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167話 それぞれの家族

レイカ、マリー、レイ、3人は異世界生活が長い、もう20年以上もツェファレンで生活をしていたせいなのか、家族に対しての愛情が少し薄れてしまっているらしい。



なるほどなぁ、だからすぐに諦めてしまったのか。



「ははは、少し緊張するねぇ…なんだか他人の家に、しつこく営業しに行くみたいな感覚だよね、また来たの?しかも別の人連れて…って思われるんだろうなぁ」

「長く離れて生活するとそうなるのか、しかも世界が違うんだもんな、俺はまだ1年そこそこだからなんともアドバイスがしづらいな」

「いいよ兄ちゃん、そこは僕が頑張らなきゃならないところなんだから、あ、あれあれ、僕の実家」



俺の地元も田舎だが、レイ達の実家も中々に田舎だよな、いい所だ。



「マリー、今回も運んでくれてありがとう」

「感謝なんぞいらん、まずはお前からだ、頑張ってこい」

「俺も一回来たからな、何時でも転移で送り迎えできるぞ、まぁリスクリワードでも場所は分かるんだけどな」

「兄ちゃんのその技能がぶっちゃけ一番チートかもね、ふぅ~…緊張が増してきちゃったよ」



今いるメンバーは、レンと美紀、カリンと道夫、レイとマリーの6人だ、実際に記憶をなくしている人を会わせてみようという作戦である、しかし皆、とある事実を忘れていた。


ともかくまずは、レイが一人でインターホンを鳴らす。



ピンポーン…



『は~い!』



ガチャ…



「あら?先日の、どうしたの?」

「あ、母…いえ、あの、ぼ、僕は、レイという者でして」

「可愛い子ねぇ、私は小鳥遊加奈子(たかなしかなこ)よ♪それで、今日は何の用事かしら?前回は間違ったと言っていたけれど、また来たって事はやっぱり用事が?」

「は、はい!あの、少し会ってほしい人達がいまして…す、すみません、いきなりこんな事、怪しいですよね、ははは…」

「そうねぇ、怪しいわね♪ふふふ、それで?誰に会えばいいのかしら?」



ここでレン達が登場。



「すみませんいきなりお邪魔してしまい…」

「え…い、1号様ぁ!?ええ!3号様まで!?あら?あなたはもしかして4号様…8号様に9号様まで、どうなってるの!?」

「えぇ…」



そう、自分たちが有名人だと言うことを忘れていたのであった。



しまった、最近は面倒くさくて正体隠してなかったんだった…しかしこの人詳しすぎんか?



「はは、まぁそうなんですがね…今日は1号としてではなく別件でして」

「あら〜!どうしましょう!お父さんは…出かけてるし…そうだ!美華里(ひかり)!大変よ!1号様、3号様、4号様、8号様、9号様がいらっしゃったわ!」

『えぇ〜?…えぇ!ちょ、ちょっと待っててぇ〜!』



ガザガサ!バサササ!ドタッ!ダダダダダ…



「はぁ、はぁ…はっ!!ホントだぁ!なになに!?私達なんかやっちゃったの!?」

「姉ちゃん…」



レイのお姉さんか。



『この人は入れ替わりとかじゃないんだな?』

『うん、もともと実在していた僕の姉ちゃんだよ…ごめんね騒がしくて』

『まぁいいさ』



コソッと事実確認をして、本題を話す事にしたレン。



「悪い話をしにきたわけじゃない、少し落ち着いて聞いてほしい話がある」

「「はい…」」



素直な2人、1号様パワーで土下座でもしそうな勢いである。



「ははは…取り敢えずいきなりなんだが、この人、8号は俺の母ちゃんなんだ」

「はい、それは黄泉がえりチャンネルで何度かお聞きしている事ですね」

「この子、私の息子のレンはね、半年程前に異世界に攫われちゃったの」

「「え…」」

「それでね、覚えていないのよ、本当にダメな母親で息子に申し訳ないのだけれど、私には息子の記憶が無いの」

「俺もそうです、カリンは俺の娘なんですが、俺の中に記憶が無いんです」



美紀と道夫が自身の体験を語る、流石に何となく訪ねてきた理由を察した小鳥遊親子。



「そんな…じゃあ今日来た理由は」

「母ちゃん、姉ちゃん…僕は3年くらい前にレン兄ちゃんと同じく異世界に攫われたんだ、修学旅行の日にこの4号、マリーと一緒にね」

「そ、そんな…もしかしてあなた、話の流れ的に、私の息子、なの?」

「姉ちゃん…って事は弟?私の弟なの!?」

「そう、そうなんだ、この世界はそういうルールになってて…ははは、信じてもらえないよね」



ガバッ!



レイを抱きしめる加奈子。



「か、母ちゃん?」

「信じる!私は信じるわよ!確かにおかしかったの…魔力がこの世界に満ちてから、美華里も私もたまに変な事を言っていたのよ…」

「うん、うん、何かを思い出しそうになってたんだよ、あいつだったらとか、たまに寂しくなったりとか、あなただったのね」

「母ちゃん、姉ちゃん…」

「良かったな、レイ」

「うん…ありがと〜、兄ちゃ〜ん!うわぁぁぁ!母ちゃん!姉ちゃん!ごめんよぉ!」

「おかえり、レイ…ここはあなたの帰って来る家よ」

「私の弟はレイって言うのね、おかえりなさい…」



よし、まずは成功だな、あと2人だ。



「レイ、どうする?しばらく実家でゆっくりしていくか?」

「うん…そうする、母ちゃんいい?」

「いいに決まってるでしょバカなんだから、あなたは私の息子でしょ!」

「部屋が一つ空いてたよね、もしかしたらそこがレイの部屋だったのかも!私片付けてくる!」

「良かったなレイ、いっぱい話をして驚かせてやれ、お前が王様だった事とかな」

「「王様!?」」



片付けに向かおうとしていた姉も、聞き捨てならない言葉に、立ち止まり振り返る。



「もう!兄ちゃんひどいよ!今言ったらおもしろくないでしょ!」

「いやぁ、すまんすまん」

「レイ、とにかく中に、あ、皆さんはどうされますか?休んでいかれます?」

「いや、俺たちはまだ仕事が残ってるから、レイをどうか頼みます」

「え〜、私1号様の話聞きたかった〜」

「美華里、わがまま言わないの」

「は~い」

「まぁ、レイは俺の身内だと思ってる、つまりあなた方も身内だ、この先話す機会もあるだろう、またその時にでも話しをしよう、今はレイとたくさん話をしてくれ」

「やったぁ♪なんか私達の時代が来たっ!って感じだよ〜♪友達に自慢しちゃお〜っと」



楽しそうにスキップで家の中に入って行く美華里。



「すみませんね、あの子ったらもう26歳にもなるのに落ち着きがなくって」

「いや、楽しそうで良かったよ、じゃあ俺達はこれで、レイ、あとで家族をギエスティに招待してやれ、守りたいなら鍛えるのが一番だ」

「あら〜、あの宿屋一回行ってみたかったのよ〜、料理も安くて美味しいって聞くし、嬉しいわぁ♪」

「うん兄ちゃん分かったよ!じゃあね〜」

「おう、次はマリーだな、覚悟はいいか?」

「う、うむ!最初から覚悟はしているぞ!」

「よし、案内してくれ」



―――



マリーの案内でしばし歩くと、山の麓に大きくて綺麗な屋敷が見えてきた。



「あそこだ」

「家でかぁ…」

「マリー、お前はいい所のお嬢様だったんだな」

「カリン姉様、お嬢様だなんて、そんな事はないぞ」

「なんかこっちまで緊張してきた」

「兄様まで、そんな緊張しなくても大丈夫だ、普通の家だ」



いや普通じゃねぇよ、だってもう絶対敷地内入ってるもん、家まで何メートルあるんだよ、門まであるし…



「ここが我が家、柊家の屋敷だ!」

「屋敷って言った!やっぱり普通じゃないじゃん!」

「ふむ、では…」



ピンポーン…



躊躇なく門のインターホンを鳴らすマリー。



ちょ、こっちの心の準備が!



『はい…柊です、どちら様でしょうか?』

「私はマリという者だ」

『またあなたですか…どういうおつもりですか?』

「お、おいマリー、前は何をしたんだ?」

「母様!話を聞いてほしい!」

『はぁ、そういうのは困ります、私に子供はおりませんので…』



この調子じゃダメだろ…



「少し待ってほしい、いきなりすまない、俺はレンという、詳しい説明をさせてもらいに来た」

『はい、レン?…どこかで』



しょうがない、この際だ、知名度を利用するか…



「最近は動画やニュースなんかでよく見かけると思う、1号様と周りから呼ばれている、名前はレン、神園レンだ」

『!?しょ、少々お待ち下さいませ!あなた!たいへ…』



ブツッ…



息をのむ音が聞こえ、誰かを呼ぶ声と同時に通話が途切れる、しばらくして…



ガシャン!キィ〜…



門が左右に開き始めた、そして…



カッカッカッ…



「ふっ、ふっ、ふっ…」



見た目は妙齢の御婦人が、足を絡ませないようにロングスカートを軽く持ち上げ、ヒールを鳴らしながら小走りでこちらへと向かってくる、その後ろをメイドのような服を来た女性が、ご主人様が転ばないか心配しているのか、アワアワしながら必死についてきている。



シュールだなぁ、疲れを見せないよう必死に無表情を保とうとしてるのもポイントが高い。



「よ、ようこそおいで下さいました!わたくし、柊家現当主の柊忍(ひいらぎしのぶ)と申します」



いや、マリーそっくりなんだけど!?身長も見た目も全部そのまんまマリーなんだが!?



「母様…」

「む、あなたは…むむむぅ」



さすがに自分を母と呼ぶ、自分と瓜二つのマリーに困惑の忍。



「前回は顔を合わせなかったのか?」

「うむ、門前払いでな」

「こんな時代ですもの、警戒に越したことはないのです」

「まぁいい判断だ、思ったよりも忍さんは理性的な判断が出来ると思うから…忍さん、この人、真理は異世界でマリーと呼ばれている、まぁあだ名みたいなものだ」

「はい」



素晴らしい、取り敢えず話を最後まで聞くといった姿勢だな。



「異世界という言葉に違和感は?」

「ございます、ですが、そういう現象が現実に起きてもおかしくない時代となった事も事実」

「マリーは数年前に異世界へと攫われた、世界にはルールがある、別の世界へと強制的に渡らされた者は…元の世界の人達の記憶から抹消される」

「ふむ…」



目を瞑り考える忍。



いや、まじでそっくりだな、これで親子じゃなかったら詐欺だろ。



「思い出したわ」

「え?」

「あなたは柊真理、私の娘です」

「えぇ…」

「母様!」



忍に抱きつくマリー。



なんで思い出せた?



「本当に思い出したのか?」

「ええ、間違いなく私の娘ですわ、おかえりなさい、よく戻って来たわね、待っていた…とは言えないわね、今の今まで忘れていたのだから、こんな母親を許してくれるかしら?」

「当たり前だ!母様、会いたかったぞ!」



マリーの母ちゃんやべぇ、強者の雰囲気がぷんぷんするぞ。



「母様はなんで思い出せたんだ?」

「ふふふ、私の才能に追憶、技能に再現というものがあるわ、多分それね」

「なるほど!流石は母様だな!」

「ふふふふ、そうね、流石はわたくしね」



なるほど…



「ありがとう、一つ分かったことがある」

「あら、なんでしょうか?」

「その前に…あなたは俺の義母さんなんだ、マリーは俺の妻になった、まぁ異世界の話だし、式とかも挙げてないんだけどな」

「まぁ!あなたやるわねっ、大手柄よ♪」

「へへへぇ、流石は私だろ!」

「それでこそわたくしの娘だわ!」

「あ、あたしも妻なんだ!忘れないでほしいぞ!」

「そうなのね?異世界というのは一夫多妻制なのかしら?」

「そうだ、みんな平等に愛情を注ぐから心配しないでほしい」

「大丈夫、心配なんてしないわ、こんな大物と婚約したのだもの、その事実だけでも柊家は安泰よ」



いやあんたが大物だよ、すでに安泰だろ。



その後は自己紹介の流れへと進み…



「仲良かった麗華ちゃんや怜君まで忘れてたなんて、今度連れてきなさいね、真理」

「うん!母様、レイカも嫁なんだよ♪」

「あらそうなのね?造家と関係を持てるなんて、ますます安泰ね、ほほほほ♪」



やっぱり全部思い出している。



「忍さん、息子共々よろしくねぇ」

「俺も宜しくお願いします」

「えぇ、美紀お姉様、道夫お兄様、宜しくお願い致します」

「それにしても全部思い出してしまうなんて、凄いわねぇ」

「その事で分かった事なんだけど、どうやら俺達は世界のルールというのを取り違えていたらしい」

「というと?」

「忍義母さんの記憶は消されてなかったって事だよな?思い出せたんだから」

「確かに、父さんも義母さんも、レイの家族も何かを思い出しそうになっていたしな」

「そうねぇ、でもそれっきりね、レンに息子と告白されたあとはなくなったわ」



もし技能で【再現】を創って貸与したら、思い出せるのでは?追憶は才能だからなぁ、いや、【追憶】っていう技能も創ってしまえば良くないか?



「母ちゃん、義父さん、俺は技能を創り出すことの出来る技能を持っている、しかもそれを貸与することも可能だ」

「それは…あなたを思い出せる可能性があるって事?」

「そうだ、どうする?」

「…私は、遠慮しておくわ」

「俺もやめておこう」

「そうだよな、聞いておかないとフェアじゃないから、いちおう聞いてみただけだ」



分かってる、もし完全に記憶が甦れば、蓮花達の記憶がどうなるか分からないからな…これでいいんだよ、今で十分幸せだしな。



「麗華ちゃんの家はまだなんでしょう?造さんの所は十分注意した方がいいわね」

「母様、なんでだ?」

「真理、あなた忘れたの?あの家は厳しくて有名なお家なのよ、裕福ではあったけれども、教育方法がねぇ…」

「あ…確かにそうだった、学生の時も、2年までは誰とも仲良くしていなかったみたいだからな、3年になったあとはクラスに馴染めて、そこそこ人気者ではあったが、どこか生き急いでいたと言うか…私とレイしか本当に仲の良い友達もいなかったはずだ、だから今回、自分は最後でいいと言っていたのか、レイカ…」

「そういえば、嬉しいような悲しいような顔をしていたな、もしかしたらあまり家族と仲良くなかった可能性もあるよな、少し考えが浅慮だったなぁ」

「兄様、とにかくもう一度レイカに聞いてみたらどうだ?」

「そうするよ、まぁ、どうなったとしても俺が幸せにするから問題ないさ」

「真理?旦那様に対して兄様とはどういう事なのかしら?少しは考えなさいな」

「う、うむぅ〜、恥ずかしいんだよ」

「何が恥ずかしいんですか、ほら言ってごらんなさい、あなたって」

「あ、あなた!?」

「旦那をあなたって呼ぶのは当たり前でしょう、ほら」

「あ、あな、た…だ、ダメだよ母様!恥ずかしい!」

「ま、まぁまぁ、そんな急がなくても、俺の事は先ず名前で呼べるようにしような?マリー」

「う、うむ…分かったのだ、れ…レン」

「おう♪」

「はぁ、まぁ今はそれでいいでしょう、でもあまり甘やかしてはダメよ?レンさん?」

「は、はい…気を付けます」

「よろしい、では、今日のところは真理を預かっても?」

「はい、そのつもりで来ましたので、マリーもいいな?」

「うん!母様よろしく!」

「ええ、いっぱい話してもらうから覚悟してちょうだいね」

「望むところだ!」



よし、あとはレイカだけだが…一度良く話を聞こう。



「じゃあみんな、戻ろうか…」

「ああ、レンは大丈夫か?」

「ははは、ちょっと気が重いかな、でもレイカの為だし頑張るさ」

「うむ、それでこそ旦那様だ」

「レン、頑張りなさい、ちゃんと話を聞いて、お嫁さんを助けてあげなさいね」

「母ちゃん…まぁ俺なりに精一杯やってみるよ」

「あたしが送ろう、転移!」



―――



ギエスティの広場に戻ってきた一同、2人きりのほうがレイカも話しやすいだろうと、カリン達は迷宮へ、レンは一人レイカのもとへ向かった。

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