19話 凶悪エリアへ
俺は異世界やファンタジー物のラノベ小説で、嫌いなテンプレがいくつかある!その中で上位には入らないが、裸になりがち問題だ!
たま〜にだが転移もので見かけるのだ、原因は様々だが、魔物に襲われて、追い剥ぎにあって、中にはそういう呪いで、なんてものもある。
俺は思う、いつまで裸なの?って…そういう時に限って女とばったり鉢合わせして。
「キャーー!」
ってなるんだよ、それで。
「い、いや、これは違うんだ!」
って…その言い方じゃ逆効果だろって、何も聞いてないのに、違うんだって、何が違うんだよって。
相手から見たら絶対裸なのに、自分は裸じゃないって言ってるド変態だろうが。
言い訳にもなってねえんだよ。
例え誤解が解けなかったとしても、もう少し言い方を考えてくれと。
早く服着ろよって思いながら読んでいって、裸のまま何話も続くと、だんだんと萎えてきて、読まなくなる。
―――――
皆様お待ちかねのこの流れ、とうとうツェファレンにやってきて、冒険を始めたレン、果たして彼は今、どのような状況になっているのか。
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ここは地球とは別の世界、いわゆる異世界といわれる場所である。
そんな異世界の、凶悪な魔物が跋扈する深い深い森の中、岩山に囲まれたエリアがある。
可愛いうさぎ達の憩いの場だ。
いや…憩いの場だった。
ズル…ズル…
うさぎ達の体長は、個体によっては3mを超える、そんなうさぎの片耳をむんずと掴み、引きずり歩く男が1人…
肌は薄汚れて真っ黒、髪はボサボサ、不衛生そうな無精髭、左手に巨大うさぎ、右手に石包丁、そして…
裸に腰巻き一丁であった。
完全に原住民である。
太い木の枝と大きな葉っぱで作った、ドアもない吹きさらしの簡易的な小屋、その前にある大きな石台の上に先程のうさぎを乗せ、真っ黒な石包丁で丁寧に解体していく。
その動作は大胆ながらも作業は繊細、プロの技だ。
(と、自分では思っている)
綺麗に切り分けられた肉を木櫛に刺し、横にある焚き火で焼いて食べる。
「フガッ、フガッフガ、フガ!」
完璧な原住民である。
はっ!!
俺は何やってんだこんなところで!
レンが帰ってきた。
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あぶねぇ、あまりにもサバイバルした毎日だったから、思わず先祖返りしちまったぜ、たまには考えて喋らないと、本当に言葉を忘れそうだ。
先祖から身体を取り戻したレンは、川で体を洗い、髪の毛をそのへんの蔓でまとめ、先程の石包丁でヒゲを整え、包丁の血で、血だらけになった顔を再度洗う。
「ステータス」
貯蓄 303 +25
レンはあれから一ヶ月、ここでサバイバルして過ごしていた。
「さっき倒したうさぎは5匹目だから、やっぱり1匹5ポイントだな」
まぁこんなもんだろ、ここじゃ別に他人を労らないし、幸せも感じないからな、純粋にうさぎ討伐のみのポイントだ、そもそも良く考えたらここは地球じゃない、魔力が宇宙に向かって引っ張られることなく、魔脈になって地表を流れて行ってしまう、おそらく幸せを感じたりしても貯蓄が貯まったりはしないのだろう。
レンはルールを決めた、食べる分だけ狩りをする、このエリアでは無駄な殺生はしないことにしたのだ。
やはり魔物とはいえ、見た目は可愛いうさぎだしな、あまり傷つけたくないんだよ。
あと、うさぎと戦闘訓練をする、という目的もあった、わざと攻撃を食らってみたり、ギリギリでかわしてみたり、殺さない程度に手加減しながら相手して、感覚を磨いてたんだ。
もう結構仲良しなんだぜ?
「キュー!キュー!」
うさぎが1匹こちらに向かってきて、レンの横まできて、頭の匂いを嗅いできた。
ほら、可愛いだろう?
さすりさすり…
レンはうさぎの顎下をさすり始めた。
「はは、可愛いやつめ」
カブッ!
腕を噛まれた、肘あたりまで丸呑みされている。
でも痛く無いんだよ、やはり筋力が上がったからか?魔力補助での筋肉だからな、タンパク質由来とは性能が違うのだよ、性能が。
こんなもん甘噛みみたいなもんだ。
ガブッ!ガブッ!!
はは、くすぐったいぞ。
ガブッ!!!
…
レンは無言で、うさぎの頭の肉を掴み固定して、腕を引き抜く、そして…
バゴッ!
うさぎをぶん殴った。
「ギュ、ギュゥ…」
最後のひと噛みは少し痛かったらしい。
さて、うさぎの味なんだが、だいたい5〜6日でリスクリワードの数字が減り始めて、味が落ちてくるから、そのくらいのペースで1匹ずつ狩ってて、今5匹目ってことだ。
さっきのは気絶させただけだからね?
しかしこの貯蓄量、確かに10万ポイントがどんだけ
凄い数字なのかが分かるよな。
まぁあまり倒してないからなんとも言えんが。
「とりあえず今日はもう寝るか」
たった今気絶させたうさぎをクッション代わりにして寝始めるレンであった。
次の日―――
「ふわぁ〜、ん、んんー!あー良く寝た!」
両手を上げ、頭の上で手を組んで、大きく伸びをするレン、そのまま手をおろし。
モフッ、ビクッ
自分の下でぷるぷる震えているうさぎの、横っ腹をぽん、と優しく叩くと、ビクッとなりより一層震えが強くなる。
「おお、お、お、お、お、おぉ〜」
いいねぇ、天然のマッサージクッションだな。
「目を覚ましますかぁ、お前もご苦労、さんっ」
ベチン!
「キュー〜〜〜!」
ダダッダダッダダッ!
ケツを叩いたら一目散に逃げていった。
あ、お肉食べさせるの忘れてた。うさぎちゃん達、普通に共食いするからなぁ、俺が埋めたのをわざわざ掘り返して食ってたんだよ、初めて見たときは…あぁ、うん、何も感じなかったわ。
精神高めだから、嫌悪感が薄いんだよなぁ。
「こんな朝までベッド代わりになってくれるとは、なんて忠誠心の高いウサギちゃんなんだ。さてっ、と」
恐怖心だというのは分かってるさ、冗談の1つも言ってないと、こんな危険な森で1人きりだから、心が…あぁ、うん、別に平気だわ。
精神高めだからねっ!
異世界初見の感動を返せ鼻くそめぇ!
と、荒ぶってみるが、すぐに落ち着く精神。
服、着るか…
「ふう、久々に化学繊維を身に纏ったな、こんなに着心地が良かったとは」
冒頭であれだけ言っていた割には、このエリアに来た2日目には服を脱いでいた、初日に倒した青うさぎの毛皮を身にまとったのだ。
鞣しとか分からんから、なんかべちゃべちゃで気持ち悪かったけどな、川で洗って乾かしたんだけど、でも我慢した、全裸は嫌だし。
全裸でなければセーフだったらしい。
この森を出るまでこの服しかないからな、ボロボロにしないように気を付けないと。
さて、うさぎとの戦闘訓練はやり尽くしたし、そろそろこのエリアから出て、街に向かいたいところだが、鹿にだけは会いたくないし…いちおう、うさぎ相手に気配を消す練習もしたが…まぁ、頑張るしかないな。
レンは久びさに洞窟内に入る。
この洞窟?トンネル?は、あのうさぎ達が強い魔物から逃げるために掘ったのかもしれないな。だとしたら凄いぞ、この固い岩を削ったんだからな。
なぜか俺には攻撃通らなかったが…もちろん爪での攻撃も受けてみたんだよなぁ。
穴掘りに特化してて、補正でもかかるのかな?
でも、そんなに必死で逃げてきたのに、可哀想だよな、絶滅させなくてよかったよ。
遊びに来れたらまたキャンプでもしに来るか。
そして、久々に凶悪エリアに戻ってきたレン、少し立ち止まって、どの方向に向かうか考える。
そういえばここは深層なのか?あの鹿レベルで浅層とかだったら、生き残れる自信ねぇなぁ。
まぁ、見た目のインパクトで逃げちゃったから、実際の強さは分からんのだよな。
次会敵したらリスクリワードを忘れないようにしなければ。
ガサガサッ!
むっ!?




