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163話 マリーとレイカの想い

レンは予想していた、魔物も生き物だと騒ぎ出す動物愛護の精神に溢れた偽善者の出現を、別に愛護の精神は悪くはないのだ、それを他人に押し付ける者たちが気に食わないと思っているのである、身近な生き物、それこそ家族や知人、ペットだけを愛護していればいいのに、動物を殺すなと世界中へ向けて発信し始める、ましてやそういった団体なんて以ての外だ、そもそも世界は弱肉強食、動物だって生きるために他の動物を殺して食べる。



人間だけはその行為が許されないとか意味が分からん、確かに嗜虐心だけで動物を殺したり、殺人を犯すもやつもいるけどな、そして中にはそんなやつにまで慈悲をかけようとする者までいる始末だし。



『出てこい相棒!出番だ!』



レンの指輪から2体の魔物が出てくる。



『ワォーン!主よ、久しぶりだな、おお♪ここは魔力に満ちた良い場所だな!』

『主様〜、おはよ〜♪なんかいっぱい人がいるね〜』

『お、お兄ちゃん!?なにこの可愛いの!』

『でっかいワンちゃんだよお姉ちゃん!スライムもでっかいね〜、真っ白だぁ!』

『そ、そうだね、聖愛は少し落ち着きなさい』

『フェン、これを見ろ、字は読めるよな?』

『ふむ…容易じゃな』


:えぇぇぇ!!

:魔物が喋った!

:フェンリルだ、すげぇ!

:やっぱり感情が、貴方はそんな魔物を殺したんだ!

:そんな事どうだっていいよ

:どう責任とるつもりなんですか!

:責任とか、何目線なんだよw


『こいつだ、魔物を殺すなってしつこいやつがいるんだよ』

『ん?なんでダメなんじゃ?』

『聞いてみたら?』

『ワフッ、この機械に話し掛けるのか?』

『いや、あっちだな』



葉跡の方を指差すレン。



『ふむ、どれ…』

『え…えぇ、ちょ、これ…近い近い〜!』



指を差された葉跡の方へズンズン近づいていくフェン、大きさも30mのままなので、迫力は先ほどのオーガの比ではない。



『ふむ、人の子よ…』

『は、はひぃ…』

『それに喋れば良いのかの?』

『はいぃ〜、数千万人の人間が見ておりますので〜』

『ほう、凄い魔法じゃの、どれ、魔物を殺すなと言っとる者どもよ、なぜじゃ?魔物は人間の天敵なはずじゃが、変わった人間もおるものじゃ、ツェファレンにはいなかった人種じゃな、意見を聞かせてほしいの』


:魔物からまさかの質問w

:これはつらい

:魔物側の質問じゃねぇw

:なんで魔物さんがそんな事を聞くんですか!死にたいとでも言うのですか!?

:おお〜、勇気あるねぇ


『なるほどの此奴が…ふむ、そんな事はないぞ、そう簡単に死にたくはないのじゃ、それはお主も変わらんじゃろう、やはり変わっとる』


:なんでそうなるんですか!魔物は感情があるんですよね!?


『ないぞ』


:え、じゃあ貴方は?


『我はある、魔物は無い、元々は我も感情が無かった、その時に死んでいたならばどうでも良い、魔力に還るだけじゃ、人間とは違い魔物は輪廻の輪に乗り神の下へ流されんからな、地上に吸収され、また新たな魔物として生まれ変わるだけじゃ、大した話じゃなかろう、人間とは死の感覚が違うのじゃ』


:輪廻!?

:魔力還りってそういう

:そんな…

:公開処刑で草


『我もまた他の魔物を食らうでの、人間も魔物をどんどん討伐したほうが良いぞ?人間は魔物を殺さんと強くなれん、魔物は人間を食っても魔物を食っても強くなれる、魔物はステータスがないからの、魔力量が強さのステータスじゃ、ふむ、じゃがツェファレンの魔物とこの世界の魔物は、どうやら生まれてくる目的が違いそうじゃ』

『え?そうなのか?』

『うむ、それは…』

『ちょ~っと待ってもらっていいですかねぇ…え〜っと、お名前は〜』

『フェンじゃ』

『僕はライト〜』

『フェン様〜、ちょ~っと待っていてもらっていいですか?』


:なんで邪魔すんだよヨミちゃん!

:いいところだったのに!

:本当だよ!


『いや、気絶しちゃってるんだよ!ハーちゃんが!』

『あ、本当だ、回復』

『…はっ、きゃあ!』

『精神貸与、葉跡落ち着け』

『はぁ、はぁ、はぁ…あ、あれ?心が落ち着く〜』

『続きを喋っても?』

『いいわよ、ワンちゃん♪』

『葉跡、こいつの名前はフェンだ』

『フェンちゃんね、よろしく〜♪』

『うむ、よろしくの、人間よ』



いや変わりすぎだろ、精神ってすげぇな…効果を間近で見たのは地味に初めてかもしれん。



『それで、ツェファレンとの違いじゃが、ここの魔物は人間に対する恩恵じゃな』

『恩恵?』


:恩恵?

:恩恵…

:え…

:とてもそうは見えませんでしたよ!

:こいつ、いい加減しつけぇな

:さっきの話でもう納得しろよ

:ホント…恩恵に見えなかったなら討伐してもいいのでは?

:さすがにイライラしてきた

:なおさら殺したらダメじゃないですか!


『いや、殺さなきゃダメじゃ』

『その心は?』


:え

:4号信者状態w

:クソワロタ

:クリーンヒット!

:その心は?

:教えてフェン様!


『神がそのために生み出したものだからじゃ』

『殺すために?』

『そうじゃ、魔物としての性質は変わらぬ、じゃから、殺さぬ理由はないという事じゃな』

『うん、なんとなく理解した』

『さすがは主様じゃな、説明は以上じゃ、我もあっちに混ざってきても良いかの?』



遠くの方で蓮花達がライトと鬼ごっこをして遊んでいるのだ、フェンも混ざりたいのだろう。



『いいぞ』

『少し体を動かすか、転移』

『と、言うわけだから納得しろみんな』


:消えた!

:転移!?

:いーやいやいや

:それはないわぁ

:うむ、わからぬっ

:結局どういう事?


『恩恵ってのは…』

『頭の悪いやつらだな』

『マリー?』



勿体つけて説明に入ろうと思っていた所へ、まさかのマリーがカットインしてきた、我慢できなくなったのだ、レンの悪い癖が本当に悪い方へと働いてしまった瞬間である。



:4号ちゃん!

:説明といえばこの人

:1号様が今なんか…

:お願いします

:納得する説明して下さい!

:なんで急に偉そうなんこいつ?

:死にたいんじゃない?

:4号ちゃんの強さを知らない馬鹿なやつw

:人を見た目で判断するクソで草


『つまり地球の魔物とは、人間を成長させるために神様が我々に贈ってくれたって事なんだよ、だから恩恵なんだ』


:一発で理解した

:めっちゃ簡単な話だったよ!

:な〜る

:それでは魔物が可哀想じゃないですか!

:お前、いい加減コテハンつけろや


『お前は冒険者なのか?』


愛護っち:違いますけど

愛護っち:え!?なんで名前が!?

:運営に名前つけられてて草

:目付けられちゃったねぇ

:世界の理に逆らうからだよ

:運営も怖がる神様達


『愛護っち、お前は長生きしないだろう、もう現実に迷宮化は起こり魔物が溢れた、人間を見るや否や襲い掛かってくるのは異世界と同じだ、そんな事が全世界中で起こった時、お前は誰にも助けてもらえなくなる、魔物は感情がないと言っていただろうが、フェンやライトは特別なんだ、弱い魔物は感情を持たないんだ、なんでお前は人の話を聞かない?もしもただの生き物だったら、もし感情があったら、こちらが何かを言えば、もしももしももしも…それはもしもの時が起こってから騒げ、お前の妄想に付き合って何人の人間を殺す気だ?それとも完璧な解決案でもあるのか?どうせお前みたいな者は、ただただ生き物が可哀想だからっていうどうしようもない理由で、神の存在すらも否定し始めるんだろう、自分が神にでもなったつもりでな、そう他人から言われたら、別にそこまで言ってないと騒ぐのだろう、心で神は否定するくせに、それは神を殺すのと同じだ、私も別に神を信仰しろと言うわけじゃない、神も生き物だ、神という種族の生き物で絶対的な強者なんだよ、優しくしてくれているうちに考えを変えたほうが身のためだぞ?生き物が死ぬのが嫌なら、革製品のものは身につけてないだろうな?家にも置いていよな?虫は殺さないよな?細菌は?ウイルスは?まさか殺さないんだろうな?全て生き物だぞ?肉なんて食べてないんだろうな?魚は?植物は?魔物を生き物と言うんだ、植物だって生き物だ、まさか食べてるわけないよな?』


:やめたげて

:そのへんで…

:やめて、もう愛護っちのライフはゼロよ!

:4号ちゃん怖っ

4号信者:さすがです4号様

:まぁこれだけ楯突くんですから解決案くらいはあるんじゃないですか?愛護っち〜?

:お~い、消えた?

:解決案くらい上げてけばいいのに

:都合が悪くなれば逃げる程度の愛護だったって訳だ


『マリー、ありがとう、ずいぶんヒートアップしてたな』

『私は、友達を魔物に殺されたと思っていた20年間があった、異世界へ一緒に飛ばされたたった2人の親友のうち1人が殺されたと思っていたんだ、本当に辛かった、だからといって全ての魔物が憎いとか、絶滅させてやるとかそんな事まで考えている訳じゃない、魔物っていうのはとにかく凶悪なんだ、人間を魔力の塊としか見ていない、だから簡単に襲ってくる、愛護っち…聞いているか分からないが、親しい家族、友人、知人、誰かが魔物に殺される未来が来るかもしれない、その時お前は同じ事を言ってられるのか?愛護の精神はとても素晴らしいものだ、だが度が過ぎれば他の感情を捨てているとも言える、どうかよく考えてほしい…もちろん他のみんなもだ、以上だ、失礼した』

『うんうん、ありがとうなマリー、よしっ、俺達も体動かしてこようぜ』

『うん』

『寧々も〜♪』

『音乃も〜♪』

『じゃああとは任せたぞヨミちゃん』

『は、はい…』


:なんか…ごめん

:どうした?

:とにかく謝りたくなったw

:もっと頑張らなきゃって思った!

:ねぇ、20年って…人生のほとんどじゃない?

:4号ちゃんは何歳?

:でも結局殺されてはなかったんだね

:良かった…


『その友達って私の事だよ〜♪』

『れ、レイカさん!?』

『ははは〜ちょっとごめんね、異世界にね、私とマリーと、あと一人の3人で転移させられたの、勇者としてね、それである時大きな魔物討伐の話があって私だけ参加したって訳だ』


:なるほど

:友達って2号ちゃんだったのか

:なんで死んだことに?


『デビル・ディアーっていう魔物でね、フェンより少し小さいくらいの、それでも十分大きな鹿の魔物だったんだけど、当時の私では全然敵わなくてね、普通の魔物じゃない、人間を殺すのに特化した強化個体だったみたいだね、私は必死に戦った、でも私だけが生き残った…参加した数十人の命と引き換えにね』


:えぐぅ

:それはトラウマになる

:どんな状況?

:自爆魔法?


『マリーも言ったよね?神様も生き物だって、当然悪い神様もいるんだよ、そんな神様に目を付けられたみたいでね、そのための討伐隊だったんだ、私だけが目的だった、他の人間はただの生贄、気を失った私は目を覚ました時には洗脳されていて、その後20年間物作りをさせられていたんだよ、それで!レンに助けられたって訳だ〜!』


:うぉぉ!1号様〜!

1号信者:素晴らしい!

:こればかりは同意


『まぁ途中で洗脳は解けてたんだけど、私自身が見事に引きこもりになっちゃってね、お城から出られなくなっちゃったの、その間もかなりの人間がデビル・ディアーの犠牲になったみたい、他にも家族を失った人達がたくさんいる、そんな強化個体が異世界には何体もいるんだよ、もちろん感情なんてものは持ち合わせてないし、話で解決しようとするものなら一瞬であの世行きだから、まぁ地球にそんな個体が発生した時は、愛護っちに任せようかなって思ってる、ねっ、愛護っち♪』


:ちょw

:途中までいい話だったのにw

:強化個体担当愛護っち

:空気をあえて読まないそのスキル

:さすがに厳しくない?

:大丈夫だろ、丁重にお帰り頂けばw

:丁重w


『強化個体対策はこれでバッチリだね♪因みにどこに逃げてもレンのスキルは誰でも見つけ出すからね、それで世界中の魔法犯罪も検索して天罰を下しに回ってたんだから、頑張って鍛えてね愛護っち♪あ、でも魔物を倒さなくちゃレベル上げられないのにどうするんだろうね〜、まあいっか♪』


:鬱確定で草

:これは、内心オコですな

:1号様を侮辱されたからかな?

:確かに、少し圧を感じる

:強めの圧だね


『はい、と言うわけで…神様達でした〜』


:あ、ヨミちゃん…

:いたんだね

:テンションw

:そろそろお開きかな?


『よしっ、気合いを入れろ俺!はーい皆さーん!今日もたくさんのご視聴ありがとなー!魔物の脅威が少しでも分かってもらえたら嬉しいぜっ!魔物のご討伐は、用法・用量を守って慎重にな!』


:薬かよw

:きちんと対策を立てて、独り占めとかしないようにって事だな

:それな


『また次回をお楽しみにな!いいねとチャンネル登録もよろしく!またな〜!』


:ありがとー!

:乙

:楽しかったぞー!

:お疲れ様でした

:乙でした

:さて、親を説得だ!



―――



「今日もありがとうございました!」

「おう、じゃあそろそろ迷宮の中に行ってみるか?」

「はい!」

「お~い、そろそろ追いかけっこはやめて行くぞ〜、冒険者諸君も待たせて申し訳ない」



話していた者たち、休んでいた者たち、全員がビシッと立ち上がり、いえいえとか、そんな事は、などと口にしている。



『ふむ、迷宮とか言っとったの、入るのか?』

「ああ、なんか気配がないけどな」

『そうよな、多分何もないぞ』

「やっぱりか〜、な~んか違和感があるんだよなぁ」



レンの違和感はよく当たる、トラブルの前兆を嗅ぎ分ける能力、これまでも違和感を感じとった時は何かしらのトラブルが起こっている。



『違和感?』

「なんか今回の迷宮化は雑というか、本当に神様がやる事なのかなぁってな」

『ふむ、張ってある結界は神の手によるものじゃろうな』

「結界は?」

『うむ、この結界、空まで丸く囲っている以外はツェファレンの危険区域のものと性質が酷似しておる、迷宮化は…確かに雑じゃな、迷宮内の魔物が全て外に出てくるなんぞ、神のやる事ではあるまい』

「ふ~ん、リスクリワード…む?なるほどねぇ、そういう事か…」

『何か分かったのか?』

「まぁな、よし…すまんみんな!今回の騒動は神様は関係ない!」

「レン、どういう事なんだ?」

「すぐに分かる、まずは冒険者諸君!これからここは少し危険な事になる!すまないけどギエスティに戻ってもらうから、続きは黄泉がえりチャンネルでも見ていてくれ!」

「「え!?」」



城と葉跡は、たった今配信を終わりにしたばかりなのに、またなの?と驚いて声も出せずに固まった。



「よし、転移」



冒険者達が敷地内から消える。



「城、葉跡、準備だ」

「ちょ、ちょっとレンさん、これから何が?」

「少し危険になるって、私達もいないほうが…」

「大丈夫だよ、2人くらいなら守れるさ」

「そういう問題!?」

「それで…配信準備をすればいいのですか?」

「おう、またとないチャンスだ、カリン!レイカ!マリー!」

「うむ!」

「どうしたの?」

「兄様、何が起こるんだ?」

「ついにこの時がきたぞ…復讐の時だ」

「まさか…やつが?」

「なるほど〜、だから魔物が外に行こうと全部出てきたのかぁ、たちの悪いことやるねぇ」

「それを神様が結界で食い止めたと…」

「そうだ、しかもやつ自信も結界に閉じ込められた…ふふふふふ、まさかここでクライマックスが来るとはな」

「気合いを入れるぞ!蓮花!あたしのサポートに付け!」

「じゃあ私は可憐ちゃん♪」

「必然的に聖愛だな、こい!」

「「「はい!」」」



いい子たちだ、黙って理由も聞かない、多分薄々感づいているんだろうな。



「刻音はフェンと一緒に城と葉跡を守れ」

「了解…」

『ワフッ!』



フェンが鳴き、その背中の上から刻音が返事をしてきた。



お前ら仲いいね…



「ライトは母ちゃんと義父さんを頼む」

『うん♪分かったよ〜まっかせて〜♪』

「よろしくね、ライトちゃん♪」

「心強いなぁ、昔からスライムは最弱か強敵の2種類だからな、ライトは強敵のほうか〜、カッコいいなぁ」

『僕カッコいい?わ~い♪』



義父さん、さすがはファンタジー慣れしているな、褒め上手だ。



「さて、まずは姿を現して頂こうか、カメラスタンバイは?」

「バッチリでーす!」

「よし、よしっ!頑張れ俺!恥ずかしがってる場合じゃねぇ!」

「本番行くよ!5秒前!4!3!2!」

「はぁーい皆さーん…」



ついにヤツとの最終決戦?を迎えるレンたち、あまりにも警戒しすぎて、能力のインフレが限界突破していることを忘れてはしゃぎ過ぎていた、果たして…相手の運命やいかに!

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