表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の庭園〜箱庭管理人〜 テンプレ破壊の復讐神、異世界へ降臨す。  作者: coz
第三章【北国】〜ダスト村の攻防〜
36/173

35話 南門のリル

レン、ティル、サンドの3人は堀の前に立っていた。

あれから1時間弱が経過している、サンドが目を覚ますのを待っていたのだ、目を覚ましたサンドが、村のその変わり果てた姿を見て騒いでいたが。



まずは村の入口に向かって橋を掛けるか、跳ね上げ式にしたいけど、仕組みはどうするか…魔道具を勉強して作って、サンドに上げ下げさせるか?



「サンドは魔力どのくらいなんだ?」

「俺はこの村ではなかなかだぞ、なんと700もある!」

「そ、そうか…凄く頑張って鍛錬したんだな」

「ああ、セイスに近接は敵わないが、魔法勝負なら同じくらいだ」

「お兄さんは魔力いちま…」



ティルの口を塞ぎ、自分の口の前に人差し指を立て、無言で首を横に振る。



コクコク…



ティルも分かってくれたか、派手に魔法を見せたあとだ、別に隠さなくてもいいのだが、サンドの心を守るためだ、今は黙っておこう…やはり魔力10000はヤバいんだな、魔体のほうがヤバいけどね。



「ん?どうしたんだ?」

「ああ、いや別に、とりあえず橋を掛けるぞ」

「は?橋?」

「当たり前だろう、お前はここを泳いで渡るつもりか?」

「俺はそういう事を言っているわけじゃ…はぁ、まぁいいか、レンだし」



分かってる…分かってるんだサンドよ、自分が規格外だって事をな、いちいち説明するのが面倒だから、敢えてとぼけてるんだよ。



隠す気があるのか無いのか分からないレンの発言に、困惑しっぱなしのサンドであった。



レンが堀の上に手をかざした数秒後、何もなかったところにスーッと音もなく、幅5mほどの立派な橋が出現する。


跳ね上げは後でいいだろ、攻め込まれそうになったら、俺が任意で橋を壊せばいい、それにしても掘と城壁よりも魔力使ったような気がするな、あの時の魔力は、サンドが目を覚ますまでの間に回復していたはずだよな、ステータス。



魔力 6521



なっ!3500!?やはり木魔法のレア度は高そうだ、俺の中で木は植物、生物寄りの感覚だからなぁ。



「さて、行くぞ〜」

「は〜い♪」

「ああ…」



元気出せサンド、俺と比較してもしょうがないんだ…それに、村が強化されるんだから落ち込むことは無いだろうよ。



声を掛けても慰めにならないと思ったレンは、心の中でそう言って、次の仕事に取り掛かる。



「次は門なんだが、どうするか…サンド、木と鉄どっちが良い?」

「は?どういう意味だよ」

「扉をつけるならどっちが良いかを聞いてるんだよ」

「それ、開け閉めできるのか?」

「あ、そうか」



入口の大きさは、横幅は橋と同じ5mほど、高さは7mにもなる、こんな大きな扉を設置したら…無理かぁ、今はこのままで良いか。



「じゃあしばらくはこのままにしておくよ、後でサンドが1人で開け閉め出来る仕組みを考えるよ」

「おお、そりゃあいいな♪カッコいいじゃないか」

「現金な奴め、言っておくが、橋もお前担当だからな?」

「橋?」

「ああ、そのうち橋も跳ね上げ式…手動で上げたり下げたり出来るようにするんだよ」

「えぇ!?そんな事できるのか?」

「まだわからんが、少し考えるから、その時はサンド、お前が客人を判別して、通していい客のときだけ、橋を下げて通すんだよ」

「おお…門番みたいだな!」

「いや、お前は門番だろうが」



まぁいいか、俺の中でのサンドが、だんだんとおバカキャラになっていくが、こんなやつも1人くらいは必要だろう。


それにサンド、言ってはおかないが、こっちは北門だ、めったに客なんて来るわけ無いだろ。


後でその事に気づいて、何の意味もなく橋を上げ下げして、お前がなぜ北門を任されたのか、という虚しさを噛み締めるがいい。



「さて、ここ以外、東西南の方はどうなってるんだ?」

「東と西は何もないよ、南に同じように門があったんだが…」

「しまった、村を散策したときにもう少し良く見ておけばよかったな、上から見たときも、全体を俯瞰して見るだけで、全然気にしてなかったよ」

「今頃南門のやつはひっくり返ってるんじゃないか?ははははは♪」

「行ってみるか」

「俺も行ってリルの様子を見たいが、こっちの門番の仕事があるからな、離れられない、後でどうだったか教えてくれ」

「そっちのやつはリルっていうのか、女か?」

「ああ、男勝りなやつでな、なかなかに我の強いやつだよ」

「そうか、それは少しめんどくさそうだな、とりあえず行ってくるよ」

「ああ、せいぜいびっくりさせてやってくれ」



右手を軽く振り、背中で返事をして、ティアと2人で南門に向かっていった。



―――――


レンとティアは少しゆっくりめに歩いて、およそ30分くらい歩くと、南門の前に人集りが出来ているのが見えた。



1km以上はあったか、直線で1.5kmってところか?改めて本当に小さい村だな。



「あの人集りはなんだ?」

「お兄さんがそれをいうの?」



いや、なんとなくではなく、確実に予想はつくんだけどね。



「来たぞ!レン様だ!」



うぉぉぉぉぉぉ!!



「大盛りあがりだな…」

「大人気だねお兄さん♪」

「ああ、何かしらがちょちょぎれそうだよ…」



説明めんどくさいから、え?普通ですけど?説明いる?っていう体でいくか。



「お前らこんな所に集まって何やってんだ?」

「おう、あんちゃん」

「ん?」



いきなり絡まれたぞ、あんちゃんて…チンピラかよ。



「なんだ?」

「お前がこれをやったんだな?」



石壁を指差して聞いてきた。



「ああそうだが?」

「レン様だかなんだか知らねぇけど、ちったぁ人の迷惑考えろこらぁ!」

「お前…リルか?」



気の強い女と言っていたので、この女がリルだろう。



身長160ほどで標準体型、赤茶色のショートボブ、前髪で左目が隠れている、見えている右目は怒っているからか、かなりのつり目になっている、瞳の色は逆にこの世界では珍しい黒だ、服装は他の村人と同じで、地味なクリーム色のワンピースだが、スカートの裾と袖が破られたようにギザギザで、性格通りの粗暴さを感じさせる。



「ああん?なんで私の名前知ってんだ?」

「サンドに聞いたんだよ」

「ああ、あのボンクラか」

「おい、ボンクラは言い過ぎ…いや、確かにボンクラだ」

「おう、分かってんじゃねぇか、しかーし!こりゃあいったいどういうこった?」

「見りゃあ分かんだろ、城壁だよ」

「んなこたぁ分かってんだよ!」



なんだコイツは、想像以上にめんどくせぇな。



「じゃあ何なんだよ」

「いきなりこんなデケェもんこさえやがって、どういうつもりだって聞いたんだよ!」



ほんとに何なんだよ、怪我とかしてないんだからいいじゃないか…



「村長に聞いてないのか?」

「あ?村の強化とかか?」

「聞いてるじゃないか、じゃあ別にいいだろ、そういうことだよ」

「うるっせぇ!目の前にこんなデケェもんが出てくるなんて思ってなかったんだよ!」

「しょうがないだろ、強化を頼まれたんだ、やらなきゃならないんだよ」



イライラしてくるな。



「うるっせぇ!てめぇの事情なんか知ったこっちゃねぇよ!」



てめぇの事情だぁ?カッチーン、俺、キレちゃいましたよ?



「さっきからごちゃごちゃごちゃごちゃと…てめぇこそうるせぇんだよ!なぁにが自分は話を聞いてないだ、村長からある程度の話は聞いていると言っただろう、そうだったなら、たとえどんな物が出来ようと、どれだけ驚こうと、村存続の為なんだから、事情を把握して納得しなきゃ駄目だろ、なんだ?俺はいちいちお前に許可を求めに来なきゃならんのか?お前に迷惑かけないように気を使わなきゃならんのか?村長がこの村の為なら好きにしろって言ってるのに?時間がないんだよ、説明する時間すらも惜しいんだ、俺がこの村中の家を全部回って、一人一人に説明するのか?それとも村人全員に集まってもらって説明すればいいのか?時間がないのに?まさかお前だけには説明しておけなんて、自己中心なこと言うわけじゃないだろうな?他の皆は黙って納得してくれてるのに、なんでお前は納得しない?強化しなければよかったのか?お前は敵か?この村の敵なのか?どうせ驚かされたから、なんとなく文句言っておきたかっただけなんじゃないのか?まさか、こんな俺みたいなやつに噛みついている自分、かっけぇ、なんて思ってないだろうな?お前みたいなやつが和を乱すんだ!お前のせいで計画が失敗したらどうする!村人が大勢死んだらどうする!どうやって責任取るつもりだ!言ってみろ!」

「…」



セイスの時と同じだな、これで少しは口を開く前に考えればいいんだが。



「ふ…ふぇぇん…」



こいつ、泣きおった!謝るかブチ切れるかの2択だと思ったのに!



「お兄さんいいすぎー!」

「いやティル、言い過ぎじゃない、セイスの時と一緒だ、村全体が一丸となって、皆が同じ方向を向いて、自分たちの未来を掴みにいってるのに、こういうのが一人でもいると、そこから計画が破綻することだってあるんだ、だから教えなきゃだめなんだよ、別にいじめてるわけじゃないから」

「う、うん…ちょっとむずかしいけどわかった、しんじる!」



うんうん、ええ子や。



頭を撫でながら落ち着かせる、そして…



「っ!?」



リルの頭も撫でる。



「すまん、言い過ぎたかもしれないが、今は納得してくれ、村長が好きにしてくれと言ってくれてるのは確かなんだ、でも頼まれてるわけじゃない、俺が頼んで強化させてもらってるんだよ、村が好きなんだ、この村に失くなって欲しくないんだよ、所詮は余所者だが、この世界で初めて訪れた村なんだ、故郷にしたいんだよ」

「私も…好きだ」



えっ…いや、分かってる、村のことだって分かってるんだけど、ちょっと心に録音させてもらっても?



「私は、親がいない、本当に小さな頃、親と共にこの村に来たらしいんだ、だけど私が5歳の時に、魔物狩りで死んだ…そんな私を、あるとき知らないじじいが助けてくれたんだ、その頃は村全体が暗くて、誰も喋ってくれなかった、そんな中でそのじじいは助けてくれた、手を差し伸べてくれた!自分が食うだけでも必死だったはずなのに!口は悪かったけど感謝してる、毎日口喧嘩しながら、畑を耕して暮らしてたんだ、それなりに楽しかった、でも…そのじじいも去年死んだ…見かねた村長がこんな私なんかに門番の仕事をくれたんだ!嬉しかった!貧しい村だけど、私はこの村が好きだ!」



いい子じゃないの〜、ちょちょぎれるわぁ〜



「だったら尚更、文句なんか言ってたら駄目じゃないか、この村を救うための強化なんだ、お前も協力してくれよ、な?」

「うん、ごめんなさい、私、馬鹿だから、少し甘やかされ過ぎたみたい、じじいとは口喧嘩ばかりだったけど、甘やかされてたんだね、真剣に叱ってくれる人っていなかったから、その、少しだけ…嬉しかった」



コイツは…凄いな、まさかの逸材だ、普通だったらこの若さで、こんなすぐに自分を客観的に分析できないだろ、普通なら頭にきて言い返すぞ、セイスなんかとは比べ物にならんな。



「リル姉さん!女の子みたいだね!」

「おいティル、どういう意味だ?私は女だが?」

「知り合いか?」

「村長に仕事をもらったって言ったでしょ、こんな小さな村で、知り合いじゃないほうがおかしくないか?」

「確かに、それもそうだな」

「お母さんといつも、なかよくおしゃべりしてるよね〜?」

「うん、何となく想像つくよ」

「それで?レン…様はどうしてここへ?」

「おい、様付けは…まぁいいか、なんだかいろいろと今更感が半端ないし、北門は城壁に入口あるんだけど、南門は無いからな、それを作りにと、堀に橋かけにな」

「そうか、分かった、宜しくお願いします」

「おお、なんか人が変わったようだな」

「教育されちゃったからね」



おいおい、ウィンクとか…可愛い娘多すぎない?この世界はどうなってんだ?



「お兄さん、また上がるのー?」

「いや、上がらないよ、壁に孔を空けて、橋を掛けるだけだな」

「え〜、つまんな〜い」

「おい、遊びに来てるんじゃないんだぞ?フローラに迎え来てもらうか?」

「いえ!まにあってます!」



ビシッと敬礼してお断りを入れてきた。


8歳の断り方じゃないぞ。



「とりあえずやっちまうか」

「おー!やっちまえー!」

「やれやれー!」



お前らも仲いいですね…



レンは壁に手をかざす、そして、また少し驚かせたい気持ちが疼いてきたレンは…



門から30mくらい離れてるから大丈夫だろう、他の村人達も俺達の仲直りを見て、満足して帰って行って、ここには3人しかいない、よし…



突如



バァーーン!!



門が内側に向かって爆発、大きな孔が空いた。



「しまった!敵襲だ!」

「んなっ!」

「お兄さん、どーしよー!」



孔から、半透明な何かが姿を現す。



「なにあれ!?」

「こわーい!」



その何かがこちらに向かって移動しだす、レンは近くの家の陰に移動し潜行をオン!



「あれ?レン様!?レンさまぁー!!」

「おにーさーん!どこいったのー!?」



その間にも、半透明の何かはポチャポチャと音を出しながら近づいてくる。



「「きゃーーー!」」



水で出来た人型の何かだった、レンが気持ち悪いほどの魔法操作で動かしている。



「「たすけブグブグ…」」



2人は水に飲み込まれた。



「はははは♪」



姿を現し大笑いのレン。



「「ブブグブグッ!!?!?!」」

「顔だけ出してっと」

「「ぷはぁ…」」

「ティルはお遊び気分だからお仕置きだ、リルも俺に文句を言ったお仕置きだな」

「ふわ〜!これどーなってるの〜?楽し〜♪」

「レン様!?たすけ、助けてくれ!私は泳げないんだ!」



1人しかお仕置きになってないな、ティル、お前は大物になるぞ。



「大丈夫だリル、俺が操作してるから溺れる事はない、そのまま浮いてみるか?」

「うん!浮かせてー♪」

「え…えぇぇぇ!?」



2人を包んだまま20mほど浮かせてみる、ティルはキャッキャと楽しそうだ、リルもだんだん楽しくなってきたのだろう、顔がにやけ始めている。



こうすれば空中移動できるな…いや、岩とかで作ったほうが早いな、俺も浮いてみるか。



足下からズズズズッと、スケートボードほどの大きさの、持ち手付きの岩板が出てきて、レンを持ち上げる。


そのまますぅ~と移動。



うん、問題ないな、よし。



そのまま宙に浮いて、2人の横まで移動し、話しかける。



「よう、楽しんでるか?」

「あ〜!お兄さんのほうが楽しそう!ずーるーいー!」

「レン様〜、私もそっちのほうがいいです〜」

「おいリル、男口調はどうした?敬語になってるぞ?」

「怖いんですよ〜、水だけなんです〜、足下になにもないんですよ、怖い〜!」

「ははは…確かにそれは怖いよな、その割には顔がにやけてるぞ、もう少し我慢しててくれ」



レンはそう言うと、岩と水を操作して、城壁の外まで飛んでいった―――



「はぁ、はぁ、怖かった〜」

「気絶しないだけサンドよりもましだな」

「サンドさんは、すぐに寝ちゃってたよ?ほり?をつくるまえには」

「そんなに早かったのか?あいつ、何も見てないじゃないか」

「ボンクラだからなあいつは」

「お?リル、復活したな、よし、じゃあまず初めに橋から…」



2人の体表と濡れた服から水分を飛ばして、北と同じく橋を掛け、橋を渡ったところの石壁を整えて、孔を空ける。



「あとで扉をつけて、橋も動かせるようにするからな、それまではこれまでと一緒だ」

「あ、あぁ、わかった」

「素直だな、これはこれでなんか罪悪感が湧くぞ」

「いろいろ教育されちゃったんだ、責任とれよ?」

「なんの責任だよ」

「いや、その…私にも稽古をつけてほしいというか…」

「お前もか、もう少しお淑やかな女はいないのかこの村には、しかし門番の仕事は…村長に聞いてからだな、少し実験もあるから、その後だな、しばらく待ってろ、必ず伝えに来るから」

「ああ!ありがとう!」

「いいよ、もともと立候補した村人全員強くする予定だったからな」



一仕事終えたレンは、リルにそう言うと、ティルと一緒に村長宅に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ