21話 覚醒の兆し
レンはあのあと数匹のゴブリンを見つけ、同じように鍛錬しつつ、討伐しながら移動していた。
倒したゴブリンは全てリスクリワード0.8で、獲得80ポイントだったな。
ゴブリンは察知能力が低いのか、うさぎみたくリスクリワードに気付かないから調べやすくていい。
貯蓄 863 +480
6匹倒して、ポイントが倍になった。
才能や技能は何も生えてなかったな、そりゃそうか、潜行で30日くらいかかったんだ、それも毎日欠かさず意識してな、そう簡単には生えないか。
考えながら西、と思われる方向へ移動する。
しかし、何を基準に0.8なんだろうか?基礎能力の総合値じゃないのは確かなんだよ、俺は精神99999だしな、だとすれば、筋力、俊敏、技術辺りだろうな。
筋力が高かったのか?腕はかなり太かったし、爪があるから、腕を掴んでの力比べができないんだよ、絶対暴れるから服破れるし。
俊敏もそこそこ、俺より少し低いくらいか?
意外に技術も高そうなんだよな、突きを出す時に、ちゃんと腰入ってたし、個体差はあったけど。
さらに移動していく…
ん?またゴブリンか…80ポイントゲットだぜ〜♪
走り寄って倒す、もちろんちゃんと鍛錬も欠かさない、能力にない部分は自分の身体に教えなきゃならない、常に少しでも強くなることを考え行動する男だ。
続ければ、技術の潜在能力も上がるだろうしな。
さらに移動…
お腹は空いてない、大丈夫だな。
実は無数に生えている草花を、ひっきりなしにリスクリワードで確認しながら、口にポイポイ放り込んでいた。
基本的には青臭くてまずいけど、命がかかってるからな、食べれると分かれば意外といけるぜ。
でもたまに、お?少し美味しいか?って思うものもあったりで、なかなかに楽しめる、水分も摂れるしな。
さらに移動する…
暗くなってきたな…寝床を確保しなくちゃ、木の根元でいいか?めちゃくちゃでかい木なら、それなりの隙間があるしな。
下に葉っぱを敷いて、枝と葉っぱで目隠しして…これでよしっと。
葉っぱの上に座り、その葉っぱをたまに、口にポイポイしながら、天井の葉っぱを見つめるレン。
…
森が深ぁーーーい!
取り敢えず分かった、あの鼻くそが本当にろくでもない場所に俺を捨てたってことがなぁ!
ここ、絶対深層だろ、何区かは分からないが、ただのゴブリンが強すぎるんだよ!
それなりに危なげなく倒してるけどね!
だって鼻くそがセイトのステータスをみて、現段階でベテランの域に足突っ込んでるって言ってたんだから。
確かセイトのステータスは高くても1500くらいだったはずだ、それでベテランの入口なら俺は?
筋力 11540
俊敏 10589
精神 99999
魔力 6122
魔体 26891
知能 4231
技術 7093
俺の今のステータスはこんな感じ…
いや大ベテランだろこれ、いや確かにベテランの幅がどのくらいなのか分からんよ?でもそれなりに調子込んでいい数値なのでは?
それなのにここのゴブリン、よそ見しながら倒せるような相手じゃないんだぞ?2匹相手だったら負けるかもしれないんだ。
ここが本当に深層なら、どんだけ街まで遠いんだよ、地球1周分くらいあるんじゃないのか?
「はぁ〜…」
…寝るか。
次の日―――
「ふあぁ〜」
良く寝た、葉っぱの隙間から入ってくる朝日が眩しい、こんな環境で寝れるなんて、本当に精神さまさまだよな。
こんな深い森の中なのに、なんで光が差し込んでくるのか、とか、そもそも太陽もないのに、なんの光なんだ、とかの疑問は、どうせ魔力的な何かだろと、とっくの昔に考えることをやめたレンであった。
さて、今日も移動しますかぁ!
やけくそである。
精神の高さで、昨日寝る前に考えたことを吹き飛ばし、寝床から出て、周りをキョロキョロする。
こっちが来たほうで、あっちに向かえばいいな。
方向を間違えないように、来た方角の木と、向かう方角の木に、傷をつけておいたのだ、ゴブリンと戦う時も同じことを地味にやっている。
今日も頑張りますかぁ!
空元気である。
それから8日―――
ゴスッ!
「グルゥ…」
レンはゴブリンを倒した…
…
もう無感情だ、何も思うことはない。
倒しては歩き、倒しては歩き、日が暮れれば木の根元で寝る。
「ステータス」
そして無感情のまま、いつものようにステータスを開くレン。
貯蓄 8303 +7520
技能
貸与1 リスクリワード3 潜行2
称号
討伐者
[カオスゴブリン]
「いろいろキターーー!!」
いきなり元気いっぱいになるレン。
いや、いろいろとは言っても、リスクリワードと潜行は随分前に上がってたんだよ。
とにかくこの称号…これには意味があるはずだ!また1つ強くなれる要素が増えたぜ!強くなるよね?
あとお前、やはりただのゴブリンじゃなかったですね?
カオスって…なんだかヤバそうな名前しやがって。
と思いながら、ゴブリンの名前をじっと見ていたら…
討伐者
[カオスゴブリン]
他の魔物を挟まず、カオスゴブリンのみを連続100体討伐したものに与えられる称号。
(会敵したカオスゴブリンに1回でも逃げられたら無効)
(1体のカオスゴブリンとの戦闘中、他のカオスゴブリンを1度でも攻撃したら無効)
(1体のカオスゴブリンとの戦闘中、他のカオスゴブリンも含む、全ての魔物から、攻撃対象にされたら無効)
称号特典
カオスゴブリンとの戦闘補正(極大)
カオスゴブリンの技能を5つ得られる。
どれにしますか?
【夜目】【腕力強化】【脚力強化】【魔力強化】
【刺突】【斬撃】【打撃】【襲撃】【油断】
【興奮】【繁殖】【帰巣本能】【凶暴化】…
【ファイア】【ウォーター】【ソイル】【ウインド】
【ダークネス】【ライト】【ヒール】
【剣術】【槍術】【斧術】【盾術】【杖術】
【棒術】【拳術】【武術】…
尚、技能選択を全て実行後、この説明は2度と開けなくなります。
…
唖然として声も出せなくなっていた。
数秒後―――
「うしっ!」
バタバタバタッ!
レンは嬉しすぎて地団駄を踏み出した。
シュタタタ!ガサガサッ!ババババッ!
物凄いスピードでいつもの寝床を作りだす。
「すぅ〜ふぅ~…よしっ!決めるぞ!」
深呼吸をして5つの技能を選ぶのに集中する。
ご都合主義ここに極まれりだな、いいねぇこういうのを待ってたんだよ。
このまま強くなって、人のいる街まで行けば、あれ?俺なんかやっちゃいましたか?を演出できるな、ふっふっふっ(悪顔
まず、これは絶対というものが【ヒール】と【武術】だ、俺は魔力の回復は自動でするけど、怪我は治せないからな、なのでまずは【ヒール】
そして、ある程度基礎能力を上げてしまえば、別に1つの武器にこだわる必要は無いと思っている、だから【武術】いろいろな武器をそれなりに極められそうだから。
あとはどうするか、なんか地雷っぽいものも見受けられるから気をつけないとな、【油断】とか【凶暴化】とかはダメだろ。
街に行きたくても【帰巣本能】は使えないだろうな、俺の帰る場所なんてこの世界にないし、それに街に向かうための算段は先程思いついた、あとで試すつもりだ。
たっぷり数十分後―――――
これに決めた。
【ファイア】【ウォーター】【ソイル】【ヒール】
【武術】
数時間悩んだ結果、魔法をぶっ放したいという本脳には逆らえなかった。
いいんだ、こういうのは感覚だ、何を選んでも、あれにしておけばよかった、と思うときが来るんだよ、それがテンプレの呪いってやつさ。
それにしてもカオスゴブリン、ぱねぇな…[カオスゴブリン]って表示されてるから、個体じゃなくて全カオスゴブリンのものが選べるのかもな、魔法もあるし、メイジとかファイターとかいるのか?それとも人間と同じで、魔法を使えてもゴブリンはゴブリンということなのか?
今日は休んで、明日からいろいろ試しながら、街を目指しますかぁ。




