29話 ティアとの再会とギャンブラーの謎
この世界の魔法について聞いていく。
「まずはそうだな、俺のステータスでも見てもらうかな」
「いやいやいや!レン様それはいけないのじゃ!」
「何故だ?」
「普通ステータスなんて、人に簡単に見せるものじゃない、というのがこの世界の常識なのじゃよ」
「それはこちらの常識だろう、まずは俺のステータスを見て判断してもらわなきゃ、この世界での立ち位置が分かんないんだよ、だから見せる」
「分かったのじゃ、でも儂らのステータスは見せられんぞ?」
「いいよ別に、俺がどのくらい強いかだけ教えてくれ」
「承知しましたのじゃ」
「ではいくぞ?テラー、フローラ、ティル、お前達3人も見てくれよ?ステータス」
名前 神園蓮21歳
職業 ギャンブラー Lv3
貯蓄 0
筋力 12000
俊敏 11000
精神 100000
魔力 10000
魔体 30000
知能 5000
技術 8000
才能
投資 努力 回避 武術 魔法
技能
貸与1 リスクリワード3 潜行3
想像魔法New
称号
討伐者
[カオスゴブリン]
若返ってる…なぜ?
ってあれぇ?貯蓄が0になってなぁい?絶対この想像魔法だろ、ギャンブラーも上がってる、あの時の頭痛は…ギャンブラー、おぬし、なんかやっておるな?
あと潜行も上がってんなぁ、気配ガンガン出して全力走ってきたのに?まぁいいか、悪いことじゃないしな…
あれ?なんか静かだな…あれ?みんなが椅子に座ってない?
後ろを振り向く。
「!?おい、やめろ!何してんだよ!」
レンの後ろに回り、全員土下座していた、ティルはフローラに頭を押さえつけられている。
「こ、こんな高ステータス見たことも聞いたこともないのじゃ…小指1本で屠られるのじゃ」
「…分かった、なんとなく自分の立ち位置がどれくらいなのか分かったから、立ってくれ」
「「「いや、しかし…」」」
「でたな!」
ふん!
シャッシャッシャッ
またも脇に手を入れ、強制起立発動。
「儂「私「わたしは立っている!!」」」
3人は混乱している。
「痛いよ、お母さん!」
「酷いお母さんだね〜ティル」
「え〜ん、お兄さ〜ん、お母さんがいじめる〜」
「よしよ〜し」
嘘泣きだが、抱きついてきたティルの頭を撫でて慰める。
パンッパンッと手を叩き。
「ほらほらお前ら!冗談やってないで戻ってこい」
「すまんの、少し体験したくての」
「うふふ、凄まじかったわ、土下座してたのに、気付いたら立ってるんですもの」
「うむ、癖になりそうだな!」
「ええー!ティルもやってほしかったー!」
「そうか?」
そう言うやいなや、レンは物凄いスピードでティルを持ち上げ、3人の横に立たせ、自分だけ立ち位置に戻った。
ムチ打ちにならないよう、ちゃんと頭も固定して移動させた。
「!?!?!!?」
ティルは混乱している。
「ステータスを見れば分かると思うが、今のは魔法じゃないよ、筋力と俊敏をフル活用して全力で動かしてるだけだ」
「いや、それでも魔法みたいな現象に変わりありますまい」
「まぁ、な、とにかく、さっきの態度でどれだけ規格外なのかが分かったよ、安心して世界を回れそうだ」
魔法の常識とかどうでもいいや、俺の技能が見るからに常識の範囲外になっちゃったからな、しかしこの想像魔法、もはや創造の下位互換なのでは?
「ええ〜、お兄さんどっか行っちゃうの?」
「ああ、悪いけど、ずっとここにはいないよ」
「…」
すまんなティル、せっかく懐いてくれたのに。
「ティルも付いてくるか?」
「レ、レン!?」
「ううん、ダメ、この村をまもらなきゃ」
「ティル〜…」
うん、やっぱりいい子だなティルは。
「まぁ、とにかく、まだまだこの村にはいるつもりだから、何かあったら俺に頼れ、力で解決できる事なら出来るだけの事はしてやる、ティルもいっぱい遊ぼうな」
「う、うん…わかった!」
やっぱりいい子だ、これなら安心だな。
「有りがたい…本当に感謝するのじゃ」
「いいよ、お前達の暖かさに触れて、裏切られて冷えていた心が、少しだけ癒やされたんだ、それに、女神の次にいい女もいるしな」
ニヤっとしながらフローラを見る。
「くそ、なんでわたしはセイスなんかと結婚したんだ!」
「おい、旦那を悪く言うなよ、それに必要ならその旦那の事鍛えてやるよ」
「本当か!?助かる!」
「ああ、少し考えがある、試したいことがあるんだ、うまくいかなくても怒らないでな」
「ああ!セイスは真面目で良い男だ、実験台にでもなんでも好きにしてくれ!」
「おい、流れがおかしいだろ、普通は真面目じゃないから、罰として実験台にするんじゃないのか?」
「レンの事を信用してるからな!」
「かあ〜、やめろやめろ、まだ出会って1日も経ってないだろう、あんまり優しい言葉を掛けないでくれ、少しトラウマなんだよ」
この世界では幸せで貯蓄は貯まらない、優しさポインツはいらないんだ、今はちょっと貯蓄という名の懐がさみしくなっちゃってるけど、これがギャンブラーの生き様ってもんよ…トホホ
「まぁ試したい事がうまくいけば、セイスラードだけじゃなく、その北王とか言う…第2の鼻くそも跳ね除けられる村にしてやる、村長、新しい村の名前考えておけよ?」
「なんと!村全体を?」
「ああ、それで、見せつけてやるんだ、自分たちの力を世界中に、ゴミの村だぁ?ふざけんな!ってな、どっちがゴミだったのか丁寧に教えて差し上げるんだよ、侵攻してくるのが魔物だけだと思うなよ!」
そろそろ貸与の出番だろう、お前はリスクリワードと並んで俺の初期技能だ、待たせたな、期待してるぞ貸与。
村長、テラー、フローラは、無言で涙を流してお辞儀し、ティルは、自分も強くなりたいと駄々をこねた。
「大丈夫だティル、実験…試したいことがうまくいったら、お前も強化してやる」
「ほんと!?やったーー!」
「お、おいレン…」
「大丈夫だよフローラ、危険な状況でも俺が危険じゃなくしてやる、だってこんな世界だ、強いに越したことはないだろ?」
「不安だ…」
口調の割には繊細だなぁ。
なんなら本当に、この村を世界最強の村にしてやるか?それが出来れば、第1鼻くそに少しはギャフンと言わせられるのでは?
どうせ、まだ俺には気づかんだろう、1回箱庭に転移するとき、世界に死亡認定されてるからな、ますます死んだと勘違いしてんだろ。
とりあえずこれで後戻りは出来なくなったぞ、投資と貸与よ、その名に恥じぬ働きを見せてみよ!
「とりあえず、今日はもう休みたいな」
「うむ、わかったぞい、もう暗いしの、客間に案内するのじゃ」
「よろしくな、やっとまともな寝床で寝られるのか…」
「レン様…本当にお疲れ様でしたのじゃ」
「ああ、葉っぱの上で寝るのはもうこりごりだ」
―――――
レン…レン…
ん?誰か呼んでる?
『レンッ!』
「うわぁ〜!ここは!?」
周りに何も無い真っ白な空間、そこにレンは漂っていた、体はあるのに感覚がなく動かせない。
『レン〜!おはよう!』
「ティアか!?いったいどうして?俺死んだのか?」
『死んでないよ〜』
「じゃあ何なんだこれはいったい?」
『ここは夢の中だよ〜、会いたくて来ちゃった♡』
「よくある設定だ、やりたい放題だなぁ、さすがは神様」
『ふふふ、敬いなさい?』
「いつでも敬ってるよ」
『ふふっ、よろしい♪』
「それで、どうしたんだ?ただ会いに来ただけじゃないんだろう?」
『うん、とりあえず、レンが警戒なく寝られる状況になって、久々にぐっすりしてるから会いに来れるようになった、というのが1つ』
「うん、ありがとう会いに来てくれて、嬉しいよ、それであとは?」
『ギャンブラーの事』
「あぁ〜、なるほどな」
『やっぱり気付いた?』
「ああ、レベル上がってたしな、あの状況、頭痛、想像魔法…技能を進化させる為に、少ない貯蓄を賭けたって事だろ?さすがはギャンブラーだよな」
『うん、さすがは私のレン、相変わらず可愛いなぁ、でもちょっと惜しいね〜』
「いやだから可愛くは、はぁ、まぁ可愛いのはしょうがない、生まれつきなんだからな、それで惜しいとは?」
『考察は合ってるんだよ、でも今回が初めてかな?』
「初めてだと思うが…うん、分からん」
『素直だね、もっと考えると思ったよ、過去に貯蓄の計算が合わないときなかった?』
「それは覚えてる、スライムちゃんを巻き込んだのかと思ってショックだったからな…まさか、巻き込んでない?」
『うんうん♪』
「あの時…その少し前…そうか、リスクリワードか」
『ピンポーン、大正解♪』
「確かにあのとき地味にギャンブラーのレベルが上がっていて、なんでだと思ってたんだよ、さすがに【自分の探してる物の方向】はチートが過ぎたみたいだな」
『ほんとにすごいよね、ギャンブラーがこんなにすごい職業だとは思わなかったよ』
「ああ、俺もそう思う、でもやってることはギャンブルだからな、場合によっては貯蓄だけ無くなって終わりだった、っていう可能性もあったんだよ、そう考えると制御出来ないのは困るんだよなぁ」
『そのために私が来たんだよ』
「なんとか出来るのか?」
『まっかせなさ〜い♪本当はダメなんだけど、候補者だし、裏切りという絶望を経験したからね、サービスでギャンブラー専用技能をあげちゃう』
「おお!ありがとうティア、さすがは相棒だ」
『んふふふ〜、それじゃあ、ほいっ!』
パチンッ!
ティアが可愛い仕草で指を鳴らすと、次第に胸の奥が暖かくなってきた…どんどん暖かさが増して…
「熱っ、熱い!熱いよ!ティア、熱いぞこれ!」
『我慢しな〜♪』
くう〜、流石は神だ、メリットがあるんだから我慢できるでしょ?って感じだ、時より感じる神っぽさ、筋トレの時もそうだった。
体感で数時間後―――――
「はぁ…はぁ…」
『よく頑張ったね、レン♪死ななくてよかったよ』
「死ぬ可能性あったの!?…まぁティアの言う事は絶対だからな、信用もしてるし、従うさ」
『もちろんあったよ?でもレンなら大丈夫って…少しだけ思ってた!』
「いや怖いよ!せめて先に言ってよ!ギャンブル制御出来るようになる前に、命を賭けたギャンブルさせないで!」
『よしよし元気っ、大丈夫そうだねっ♪じゃあそろそろ行くね、私はお昼寝の途中だから』
「はぁ…本当に寝てるのかよ、ずっと見てない?まぁ、とにかく助かったよ、ありがとう、またな」
『うんっ、バイバ〜イ♪』
景色に溶け込むように、ティアは手を振りながらスゥーっと消えていった、直後すぐに眠気が襲ってきて。
―――――
「…朝か、起きるか」
さてステータスは?
「ステータス」
技能
貸与1 リスクリワード3 潜行
想像魔法 リスクリターンNew
ギャンブルにぴったりな技能だな、ティアのくせになかなか普通のネーミングじゃないか、出たとこ勝負とかダサい名前じゃなくてよかったよ、まあ好きな時に使えるようになればそれでいい。
技能名を見たままなら、リスクをとればリターンを必ず得られる、みたいな感じだけど、ギャンブラー由来の技能だからな、リスクを賭けてリターンを狙うって事だよな、勘違いしないようにせんとな。
ティアの方こそ惜しかったな、リスクorリターンだったら100点だったのに。
あ、そういえば、ティアに若返りのこと聞くの忘れてた。




