15話 異世界へ
とうとう、異世界ツェファレンへと向かうときが来た!
「なあティア」
「なぁに?」
「そろそろツェファレンに行く頃だと思うんだけど、言語とかって大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、そこはレンの嫌いなテンプレだから」
「いや、テンプレ自体が嫌いなわけじゃないんだが、まぁティアがそう言うなら大丈夫か」
「あ、でも見た目と魔力は偽装したほうがいいかもね、鼻くそに見つかると厄介だから、偽装してあげようか?」
「今は一時的に解除してるけど、また候補者って事になるから、お互い殺せないんだろ?」
「でも見つからないほうがいいんじゃない?殺せないけど痛めつけることはできるから」
そうか、まぁそうだよな。
「そうだな、ありがとうそこまで気が回ってなかったよ、頼んでいいか?」
「うん♪じゃあ、はいっ、チュッ♡」
おでこにキスされた。
「今のは必要なアクションなのか?」
「ないしょ〜♪」
まぁ役得だからいいか、ありがとうございます。
「これで偽装はできたのか?」
「うん、完璧だよ、超イケメンになってる」
おい、今までがイケメンじゃなかったみたいなことをさらっと言いおって、まぁイケメンじゃないことは俺も分かってたんだけどね、けどね!
「この偽装はいつまで保てるんだ?」
「レンが自分で解除しない限りいつまでもだよ」
さすがにそこは神様だな。
「さてティア、しばらくお別れだな、ありがとう、お世話になった」
「うん、レン、行ってらっしゃい、楽しんできてね、私はレンが死ぬまでお昼寝してるね」
いや言い方、まぁ神様だしな…しかし、少しだけ…寂しいな…
「なでなでしてあげようか?」
うん、お願い。
口で言うのは恥ずかしいので、心でお願いした。
「まったくおこちゃまでちゅね〜、なでなで」
うむ、子供扱いだが、ティアからしたら子供みたいなものだ、くるしゅうない。
なんせ、数千年も管理人候補者を待ってたんだ、そりゃお昼寝で2年とか寝るわな、もはや昼寝じゃねぇけどな。
「ありがとう満たされたよ、あとどれくらいだ?」
「うん♪あと、十数分ってところだね」
「どうすればいい?」
「大丈夫、何もしなくてもここに転移してくる前の場所に戻るから、ごめんね、本当は人間がいる所に送ってあげたいけど…」
「いいよティア、大丈夫、俺は寿命を全うする運命なんだろう?」
「うん、でも地球じゃないからどうなるか…」
「そうじゃなかったとしても別にいいさ、たとえすぐ死んでも、その後ティアにまた会えると分かってるだけで十分なんだよ、神の器は育たないかもだけど」
「もう、レンったら、もう、もうもう!」
ポコポコとレンの胸を叩くティア。
あぁ!二世帯住宅がっ!
あんな事があったのに、俺は幸せ者だな。
頑張らなきゃなぁ、あいつらにどんな嫌がらせをしてやるか…クックック。
ティアのためにも鼻くそも丸めなきゃならんしな。
「理由を知らない人が聞いたら、私のために鼻くそ丸めるって何だよってなるねっ♪」
「ぶふっ、ゴホッゴホッ」
確かに、お前のために鼻くそ丸めておいたぞ!って言われたら何のこっちゃ分からんわな。
「わぁ♪ありがとう!私のために〜、ってどんなサプライズだよ〜!お前とはやってられんわ〜!ってね♪」
「ぶっ、やめろ、笑わせるな、」
ふぅ〜、ふぅ〜、くそぉ、ティアとの会話は楽しすぎるな、ここを離れたく無くなるから、少し落ち着こう。
「最後に何か注意点とかないか?」
「う〜んそうだねぇ、あ、そうだ、創造ポインツは潜在能力を超えて、能力にポイントを割り振れるけど、あんまり潜在能力と、割り振ったポイントに乖離があると違和感が出るかもね」
「そうか、気を付けないとな」
「レンは大丈夫だと思ってるよ」
「なんでだ?」
「だって馬鹿みたいに割り振ったりしないでしょ?」
「あぁ、最初は分からないけど、あまりポイントも使いたくないしな、余裕が出来れば、必要にならないと振らんさ」
「うん、そこは信用してる、良く考えるレンのいいところだね〜」
―――――
その後ティアとしばしの間、とりとめのない最後の会話を楽しみ、レンは音もなくスッと箱庭から消えていく。
消える瞬間見たティアの瞳は…少し潤んでいた。