34話 ダスト村強化
キザ男が王都オーソロンに向かって帰っていった。
「よし、まずは村自体の強化だな」
「え?もう安全じゃないのか?」
セイスがキョトンとした顔している。
「お前、また何も考えてないな?」
「う、すまない、どうしても目先の情報に踊らされて、深く考えるのが苦手なんだ」
「まぁすぐには直るわけないよな、追々直していけばいいか」
「苦労をかける」
「いや、その辺りは村長やテラーに協力してもらうから、そんな苦労はせんだろ」
「お、お手柔らかに頼む」
「おう」
さて、どうするかとレンは腕を組み考える。
「ステータス」
貯蓄 186
体力 9954/10000
筋力 12000
俊敏 11000
精神 100000
魔力 9852/10000
魔体 30000
知能 5000
技術 8000
才能
投資 努力 回避 武術 魔法
技能
貸与1 リスクリワード3 潜行3
想像魔法 リスクリターン
称号
討伐者
[カオスゴブリン]
貯蓄はゴブリンの分か、1匹1ポイントってことろか?やはり地球と違って地表に魔力が流れていくから、多少の幸せを感じても貯蓄はされないか…まぁ、魔物を狩ればいいし、そこは考えなくてもいいや、じゃあ魔力はなんで回復するんだよって感じだがな、魔脈から吸い上げてるとしか考えられん。
体力減ってるのは久々に見たな、下手すりゃ初めてかもしれん、回復かけてなかったな、あ…セイスの肩にも回復かけなきゃ。
「セイス、その肩、すまなかったな」
「ん?あぁ別に構わないさ、おれの未熟が招いた結果だ、商人が来ないから回復薬もないしな、これが罰なんだろう」
「ダメだ、お前には早く強くなってもらわないと、俺が旅に出られんからな、回復」
スーッとセイスの傷が修復していく。
「回復魔法まで使えるのか!?」
「いや、なんていうか、想像できる事なら何でも魔法で再現できる、かな?」
「は?それは、神の領域なのでは?…レン殿は神なのか?」
「はぁ、またか…神ではないけど、神の息がかかっているのは確かだな」
もう、否定するのもめんどくさくなったレンであった。
「なんと心強い、この村は幸運だな、ずっと耐えてきた者たちも浮かばれよう」
「セイスはこの村出身なのか?」
「いや、子供の頃に越してきた覚えだけはある、生みの親はもういないので、詳しくは分からないんだ」
「そう言えばセイスは何歳なんだ?」
「俺は30歳だ」
「え?俺と一緒じゃん」
「そうなのか?20歳くらいにしか見えないぞ」
「ああ、事情があって姿を変えてるからな」
だから21歳の表示になってたのか?…いや、その前に見た時は30歳だったような?…忘れた、もっと良く見ておけばよかったな。
「神が地上に遊びに来てると言っても俺は信じるぞ」
「それはまだ先の話だな」
「その時はここに遊びに来てくれ」
「ああ、それよりもお前の話だ、何年前に越してきたんだ?」
「う〜む、20年くらい経つかもしれないな、まぁ越してきたって言っても一つ南の隣村からなんだがな」
「10歳くらいの時、ここに来たんだな」
「ああ、越してきてすぐは、すごく暗い村だと思ったよ、村人は全員誰とも喋らず家に引きこもったり、畑仕事や魔物狩りと、それぞれ個別に働いて生活してたんだ、俺もそうだった…たまに兵士と共にやってくる商人に魔物の素材や野菜を売って、生活に必要な物を揃えていったんだ」
「兵士と?護衛に雇った開拓者とかじゃなくて?」
「ああ、良く分からないがあれは兵士だったと覚えている、着ていた鎧がオーソロンの紋章付きだったからな」
国お抱えの商人ってことか?
「十分な物資を売りに来てくれていたのか?」
「いや、いつもギリギリ、食料なんかは生きるか死ぬかってほどだな」
「なんで、野菜を売って食料を買うんだ?」
「肉と調味料だ…やはり美味しく食べたいじゃないか」
「そう、だよな、当たり前か」
「ああ、でもレン殿の言うことも分かる、そのうち村人達は魔物狩りをメインにし始めた、その頃から皆が協力するようになり、多くの魔物を狩り、商人に卸す、食料は売らないようにして備蓄しながら、少しづつ生活を豊かにしていったんだよ」
「頑張ってたんだな」
「ああ、そのうち俺なんかの男衆が、第2区の猪を狩れるようになって、商人から大量の肉を買う必要もなくなった、鹿や兎なんかも狩るからな、いい魔物の素材が手に入ると、他の村からも商人がポツポツ来るようになってな、こんな最北の場所で、バチバチに魔物を狩る村なんて無いから、町に行くよりこっちへと思った商人が集まって、村の中央広場もそこそこ賑わってたんだ、いよいよこの村も発展の兆しが見えてきたなぁ、と思ってたんだが…」
「中央から村の除名にも等しい勧告、商人が急に来なくなり、さらには北王の使者が食料の備蓄を奪いに来たと」
「そうだ、狙ったかのようなタイミングだった、ティルも毎回楽しみにしてたのに…」
「その状況の中、俺が大勢の村人に頭を下げさせてりゃあ、ああもなるか、すまなかったな」
「いや、いいんだ、戒めになったよ、少し自分が強くなったと浮かれてたんだ、それが分かっただけでも御の字だ」
「それにしてもセイスは、かなり悪いタイミングで帰ってきたよな」
「誰かさんのおかげでな、遠くで森は燃えるし、かと思えば大水が迫ってくるし、猪は逃げるしで、生きた心地がしなかったぞ、北王がとうとう何かしてきやがったと思って帰ってみれば…」
「は、ははは…そんなところまで?なるべくしてなった状況だったんだな、その割には門の外を見てビックリしてたじゃないか」
「村の周辺まであんなふうになってるとは思わなかったんだよ、ましてやレン殿の仕業などとは、俺はあの決闘で死ぬんだと思ったぞ」
「上には上がいただろ?」
「そうだな、それに、おかげで早めに自分の欠点に気づけたんだ、悪いことばかりじゃなかったよ」
「今度は考えなくても良くなるくらい強くならなきゃな、頑張れよ?」
「ああ、努力するさ」
「俺は努力に関してはうるさいぞ?」
「他の皆は少し手加減してやってくれ」
「ああ、分かった」
さてと、まずは最初の計画通り村自体を、魔力にものを言わせて強化しちゃうか、これは俺の仕事だな、あとは村人の強化か…とりあえず村長に許可とってからだ。
「とりあえずお前の家行って、今後について話し合おう」
「ああ、レン殿、よろしく頼む」
「任せておけ」
―――――
セイスと並んで、村長宅までゆっくり歩いていく。
ガチャ
「お父さん!」
タタタタッ、ガシッ!
ティルがセイスに抱きついた、セイスは苦笑いをして我が子の頭を撫でている、かっこ悪いところを見せたので、内心複雑なのだ。
「おかえりなさい!」
「ああ、ただいまティル、心配かけたな」
「ううん、だいじょうぶ!お兄さんは優しいって知ってたから!お兄さんもおかえりなさい!」
「ああ、ただいま、村長…おじいちゃんはいるか?」
「うんっ、みんなでまってたんだ、入って〜」
「ありがとう、じゃあお邪魔するな」
3人で家の中へ入ると、村長、テラー、フローラが椅子に座って待っていた、お茶を飲んで楽しそうに喋っている。
まだ解決したわけじゃないけど、とりあえずは笑顔が保ててよかったな。
「皆待たせた」
「レン様、大丈夫じゃ、今後の話じゃろう?まだ解決はしとらんからな」
「セイス、物理的な強さだけじゃなくて、村長のああいうところを見習えよ」
「そうだな、今ならよく分かるよ」
「その辺りの教育なら村長とテラー辺りで大丈夫だな」
「任せるのじゃ、今のセイスなら大丈夫じゃろ」
「ええ、私もよく言って聞かせるわ」
「義父さん、義母さん、宜しくお願いします」
「おい、わたしは?」
「お前はたまにケドケドが出てくるからダメだ」
「んふぅ、ふふふ…」
「ティル、お前は明るさ担当な、皆を笑顔にしてやれ」
「うん、ふふ、わかっ…んふふ、わかった、ぶふっ」
「2人揃って笑顔担当だな、ははははっ」
「くそぉ、わたしはこんなキャラではなかったはずなのに」
キャラって…翻訳どうなってんだよ…
「いいじゃないか、笑顔は重要だぞ?」
「そうだ、俺はお前の明るさに惚れて、妻にしたいと思ったんだからな」
「バカっ、もう2人して!ご飯作ってくる!」
「頼むよフローラ、久々の手料理楽しみにしてるよ」
「あぁ、愛する旦那様の為だ、腕によりをかけて作らせてもらうよ」
「ヒュー、熱いねぇ、食べる前からお腹いっぱいだ」
「冗談言ってないでお前は早く話を進めろ、レン」
「はいはい、それじゃあ今後についてなんだが…」
転移門という特殊な移動手段があるので、猶予がどのくらいなのか分からないレン
「皆はあのキザ男…水色髪の男はどのくらいで戻ってこられると思う?おれは詳しくないからな、意見が聞きたい」
「早ければ2日じゃな」
「早っ!転移門ってそんなに便利なのかよ」
「村人に洗脳かけたりですんなり行けば3日くらいじゃないか?」
セイスの意見だ。
「少しまごついて一週間じゃろう」
「そうか、早くて2日、遅くて一週間だから10日ぐらい、思ったより時間がないな、強化が間に合わない…今回は俺メインで行くしかないか」
「戦闘になるってことか?」
「わからん、北王とやらがよほどの馬鹿じゃなければ、戦闘になるだろ、俺だったら疑うよ」
「拐われた村人は2ヶ月で10人じゃ、その全員に洗脳かけて交渉に向かわせてくれなんぞ、誰でも疑うじゃろ」
「そうか、戻ってこないという可能性もあるのか」
「そうだな、その時は強化し続けて、こっちから攻め込めばいいさ」
「まずはどうするんだ?」
「とりあえず魔力にものを言わせて、村自体の強化だ、ここを要塞化してやる」
「それはまた…凄いな、楽しみだ」
「ああ、期待しとけ、村長いいよな?」
「ああ、全て任せるのじゃ」
「村の強化が終わったら、次はお前の強化だセイス、実験に付き合ってくれ」
「わかった」
「んじゃ!いっちょやったりますかぁ」
その後フローラの手料理を美味しくいただき、レンは早速村の強化をしに外に向かった。
―――――
「お兄さん、どうするの?」
ティルがどうしても見てみたいと騒いだので、別に隠す必要はないかと思ったレンは、ティルを一緒に連れてきた、他の者達は村中への伝言だ、地面が揺れるけど心配しないようにと。
「よっ、久しぶりだなサンド」
「レン!久しぶりだな、お前が神の使者だとは思わなかったが、あの強さなら納得だよ」
「またそれかよ、やめろやめろ、俺は普通の人間だ」
「あれだけ森を燃やしておいて、普通なわけあるか、俺はここの門番だぞ、どれだけの恐怖だったかわかるか?」
「特等席だったんだ、良かったじゃないか」
「普通に死ぬかと思ったわ!なんだこれはと思ってたら、次は足元から水が吹き出してびしょ濡れだしよ〜」
「大丈夫だサンド、水が似合うのはいい男の証拠だ」
「なんだよそれ、初めて聞いたぞ」
「とりあえず外に行かせてくれ、村を強化するから、今回はちゃんと言ったんだから、驚くなよ?」
「約束できん」
「少し内側に入って、門から離れててくれ、その辺から改造していくから」
「いや、俺も外に行って、一緒に見る!」
「そうか?分かった、じゃあ一緒に来い」
「よっしゃー!今回も特等席だな、神様」
もう、かしこまらなければなんでもいいや
門を出て少し歩く、村の全体が見渡せるであろう場所まで行ったところで立ち止まる。
「よし、この辺かな、2人とも俺に寄って掴まれ」
「はーい♪」
「なにするんだ?」
ティルはレンの腕に抱きつき、サンドはレンの肩に手を乗せる、レンはにやりと笑うと。
「さてな、楽しみにしてろ」
「あ、ああ…」
早くも後悔し始めるサンド、頭の中は火柱の事でいっぱいになっていた。
上がれ…
足元がグラグラし始めると、次第に視線が高くなり始める、地面がせり上がり、空に向かって一直線に上がっているのだ。
「ひゃー♪すごいすご〜い!
「うわぁぁぁぁ!こえぇぇぇ!」
およそ100mほどの高さで止まる。
「おわり?」
「ああ、これくらいあれば村全体が見えるだろ、そんな大きな村じゃないからな」
「高いぃぃ、怖いよぉ!助けて神様ぁ!」
「おいおい、神様ならここにいるだろうが」
「うるせぇ、あんたなんか神様じゃねぇやい」
「まったくひどい言いぐさだぜ、自分が見たいって言ったんじゃないか」
サンドのことは放っておくか。
「さて、やるぞ」
「いけ〜!」
「…」
レンは村に向かって手をかざし、イメージする、すると地面が揺れ始め、村の門より30mほど離れた辺りの地面に穴が開く、その穴が横へ伸びていき、土煙を上げながら村を一周りした、土煙が晴れるとそこには、幅約10m、深さ15mほどほの堀ができていた、その堀の中に水が湧いてくる。
ズザァーーー!
次に、別の土煙が立ち始める、堀の内側の地面が盛り上がり、一気に石壁が出てきたのだ、土台の厚さは約10m、高さも10mで、上にいくほど薄くなり、壁の上は8mほどの幅になっていて、容易に人が歩けるようになっている、30mほどの間隔で見張り塔も出来ていて、壁と一体になっている。
それはもはや城壁と言っても過言ではない、確実にやり過ぎであった。
「「…」」
さすがのティルも何も言えなくなる。
一回ステータス確認するか…よし、ステータス。
魔力 7821/10000
いまので2000ちょっとかぁ、コスパが良いのか悪いのか分からんな、でもまだいける、本当は鉄の壁にしたかったが、魔力ヤバそうだからやめたけど、これならいけたか?まぁ今はこれで十分だろ。
「よし、ここで出来る事はここまでだな、下ろすぞ〜…おい、大丈夫か?」
「は、はい!だいじょうぶです!」
「ティル、そんな怖がるな、俺は神様になるんだ、これくらい出来て当たり前なんだよ」
「お兄さん、かみさまになるの?」
「そうだぞ〜、ヘスティアっていう女神様にな、神様になれって言われてるんだ」
「そうなんだ〜♪ティル、かみさまとともだちになっちゃった〜♪」
「ああそうだな、中々なれないぞ?」
「…」
「サンド、大丈夫か?」
「…」
ふむ、気絶してるな。
「じゃあ下ろすぞ〜」
「はーい♪」
「…」
ゴゴゴゴォ
音をならしながら、下がっていく土の山。
「たのしかった〜♪」
「それは良かった」
「…」
「サンド…高いところ苦手だったのかな…」
さて、次は橋を造って、門は…鉄にするか、その後はセイスで実験だな。




