17話 うさぎちゃん攻略
レンの目の前で可愛いうさぎ達がじゃれ合っている。
ゴキュ、ゴキュ。
ドタッドタッドタッ!
キュアー!キュッキュッ!
シャー!!
普通だったら心躍る光景だろう。
体長が2〜3mもなければ…
こ、怖えぇ〜、でけぇよ…なんだよあの歯は、あの犬歯は完全に肉食だろ、魔物は弱い魔物を餌にするらしいから当たり前なのかもしれんが。
幸い岩穴の目の前に大きめの木が生えていて、うさぎ達から身を隠せるようになっていた。
レンは、しばらく様子をみようと身を低くして様子を伺う。
あの鹿よりはマシだ、それにいつまでもここで水を飲んでばかりではないだろう、もし見つかってもこの穴なら入ってこれ…るな、逆に誘い込めれば1匹ずつ相手できるか?なんかあのうさぎちゃんたち頭悪そうだし。
体感で30分程が経った。
1匹、また1匹と森の中に入っていくうさぎちゃんたち、そして…2匹だけ残った。うすピンクの小柄なうさぎちゃん(体長は約2m)と、少し青みがかった一回り大きなうさぎちゃん(約2.5m)だ。
なんであいつらだけ動かないんだ?寄り添って箱座りしやがって、おまんじゅうみたくなってんな。
見た目は本当に可愛いんだが、あの何考えてるのかわからんつぶらな瞳が不気味で怖すぎる。
ときより物音のするほうへ、耳をぴょこっと動かし、顔は正面に向けたまま動かさない。
このままじゃ埒が明かないな…やってみるか。
意を決して…
無詠唱でいけることは、さっき少し狂ったときにわかっている…いくぞっ、リスクリワード!
ピンクちゃんのほうへ、リスクリワード発動、ここからうさぎちゃんまでは30mほど離れている。
届くか?
【5】
よし出た、5か…2匹相手なら勝てるか?
すると、リスクリワードをかけられたうさぎが、耳をこちらに向け、突然立ち上がり、顔もこちらに向けてきた。
バレたか!?
レンは少し穴の奥へ戻り様子を見ていると。うさぎが全力で走ってきて。
ドンッ!!
木に向かって頭突きをしてきた…
そして、あと1匹も異変に気づいて、頭突きをかまそうと走ってきて…
バキィ!!
最初に走ってきたうさぎに追突した…
キ、キュアーー!!
キシャーー!!
よほど痛かったのだろう、喧嘩が始まる。
レンは丁度いいと、うさぎの喧嘩を観察、どれくらいの強さなのか、自分は勝てるのか考察する。
やはり魔物とはいっても動物、戦い方が獣そのものだな、だからこその怖さというものもあるが。
そう、獣の喧嘩は常に全力、ペース配分など皆無、相手を一撃で沈めようと100%の力で襲ってくる。
人間は違う、戦略を組み立て、戦闘を継続できるようにペース配分を考える、より効果的なダメージの与え方を考える。
だから怖いのだ、全力の獣が…
地球でも人間は全力の猫に敵わないと言われてたしな。
猫が人間に勝てるなら、俺もがむしゃらにかかればあの鹿を…いや無理無理、ガブッとされて美味しくいただかれるのがオチだな。
俺は人間だ、人は人らしく戦おう。
ある程度観察してるとわかる、これなら勝てると、俊敏が上がったおかげか、攻撃一つ一つがよく視える。
そして今のレンになら、躱すことが出来ると確信した。
問題は攻撃だな、ゲームと違って攻撃力という数値がない、筋力がその代わりなのだろうが…考えてもわからんしな、よし、いっちょやったるか!
ふぅ〜…ふんっ!
ドンッ!
気付かれる前に一撃は入れたかったので、クラウチングでスタートを切り、地面が揺れそうなほどの音を鳴らし、全力で穴から飛び出す、自分でも信じられないほどのスピードが出た、だが俊敏も上がったレン、身体も筋トレとスポーツでバランスよく鍛えたので制御は楽勝だった。
青うさぎが丁度背中を向けてたので、飛び出したスピードを殺さず…
これが人間の戦いかたじゃあ!
バキッ!!
おもっくそドロップキックをかました。
(まるで獣のような)攻撃を食らった青うさぎは、その柔らかそうな見た目から出してはいけない音を出し、ピンクうさぎを巻き込んで吹っ飛んていった。
残心、遠くに飛んでいった魔物を油断なく見続ける。
2匹とも起き上がることはなかった…
あれぇ?
「おーい、死んだふりしてないでかかってこーい」
……
近くに寄ってつんつんする…
死んでる…ふっ、俺の人間的効率重視な攻撃に、為す術もなかったか。
さっ、と長くもない前髪を払い、格好つけていたら。
っ!?
「ギュギュギュー!!」
ドンッ!
「ぐふうっ」
青うさぎがあと1匹現れ、レンの脇腹に頭突きをかましてきた。
ぶつかってくる直前に気が付いて、躱しきれないと判断、腰を落として受け入れ準備をギリギリ整えていた。
レンは耐えた、数センチ押されて止まった。
その後うさぎのデカ頭をガシッと掴み…ニヤァっと笑う。
「やはり思ったよりも弱いなぁ、やはりリスクリワードの考察は合ってたかなぁ?」
ニヤケ顔が止まらない。どうしてくれようかと考えていると、うさぎがジタバタし始める、全力だ。
しかし動かない、こめかみ辺りの肉を掴んだ手が外れることはなかった。
そのうち疲れたのか、または諦めたのか、そのうち動かなくなった。
「キュー、キュー…」
「…」
可愛い鳴き声を出してじっとしているうさぎに。
リスクリワード!
【4】
「4か、ピンクよりは体が一回り大きいからな、やはり数字が小さいほどリスクが高いと考えて良さそうだ」
さて、こいつはどうするかな、わざわざ殺しに来た相手に優しくする必要はない、だがこいつは今、戦意を失っている。
「お前はどうする?まだやるか?」
人の拳ほどはありそうな片方の瞳の前まで顔を近づけ
、声をかける。
ふしゅーふしゅーと息をするのみだ。
相変わらず何を考えてるのかわからんな、まぁいっか。
掴んでいた手を離し、解放するレン、そして、試しに水でも飲んでみるかと川に向かって歩きだしたが…
「…む!どっせぇい!!」
バチコンッ!
ドゴッ!
背後から先ほどのうさぎが性懲りもなく襲いかかってきたのだ。
レンは素早く振り返り、遠心力を使い、顔の側面を思いっきり引っ叩いた。
物凄い勢いで頭を地面に叩きつけられたうさぎは、少し痙攣してから動かなくなった。
「くそ、気分わりぃな、逃げればいいのに、所詮は魔物かよ」
相手は魔物だ、わかりきっていたことだが、シン達に裏切られた時のことを思い出し、少しだけ怒りが湧いた。