24話 ついに…
レンは、たまに水遊びに来るスライムに癒されながら、10日間ひたすら魔法の鍛錬をした。
それはもう頑張った、才能【努力】の凄さを改めて思い知ったレンであった。
「ある程度魔法は扱えるようになったな」
人差し指の先に、ろうそくの炎ほどの火を灯す。
さらに念じると、ボウッと炎が大きくなり、直径30センチほどの火球になる。
指をひょいっと前に振ると、火球は物凄いスピードで川に向かって飛んでいき、バシュウ!と水しぶきと水蒸気を上げて消えた。
「ステータス」
貯蓄 908 +400 −9515
筋力 12000 +460
俊敏 11000 +411
精神 100000 +1
魔力 9996/10000 +3878
魔体 30000 +3109
知能 5000 +769
技術 8000 +907
忘れず確認ステータス。
消費魔力が分かりやすいように、全てキリのいい数値になるよう割り振った。
「見やすいは正義だな、まさか精神に振れるとは思わなかったけど」
試しに1だけ振ってみたのだ、そしたらできた。
さっきの火球一発で消費は5前後…相変わらず魔力は減らないな、っていうか見てる間に回復しきっちゃったよ…
そのほか、少しだけ魔法の鍛錬をしたら、自重で筋トレを少し行う。
よし、今日も魔法と筋肉はいい感じだ、こういうのは積み重ねが大切だからな、毎日続けないと。
あと、空がオレンジに染まったあの日を境に、勝手に貯蓄が400ポイント増えた、どこかのカオスが捧げてくれたのだろう。
そろそろいい頃合いだな、名残り惜しいが街に向かうか。
バイバイ、スライムちゃん…
「リスクリワード!」
ダッ…
―――――
タッタッタッ…
あぁ…
「さすがに肉が食いたくなってきたな…」
毎日草ばかり食べてると、ゴブリンでも食いたくなってくるぞ…
「いや、ダメだダメだ、カオスはあかんやろ、もうこの辺には絶対いないけど」
それもそのはず、スライム川(レン命名)を出発してから、すでに一ヶ月ほどが経っていた。
タッタッタッ…
「キシュー!」
…
ドンッ!
「ギュ…」
タッタッタッ…
目の前に出てきたカマキリの魔物、レンは冷静にソイルで岩を作り、足も止めずに討伐、倒れた魔物に目もくれず、街に向かって走っていく。
走りながら、かなりの数の魔物を倒し続けて、さらに魔法操作技術が気持ち悪いレベルになっているレン。
ソイルで岩をも作ってみせ、魔物が出たらチラッと確認し、ノータイムで岩を弾丸のように飛ばし、瞬殺して通り過ぎてゆく。
それからさらに3日後―――
あ、猪だ…
久々の肉を目撃したレンは立ち止まる。
目の前に体高がレンと同じくらいの大きな猪、体長は3〜4m、土を掘っていたが、レンに気付いて顔を上げた。
視線が交わりしばし見つめ合い…
「フ、フ、フゴ、フゴ!」
次第に興奮してくる猪、頭を下げ、前足で地面を掻き、臨戦態勢だ。
次第に目が血走り始めるレン。
「フゴッ!?」
リスクリワード。
【68】
うん、負ける気がしないな。
ビクッとなり、猪は後退り始める。
「逃さんよ」
腕を前に出し、人差し指で猪を指差す、その瞬間直径10cmほどの水球が指先に出現、グネグネと表面を揺らしながら浮いている、レンはさらに操作、すぐに表面の揺れが収まり、わずかに径が小さくなって、綺麗な真円になる、その水球がわずかに振動し始めると、次の瞬間。
シュパッ…ズシャ。
一筋の線が猪の額を貫き、猪はその場で伏せるようにして静かになった…
高圧噴射だ、水球を出してから射出するまでの時間はわずか1秒ほど。
魔法の操作技術、ここに極まった!
初めて魔物に使ったが、素材を傷めないし、これはなかなかだな、魔力を注いで水球内の水が、球の内側一点に向かって進むよう操作する、そうすると圧がかかるのだ、圧を掛けたら今度は敵に向って、極小さな穴を開けるようなイメージで蓋を開いてやる、そうすると音速を超えて水が飛び出すんだよ、ウォータージェットの応用だな、工場勤務の知識が役に立った。
「今の技は、圧線と名付けよう」
他にも機械加工の経験は、魔法を使う上で応用が効くものが多い、12年間真面目に働いた成果だな。
「機械加工さまさまだぜ」
レンは機械加工の経験を活かした魔法を、数種類生み出している、それがこの世界でどれだけ規格外なことなのかを知らずに…
さて、リスクリワード、川!
何回かリスクリワードを使用し、表示される数字を目安にして川へ向かう。
本当に便利だよなリスクリワードは、距離だけは分からないのが難点だけど。
30分ほどで川へやってきたレン、猪はソイルで足錠を作って足を固定し、その足錠を5mくらいの高さに浮かせ、ぶら下げながら運んできた。
「魔法も何気に便利だよな」
持ってくる前に圧線で頭を切り落としてきたから、血抜きは大丈夫だろ、途中まで血の道ができちゃってたけど…
ドボンッ!
川の中へ猪をぶん投げ、川の水を操作して猪を洗う。
あ、ウォーターで洗えばよかったのか…
足錠を持ち上げ、猪を浮かせると、水球ですすぎ洗いをして…
よし、腕がなるぜ!
ソイルで石包丁を作り出し、解体にかかる。
―――――
パチパチッ
魔法で焼くのは味気ないと、焚き火を熾して、まったりしながら猪肉を焼いて、食べている。
「う〜ん、そんなに美味しくないな、魔力量で味が変わるのかな?定番だよな…でも草よりはましだ」
味気なかった。
でもやっぱり筋肉に染み渡る気がする(気のせい)
そもそも草ばかり食ってて、何で筋肉が落ちないのかが不思議なんだよ、そりゃあ木の実とかも食ってたけど、異世界の謎だよな、草にも魔力かなんかが含まれてるんだろ。
肉パワーを溜め込んだレンは、この日はそこで一晩休んだ。
―――――
「ふわぁ〜、ねむい…」
なんかいつも以上に良く眠れた気がするな、肉食ったからか?
まぁいいかとレンは起き出し…
ソイル!
周りを囲った土壁を解除する。
崩れ落ち、地面に吸われて消えていく土たち…
これ…どうなってんだろ、良く考えたら地面から土壁を出す時、周りの土が減ってないから、これも魔力が変換したものなのか、思えば地面から出てくるイメージはしてるけど、地面の土を操作しようとはしてなかったな、まぁ後でいいか。
ピョンピョンとその場で飛び跳ね、少し目を覚ます。
さて、行くか!
ドッ!ダダダダ…
―――――
猪を狩ってからさらに数日走った、いつものように出会った魔物を瞬殺しながら。
リスクリワード、人里
【98】
リスクリワード、人里
【99】
ふむ、ある程度方向を変えてもそこそこ高い数字が表示される、その中でも特に大きな数字が出る方向は、ここから1番近い人里があるって事だよな。
そしてついに…
つ、着いたーーー!
人里だ、街ではなく村って感じだが、久々に人間を…
ガサガサッ!
!?
またこのパターンかよ、うさぎトンネル(レン命名)を出たときと同じだな。
すぐ横にある叢からゴブリンが出てきた、カオスではないただのゴブリンだ。
おお〜、これだよこれ、この色だよ、それにヒョロガリだ、やっぱりカオスがおかしかったんだな。
身長150ほどの深緑色したゴブリンだった。
リスクリワード 【100】
これが浅層の魔物か、途中は何も考えないで殺しまくってたからな、途中魔物の強さを見ておけば、街までの大体の距離が掴めてたかも知れないな、いや分からないか、俺は各層がどのくらい広いのか知らなかったからな、今ならなんとなくわ分かるけど…
まぁ、100なら寝てても負けないだろ。
もう村までは50mくらいだし、あまり音を出したくないから…
パシュ、バタン。
圧線で静かに倒しておいた。
さて、行くか!




