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158話 迷宮化②【それぞれの実力】

ティアからの朗報とゴブリンを持ち帰ったレン。



「ずいぶん遅かったねぇ、あっちに何日いたの?」

「レイカ、地球とツェファレンの時間経過が同じになったんだよ」

「え!やったね〜♪これで悩まされることなくなったね」

「ああ、まぁ魔物の調達に少し時間掛かるけどな」

「大した問題でもないね♪」

「そういう事だ」



レンにとってはツェファレンも故郷、地球にいる間、ツェファレンの時間がどんどん経過してしまうのが心残りであった。



「ティルちゃんとか、泣いてないか心配だもんね」

「まぁ最近会ってきたばかりだから大丈夫だとは思うけど、あっちにも朗報を持っていって謝らなきゃな」

「朗報って別の?」

「内緒だ」

「えぇ〜、いいじゃん、教えてよ〜」

「ダ〜メ〜だ、楽しくないだろ」

「ちぇ、どんどん神様みたくなっていくんだから、まぁいいや、楽しみにしておくね♪」

「おう、悪い話にはならないから期待しておけ」



少し話していると新入りたちがダンジョンより帰還してきた。



「ただいま、話は終わったようだな、お?レン、ゴブリンか、準備がいいな、よしお前達!リアルな戦闘訓練開始だ!」

「カリンはスパルタだねぇ」

「姉様、今囲いを作るぞ」

「頼む」

「ははは…カリンとマリーは見た目が同じポニーテールで似てるからな、まるで姉妹みたいだ、スパルタ姉妹だな」

「何を言っているんだレン、お前のシゴキに比べれば軽いものだろ」

「そうだっけ?忘れたな」

「ふん、都合のいい脳みそだな」

「ははは、やり過ぎるなよ、4人とも目が死んでるから」

「「「「は、ははは…」」」」



擬似的とは言え初めて魔物との戦闘を体験した4人、蓮花達のように才能に溢れているわけではないので、相当苦労したのか、明後日の方を見て力なく笑っていた。



「開始!」

「避けろ避けろ!さっきのを思い出せ!」



カリンとマリーのシゴキがはじまる。


4人は次から次へと投入されるゴブリンに諦めを超え、次第に狂気を孕ませていった、特に杙凪がヤバかった。



「オラァ!こいやぁクソゴブリンがぁ!ぶっ殺してやんよ!」

「ね、姉さん、少し落ち着こう?」

「あんた何言ってんだ!そんなんじゃこれからの時代生き残れねぇんだよ!」

「さ、撮影したい…これ絶対バズるよ」

「やめておけ葉跡、俺はまだ死にたくない、俺、あの時殺されなくて良かった…」



杙凪怖ぇ〜、何が引き金になるか分からんな、ってか、杙凪のほうが姉貴だったのかよ、剛志…頑張れ。


戦闘訓練が一息ついたら、レンが買ってきていた昼ごはんを皆で食べて、訓練は午後の部へ、4人は再びカリンとマリーに引きずられ、地獄の扉の中へ消えていった。



「可哀想に…みんな頑張れ」

「今を耐えれば大丈夫だ、この魔力時代の中でも一線を画す存在になるんだ、きっと良かったと思える時がくるさ」

「そうだねぇ、それにしてもあの子たちはどこまで行ったのかなぁ?」

「そういえば…リスクリワード…あっちの方だなリスクリワード10km…あれ?50km…ヒットしねぇ…県外まで行ってるぞ、何やってんだよ」

「楽しくなっちゃったんだね」

「聞いてみるか、おーいお前達聞こえるか〜?」



腕時計で3人に呼びかける。



『お兄ちゃんだ〜♪なぁに〜!』

「お前らどこまで行ったんだー?」

『え〜っと…人がいっぱいあるところ〜!』

「絶対東京だろ…暗くなる前には帰ってこいよ〜」

『ははは…バレちゃったかぁ、は~い!』

「よし、まぁこれで大丈夫だろ」

「自由って感じだね」

「いじめから解放されたばかりなんだ、好きにさせればいいさ」

「そうだねぇ、さてっ!こそっとダンジョンの難易度でも上げようかな、うふふふ」



お前も自由か。



本日はダンジョンを1時間、レベル上げを30分のセットを午後だけで計3回、全部で4セット繰り返してお開きとなり、成果は、浅層第2区のビッグボアを4人がかりで何とか倒せる、と言ったところ。

 

神園家、紫水家の面々と比べるとかなりペースが遅いが、実はそれでも驚異的なスピード、ツェファレンのセイスラードは、レンと会う前までは30歳という年齢で、男数人で数日かけて1体のボアを狩っていたのだ、たった1日で狩れるようにするなんてチート以外のなにものでもなかった。



「ハァ、ハァ…死ぬ…」

「無理、もうムリ〜!」

「きょ、今日はもう終わり…です、よね?」

「あなた達!だらしないわよ!」



城、葉跡、剛志の3人はギブアップ、杙凪は一周回ってハイになっていた。



地球も異世界も女は強いな、なんか魔力との相性でもあるのかなぁ、まぁ葉跡も女だが…



「今日はここまでだ、恐らくこの地球でもトップ層に入った事だろう、というか俺たちを除けば確実にトップだろうな」

「ははは、やったぞ!俺はやったんだ!」

「城、何を達成したような事を言っている?スタートラインがギリギリ見えてきただけだ、まだ立ってもいないぞ、大丈夫だ、死なないギリギリを見極めるのは得意だ」



レンの口から無意識にスパルタ発言が飛び出した。



「ほらなお前達、言っただろ?あたしたちが面倒見ているうちはまだ天国だと」

「望むところよレンさん!私はまだまだいけるわ!」

「杙凪はいち早く覚醒したな、情けないと思わないのか男ども!女を守るのは男の役目だろ!しっかりしろ!このままじゃ女に守られる情けないやつになるぞ!」

「「は、はいぃ!!」」

「え、私女…」

「残念ね!私は男どもには負けないわ!まぁ安心して、あなた達はお姉ちゃんが守ったげる!」

「いやだから私は女…」

「姉さん、よろしく…」

「まぁお互い頑張ってくれ、明日も朝一に迎え行くからな、しっかり疲れを取っておけよ」

「「はい…」」

「はぁ…」

「はい!よろしくお願いします!」

「転移」


城と剛志は疲れ気味、杙凪は気合い十分、葉跡はまとめて男扱いされてしょんぼりしていた。

 

4人を家に送り届けて、戻って雑談をしていると。



「「「ただいま〜!」」」

「お?やんちゃ達が帰ってきたな」

「皆さんお疲れ様です」

「あら?蓮花から聞いたのだけれど、新人さん達は帰ったの?」

「母ちゃんお疲れ、新人達は朝一から修行してたからな、さっき帰ってもらったよ」

「そうなのね、どうだったの?」

「まぁぼちぼちってところかなぁ、ここにいるメンバーに比べると才能が2段も3段も下だから、相当の努力が必要だな、1人だけ凶人がいるけど」



蓮花達3人が帰りがけに父と母を連れてきたのである。



「私達も頑張りましょうね紫水さん、若い子達に負けてられないわ」

「そうですね、もう日は落ちそうだけど、大丈夫かい?」

「大丈夫です、3人も大丈夫だな?」

「「「大丈夫です」」」

「しかし空を飛ぶのは気持ちいいわねぇ、私もどうにか飛べるようになれないかしら」

「母ちゃんは風が使えないから炎に乗るのが現実的かな、自分の作り出した炎なら燃えないしな、蓮花が得意だから教えてもらいなよ、フェニックスでも作って乗るのがいいんじゃないか?」

「任せてよお母さん!」

「頼むわね蓮花先生」

「うん!」

「お父さんは?風魔法使えるんでしょ?」



聖愛が父に質問をすると…



「いや、お、俺はまだいいかなぁ、そんな技術ないからなぁ、ははは…」

「あら?紫水さんやけに消極的じゃないですか、昨日まではあんなに張り合ってたのに」

「お父さん、さっき叫んでたもんね♪」

「そ、そんな事はないぞ!感動して叫んでいただけだ」



高所恐怖症か、徐々に鍛えて克服していけばいいだろ。



「まぁ、人には向き不向きがあるからな、今は得意分野を伸ばすことに集中しよう」

「そうね」

「そ、そうだなっ♪それがいい!」

「父さん…」



カリンが父を白い目で見つめる。



めちゃくちゃほっとしてるな、分かりやすい。



「さて、夜の部開始だ、どうするか、母ちゃん達は中層の魔物でいいかな?」

「そうねぇ、でも虫の魔物は少し苦手なのよ、それならカオスゴブリンとかのほうが戦いやすそうよねぇ」



まぁ、基礎能力を2万貸与してるからな、余裕だろ。



まさにハイパーインフレ、身内にはとことん甘いレン、それだけルードを警戒しているのだ。



「なら深層の魔物をとっ捕まえてくるわ、たまには違うのを連れてくるかな」

「あら、楽しみね、頑張らなくちゃ」

「レイカ頼む」

「は~い♪もう難易度は深層に設定済みだよ〜、行ってらっしゃい!」



ギーっと音を立て地獄の扉が開かれる。



「いい緊張感ね、さぁ行きましょう」



母親が先陣を切って地獄へ足を踏み入れていった。



「カリン、マリー、母ちゃんが迷惑かける、どうか面倒をよろしくな」

「兄様、心配無用だ、任せておけ」

「もうあたし達にとっても義母さんだ、絶対に怪我なんかさせん、父さんは保証しないけど」

「お、おい!頼むよ〜、可憐!聖愛!蓮花ちゃん、頼む、助けてくれ」

「「う〜ん…」」

「任せて下さいよ〜」

「蓮花ちゃんだけが頼りだよ〜」



わちゃわちゃ喋りながら皆も入っていった。



義父さんの扱い雑すぎない?まぁ少し調子に乗りがちだからな、痛い目でも見せようとしてるのかもな。



「大体2時間くらいは出てこないよな?」

「いつも通りならそうだね〜」

「少し箱庭に行ってきてもいいか?」

「ティア様とイチャイチャしてくるの?」

「違う、例の朗報のやつを片付けてこようかと思ってな、帰りに魔物を捕獲してくるよ」

「ああ、なるほどね、楽しみにしてるよ」

「レイカは、暇なんだろう?」

「全然だね〜、迷宮化に向けて色々考えなきゃだし、なんならここでも物作りは出来るからねぇ」

「いや、さっきは暇だって言ってたろうが、まぁいいか、じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい♪」

「転移」



―――



「いらっしゃい、さっきぶり♪もしかして褒美の内容決まった?」

「ああ、ティアに言っておけばいいのか?」

「うん、聞くよ♪」

「条件付きでもなんでもいいから、地球とツェファレンを自由に行き来できるようにしてほしい」

「おお〜、なかなかシビアな内容だねぇ、褒美にはふさわしいかも、それなら転移を覚えさせなくてもいいもんね♪」

「ん?俺の心を読むお前が気付いてなかったのか?」

「はっきり言うと、レンは神の器育つの早すぎ、もう心を読めなくなっちゃったんだ〜、凄いねっ」

「へぇ〜、良いことなのか?」

「良いことだよ、心を読めるのはあんまり楽しい事ばかりじゃないからね、ある程度対等になってきたねっ♪」

「いやいやいや、勘弁してくれよ、俺なんてまだまだだ」

「謙虚だねぇ、まっ、確かにまだまだだけどねっ」

「相変わらずストレートだなティア様は」

「ふふん♪それで?褒美はそれでいいの?条件付きで地球とツェファレンの自由な行き来、だったよね」

「そうだ」

「オッケー♪言っておくよ、まぁもう聞こえてると思うけどね」

「頼むな、さてっ、仕事でもするかぁ」

「お疲れ、頑張ってね♪」

「はいよ〜、転移」



久々南の深層にやってきたレン。



あいつを捕まえてくるか…絶滅してなければいいが、リスクリワード…いるな、俺がほぼほぼ絶滅させたと思ったが、世界振動で溢れたのか?まぁいい、いっちょぶちのめしてくるか。



―――



深層で魔物を捕獲し、広場に帰ってきたレン。



「ただいま、お?照明が設置されてる…明るいな」

「…」

「レイカ?」

「…」



作業台を出し、なにやらごっついメガネみたいな物をつけて集中モードに入っているレイカ。



「レイカただいま!」

「うわぁ!レン!?おかえり!」

「はっははは♪」

「もう!驚かせないでよねっ」

「なんかすげぇメガネ掛けてんなぁ、順調か?」

「うん♪せっかくなら冒険者ライセンスみたいの欲しいじゃない?できないかなぁって思って、発行するための機械を作ってるんだ〜」

「おお、いいなそれ♪まぁここは地球だしな、免許証みたいなサイズのカードでいいんじゃないか?」

「うん、そうしようと思ってる、素材を大量に仕入れなきゃ」

「なんでも言ってくれ、集めてきてやる、なければ作ってもいい」

「なら、階級ごとに素材を変えようかな〜」



こいつ、本当はファンタジーに詳しくないか?怪しい…



「な、なによレン、変な目で見て」

「いや?ちょっと眠いだけだよ」

「そう?それでそれ…なに?」

「ピグミーだ、グレーピグミーと言ってな、風魔法を使う魔物だ」

「ムッキムキの宇宙人じゃん、キモいなぁ…」

「近接もそこそこ強いし、いい訓練になるだろう」



レンの後ろには一部がガラスになっている鉄っぽい材質でできた箱が浮いている、中では数十匹のグレーピグミーが蠢いており、ガラスに向かって体当たりをしたり、風魔法を撃ったり大暴れしている。



「うわぁ…蠱毒みたいだね」

「おお、それもいいな」

「進化しちゃわない?」

「それならそれでもいいんじゃね?」

「個体数が減ったらみんなの訓練にならないでしょ」

「大丈夫だ冗談だよ、定期的に回復をぶち込んでるからな、死にはしない、あ、でも魔力切れは困るな…鍛錬にならん、気絶させるか、雷撃…」



ドゴーン!!



箱の中から雷のような音が聞こえ、ピクミー達は気絶してしまった。



「死んでないよね?」

「めいいっぱい手加減したから大丈夫だ」

「そう?それでライセンスカードなんだけど…」



迷宮化についての話を続けていると、ダンジョンに入った7人が帰ってきた。



「はぁ〜、死ぬかと思った…聞いてくれよレン君!みんな全然助けてくれないんだよ〜」

「ははは…まぁ元気そうで何よりです、みんな義父さんに期待してるんです、強くなってもらいたくて涙を飲んで静観してるんですよ」

「なるほど…そうだったのか!俺は頑張るぞ!」



えぇ〜、今ので騙されるのかよ、これは確かに心配になるな。



「い、いや、義父さん…」

「レン!」

「カリン?」

「グッジョブ♪」

「…」



オーケー、強くなってもらいたいのは本当みたいだし、このままでいいだろう、まぁいざとなれば助けるに決まってるよな、頑張れ義父さん…



「レン、それは…」

「ん?あぁ、これは新たな訓練相手、グレーピグミー、単体でもカオスゴブリンより強いくせに集団で襲ってくる魔物だ、なんと風魔法まで使うぞ」

「宇宙人ですか?」

「違うぞ聖愛、れっきとした魔物だ」

「何体くらいで襲ってくるの?」

「蓮花は何体くらいだと思う?」

「う〜ん…4体くらい!」

「残念、可憐は?」

「その中にいるくらいの数、数十体でしょうか」

「それも違う…正解は数百だ」

「「「えぇ、キモ…」」」



見事にハモったな。



「どこの深層なんだ?」

「カリンは知らなかったか?南の深層第1区だ」



おかしいな、セイトの小刀を打つ時にグレーピグミーを出したような気がしてたけど…俺がこっちに一週間いる間にツェファレンは1年経っちゃったから…いや、忘れるようなフォルムじゃねぇだろこれ。



「南の時はいきなり2区に行ったはずだ、レンが帰ってこない1年の間にも何回かは行ったが、こんなのはいなかった」

「そうなのか、そういえば初めて行った時は…箱に乗ってゴーレムに狙撃された時だったな、思い出した」

「そういえばガルディ組合長が言ってたね、筋肉質のさっぱりした魔物が入ったと、レンだったんだね」

「お?レイカ偉いな、ちゃんと組合に顔出したのか」

「まぁね、いちおう王様だしね」

「王様?」

「あぁ、母ちゃんは知らなかったよな、ツェファレンっていう別世界の、南の王様だったんだよレイカは」

「あらぁ、なら私は母后ねぇ」

「嫁の母って母后になるのか?まぁ元王様で今は違うけどな、マリーだって王様の側近、一番王様に近い立場だったんだよ」

「あらあらぁ、凄い人達なのね、私達は幸運ね」

「義母様、私なんて大したことない、レン兄様なんてその国々を平定して一つにまとめた人物だ、ツェファレンを実質支配しているに等しいんだよ」

「そうなの!?留守にしちゃって大丈夫なの?」

「え、いやぁ、まぁ優秀な人が多いからな、たまに顔も出すし大丈夫だよ」



じー…



レイカ、カリン、マリーからジト目で見られタジタジのレン。



「さ、さあ!戦闘訓練とレベル上げを始めるぞ!」

「誤魔化したな」

「うん、誤魔化した」

「兄様…」



なんか…同じような事が最近あったような、いやいや!考えるな!ゴリ押すぞ!俺は最強!



「ほらほら!さっさと準備しろ!」

「まぁいい、やるぞお前達、父さんと義母さんはまずは見学していてくれ」

「「了解」」



ピグミー1体を箱から取り出しコの字に設置された壁の中心に放り投げ回復を掛ける、まずは蓮花達3人で相手をしてもらう事にした。


3人は色々考えているのか、魔法を使わず接近戦で冷静に戦い、危なげなく勝利。



「確かにカオスゴブリンよりは強かったですね」

「そうだね〜、まぁでも一対一までなら余裕かな〜?」

「蓮花は近接戦闘が上手だよね、お兄さんに習ったの?」

「え?別に習ってないけど?」

「蓮花先輩凄いです、私は接近戦苦手です〜」

「私も苦手だよ、蓮花教えてくれる?」

「いいよっ!私にまっかせなさ〜い!」



やっぱり蓮花は天才肌だな、近接も魔法による遠距離もそこそこ器用こなす。



「よし、一気に3体いくぞ!集中しろ!」



ポイポイポ〜イ



「回復」

「ギ、ギギギ…ギィ…」

「キ、キィーー!!」

「ギャッホホホホー!」



新たに放り込まれた3体のピグミーが回復を受けて立ち上がり、3人を威嚇し始める。



「うわぁ、一匹だけ変なのいる〜」



両手の拳を地面について、明らかに猿のような動きをしているピグミーがいる。



「む?うっすら色が変わってるな、注意しろ!もしかしたら進化個体かもし…」

「はっ!」



ドゴッ!



「ゴフゥ…」



バキッ、バタッ…



「え?お兄ちゃんなんか言った?」



蓮花の瞬光による移動からの強烈なボディフックにより、ピグミーは吹っ飛び壁に激突、速攻倒されてしまった猿っぽい個体。



「い、いや…なにも」

「そう?」

「先輩危ない!エアウォール!」



ブォォォォ!



「ほぇー!」



2体のピグミーが蓮花に向かって風の塊を撃ってきたのだ、気付いた聖愛が風の壁で蓮花を覆って攻撃を防ぐ。



「むぅ〜!よくも先輩を〜、鎌鼬!」



ズバッ



「ギィィ!!ギィ…」



グシャ…



聖愛の鎌のような風魔法により1体が胴体を真っ二つに

切り裂かれ息絶えた。



鎌鼬はセイトも使っていたな…やはり生まれ変わりなだけはある。



「では私も、行きます!…砕石旋風!」



竜巻が発生し、ピグミーを引きずり込んだ、竜巻の中では細かい石が飛び回っている。



「ギギ!ギギッギギギギギギィー!!」



ドサッ…



無数の石礫がピグミーを乱打、体を宙に浮かせたまま踊り狂い、そのまま地面に崩れ落ちた。



可憐は意外と脳筋なんだよなぁ、もっと細やかな魔法を使うと予想していたんだが…流石はカリンの生まれ変わりということか…



蓮花は器用に戦闘をこなし、可憐は大胆で派手な魔法を好む、聖愛は意外にも繊細な魔力制御で、魔法に関しては一番扱いが上手い。



「勝〜利っ!やったねみんな♪」

「お姉ちゃん凄〜い!カッコよかったよ!」

「聖愛も蓮花を守って偉かったね」

「うん♪」

「聖愛ありがと〜、助かったよ〜」



3人で抱き合い勝利を称え合う。



「よし、お前達はもう十分だな」

「は~い、じゃあ接近戦の練習でもしてようか♪」

「うん、蓮花お願い、何があるか分からないから、ちゃんと習っておきたい」

「私も私も〜、お願いします!蓮花先生!」

「うむ!先生にまかせるのじゃ!あ、レイカお姉ちゃん」

「ん?なぁに?」

「ダンジョン行ってきていいですか?」

「いいけど、う〜ん3人だけじゃ心配だよね」

「レイカが付いていってやればいいよ」

「うん分かった、じゃあ3人とも行くよ〜」

「はい!あ、何気にレイカお姉ちゃんとは初めてかも〜」

「初めてだね、どんな戦闘スタイルなのか楽しみです」

「私は可憐ちゃんや聖愛ちゃん寄りだよ、魔法主体だね、近接はステータスに頼ったゴリ押しスタイルだから参考にならないかな」

「へぇ〜、じゃあ一緒に練習しましょうレイカお姉ちゃん!」

「ふふふ、そうだね、じゃあ行きましょう」

「「「はい!」」」



再びダンジョンに入っていってしまった。



「あいつらやる気満々だな」

「頼もしいよな、たまには私達の特訓にも付き合ってくれ、兄様」

「おうマリー、お前達もどれだけ強くなっているのか楽しみだな」

「がっかりはさせないぞ!」

「マリーは頑張りやさんだからな〜、よしよし」

「に、兄様、子供扱いは…うむむむぅ、兄様!!」



ぎゅ~



「スーハー、スーハー」



頭をなでなでしていると、我慢できなくなったマリーはレンに抱きつき、胸に顔をうずめ匂いを嗅ぎ始める。



「おお、こういうのも久々だ、前は少し怖く感じてたけど、可愛いもんだな」

「マリーは羨ましいぞ、堂々と抱きついても違和感なくて」

「姉様どういう意味だ!それこそ子供扱いだろ!」

「いいじゃないか、子供扱いじゃなくて特別扱いだろう」

「兄様そうなのか?」



抱きついたまま真下からレンを見上げ、顔を傾げてそんな事を聞いてくるマリー。



「そうだな〜、マリーはなんか…可愛いな」

「!!兄様…」



再び顔をうずめ動かなくなる、耳が真っ赤だ、レンとカリンは苦笑い。



「仲良くて何よりだけど、私達もそろそろいいかしら?」

「レン君、君は…マリーちゃんとどういう仲なのかね?」

「え、嫁になる予定ですけど、あとレイカも」

「はぁ?カリンがいるのにか?それは…」

「うるさい父さん!あっちの世界では、どうしても男の死亡率が高くて、男女比率が違うんだよ!強い男と結婚するのが一般的なんだ!こっちの世界の物差しだけで判断するな!それでもファンタジー脳の持ち主なのか!」

「か、カリン、そんなに怒らないでくれよ〜、俺の視野が狭かった、悪かったよ〜」

「ふんっ」

「まぁカリン、そんなに邪険にしてやるなよ、義父さん、何人を嫁にしようとも誰かを蔑ろにしたりはしません、全員に均等な愛情を捧ぐと誓います」

「わ、分かった、カリンを頼む…」

「話はついた?まったく紫水さんは頑固なんだから、もう子供じゃないのだから、この子達の自由でしょう、さぁ宇宙人と対戦よ、ほらっ」

「ちょ、ちょちょっ!心の準備が!」

「もう十分準備の時間はあったでしょ、ナヨナヨしないの!男の子でしょ!」



母ちゃん、そんなおじさん捕まえて男の子って…



襟首を掴まれ、無理やり引っ張られていく父。



「いつでもいいわよ!」

「や、やってやる!」

「まずは1体だ」

「あたしに任せろ」



カリンが転移を使用し箱の中からピグミーを1体取り出し、放り投げた。



「回復」

「ギィ〜…ギャッ!」



放り投げられ、空中で回復を掛けられ意識が復活するも、いきなり地面に叩きつけられてビックリのピグミー。



「ギ〜?ギィ、ギィィーーー!!」

「う、うわぁ!近くで見ると本当に気持ち悪い!」

「しっかりなさい!」



キレるピグミー、目が赤く点滅している。



「ギッ!」



ダッ



「速いわ、ねっ!」



ピグミーの突進攻撃をサッと躱す母。


母の方を狙ったピグミー、本能で弱そうな女性を狙うも、その選択は間違えであった。



ガシッ



躱した瞬間ピグミーの首を片手で掴む母。



「覚悟なさい…」



ピグミーが母ごと水の膜で覆われしまう。



「…浸透」

「ギ…ギィ!ギィ!ギィーー!!ギュブォブブ…」



パシャーン…



ピグミーの方へ水が吸収され、体が急激に膨張、しまいには破裂してしまった、それはもうあっという間の出来事であった。



「ビシャビシャねぇ、乾燥…ふぅ、意外と簡単に倒せたわね、レベルが40になったわ、ふふっ♪」

「カリン…なに今の、シュパッと水が吸い込まれていったんだけど…」

「あたしも初めて見たな」

「浸透圧は分かるかしら?」

「まぁなんとなく」

「濃度の薄い液体が濃い方へ移動する現象の事だな」

「私がやったのは厳密には浸透圧とかじゃないのだけれど、魔物の体には水分が無いのよねぇ」

「まぁそうだろうな、どうなっているのかは分からないけど、魔力で出来てるからな」

「直接水を叩き込もうと思ったのだけれど、抵抗が強くてねぇ、水で包んであげたの、そしたらすーってね♪水が入って行っちゃったのよ、ふふふ、不思議ね」

「母ちゃんそれさ、もしかしたらそうなるかもって思いながら魔法使わなかった?」

「うん、まぁお料理の時、干し椎茸とか干魚なんかを水で戻すじゃない?そうならないかなぁ?って思ってね、だから浸透って言ってみたの、その瞬間にああなったわ」

「想像力って凄いんだな」

「そうだな、勉強になる」

「兄様、ソイルで敵を石にできないかな」

「出来るかもな、その考えはなかったよ、なんかウズウズしてきた…」



ポツンと壁の中に取り残された父は、ほとんど見せ場もなく、ただただビクついていただけだったので、そんな自分に嫌気が差してしゃがみ込み、地面にのの字を描いていじけていた。

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