現在10%)
お金(1%)
うわぁ、さすがは初期技能、ヤバそうな匂いがプンプンだぁ。
「う〜む、どうするか…」
「何か分かったのか?」
「ん?ああ、なんとなくわかったんだが…」
この、パーセントが何かだよなぁ、貸与できる割合か?技能なんか現在って表示あるし、技能を10%貸与って意味不明だよな、お金なんか持ってないし、もしかして利息なのか?
「すまんセイス、もう少し待っててくれ」
「ああ、別に気にしなくて大丈夫だ」
しょうがない、まずはやってみないと分からんからな、とりあえず選択してみるか…
最初は基礎能力、と念じてみる。
筋力 12000 ⇐
俊敏 11000
精神 100000
魔力 10000
魔体 30000
知能 5000
技術 8000
基礎能力が選択されました。
貸与する能力を選択してください。
その後、貸与する割合を決めて下さい。
貸与する割合により利息が変動します。
基礎能力
割合1〜20% 利息1%
割合21〜40% 利息2%
割合41〜60% 利息3%
割合61〜80% 利息4%
割合81〜99% 利息5%
貸与していた期間により、貸与している能力値の利息%分が各能力に回収されます。
利息回収期間 1日
対象者に利子は発生しません。
又、貸し与えられた能力値によって、対象者の潜在能力の上昇率が上昇、上昇速度が上昇します。
尚、能力値の貸与、返還は、対象者の同意が必要です。
対象者が能力の返還を拒否した場合、罪科発生により処罰が開始されます。
内容・回収期間短縮、又、利息と共に、対象者本人の能力より、利子10%分追加で徴収します。
利息・貸与した能力値の1〜5%分回収
利子・対象者本人の能力値から10%分徴収
回収(徴収)期間1時間
10時間経過しても返還がなされなかった場合、他の能力を無作為に選択し、徴収を実行。
合計70時間経過しても返還がなされなかった場合、他の技能を無作為に選択し、徴収を実行。
全ての技能を徴収しても返還がなされなかった場合、体力を一括徴収すると共に、貸与した能力が返還されます。
尚、返還に関しての罰則説明の義務はありません。
…いやいや貸与マジ怖いよ〜!もはや強制自己破産じゃん!徴収する気満々じゃん!もう技能[徴収]でいいよ!
また、淡々とした文章が余計に恐怖を煽るんだよ、確定事項です、みたいな?
今のは基礎能力の説明だけど、技能だったら…同じなんだろうな、残りの技能を奪っていって、基礎能力、そして最後に命を奪うんだろう。
本当に怖い能力だ、過ぎた借金で身を滅ぼすのは、どこの世界も一緒か…
同意があればすぐに返還してもらう事は可能だし、試してみるか?セイス…言ったら返してくれるよね?
50%とか貸すと調子に乗って、返してくれないかもしれないし…あれ?これは…?
今はまだ貸与出来るのは1個だけだが、クラスアップすれば増えるだろう、現在って表示されてたし。
例えば俺が敵に負けたフリをして能力を貸与する、メリットを語り、いい気分にさせて、筋力、俊敏、技術あたりを貸し与えとけば、徴収が開始されても、ステータスを確認しない限り気付かないのでは?
貸与した瞬間に、焦ったようにやっぱり返してくれと言えば、相手は敵だ、そうそう返すやつなんかいないだろ。
貸し与えた能力値が返還されるのは最後、体力一括徴収後だ…
貸与君…キミ、ヤバくない?
怒らないから言ってごらん?罰則がメインの能力ですよ〜ってね。
セイスに試すときは、罰則の事も詳しく説明してやらなくちゃな。
「待たせたなセイス、能力を把握した、心の準備は出来ているか?」




