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155話 魔力飽和の日

キュイーーー…



麓からでも見えそうなほど大きい機械が、音を立てて起動するが…





「あれ?なにもないぞ?」

「ツェファレンの結界はピンク色だったけど、これは無色透明なんだよね」

「なるほどね、ただ見えないだけなのか」

「地球っていうのは何でも問題視するからね、あんまり派手だとヤバいでしょ」

「そりゃそうだな」



キュイ!キュイ!キュイ!


キュイ!キュイ!キュイ!



「な、なんだ!?地震速報!?」



地球住みの皆のスマホから急に緊急地震速報のようなアラームが鳴り響いた。



ピンポンパンポーン♪



『全地球人に速報です、ただいまより、世界に魔力が発生します、知見や知識のある方は、直ちにステータスを開いて下さい、知識の無い方は近くにいるオタク共に話を聞いて下さい…繰り返します、ただいまより世界に魔力が…』



えぇ、なにこの技術力…ってかオタク共って、言い方よ。



『近い将来、魔物や迷宮が発生する可能性があります、政府機関の方々は、必要であれば対策本部の設置、教育機関や冒険者組合などの、空想世界特有の設立の立案などを急いで下さい、尚、魔力を使用し、他人を無闇に傷付けた者は天罰が下る可能性があります、ご注意下さい、繰り返します、近い将来…』



変わる…世界が変わるぞ、鳥肌立ってきた。



『それでは、魔力をより良く使用し、戦争のない平和な世の中になる事を祈ります、バーイ神様、地球に魔力を!』



今この場にいる、事の重大さを一番理解している者たちは全員唖然。



「おいおいおい!やべぇことしてくれたなレイカ!何が派手だとヤバいでしょだ!」

「やっちゃった、てへっ♪」



沸いた、地球全体が沸きに沸いた瞬間である、やはりと言うべきか、当然魔法による事故や犯罪も多発することとなる。



ドォーン!



「なんだ!?」



街の方から大きな爆発音が聞こえてきた。



「始まったね…さぁ!みんなお仕事だよ!蓮花ちゃん、可憐ちゃん、聖愛ちゃんの3人は…」



レイカに指示を出され、レンが転移組にリスクリワードを貸与、魔力を使用した犯罪者の位置を確認したら貸与を返却し転移で移動、次の人に貸与、を繰り返し、天罰を下しに全世界を飛び回るレン、カリン、マリー。


転移を使えないJK3人組の内、可憐は地元を中心に自力で犯罪者を捜索し、天罰を下しに回る、聖愛は飛べるので少し範囲広めの担当、蓮花は瞬光があるのでさらに広範囲になった、その際の衣装と仮面まで準備済みという徹底ぶりに皆は脱帽する事となる。


そしてこの日は将来、魔力飽和の日という祝日となるのであった、空想時代の幕開けである。



―――――



「はぁ、はぁ、はぁ…無理!も〜うむりぃ!!」

「蓮花、遠くまでお疲れ様」

「可憐〜、疲れたよ〜、まだ神様じゃないのに〜」

「可憐は全然疲れてないじゃ~ん、なんで〜?」

「私はこう言うの大好きだからね♪」



ヒュ~、スタッ!



「私!到着ぅ♪」

「聖愛も元気だね」

「こういうの大好きだからね、衣装も可愛いし♪ノリノリだよぉ」

「ぐぬぬぅ、ファンタジー姉妹めぇ」



ヒュッ…



「ただいま…はぁこれで何週目だ?SNSはどうなっている?」

「お兄ちゃんお帰り〜、え〜っと?凄いことになってるねぇ…私達の動画の再生数が億超えてるよ、特にお兄ちゃんの雷の動画の再生数が凄まじいね」

「あの国か…ライブ会場で煽って来やがったから、観客全員気絶させてやったんだよ」

「なんか、日本人ってバレてるみたいだね、日本のアイチューバーが掛かってこいって、俺に敵うのかって煽ってるよ?ライブ配信で」

「はぁ…日本語で喋ったのが動画に映ったんだな、どれ、ジョーのイキりチャンネル…いかにもな迷惑系だな、神様煽ってみただぁ?殺されないことが分かったんだろうな、いくら再生数を稼ぎたいからって、舐めやがってこいつ、初の犠牲者にしてやろうか…」



しばらくスマホで流されるアイチューブのライブ配信を視聴する。



『オラァ、掛かってこいよ!何が神様だ!何が天罰だよ偉そうによぉ!』


:死亡乙

:この人大丈夫なの?

:どうせ来ないよ

:天罰はよ

【10000円 オムライス:友達が調子に乗って天罰をくらいました、全身複雑骨折の重体です、今すぐやめた方がいいですよ?】

:怖ぁ

:怖ぁ

神様:怖ぁ

:↑天罰下す側いて草

:はい嘘、魔力騒動始まったのさっきじゃん、複雑骨折って診断早くない?

オムライス:俺が診断しました、そういう技能を持っています、ちな、俺ガチ医者な

:医者がこんな動画見に来んなし、今が働き時だろ


『ゴチャゴチャうるせぇ!俺は偉そうにされんのが嫌いなんだよ!はよ来いやぁ!』



ただただカメラに向かってイキり散らすアイチューバー。



「お兄ちゃんどうする?」

「いや、こいつはどうでもいいわ、だってカメラに向かって騒いでるだけだもん、別に魔力で人を傷つけてるわけじゃ…」

『来ないなら、これから適当な人を殺しまぁす』


:おい、やめろ!

:そこまでやらなくても…

オムライス:本当にやめて下さい、死にますよ?

:やれ!やっちまえ!

:むふふ、人死にが見れると聞いて、間に合った〜

:↑クズ人間、お前らも死亡確定


『行くぜ!俺の炎で焼き尽くしてやる!』



どこか野外で撮影されているのか、すぐに移動を始めるアイチューバー。



『いたいた、カップルじゃねぇか?胸糞悪い!殺してやる』

「お、お兄ちゃん!ヤバいよ!」

「ちっ、こいつ…待ってろよ、先に地獄を見せてやる、リスクリワード!転移!」



―――



「凄いねぇ、僕はソイルかぁ、土だよね、何が出来るんだろう」

「あんたは土?私は風よ、空とか飛べたらいいよねぇ」

「なにイチャイチャしてんだよてめぇらぁ!死ねよ!」



ゴゥ!



ただのチンピラかと思いきや、それなりに魔法の練度は高く、カップルと思われる男女に向かって火炎放射器のような炎が迫る。



「うわぁぁぁ!あぁ、熱い熱いぃ!」

「きゃあ〜!熱い!助けて!助けてぇ!」

「ギャッハハハハ俺最強じゃね?」

「あんたやり過ぎよ、きゃはははは♪」

「すげぇ、まだBANされてねぇのか、見てるかよぉ神様ぁ!2人死んだぞ?はははは♪」



カメラマンと一緒にはしゃぐアイチューバー、その時…



バシュゥ…



突然天から大量の水が降ってきて火が消された。



「う、うぅ…」

「た、たすけ…」

「酷いな、黒焦げじゃないか、回復、あと服も作製」

「「…」」

「よしっ、大丈夫か?」

「え、えぇ!?治ってる!?服まで…」

「あ、ありがとう神様ぁ〜、わぁ〜ん、いきなり燃やされたんですぅ」

「2人はここで見てろ、天罰の時間だ…」



カメラを向けられるレン。



「特別ゲスト!神様登場で〜す、凄いですねぇ怪我を治すなんて、はははっ♪仮面外してもらっても?」



ドゴッ



「ぐふっ」



バキィッ



脇腹をレンに殴られ、脇に生えていた木に激突するアイチューバー。



「て、てめぇ、燃えろや!」



ゴゥ



「…」



レンが炎に包まれる。



「ヒャーハハハ♪これで俺も神殺…」

「てめぇは、見せしめで殺す!」

「へ?」



炎に包まれながら、スッと片手を上にあげるレン、上げた手の指に装備している指輪から一筋の黒い線が空へと昇る。



「は?な、なん…」



ゴロゴロゴロゴロ…



急速に空が真っ黒な雲で覆われ、まだ昼間だと言うのに辺りは薄暗くなり雷が鳴りだした、そう、レンの可愛いペット、黒龍の登場である。


一瞬の静寂、そして…



『グォォォォォォォ!!!』



以前よりもさらに成長し、空を覆い尽くすほど巨大になった黒龍が、白い眼を光らせ、体に黒霧と紫電を纏わせ、口から炎をこぼしながらゆっくり下降してくる。



「う、うわぁぁ!逃げるぞ!あれはヤバいぃ!」



ズズズズッ!



アイチューバーの逃げ道を遮るように黒い壁が出現、レンとカップルも一緒に囲っている。



「こ、怖い…」

「神様…」

「あんたらに危害は加えないから安心しろ、映画でも観てる気分でいてくれればいいよ」

「は、はい!」

「神様…カッコいい…」



シュン!



アイチューバーの目の前至近距離に瞬間移動で現れるレン。



「逃げんなアイチューバーさんよ」

「はへ?いえ、ちょ、ちょっとしたお遊びじゃないっすかぁ、へへへへ、何ムキになってんすかぁ」

「いや?別にムキにはなってないぞ?仕事だからな、他にもこんな事件はいっぱい起こってるだろうしな、当然間に合わない所もあるだろう、お前達はたまたま俺の目についただけだ、運がなかったな、残念ながら死亡確定だ」

「許してぇ!」

「わ、私もですか!?」



カメラマンが騒ぎ出す。



「当たり前だろ、馬鹿かお前」

「いやだぁ…許して下さいぃ!」

「どっちが考えた企画だ?」

「私はただの撮影です!あいつが暴走しただけですよ!」

「お、俺じゃねぇ!事務所の奴らだ!神様を煽れって!」



リスクリワード…



「はい、お前嘘、すまんな、俺って人の言葉の真偽が分かるんだわ、残念だったな、カメラマンの方は生かしてやる、ちゃんと撮っておけよ」

「や、やった!」

「いやいや!おかしいだろ!こいつだって一緒に笑ってたじゃん!」



ここで新リスクリワード初披露、4つ目は人の真偽鑑定にしたのだ、ただし、仲間には滅多に使わないと心に決めている、しかし、仲間じゃなかったらガンガン使っていくスタイルだ。



『うるせぇ黙ってろ!』

「は、はいぃ!う、うぅ…」



威圧で強制的に黙らせられるアイチューバー、地面に崩れ落ち、しくしくと泣き始めた。



「喋ってもいいか?」

「は、はいどうぞ!」

「では、全世界の諸君…」



―――



「うわぁ、お兄ちゃんカッコいいなぁ、何あの龍、初めて見るんだけど、私の龍とは大違いだぁ」

「間に合って良かったね、蓮花」

「うん、人が燃えるところなんて初めて見たよ〜、私達も気を付けようね」

「退学の時あんなに派手に校舎を燃やしたのに?」

「うっ、だから気をつけるんだよ〜」

「お兄ちゃんの話を聞きましょう?」

「あら?聖愛はやけに静かだね」

「お兄ちゃんは私の目標だから!」

「そうだね、ちゃんと聞こう」



凄いなぁ、私も頑張らなきゃね。



『全世界の諸君、魔力の獲得、能力の覚醒おめでとう、しかし…これは特別な事でも何でもない、本来人間に備わっていた力の発現である、残念ながらそれでも自分を特別視するものは世の中にはいることだろう、実際、中には特別な力を持つ者も現れるかも知れない、だが何をしても許されるなんて思い上がらないでくれ、自分が特別だと思うなら心に余裕を、他人に優しく、楽しく暮らせる世界を創る一員になって欲しい、それでも害悪だと判断した場合は、俺のような者が天罰を下す事になるだろう、それはとても悲しいことだ、ここではっきりさせておく、俺は神様でも何でもない、しかし神の存在は確かにあり、それに最も近い存在である事は確かだ、神様というのは俺のように生易しくはない、人間が地球を食い荒らす害虫だと判断されれば、人間が虫を殺すように、神様もまた、人間を簡単に殺す存在だ、気を付けろ、法に縛られない強者が世界を監視している、もう一度言う、心に余裕を、他人に優しく、楽しく暮らせる世界を皆で創ろう、誰かが特別じゃない…皆が全員特別な世界を!』



ここでライブ放送が停止された。



「お兄ちゃん…私頑張るよ!」

「「私も!」」



蓮花、可憐、聖愛は3人で抱き合い、意志を固くする。



「ただいま、急に犯罪が発生しなくなった、一件片付けている間にだいたいは数件の事件と遭遇するのだが…ふぅ〜、一息つけるな」

「マリーお姉ちゃんおかえりなさい、今ね、お兄ちゃんがアイチューブで全世界の人達にメッセージを送ったの」

「そうなのか?兄様がアイチューブ…」

「訳があるんですよマリー姉さん」



3人で一生懸命経緯を説明する。



「そんな事が、さすが兄様だ」

「すごい勢いで拡散されてるね」

「ただいま」

「カリンお姉ちゃんおかえりなさい」

「レンがやってくれたな」

「姉様は知ってるのか」

「ああ、海外のデジタルサイネージでデカデカと放送されていたよ、レンが龍を召喚している映像が流されたその瞬間から、魔力による犯罪が止まった、惚れ直したぞ」

「そろそろ帰ってくるかな?」

「あのアイチューバー死んだよね…」

「どうだろうな、ああ見えてレンは優しいからな」

「あ、あれは?なんか飛んできてるよ!?」



ヒュー…



『うわぁぁぁ〜、死ぬぅ〜』

『助けてぇ〜』



ドスンッ



「よっ、ただいま♪」

「お帰り〜♪例のアイチューバーと、あ!焼けた人達だ!」



アイチューバー2人を抱えて飛んできたレン、少し遅れて懐かしの石板で出来た箱がゆっくり飛んでくる。



「おお、蓮花よく見えたな、まだ結構距離があるのに」

「へへん、凄いでしょ♪」

「ああ、凄いぞ蓮花」



ナデナデ…



「えへへへぇ~、なんか叫んでるね」

「あれは叫んでるというより楽しんでるんだよ」



箱の方からきゃーきゃー聞こえるが、顔は満面の笑みだ、しばらくして箱が到着。



「ありがとうございました、神様!」

「本当に助かりました、楽しかったぁ♪」

「まぁいいよ、さて…」



ビクッ



レンに見られビクつくアイチューバーの2人。



「お前達、この2人に恨みはないよな?」

「は、はい…ありません」

「私も、ないです」

「謝れ、おでこが無くなるまで地面に土下座して謝り続けろ!2人が許すまでだ!」

「す、すんませんっしたぁ!もう2度と、2度とバカな真似は致しません〜!」

「私達は、お二人を一度殺してしまいました!すみません!」



ドンッ!



おでこを地面に叩きつけ、土下座をする2人。



「あ、いや…え」

「か、神様?私達は、どうしたら…」

「あんたらは、2人を許すのか?どうなんだ?」

「ど、どうしよう…」

「今は回復してるけど、あのままだったら死んでいたんだぞ?」

「う…」

「そう、ですね…」

「熱かっただろ、苦しかっただろう、今まで生きて来て、経験したことが全て無になるところだったんだぞ?こいつらのお遊びで、この先未来永劫お前達という感情、記憶は無くなるところだったんだ、何年先も何千年、何億年先もだ、同じ目に合わせたくはないのか?」

「う、うぅ、うわぁ〜!殺してやる!」

「本当よ!死ぬところだったのよあんた達!ぶっ殺してやるわ!」



ガスッ!ガスッ!バキッ!



「お兄ちゃん…」

「大丈夫だ、見てろ」

「うん…」



バキッ、バキッ、ガシッ、パンッパンッパンッ



「死ねっ、死ねっ、死になさい!」

「お兄ちゃん本当に大丈夫?」

「い、あ、いや、大丈夫だと思うんだけど…自信無くなってきた」



土下座している2人を夢中で殴り、蹴りつける、女だけが…男の方はもう手を止めて、女の方を止めるか迷い始めていた。



「ず、すびばせんすびばぜん…」

「ごべんだざいぃ〜…」



しばらく痛めつけ、徐々に勢いも弱くなっていき、とうとう攻撃が止む。



「どうだ?スッキリしたか?」

「いえ、全然…むしろ自分にがっかりしました」



まぁ男の方はそうだろうな…



「私も、私がこんなことを…」



ホントに思ってる?妙にさまになってたけど、実はやり慣れてない?



「まぁいいか…回復、お前達、立て」

「傷が…」

「いいから」

「は、はい!」



2体2で向かい合う。



「握手して仲直りだ」

「本当にすみませんでした!」

「私も一生反省しますっ!」

「い、いえ、僕達も殴ってしまってすみません」

「もう気にして…ませんので…」



いや絶対気にしてんだろ、怖ぇ〜。



でも、少しは気も晴れた、と思いたい…まぁこれくらいが限界だろう、どうしてもモヤモヤが残るのはしょうがない。 



「はい終了、誰しもが自分の中に自分の知らない一面を持ってるんだ、普段感情を抑えている者ほど何をきっかけに爆発するのか分からない、俺はそれが怖いんだよ、魔力という遠距離攻撃の力を手に入れたからこそ余計にな、今までならちょっとした傷害で済んでいたのが、簡単に殺人まで発展しちゃう世界に突入したんだ、危険を察知したら逃げるのも手、恥ずかしい事は何もない、みんなも十分注意してくれ」

「「「「「はい!」」」」」

「解散!!」



皆が、周りの片付けに入ると。



「あ、あの〜どうやって帰れば?ここは何処ですか?」

「あぁ、ごめんな、元々いた場所でいいか?」

「はい、あ、出来れば握手をお願い出来ますか?」

「ぼ、僕も…」

「あぁ、はいはい」

「ありがとうございました、今日の経験は一生忘れません」

「おう、じゃあ送るぞ」

「「お願いします」」

「またな、どこかで会ったら声掛けてくれ、転移」



ふぅ、あとは…



「お前達はどうする?」

「どうしましょう、ははは…歩いて帰ります」

「別に送ってもいいぞ?」

「いえ、大丈夫です、まだ明るいですし」

「そうか…気を付けてな」

「あ、あの!」

「ん?」

「わ、私たち、アイチューバー続けても大丈夫でしょうか…」

「いいんじゃないか?何で俺に聞くの?」

「何でって…いっぱい迷惑掛けちゃったので…」

「その気持ちがあれば大丈夫だ、俺が言うのもなんだけどお前達、もう有名人だぞ?」

「はは…ですよねぇ」

「黄泉がえりチャンネルって名前変えてやってみれば?」

「それいいですね!」

「俺も燃えてきた!」

「頑張れよ、俺もたまに見るからな」

「「ありがとうございます!」」

「ただいま〜♪あれ?あっ、極悪アイチューバーの人だ!」

「う…」

「いや、ははは…」



レイカは何処かに出かけていたのか、父と母を連れて戻ってきた。



「まぁいいや、はいレン、これっ♪」

「ん?おおっ!?スマホかぁ!」

「お母様の名義で購入してきたよ♪」

「ありがとう母ちゃん、お金はちゃんと払うから」

「いいのよ気にしなくても、食べられなくなったら相談するわね♪こんな時代になっちゃったし、いつどうなるか分からないからねぇ」



流石は母ちゃんだ、ちゃっかりしてんなぁ、まぁ幾らでも金はあるし、これからどんどん親孝行していけばいいだろう。



「レン、そのスマホを腕時計に近づけてみて♪」

「は?お前…またなんか魔改造…」

「いいからいいから♪」

「分かったよ…っておい!吸い込まれたんだが!?」



腕時計にスマホが吸い込まれてしまった。



「はい、これでこの世界でも通話が可能になりましたぁ、さらに念じればスマホ画面を空中に表示出来るよ♪」

「すげぇ、本当だ!操作は?」

「もちろん念操作だよ」

「半端じゃねぇな」

「しかも他人には見えないプライバシー保護機能付きです♪」



いやそれ…ステータスと同じ機能やないか



「もうレイカが神様でいいだろこれ…」

「みんなにも腕時計配るね〜♪スマホは改造するから一旦預かるよ〜」



相変わらず頼もしい仲間だよ、一番のチーターはレイカに決定だな。



「よしっお前ら」

「「はい!」」

「今のは聞いていたよな?俺はスマホを手に入れた」

「は、はぁ」

「手に入れたんだよ、分かるだろ?」

「あ、あぁ!おめでとうございます!」

「そうじゃない!こういう時は連絡先交換だろ!」

「「えぇ!?」」

「ほら早く!」

「いいのですか?」

「なんで?」

「いや、こんな有名人と…」

「いいんだよ、俺は神様じゃないって言っただろ?名前はレンだ、よろしくなっ、情報を発信したくなったら2人に頼むとしよう」

「えぇ!?」

「バズりの予感が…ついに俺たちにも…」

「私達、迷惑系はやめて、これからは真っ当に稼ぎます!」

「ああそうしろ、あ、そうだ、俺がオッケーを出すまで配信は控えてくれ」

「それは…何故です?」

「馬鹿野郎、お前達堂々と犯罪犯しただろうが、このままだと捕まるぞ?演出だった事にするんだよ、明日にでもさっきの2人に訳を話して買収でもしてくるよ、なんなら出演許可でも取ってくるさ」

「あ、そうだった…」

「何から何まですみません」



2人と連絡先を交換し、正体は絶対バラすなと脅し、山の麓へ転移で送り届けた。


その後、レイカのスマホ改造もすぐに終わったので、広場のメンバーの連絡先も登録していく。



「社会人の頃よりも登録数が多くなった…感無量だ」

「レン、義母さんと私達だけだったのか…良かったな」

「お兄ちゃん可哀想…」



蓮花、お兄ちゃんをそんな目で見ないでおくれ、泣くよ?



「そろそろ日が傾いてきたわね、どうするの?まだ修行するの?」

「母ちゃん、今日は解散しようか、みんなもそれでいいか?」



皆も同意したので、ダンジョンや壁を取り壊し、それぞれ帰宅の準備をする。



「ねぇねぇ、お兄ちゃん達は、いつもどこで寝てるの?」

「箱庭の豪邸で寝てることが多いかな、ツェファレンに行くこともあるし…」

「うち、来ないの?」

「う、うぅ、それは…」

「レン、娘のために来てくれない?」

「行ってやれ、妹が可哀想だろ、今日は私も実家に泊まろう」

「え!?カリンお姉ちゃん来るの!?やったぁ♪」

「ふふふ、喜んじゃって聖愛ったら、あ、私も嬉しいからね?姉さん」

「えぇ〜、じゃあ私達もレンのお家に泊めてもらおうよ〜、ねぇマリー?」

「う、うむ…わ、私はどちらでも大丈夫だぞ」

「うふふふ、2人とも可愛いわね、どうぞいらっしゃいな」

「やったぁ!ふんふんふ〜ん♪レンのお家〜♪」

「きゃぁ~♪今日は楽しそ〜!お姉ちゃん達も一緒だぁ!」

「レイカ、マリー、頑張れよ」



レイカも蓮花も大はしゃぎ、小声で2人を応援するカリン、レイカは聞こえたのか微妙だが、マリーは神妙に頷き、ばっちり聞こえたレンは苦笑い、そして空気のようになっている紫水父、ずっと腕時計とにらめっこをしていた。



みんなが一緒に住める大きな家でも何処かに建てるかぁ。

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