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153話 退学と新情報

オールバック先生に命令されて素直に席に座り直した蓮花と可憐。



「やっぱり、座ってろって言われた瞬間違和感があったけど…あのオールバックなんかやってるねぇ、立てないや」

「やっぱり魔法だね、でもちょっと雑かな、少し力を入れれば簡単に動けそうだね」

「なるほどねぇ、だからニヤついてたのか、キモいなぁ」

「もう少し落ち着いたら離れて様子を見ようか」

「うん、そうしよ〜♪」



しばらくして、生徒達の避難する足音も聞こえなくなった頃。



ガラガラガラ!ピシャ!



「あ~!やっぱり教室にいた〜!」

「あれ?聖愛ちゃんじゃん」

「聖愛どうしたの?」

「それはこっちのセリフだよ〜、なんで避難しないの?」

「え?この騒ぎは聖愛じゃないの?」

「違うよ!まぁさっき、ちょっとだけ騒ぎは起こしたけど…」

「なにがあったの?」

「知らな〜い、先生の話を聞かないで抜けて来ちゃったから」

「…行こうか可憐ちゃん」

「うん」



パキンッ



「ふぅ、なんの魔法だろうね、技能かな?」

「う〜ん、技能っぽいよね、まぁどっちでもいいんじゃない?」

「どうしたの?」

「今日来たオールバックの生活指導の先生が魔法を使えるみたいなんだよね〜、それで罠にハマったふりをしてたんだよ〜」

「じゃあこれ置いておくね、この辺でいいかな?」

「うん、その辺りなら教室全体を映せるかな〜」

「これからどこに行くの?」

「屋上かな…」

「じゃあお姉ちゃんは私が連れて行きます」

「よろしく〜、私は瞬光で行くから」

「聖愛、よろしくね」

「うん♪」



姉を浮かせ、校舎裏の窓から一気に屋上へ向かう紫水姉妹、蓮花は真っ直ぐ上、天井を通過して屋上よりもさらに高いところへ瞬間移動、屋上の様子を確かめてから着地する。



「やっぱり瞬光は速いね、蓮花ちゃん」

「ごめんね〜、まだ他人を光らせるほどの技術がないから」

「いいですよ、私がお姉ちゃんのタクシーになります♪」

「聖愛、ありがとう」

「うん♪」

「さてさて?聞き耳を立てさせて貰いますかね〜」



校庭には全校生徒が集まっていて、校長先生が拡声器を使って話をしていた。


3人はその場に座り、フェンスにもたれかかりながら話を聞く。



「ふむふむ、なるほど〜化け物ねぇ」

「なんかタイミングがいいね、やっぱりオールバック先生が怪しいかな」

「化け物!見に行かない?」

「ちょっと待って聖愛ちゃん、オールバックが校舎に戻って行った!可憐ちゃん!」

「うん!」



目の前に石の板が出現する。



「お姉ちゃんこれなはなに?」

「ふふふ♪見てれば分かるよ、蓮花ちゃんお願い!」

「はいよっ♪」



そのうちボヤ〜っと石板に映像が映り始める、先ほどまでいた教室の風景だ。


現代っ子だからこその発想、遠くの景色を映し出す2人の共同魔法、教室に置いてあるのはただの石ころ、そのため気付かれることもない。



「すごぉい!テレビだ!」

「ふっふっふ〜、レンお兄ちゃんにも褒められたんだぁ♪あ、来た!オールバックだ!」

「なんか連れてますねぇ」

「青い…犬?かなり大きいけど…強さはどうかな」

「カオスウルフほどじゃないでしょ〜」

「なんか焦ってますが…」

「私達がいないからね、計画失敗なんじゃない?」

「ちょっとからかってくるよ〜」

「蓮花ちゃん、気を付けてね」

「は~い、瞬光!」



―――



くそっ、なんでいないんだ!バインドで縛り付けたはずなのに!ただの地球人に俺の闇魔法が解けるはずがない!



「ソウル!探せ!」

「ワフッ!」



ガサガサ…



「クゥ〜ン」

「いないのか?どうなっている…」

「お探し物は私ですかぁ?」

「なに!?」



ヒュン…



一瞬背後に姿を現し煽ってくる蓮花だが、すぐに姿を消してしまい、焦るオールバック。



「どこだ!やはり魔法を…くそっ!こんなに使いこなせるなんて聞いてないぞ!」

「誰に聞いてないのかなぁ?」

「貴様ぁ!」



ゴウッ!



「また消えたっ!?くそ!」

「はぁ、何なの?この先生は」

「お、お前はなんなんだ!」

「こっちのセリフだよ〜」



またも背後に出現した蓮花に振り向きざまのエルボーを叩き込もうとするが、また消えてしまい、次は目の前に堂々と姿を表した蓮花。



「ソウル!捕まえろ!殺すなよ!」

「殺すなって、甘く見られてるなぁ」

「グォォォウ!」



ヒュッヒュッヒュッ。



「グウウゥ…」



すべての攻撃を躱され警戒する青ウルフのソウル。



「遅いねぇ、やっぱり弱いや」

「グオォ!」

「もういいよワンちゃんは」



パァン!



軽く腕を払っただけでソウルは弾けてバラバラになってしまった。



「な、なんだと…なぜ、なんでただの地球人がそんなに強いんだよ!」

「私がどれだけカオスウルフの攻撃を避けたと思ってるの〜、こんなのお遊びにもならないよ〜」

「か、カオスウルフ…だと?」

「あ~あ、私もワンちゃんと遊びたかったです〜」

「あ、ごめ〜ん聖愛ちゃん、後でケーキ奢るから許してちょ」

「約束ですよ〜?」

「さて、目的を聞きましょうか、百鬼先生?」

「くっ、誰が教えるかよ!」



可憐と聖愛も参戦し、オールバックを追い詰める。



ダダダッ、パリン!



「あ、窓から逃げた!」

「くそっ、くそくそっ、なんでだよっ!」



そのまま校庭まで走るオールバック。



「はぁはぁはぁ…」

「百鬼先生?どうしましたか?」

「校長!あいつらです、蓮花と可憐と聖愛が校舎内で暴れています!きっと犯人もあいつらだ!」

「あの生徒、本当に大暴れするつもりか?あとセイラとは?」

「校長先生!聖愛は2年生です、今日の朝、藤堂君が聖愛に暴行を受けました!」

「なんじゃと…ぐぬぬぅ、前代未聞の大騒動!退学じゃあ!」



校長は拡声器を校舎に向ける。



「蓮花!可憐!聖愛!お主らは今日をもって本校を退学とする!」



―――



『…退学とする!』

「蓮花ちゃん、とうとう言われちゃったね」

「そうだね、悪手だよねぇ、この騒動が本当に私達だとしたら、退学なんて言ったらどうなるのか分からないのかな?はいドーン」



ドォーン!



廊下側の壁をぶち破る蓮花。



「私も私も〜」

「聖愛、飛ぶならちゃんと下にジャージ履きなさい」

「はぁ〜い♪」



ガサガサ…



「準備オッケー!行ってきま〜す!」

「はい、行ってらっしゃい」



ヒュ~、パリン!



注目を集めるためにわざとガラスを割り、校庭の方へ飛んで出ていく聖愛。



『お、おい、なにか飛んてるぞ!』

『あれは…聖愛ちゃん!?なにあれ!』

『人が…人が飛んでるよ!』



校庭は大騒ぎ、聖愛は全校生徒の真上まで飛んでいき、その場で停止する。



『お前達には絶望した…私はこれからお前達に復讐する!』


   

風魔法で増幅された声、鼓膜が破れそうな程の大きな音に、皆耳を塞いでうずくまった。



『許してほしければ、何故私達を集団でいじめていたのか、理由を説明せよ!』



ノリノリである。



「聖愛ちゃんやるぅ、私達も負けてられないね」

「行こう蓮花ちゃん!」

「うん!」



途端、校庭の数カ所から竜巻が発生、生徒たちの周りを回り始める。



『きゃあ~、今度はなんなの!?』

『た、竜巻だ!助けて!』

『惨めですね…』



静かなのに良く聞こえる澄んだ声、一際大きな竜巻が全生徒前で停止、竜巻上の風の縁に足を組んで座っている可憐がいた。



『裁きを与えます、後悔しながら消えなさい』

『あ~!お姉ちゃん!目立ちすぎ!』

『目立たない聖愛が悪いんだよ』



ゴゥ!



『今度はなに!?』

『うわぁ、炎だ!』

『もう嫌〜!』



校舎の屋上から直径10mほどの炎の柱が立ち昇る、その炎は天高く舞い上がり、龍の姿となって降りてきた、龍の頭の上にはポツンと人影が、もちろん蓮花である。



『グォォォォ!!』



風魔法で龍を鳴かせ。



『フッハハハハハ!』



本人も高笑い、威圧を込めて全力で声を張り上げる、まるで魔王顕現、超ノリノリである。



「可憐、蓮花…どうなってんだよ」

『どうしたのだ三浦さん?いつもの威勢がないではないか、なにか私達に言うことはないのか?』

「くっ…」



まさに魔王気取り、演技めいた口調で女番長の三浦に語り掛ける。



「す、すみません…でした」

『はぁ?聞こえんなぁ!ハッハハハハ〜!』

「おい!やめるのじゃ!どんなトリックかは分からぬが、ただじゃ済まんぞお主ら!」

『ふ~ん、ただじゃ済まないのはどっちかな?私は言ったよね?大暴れすると…真面目に相談にのらないお前達が悪いんだろ!』

「な、何を…」

『何を知らばっくれてんだよ!』

「し、知らん!知らん知らん!儂は何も相談なんぞ受けておらん!」

『は?嘘でしょ…』

『えぇ…その言い訳が通るの?』

『私、お姉ちゃん達から録音聞かせてもらったけど?完全に相談してたよね?』

「捏造じゃ!退学じゃ済まさん!警察に突き出してやる!」



あまりにも雑な言い訳に、蓮花達も呆れ顔になってしまう。



『はぁ、もういい、燃やしてやる…こんな校舎は全部燃えてしまえばいいんだ!フハハハ〜!』

『蓮花ちゃんやり過ぎ!まだ早いよ!』

『えぇ!?なんでぇ?』

『そうですよ!先輩やり過ぎです!せっかく私が目立ってたのに、ケーキにパフェ追加です!』

『ちょ、勘弁してよぉ〜、ん?おいそこ!何を逃げようとしている!シャドウキャット!行け!』

『むぅ、ファントムバード!おいで!』

『私も!シャドウナイト…行きなさい!』



数人の逃げようとしている生徒の前に巨大な猫の影と人型の影、綺麗な巨大な鳥が立ち塞がった。



『じゃあ校長、残念ながらターイムアップ♪』

『残念です』

「な、なんじゃ!何をする気じゃ!」

『何をするって昨日もさっきも言ったじゃん、校長って馬鹿なの?この学校大丈夫?』

『自分が悪いだなんて考えないんだよ、ここまでされてもね』

『私でもさすがに分かるのにね〜』

『でしょ?大人ってね、子供がそんな事は出来ないって心の何処かで思ってるからこういう事になるんだよ、まだやってないけど』

「あ、謝るから、勘弁して…」

『後悔しても遅いって、この事だよね〜』

『うん、だって退学だ捏造だって言っちゃったもんね…やっちゃいなさい聖愛』

『うん!いっくよ〜♪パスカルボール!』



聖愛の手からバシュバシュ!っと連続で音が鳴り、見えない何かが発射された。



パリパリパリ〜ん…ドパパパ、ガシャーン!ガシャーン!ガシャーン!



「きゃあーー!」

「トリックじゃないの!?」

「助けて〜!」



聖愛の通っていた教室と両隣の3クラス分の教室のガラスが、圧縮された空気の膨張により内側から粉々に破壊された。



『それじゃあ私も、圧線!』



ズバンッ!ズルズル…ズドーン!



水魔法のウォーターカッターで、校舎の角が斜めに十数mに渡りカットされ、崩れ落ちた。



『世界のみんな!私に力を!』



蓮花が上げた手の平の上に超巨大な火球が出現、まるで太陽が目の前に出現でもしたような光景に、生徒も教師も全員が息をのんだ、これが太陽なんて生易しいものではないと全員が理解している、悪意を持って放たれようとしている小さな太陽、中には死を予感し地面に膝をつく人も…



「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

「の、のぞみ!しっかりして!」

「サクヤ…もう無理だよ、罰が当たったんだ、私達はここで死ぬんだよ…サクヤ〜、死にたくないよ〜、うあぁぁぁ!」

「のぞみ…大丈夫、私も一緒だからね」



慰めあっている2人の姿を白い目で見つめる蓮花。



何を今更…



『さんざん私達をイジメてくれたくせに…今更命乞い?良かったね、お兄ちゃんが殺してもいいって言ってれば、あんた達は今日死んでたよ!行け、ファインドボール!』



ドォーン!



火球は校舎の方へ放たれ、大爆発。



『可憐!消化お願いします!』

『やり過ぎだと思うなら最初からそんな大きいの出さないで!あとファインドは見つけるとかそういう意味だからねっ!』



ジュー…



『蓮花先輩、ボールを見つけたの?』

『え?えっへへへ♪』



英語が苦手な蓮花、聖愛に指摘されて誤魔化し笑いでやり過ごす。



「ああ、儂の学校が…」

『あんたらが悪いんだよ!理由を説明して、最初から罪を認めてればこんな事にならなかったんだ!』

『そうだそうだ〜!』

『では、私達は退学になったので失礼します』



―――



ドサクサに紛れて学校から逃げ出す人影が…



なんだよあいつらは!めちゃくちゃじゃないか!やってられるか!あんな鬼みたいなやつら捕まえられるわけないだろ!



「くそっ、現人神様め、聞いてないぞこんなの!」

「ふーん」

「懐かし呼び名だ、鼻くそ神だったか?」

「ご利益なさそ〜♪」

「兄様、殺すか?命令なら地球だろうがなんだろうが手を汚す覚悟はあるぞ」

「!?だ、誰だ!」

「ダメだよマリー、まだね」

「うむ、おいお前!命拾いしたな、兄様の心の広さに感謝しろ!」

「次から次へとなんなんだよ!…ん?蓮?お前は蓮か!?あとは花梨じゃないか、なんだよ〜ビックリさせるなよ」

「こころの兄貴だな?」

「おいおい、どうしたんだよ、久しぶりじゃないか〜」

「あれ〜?レンお兄ちゃん、知り合い〜?」



とうとうJK3人も追いつき、絶体絶命になる百鬼兄。



「ああ、俺の事を地獄に突き落とした友人のこころ、その兄だ、なんで俺の事を認識できる?」

「う、そ、それは…」

「俺達はこの世界で死んだことになり、人々の記憶から消えているはずだ、答えろ、何故分かる?」

「う、うるせぇ!バインド!」

「ふんっ」



パリン…



「まぁ記憶がどうのこうのはどうでもいい、お前…ルードの手先だな?もしかして姿をほとんど現さない教頭って、ルードのことなんじゃないのか?」

「だからなんだ!お前なんか現人神様にかかれば…」

「やっぱりそうか…うるせぇんだよ、あいつは神なんかじゃねぇ!黙って質問に答えろ!」

「うわぁ、お兄ちゃん怖ぁ…」

「凄い迫力ですね、これが本物の威圧ですか、心強いです」

「やっちゃえ!レン先生」

「はいはい、あなた達はこっちに来ようね〜♪」

「レイカお姉ちゃん、は~い」

「はい」

「レイカ先生!マリー先生!カリンお姉ちゃん!ただいま〜♪」

「くぅ~、聖愛は可愛いなぁ」

「カリン、メロメロじゃん」

「そそそ、そうだぞ!あ、姉ならどっしりと構えて…」

「マリーも緊張しすぎ、嬉しさが溢れて隠しきれてないよ」

「蓮はその3人のなんなんだ?」



百鬼兄が苦し紛れに質問してきた。



「こっちが質問してんだろ、まぁいい、魔法の先生みたいなもんだ、まだまだひよっ子だからな、もっと鍛えないとダメなんだよ、で?ルードと企んで何をしていた?」

「ひよっ子、あれで?…す、すまない!生意気言いました!」

「謝罪はいいよ、別に殺すつもりもないし、キリキリ吐けよ」

「俺はこころの兄じゃない…」

「なんだと?」

「兄になりすまして、あいつを長年かけて洗脳したんだ、魔法の洗脳じゃない、洗脳教育だ」

「だから洗脳が解けないのか、いやまぁ洗脳を解こうとした事もないんだがな、もしかしてエリカのところもか?」

「あ、ああ…あっちは母親がなりすましだ…」



なんてこったい…ルード、入り込みすぎだろ、どんだけ手広くやってるのか見当もつかんぞ。


俺達の生まれ変わりの3人、余りにも特殊なステータスだからな、やはり目を付けていたか、っていうか早過ぎるだろ、そりゃ地球の神様もキレるわ。



「はぁ、それで?お前はどんな役職なんだ?」

「指示された者を精神的に追い詰めて捕獲、現人…ルードに連絡をして引き取ってもらう役だな、もともとしがない開拓者だよ、自力ではあっちに帰れないし、命令を聞くしかなかったんだよ…」

「だから私達3人を狙ったんだね〜」

「そうだ」

「なんで精神的に追い詰める必要がある?学校中で無視させていたのもそのためか?」

「そ、そうだ…理由は洗脳しやすくする為だ」

「はぁ、もうルードは動いてるのか?」

「いや、最近は自由に動けないらしい…すまん、あっちの事情はよく知らないんだ」

「まだ人攫いは続けるか?」

「もう無理だ…今回失敗したからな、消される、俺の代わりは幾らでもいるさ」

「ツェファレンに帰るか?悪さしないなら中央以外に飛ばしてやるぞ?また開拓者として普通に生きればいいさ」

「いいのか!?お、俺を見逃してくれるのか!?」

「別に、見逃すも何も、俺に迷惑は掛けてないだろ、むしろ情報提供者として丁重に扱ってるつもりだが?」

「私達は迷惑かけられたけどね〜」

「まぁそういうな、実力を確かめるにはちょうどよかったんじゃないか?」

「まぁ、少しは自信が持てるようにはなったかな?」

「これが最後の質問だ、ファーニックの正体だが、カノンで間違いないな?」

「ああ、地球で活動している時はカノンだったはずだ」

「行動範囲とかは分かるか?」

「最近張られた結界とやらは効いてないらしいとしか」

「それだけ分かれば十分だ、今すぐツェファレンに行くか?」

「頼む…」

「どこがいい?」

「どこでも…」

「なら北だ、ノースリレーという場所に飛ばしてやる、荒くれ者の集まる集落だ、出来たらカインドへ行け、そこで少し修行しろ」

「ああ、あんたは命の恩人だ、このお礼はいつか」

「おう、楽しみにしておくよ、転移」



シュッ



「なんだか物語の世界に入り込んだみたいです」

「お兄ちゃん凄い!本当に異世界ってあるんだね〜」

「あるぞ、そして一つ分かった事もある」

「どうしたの?」

「レイカ、今のやつ、忘れたか?」

「え?…ああ!忘れてない!なんで!?」

「転移に立ち会った者は忘れないのかもな、学校の方ではもう忘れられてるんじゃないか?」

「なるほどねぇ、なんか物作りのヒントにならないかなぁ」



今のをヒントにした魔道具だなんて、確実に神具寄りの品になるだろうな。



「それでレン、これからどうするんだ?」

「う〜ん…どうする?」

「あ、私お母さんに連絡しなきゃ!」

「どうした?」

「昨日ね、全部打ち明けたの、お母さんにも魔法教えてあげたい」

「私達のお父さんもお願いします」

「お父さん、半日って言ってたから午後には帰ってくるよ〜♪」

「そうなの?」

「うん♪」



大丈夫か?流石に本当の息子のことは言ってないだろうけど、思い出したりしないよな?まぁその時はその時、どうにかしよう。



「あ、もしも〜し、いま大丈夫?お母さん」

『大丈夫よ、どうしたの?』

「無事!退学しました!」

『ご苦労!やり残しはない?気は済んだ?』

「はい!大暴れしてスッキリしたよ♪」



どんな会話なんだよ、まぁそういうところあるよな、うちの母ちゃん…



『それで?』

「ねぇお母さん、今日半日とかで帰って来れない?可憐ちゃんのお父さんも魔法教わることになって、今日半日で退社してくるの」

『う〜ん、半日は無理だけどお昼過ぎ、13時半頃なら上がれるわ、お昼は稼ぎの時間だからねぇ』

「分かった、先生達にはそう言っておくよ」

『分かったわ、店長に言ってなんとしてでも帰るわね、絶対行くから、先に始めちゃダメよ?』

「わ、分かったよ、じゃあまたね」

『ええ、またね』

「と、言うことです!レンお兄ちゃん」

「はいよ、じゃあ14時頃に待ち合わせにしよう」

「は~い♪」



レンは忘れていた、一度蓮という男を訪ねて神園宅へ訪問していた事を、母親の反応は如何に。

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