2話 同級生紹介(心ちゃん以外)
会社を颯爽と去ったあと、ネットで適当な弁護士を調べ、退職代行を頼んでお金を振り込んだ。
『間違いなく神園様は会社を退職できます』
「そうですか」
『あとは私共の方で、全ての手続きを代行させて頂きます、ですので神園様は明日から出社なさらなくても大丈夫です、会社、知人からの電話は極力出ないようにして下さい』
「はい、わかりました、対応ありがとうございます、手続完了までお世話になります」
『こちらこそ御依頼いただきありがとうございます、また何かありましたら都度お電話いたしますので、神園様もなにかありましたらいつでもご連絡下さい。それでは失礼いたします』
すごいな、こんなにも簡単に辞められるのか、ウジウジしてた時間が勿体なかったな。
その後母親に連絡、理由を話して実家に引っ越しをした…母さんは何の文句も言わず受け入れてくれた。
ヤバい、ここにも優しさの化身がいた、見た目はくるくるパーマで優しさの権化って感じだが、この世の優しさの残りの半分は俺の母さんだったのか、汁が溢れるぜ。
会社からの鬼電を無視し、もろもろ手続きを終えた一ヶ月後、母さんが豹変し、急に怒り出した、自分も何故か苛立ちマックス、家を飛び出してコンビニで暇を潰していたら、同級生とばったり合ってしまった(←今ここ)
くそっ、優しさの化身じゃなかった、怒りの権化だった…蒼波が恋しいぜ、しかし怖かったぁ、課長なんか目じゃなかったぜ、ガクブル…
聞けば仲良し4人組も何故か同じような状況で家を飛び出し、結構久しぶりに全員集合したらしい。
で、俺を見つけたと。
思えばこの時からおかしかったのだ、いくらなんでも偶然にしては出来すぎだろう。
俺はまだしも、容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群のこいつらが、何も無い平日に全員地元に帰ってきていて、同じタイミングで家を飛び出してくるなど普通ではない。
この時、蓮は少しだけ違和感を感じていたが、ちょうどお昼時という事もあり、話は昼飯の話題に移っていった。
どこかで飯でも食いながらお互いの近況報告でもしようぜってことになり、コンビニを出て4人の後について行った。
「しかしホントにおひさーだよねー、レンレン♪」
少し緩やかなウェーブのかかった金髪ロングヘアーの色白女が、俺の背中をぽんっと叩きながら話しかけてくる。
白峰エリカ
通称は冷嬢、見た目が冷酷なご令嬢に見えるため、周りはこう呼んでいる、本人は知らない。
アメリカ人の父を持つハーフ美人、身長はレンより少し低いくらい、女性にしては長身で、恐らく170くらいはあるだろう。
出るとこは出ていて、露出が多いわけではないのに、非常に目のやり場の困る身体つきをしている。
白と黒のチェックのフレアスタイルのロングスカート、トップスはサイズ大きめの白Tシャツをゆるっと着こなしている。
これだけのゆるTなのに、ボリューム感が…
化粧は濃くなく自然体、切れ長の冷たい目、神秘的な水色の瞳、鼻筋も通っていて、そんじょそこらのモデルでも敵わないほどの美人さんだ。
見た目は冷酷な令嬢だが、性格はゆるい、スキンシップが激しく、初見だったら確実に恋に落ちるだろう。
「ああ、そうだな、みんなも元気そうでよかったよ」
「レンレーン、暗いよー、明るくいこー♪」
ポンッと背中を優しく叩きながら言ってくるエリカ。
ぽんぽん叩くんじゃありませんっ!騙されんぞ!こいつはシンとできている、だって普通にシンの腕に抱きついてコンビニ入ってきたし、勘弁してくれ、また罠には嵌りたくないぞ。
「俺は元々こんな感じだろ、現状で元気もりもり100%だ」
「ふーん、じゃあ120%になるように、わたしが元気注入してあげる!きゅるん♪」
「おいやめろ、何がきゅるんだ30にもなって、もう少し落ち着いたらどうだ?シン、助けてくれ、エリーはお前の彼女、もしくは奥さんだろ?」
「ん?まぁ彼女だが、いいんじゃねぇか?レンには貴重な経験だろ」
「おい、あたかもおれが女慣れしてないような言い方はやめろ、卒業後の華麗で壮絶な俺の12年間を知らんだろうが」
「いや、俺に助けを求めるとか、そんな対応してる時点でバレバレだぞ、それに酔っ払ったお前は彼女欲しいって叫んでたろ」
まぁ、それは覚えてる、でもなんか悔しいじゃないか、泣いてもいいかな?
そのうちエリーは飽きたのか、やっとレンに構うのをやめてシンの腕に抱きついた。
だめだった〜とか訳分からんこと言っているが、なんなんだよいったい、もしかして俺が会社辞めたの知ってて、慰めようとでもしてるのか?いらんサプライズだよ、まぁどうでもいいか…
でもこれはこれでなんか寂しい…
「はぁ」
ため息しか出ねぇよ…
「レン、エリカに離れられて背中が寂しくなったか?あたしが慰めてやろうか?」
髪は少し赤みがかったストレート、その腰まで伸ばした長い黒髪を、後ろで一本のポニーテールにした、ザ・和風美人さんだ、ちなみにスッピン。
紫水花梨
通称は姐さん、口調からも分かる通り、男勝りな性格で、身長はこれまたちょっと高めでレンと同じくらい、175って所だ。
タイトなラダーダメージの入ったスキニージーパンを履きこなし、真っ白なスニーカー、トップスは黒Tシャツという、シンプルながらもそれが超絶似合っている。
だがお胸様は…うん、何も言うまい、今は留守にしているのだろう、帰ってきたらその時改めてご挨拶しよう。
幼い頃に母親を亡くし、父親の手一本で育てられた。
よくもまぁグレずにここまでいい子に育ったもんだ、まぁ今日はそんな父親が、狂ったように怒り出し、怒鳴り散らかされたから、逆にボッコボコにして出てきたらしい…おぉコワッ!
レンは、やっぱり挨拶はしばらくやめておこうと思ったのであった。
「カリン姐、決めつけるな、寂しくなんてない、俺はそこまで乾いてない、呆れてただけだ」
心の中を見透かされても動揺しないレン。
俺はすぐにどもるようなアワアワ系主人公じゃないからな、それに今、心は蒼波成分で満たされている!
「そんな強がって、何かあったら言うんだぞ?あたしが手とりナニとり慰めてやるからな!はははは!」
背中をばんっばんっと強めに叩かれる。
痛ぇっ!
少し距離をおき攻撃を回避。
「黙らっしゃい!大きい声で何言ってんだ、慰めるときにチョイスする言葉じゃねぇだろ、あとなにとりって、ナニとられるんだよ?完全に下ネタじゃねぇか」
「何を言っている?相変わらずレン坊は面白いな!ははは!」
ははぁ、さてはこいつ、バカだな?下ネタという意味すらわかってない可能性もある、はぁ、疲れるぜ…
「おい、セイト、こいつをどうにかしろ、ちゃんと常識を教えてるのか?」
「無理だよレンちゃん、だってコレだよ?」
そうカリン姐を親指で指しながら言うの、はカリンの双子の弟。
紫水聖斗
通称は黒影、黒色を好み、普段着は全部黒、今日もなんというか、忍者っぽい服装でまるでコスプレのようである、本人は黒影と言われていることは知っている、むしろ少し喜んでいる節がある。
名前は光輝いているのになぁ、残念忍者だ。
今日はたまたま、姉が親父をボコってるのを目撃して、慌てて参戦して一緒に出てきたとか。
…とめろやぃ。
「おい弟よ、今あたしに対してなんて言った?コレ?コレって言ったか?」
瞬間、セイトは全力で移動。
真っ黒だからまるで影が動いているようだな、夜だったら目で追えなくなるぞ。
シンを盾にして隠れるセイト、カリンがそれを追いかけシンとエリカの周りをグルグル回りだす。
べしっ!べしっ!
シンが二人の頭を引っぱたいて止める。
「「いったぁ〜」」
さすが双子、痛がりかたが一緒だ。
「シン、リーダーなんだからちゃんと教育しておけよな」
「おい、なんで俺がリーダーなんだ?」
「は?お前がリーダーだろ?」
「違うが?」
「え?」
「え?」
「……じゃあ、誰がリーダーなん?」
全員がレンを指差す…
なんでぇ?
「いやいやいや!おかしいだろ!なんで俺なん?こんなそよ風でも吹き飛ぶようなド底辺鼻くそ野郎がリーダーなんてとんでも御座いませんぜぇ兄貴ぃ」
「誰が兄貴だよ」
「だっておかしいじゃん!普段の口調から見た目までどっからどう見てもお前だろ!シン!」
100人中、150人はシンがリーダーだって答えるにちげぇねぇ!
「そんなこと言ってもなぁ、学生時代は何をするにもお前が決めていただろうよ」
「そんなことはな、い…ん?ある…のか?」
確かにいつも4人の意見がバラついてるから、めんどくさくなった俺が、じゃあ今日はコレでいいじゃん、って勝手に決めていた、ような気がする…
俺が遊べないときも、ギャーギャー言い合ってうるさかったから、今日はコレしろ!じゃなきゃ帰って寝てろ!って言って話を強制的に終わらせていたような…気がする〜?
あぁ、俺だわ…
「確かに、そう、でした、でもリーダーは無くないですか?」
「なぜ敬語?」
「ちょっとパニックになってな、いつの間にデバフの魔法を習得したんだ?すごいなお前ら」
「事実から目をそらすなよ」
相変わらずシンは、見た目と違ってクソ真面目だな。
ん?待てよ…って事はさっきのエリーのちょっかいに、貴重な経験だろって言ったのは、冗談じゃなく真面目に言ってたってこと?くそっ、さすがシン、蒼波ゲージが数%減ったぜ。
「まぁなんでもいいよ、どうせ学生時代の話だしな、このメンバーが揃うこともそうそう…」
「かみぞのさん!」
!?
こ、この声は!!