166話 お金の使い道
精神、及び人格支配、拉致、強制労働、間接殺人罪に問われていた被疑者ルード、主に日本人を中心に狙った犯行であった。
そして最後には、日本国内の建物を無許可で迷宮化、異世界ツェファレンの魔物達と共謀し、その魔物たちに武力行使をさせるという強行に出たのである。
ルードは日本国内において最も重い罪の一つとされる、外患誘致罪の疑いにより逮捕。
合理的な疑問も残さず、ルードの犯行全ての証拠はティア裁判官が押さえている為、その場で有罪判決となった。
被告人の量刑を決めるため、ティア裁判官の下へルードを移送してきた刑務官のレン。
一度は有罪判決となったルード被告人だが、結果はまさかの無罪…という名の過去の清算であった、魂の洗浄の為、過去への旅立ちという実刑判決を受けたルード被告人、量刑が確定した瞬間刑罰が即時執行され、その場で体を溶かされ、過去へと旅立っていってしまう、無罪の実刑判決とはこれ如何に…
とにかく、ルードとの決着をつけ、宿屋ギエスティへと戻ってきたレン、一区切りついて清々しい気持ちで真っ直ぐ食堂へと向かっていく。
「お、いたいた、カリン達だけだな」
「蓮花ちゃん達はいないね、城ちゃんとハーちゃんも帰ったのかな?」
「内藤姉弟もいないな、まぁあいつらはルードとの関わりがないからな、いてもしょうがないか、蓮花達には後で話すか」
1日500円で食べ放題のバイキング、数百人が一気に食事をとれる程大きな食堂内は、たくさんの人達で賑わっている、この宿にはそんな食堂が数十もあり、腹ペコ冒険者達に料理を提供している。
そんな料理を誰が作っているのか、実はレン、黄泉がえりチャンネルを通し、地元を中心に全世界の料理屋関係者を、虱潰しにこの食堂へと勧誘したのだ、そして応募してきたその殆どがここへ転職している。
レンが直接勧誘しに行って、一部突っぱねる頑固者もいたが、無理に交渉はせずそこは放っておいた、そんな頑固者達の中にも、現在は後悔している者も少なくないとか…
ともかくギエスティの食堂は連日超満員、宿泊している冒険者達だけではなく、一般人にも開放されており、1日中混雑状態であった。
「レン、お帰りなさい、お疲れ様」
「母ちゃんか、ただいま、新しい職場はどうだ?」
「ええ、最高ね、好きな時間に来て好きに働ける、その時間に働いている人数により時給が増減する、人手が少ない中働くとお給料が増えるっていうので、みんなに評判よ、これなら気兼ねなく休めるしね、そろそろ休んだらどうですか?なんて言い合ってるんだから笑っちゃうわよ」
「凄いだろ?レイカと一緒にめちゃくちゃ考えたからなぁ、苦労したぜ」
「このライセンスカード?これできちんと働いているかどうか判別してるんでしょ?凄いわねぇ」
「でしょでしょお義母さん!聞いてよ〜、私頑張ったんだから〜、お給料も時給じゃなくて秒給なんだよね、基本は3秒1円、最低保証は時給1200円って事、食堂を余裕で回せる人数を設定して、人数が揃ってる時、またはそれ以上いる時は基本その給料、回す人数の減り具合に応じて、2.9秒で1円っていう具合に貰えるお給料が増えてくんだよ、8時間を超えたら残業扱い、2.5秒で1円だけど、残業中にかぎっては人数が揃ってると際限なく給料が減っていくよ、無駄な残業はさせないためだね〜、和洋折中いろいろな料理の担当があって、厨房は各食堂に全部で五つ、一つの食堂で大体30人くらいは働いてるかな?それぞれの厨房の責任者は1秒1円の好待遇だよ♪」
「ぶっちゃけ、冒険者用のカードより、従業員用のカードを開発するほうが苦労したよな」
「ほとんど魔法に頼っちゃったけどね」
「さて、立ち話してるとお給料貰えないわね、働いてくるわ、私は後で話を聞くから、お嫁さんたちに話してらっしゃい」
「はいよ」
「お仕事頑張って、お義母さん」
いくら地球がファンタジーな世界になろうとも、お金の存在というものは必要だ、金銭のやり取り、これがあるからこそ規律が守られる、物や働きの質、お客様へ提供するサービスの価値などを均一化し、評価の基準ができる、経済を効率よく動かすためにはなくてはならないものだ。
ランクの高い冒険者は稼げる、これも他人に見栄を張るための一種のステータスであり、冒険者のやる気を上げさせ、継続させる為の重要な項目である。
「帰ってきたな、おかえり」
「サリー、お前地球に馴染み過ぎだろ…」
「はっはっはっ、そんな褒めるな」
「褒めてねぇよ、まぁ貶してる訳でもないが」
「それにしてもこんな美味しい料理が、あっちでの銅貨1枚の値段だろ?しかも1日中食べ放題だなんて考えられん、宿も1泊銅貨2枚とか、本当にこの値段設定は大丈夫なのか?」
「まぁな、ツェファレンと違って冒険者の数が段違いだし、このカード分かるか?」
自前の冒険者カードを出して見せてみる。
「ああ、初めて来た時に私も作ったからな、もう迷宮も25階層までクリアして金剛魔鉱石の綺麗なカードだぞ、お前と同じだ、まぁしょっちゅうこちらにお邪魔して、潜在能力上げのために迷宮は利用させてもらっているからな、レクステッドのダンジョンでもいいのだが気分転換にな」
「はは…さすがはサリー様だな」
「それで?このカードがなんだ?」
「その前に飯取って来てもいいか?」
「ああすまん、そうだったな」
「私も取ってくるね〜」
レンとレイカは、用意されてるお皿を手に、それぞれ好きな料理を取り分け、また席に戻る。
円卓にレンとレイカが座り、サリーとキルミ、及びカリンとマリーの、全部で6人が座っている。
「改めて、みんなただいま」
「うむ、おかえり、お疲れ様」
「兄様おかえり、面倒くさいことを任せてしまってごめん」
「いいよ、取り敢えず、完全にルードとの決着はついたと断言する、小説やアニメのように強化されて復活してくるような事態には絶対にならない」
「具体的にはどうなったの?」
レイカが質問してきた。
「ルードは…ティアの判断で、無罪になった…」
「はぁ!?なんだよそれ!レンさん!どういう事だ!」
「落ち着けキルミ、レン、どういう経緯だ?」
「俺も驚いたんだよ、あいつは…無罪になった、いや、無罪になるため、過去へと旅立っていった」
「もっと詳しく説明しろ…」
サリーの目が怖い、今にもレンに飛び掛かりそうな目つきである。
「そんな焦るな、ティアが無罪と発言したのは間違いない、俺を付け狙った理由、人々を殺し回った理由なんかを軽く質問して、結果は無罪、俺が生きてるから、それ以外の人間が死のうが生きようが関係ないんだとさ、その後ティアがなんか変な力を使って、瞬間ルードは叫び声を上げげながらドロドロに溶けて地面に消えていったよ、ティアに聞いたら魂の洗浄をさせに行かせたと、戻るのは数年、数十年先になると言っていた」
「溶けて…」
全員なんとも言えない表情になってしまった。
「そ、それは無罪…なのか?」
「ホントだよな、あれはキツイぞ、ゆっくり体が溶けていって、よっぽど苦しかったのか、喉を掻きむしってのたうち回ってたからな、口からスーッスーッって音を出しながらな、吸ってるんだか吐いてるんだか分からん音を、あんな見た目おじいちゃんの奴が苦しくてもがいてる姿を見ると、例え復讐を抱いた相手とはいっても、少しだけ同情心が沸いたぞ」
「私も暗殺を生業としてきたが、人を溶かして殺したことはなかったな」
「マリー、話を聞いて出てきた感想がそれか?」
「流石は元僕の暗部部隊の隊長だね〜♪」
後ろから陽気な声が聞こえてきた。
「ようレイ」
「レン兄ちゃんこんにちわ♪じゃ~ん!」
レイが首から下げているカードを見せつけてきた。
「お?お前も25階層踏破だな、おめでとう」
「どんだけ強くても1階層からスタートだからねぇ、時間掛かっちゃったよ〜」
「いや、サリーとレイは本当に凄いぞ、俺から能力の貸与はされてないんだから、地球組は全員貸与してのチート成長だからな」
「ふふん、もっと褒めて〜♪」
「はいはい偉い偉い、2人とも少しくらいは能力貸与しておくか?」
「ふむ、私は貰っておこう」
「僕も〜♪損はないしね〜」
「レンさん…私もいいだろうか」
「おっとキルミもだったな、いいぞ、ツェファレン組は少し違和感が強いと思うが、頑張って慣れてくれ、しばらくは安全マージンを十分に取って、少し難易度を下げて挑め、地球組と同じ、全員に全能力2万な、貸与」
「うむ、久々の感覚だな、お前に鍛錬を頼んでいた頃を思い出してきた」
「ほ〜!初めてだけど凄い違和感だねぇ、中層くらいから慣らしていった方が良さそう」
「すげぇな、オレは浅層から慣らすわ」
因みにティルとリル、あとセイトとフキノなんかも、とっくに25階層をクリアしている、ティルは家族を、リルは影法師の部隊を連れて迷宮に挑み、潜在能力上げに励んでいる、ツェファレン組は帰って本物の魔物でレベル上げが出来るから成長が早いのだ。
「レン、このカードの話は?」
「ん?あぁ、そういえばそんな話をしてたな、このカードは月会費を取っている、月々銅貨2枚相当、1000円だ」
「ああ、それは知ってる、それも安すぎるがな」
「これを持っている限り宿は出入り自由、部屋もずっと残り続ける、カードにはお金を収納できる機能も付けた」
「それも聞いたな、私は金貨100枚分を銅貨にして収納したぞ」
「オレも同じだ」
「1千万円分か、流石は王様とその側近だな」
「それで?」
「月々の会費はカード内から自動で引き出されて支払いされる、支払いは月単位、カードの月会費1000円、一カ月に寝泊まりした日数掛ける1000円、バイキングを利用した日数掛ける500円、まぁカードの月会費なんて日当たりにすると30円程度だからどうでもいいんだが、その話は後にして、今現在でどれだけの人数がこの宿で寝泊まりしているか知ってるか?」
腕を組み考えるサリーとキルミ。
「う〜ん検討もつかん」
「1000人くらいか?」
「150万人だ」
「「は?」」
まさかの人数に、2人の思考が停止する。
「そして…そのほとんどがこの宿で寝泊まりしている、今この町はかつてないほどの活気に満ちあふれ、電車や道路などの交通機関、宿やホテル以外の娯楽施設、インフラ整備が物凄い速度で進められている」
「うむ、地球という所は凄まじいと感じたぞ、見上げるほど大きな建物、食べ物も豊か、ツェファレンとは技術力が雲泥の差だ」
「150万人がほぼ毎日寝泊まりして、食事もこの宿で済ませている、これだけでひと月700億弱の売上げだ、さらに冒険者カードの月会費が15億、これはここで寝泊まりしている150万人だけに限った月会費であって、冒険者カードの会員は全世界で1億人を超えている、これだけで一千億を超える、もろもろでひと月1800億程度の売り上げだな、金貨なら180万枚って所だ、更に他の諸々のサービス料金が上乗せされる」
「…驚いた、数の暴力とはこの事を言っていたのか」
「おい、暴力は違うだろ」
「もはや暴力だろ、180万枚?金の鉱脈が枯渇するぞ」
「地球にも貨幣はあるが、メインは紙幣だし、お金はカードに収納出来るからな、ギエスティ専用の紙幣を作ろうかとも考えている所だ、サリーも紙幣を作ったらどうだ?バレルやファニーを見習って」
「むぅ、キルミ、紙幣のモデルになっては…」
「嫌だぞふざけんな!烈王様がなれよ!」
「う~む…レンにするか」
「おい、なんで俺なんだよ、貨幣だってお前の横顔だろ、諦めてモデルになれよ、そんな綺麗な顔して何が恥ずかしいんだよ」
「そうだぞ烈王様!あんたがそれはもうブッサイクな顔してるんならオレも少しはモデルを考えるけど、そんだけ美しい顔しておきながら恥ずかしがってんじゃねぇ!オレが陰口叩かれんだろ!」
「う、うむ…ちょ、ちょっと恥ずかしいからあんまり責めないでくれ、それに私はもう王じゃない、王はお前だろキルミ」
あ、そういえばそうだった、今はキルミが王様だったな、忘れてたよ。
「まぁとにかく考えてみろ、嫌ならラルファかララにモデルを依頼すればいい」
「その手があったか!あの2人も東地区では有名になってきたからな、それもいいかもしれん」
「オレも頼んでみっか」
ラルファなら煽てればイケるかもな、頑張れキルミ。
「この宿の維持費はどんなものなんだ?」
「維持費は微々たるもんだよ、まずは建物の掃除が必要ない、修理も魔法で事足りる、各部屋の維持も客任せだから清掃やベッドメイクなんかも必要なし、電気や水道料金も俺の作り出す金剛魔鉱石で賄えてしまうから無料、ゴミも魔法の高火力で完全に燃やしたり、レイカが再利用の鬼と化してるからな、1ミリも出ない、掛かるのは人件費と食材費くらいじゃないか?食材だって半分以上ツェファレンから調達するからな、安いもんだよ、1番金が掛かるのがやはり人件費、現在この宿では3000人程度が寝泊まりしながら働いているが、だがそれでもざっと見積もって年間200億いくかいかないかってところだしな、全然黒字なんだよ」
食材調達は主にティルに任せていて、特にカインドの村人達が張り切って狩ってきてくれる、セイスが代表して納品しに来てくれるので大助かりだ、もちろん大きな収納袋も渡しているので、一度に物凄い量の食材が運び込まれる、中には見たこともない巨大な猪や牛なんかも運び込まれ、大きさは地球の像をも超える大きさだったりする、村人達のレベルも上がるし、狩った魔物も無駄にならない、ウィンウィンの関係だ、ツェファレンも昨年の溢れで魔物が増えているので尽きないらしい、持ってきてくれたら当然報酬も渡しているが、宿の儲けを一定量レンの収納に保管しておき、貸与でバレルへ両替えして渡している、セイスは金よりも酒をよこせと言い、フローラに耳を引っ張られて帰るのはもはやお決まりである。
だから、セイスは代表して来るんだろうな…
いつもこっそりお酒を渡してあげる、優しきレンであった。
「それでは金が貯まる一方だな、集めた金はどうするんだ?」
「半分は税金として国に支払う、国とはそういう契約を交わした」
「半分も!?多すぎやしないか?」
「まどろっこしいのは嫌いだからな、もちろん人件費やもろもろの経費を引いた額から半分だからな?」
「それでも多すぎるだろ」
「そういう国なんだよここは、何かといえば税金税金、別に力で解決しても構わんが、世紀末になっちゃうからな、流石にこの国全部を管理するのは無理だ、だから半分払うから好きにさせろと言ったんだ、事実上の特区、冒険者特区ってところか、ここは日本という国内にある別の国のようなもんだ、下手げに首突っ込んでくるなら覚悟しておけと釘は刺しておいたし、問題はないだろ、これからのここの発展を考えれば、むしろ涎を垂らして喜んでいるさ、何かあったら力も貸してやるって言ってあるからな…有料だがな、ふふふふ…」
宿で働く者には十分に給料も払っている、所得税や年金、健康保険税なんかも一切取らないし、働いた分は100%もらえる超ホワイトな職場だ、宿内で販売している物には消費税なんかも加算していない。
そもそも俺は消費税という言葉が嫌いなんだ、なんだよ消費に税金って…文面そのままなら金払ったなら税金を納めろって事だろ?意味わかんねぇんだよ、わざわざ領収書に消費税〇〇%とか記載して、店も店なんだよ、消費税があるからこの値段ですよ〜ってアピールすんのが腹立つよな、もともとその値段を設定してるのはお前達店側だろって、それなら税金が高くなったので値上げしますって伝えて、レシートに値段だけ記載したほうが誠実味があるんだよ、税抜きいくらとか、税込みいくらとか、いちいち面倒くせぇ、消費税ってのは税収が景気に左右されないとか訳わからんこと言って、景気が消費税に左右されてもいいって言ってるようなもんだろ、ホント終わってるよな…おっと、少しヒートアップし過ぎた。
とにかく、この辺は娯楽施設も増えてきてるから経済も発展してきたし、冒険者たちも息抜きが出来るようになってきた、魔法と科学の融合は凄まじいよな、建物の建つスピードが異次元レベルだよ。
「余った金で魔物の素材を買い取る地盤を作る予定だ、さらに強い装備なんかを作る職人の集まる職人街なんかも作りたいな」
「冒険者ライセンスの料金を取ってる以上、世界中のあちこちに迷宮施設を作らなきゃならないからねぇ、宿の無い施設にするつもりだから完全に冒険者ギルドだね、そのうち一気に進めるつもりだから期待してて♪日本国内もあと5個くらい作りたいし」
「うちの創造神様が逞しすぎて泣けてくる」
現在レイカが進めている仕事、全世界へ迷宮施設を普及させること、すなわちそれは冒険者ギルドの立ち上げを意味する、日本の総理大臣、各国の大統領達と話を進めているのだ。
ステータスの恩恵は身体能力の強化だけに限ったものではなかった、言語の統一化、ツェファレンでは一つの言語しか使用していない、地球もステータスを見れるようになったその日から、全世界の人々が謎の力により各国同士で会話が可能になったのである。
これにより一気に迷宮施設普及の話が進みだした、しかし言語が統一されても文化は変わらない、大きな反発を見せる国も中にはいる、今まで世界の強者だった国はなおさらだ、そういった国には迷宮施設を作らないと毅然とした態度で接しているレイカ、気に食わないなら攻撃でもなんでもしてこいと煽る始末、返り討ちにする気満々である。
なんか、レイカもだんだん俺に似てきたよな…
そんな国のお偉いさん達は、迷宮を設置して欲しい民衆達から、大クレームの嵐が直撃しているらしく、昼間は大規模デモへの対応、夜は魔法による攻撃に怯える日々を過ごしていると聞いている、そろそろ魔法に対する考えを改める頃かと、観念する国も出てくるだろう、魔法攻撃は証拠が残らない、逃げられると犯人を特定し辛く、なかなか解決しないらしい。
「はぁ、凄い先を見据えて行動しているんだなお前達は」
「サリー、それはちょっと違うぞ、俺たちは好きにやってるだけだ、別に先を見据えてるわけじゃない」
「そうだよ〜、こういう施設を増やして冒険者ギルドを作りたいねぇ、面白そうだし、みたいな?それだけだね〜」
「実際それしか言ってないだろ?特に目標も何も無いしな、身内が楽しく過ごせる世の中になればいいんだよ」
「はははっ、レンらしいなっ!よしっ、腹いっぱい食ったし私は貸与の違和感でも消しに迷宮に潜ってくるとしよう!」
「オレも行くぞ烈王様」
「もう王はやめろキルミ王よ、私はサーレック、サリーでいい」
「ダメだ、オレの中ではいつまでも烈王様なんだ、頼む、そう呼ばせてくれ」
「むぅ、頑固者め、公の場では気を付けろよ?」
「分かった、気を付けるよ」
いや、ここも公の場なんだが?
2人はお互いを小突き合いながら楽しそうに食堂を出ていった。
「僕もご飯食べたら違和感消しにダンジョンに潜らなきゃ〜」
「そういえば、レイカ、マリー、レイ、3人は地元に行かないのか?」
「それは…」
「兄様…」
レイとマリーはうつむいてしまい、レイカが口を開く。
「レン、行ったんだよ…ちょっと前に3人でね、私の家には行かなかったけど…ちょっと事情があるからね」
「そうか…その様子だと良い結果じゃなかったんだな、この結果を招いたのは俺だ、聞かせてくれるか?」
「うん、はは…と言ってもそんな聞かせるほどの内容じゃないよ、レンのように代わりの人と入れ替わってた訳じゃないし、尋ねてどちら様?って言われた、ただそれだけ…」
「いちおう事実を伝えたりとかは?」
「する勇気がなかったよね…」
「お前達はそれでいいのか?」
「記憶がなくても家族には変わりないからね、こっそりとサポートはしてあげたいけど…」
「言え」
「え…」
「正直に伝えてみろ、俺がフォローしてやる、ダメだったら…その時はこっそりサポートしてやればいいさ」
「…兄ちゃんお願いします!僕は…また家族と仲良くしたいんだ!たとえ思い出してもらえなくても」
「私も、お父様、お母様とまた仲良くしたい、頼めるだろうか、兄様」
「私は…うん、いちおうお願い出来るかな?ごめんね面倒かけちゃって」
レイカだけ妙に遠慮がちだな、家族と仲悪かったのか?
「みんなには世話になってるしな、まぁそうじゃなくても、もう俺の身内なんだから当たり前だろ、面倒なわけないだろうが、善は急げだ、飯食ったら早速行こうぜ」
「ありがとう兄ちゃん」
「おう、お前は早く飯取ってこい」
「は~い♪」
「兄様、うまくいくだろうか…」
「分からん、失敗してもいいじゃないか、お前には俺がいるだろ?」
「うん、カリン姉様も、レイカもレイもいるしな、蓮花達という可愛い妹達もできた、でも、もし家族とまた仲良くなれたなら、その時はよろしく頼みたい」
「分かったよ」
午後からの予定が決定した、午前中、朝は母のダンジョン踏破立ち会い、その後は迷宮化騒動、ルード被告人の裁判で箱庭へ、午後は攫われ転移組のフォロー、相変わらず忙しい毎日を過ごしているレンであった。